表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あちーぶ!  作者: キル
33/292

『ピッツァ! ピッツァ? シティ!?』03

~~~~~~


 茜は少し時間を置いてからバイクを取りに向かう。パトカーが居ないのを見てホッとした。


「急がば回れとはこのことだね」


 そのままバイクに乗って35番通りの裏道を走り出すが、ふと思い立ち、戻る側と反対側へ進んだ。

 たどり着いた先は、この街の端に当たる場所だ。眼下には海が広がる。といっても、波の音は聞こえない。何しろ、今いる場所よりも500メートルは低い場所に海があるからだ。


 『円形浮遊都市・第1番艦 マルゲリータ』それがこの都市の正式名称である。巨大な円形の浮遊するプレートの上に都市を建造し、浮遊して世界を回っている、空飛ぶピザと言われている都市だ。

 地球温暖化のため海面が上昇し、これまでの都市が生存に適さなくなった状況で、多くの人々は地上から離れる解決策を試みた。それがこの円形浮遊都市だ。


 現在、35番通りがこの都市の最も端の外周部にあたる地域だ。そこから見える景色は海だけではなく、建造中の36番通りも見える。とはいえ、建造は浮遊都市の下部で行われており、それを見るには茜の居る場所からは真下をのぞき込む必要があるし、全貌を見ようとすれば下へ降りる必要がある。


 茜はバイクを降り、下へ降りる階段に興味をひかれて近寄ったが、チャットに連絡が入りバイクに戻って店へ戻ることにした。


 茜が移動を開始した直後、この都市ではありえないことが35番通りの地面では発生したが、茜は気が付かなかった。


~~~~~~


「ただいまー、フラテッリに勝ったよ~!」


 ソレッレ・ピッツァに戻ると、先輩も茶子も椅子の上に座って休憩していた。作業台やらテーブルにもたれかかってぐったりしている。


「アカネ~~、おつかれ~~」


 茶子がぐんにゃり机に倒れながらも、手を振って迎えてくれる。


「チャコこそ、何かイベントあったの?」


「クエストミッションがね~、50枚がね~」


 あぁ、それだけでわかる。ミッションNPCが大量注文してきたのか。


「ミッションの目標のアチーブは30個なんだけど、ひとつひとつが大変だね」


 黄里先輩も椅子に座って壁にもたれかかりながらつぶやいた。蜜柑先輩は作業台につっぷして反応もない。


「今回のでバトルミッションが5回、クエストミッションが2回終わったね」


「ストーリーミッションはまだ0回なんだよね~」


 そうなのだ。お店を切り盛りしているだけではストーリーが始まらない。そのうちストーリーイベントが転がり込んでくるのかと思っていたけれど、自分たちで探しに行かないと発生しないのかもしれない。


 今回のゲームでの私たちの目標アチーブは、以下の三つ。


1、ストーリー第1章のクリア

2、ミッションクリア数30

3、1枚の価格が10万P以上のピザをデリバリー(Pはこの世界の通貨単位。通常のピザは1000P)


 一応、難易度としては到達できるらしいんだけど、1枚10万Pってどんな具材が乗っているんだろう。


 まぁ、そのうち分かるよね。それより、今はまだ1度も遭遇していないストーリーミッションのために動かなきゃ。


「それじゃあ、チャコ、一緒に出掛け……れるかな? もう少し休む?」


 自由時間はまだ3時間あるからゆっくり休憩が出来る。

 このゲームは、ピザ屋の店員として仕事をする時間が決まっている。朝の8時~9時、昼の12時~13時、夕方の16時~17時、夜の20時~21時である。それ以外の時間帯は、NPCが営業している。


 もちろん、プレイヤーが店員になって仕事をしている時間帯も他のNPCに任せることはできるので、基本は全てNPC任せにして、お店の店員になって遊びたいときだけ時間を狙って活動するのが負担が少ない。

 ただし、NPCに任せたら当然バイト代も入らないし、評判も上がらないし、店の売り上げも伸びない。新しい道具やピザの具材を手に入れたければ働くしかないのだ。


「そうだね~~、アチーブ頑張らないと~~」


 茶子がのそりと立ち上がって店の奥の更衣室に向かったので、私も一緒に入る。今着ているのはお店の制服だ。このまま出歩いてもいいけど、せっかくなら着替えたい。

 更衣室のロッカーを開くと、服の選択肢が表示される。猫のイラストが無いのは仕方がない。けど、全体的にピザに関する柄ばかりなのはいかがなものかと。


 結局、薄茶色がベースの、真っ赤なトマトのイラストが入ったチビTに、濃い緑色のロングパンツにした。動きやすさ重視だ。

 茶子は薄黄色のシアーシャツに、薄茶色のキャミソール、薄い赤で太腿丈のショートパンツだ。


「色の選択肢が無い~」


「ピザの4色だと厳しいよね」


「青のデニム生地が良かったんだけどな~」


 チーズの黄色、トマトの赤色、バジリコの緑色、生地の茶色と、この4色しかない。色の濃淡は変えられるけど、別の色が選択できないのは厳しい。

 イラストも、ピザに関するものしか入れられない。こちらは食材や道具のイラストも選択できるけど、選択肢が少ないのには変わりがない。


「街中には他の色も少しあるんだけどね」


 更衣室を抜け、店の裏口から外に出て大通りに進む。道路は黒っぽい色だし白っぽい建物もある……道路は焦げた生地で白い建物はチーズだろうか? けど、空は現実と変わらない色だから、全てがピザの色しか認識できないわけではないだろう。


「どこにいこうか~?」


「やっぱり中心か、外周じゃないかな? 番地選択に出なかったし」


 ゲームを始めるにあたって、店を構える通りを指定できた。ただし、6番通りから30番通りまでだ。それ以外の通りは選択できなかったから、外側と内側はイベントに関係がある地域なのだろう。メタ読みになってしまうが、そこに向かうのが効率は良いと思う。


 効率といえば、店の番地はは22番にしてもらった。蜜柑先輩は意見が無ければ効率重視で中央にある18番にしようって言ってたけど、私は数字にもこだわりたい。ニャーニャー。


「中心に行ってみよう~」


 と茶子が言ったので、行き先が決定。

 浮遊するキックボードをストレージから取り出し、茶子と並んで中心に向けて乗り進んだ。歩道では時速5キロまでだけど、車道では時速50キロまで出せる。ただし、バイクと違ってそれが最高速度で、それ以上は速く走れない。


 中央に向かうにつれて、この街で唯一の高層ビルが目に入ってくる。この街の中心に立つ独特な形状のビルは、地面に接している部分は半円形で、中心の軸が真っすぐ上に伸びた建物になっている。どう見てもピザカッターです。


「相変わらずすごいビルだよね」


「下の階は、ショップ系のテナントが入ってるんだよ~」


「ピザ関係の店ばかりだろうねー」


 行こうかどうか話し合ってると、工事現場が左手に見えてきた。高くても3階建てが多いこの世界で、それ以上高い建物の建築工事をしている。うーん?


「ちょっと寄っていい?」


「いいよ~」


 なんとなく興味がわいて、キックボードを止め、建築現場を仕切っている壁に貼られている建築予定図のパネルイラストを見る。1階がピザ屋で他は住宅となるビルを作ってる。普通といえば普通なんだけどこの世界基準だと違う。


「7階建て予定なんだね~、珍しい~」


「建築技術はあるのに、低い建物ばかりだからね」


『システム:ストーリーミッションが付近にあります』


「あ、通知来た」


「このビルが怪しいよね~」


 これだけ低い建物だらけの町中で、高いビルを建築する違和感。とはいえ、工事中の敷地の中に入っていいとも思えない。


 とりあえず、入口から中を眺めてみる。手前は駐車場予定なのか、ちょっとした空間があって、奥でビルを建てている。階段や、歩けそうな板がそこら中に渡してあり、見たことのない車の機械が複数ある。


「クレーン車だったかな~、昔の本で見たことがある~」


「あ、授業で聞いたことがある。じゃあ、反対の車は何だろう?」


 どちらも黄色い車で、片方は思い出したけど、もう片方がわからない。T字型の長い手がいくつもある車で、その手がビルの角にくっついている。


「こんにちは、お嬢さんたち。見学かな?」


「あ、はい、こんにちは。いいですか?」


「もちろん、入口からなら大丈夫。毎日見に来る人が多くてね、さすがにこれだけ高い建物はみんな気になってるからね」


 黄色いヘルメットに緑の作業着を来た若い男性が話しかけてきた。胸には小さな地球に大きな家とビルが生えた、建築って印象のあるバッジをつけている。背は一般的な男性の身長だけど、筋肉がすごい。作業着の上着がパンパンだ。


「うわぁ~」


 なんか茶子が筋肉に見惚れてる。筋肉が好きなのかな?


「あの左の車は何の車なんですか?」


 ちょうどいい機会なので、T字型の車を指さして聞いてみた。


「やっぱりあれが気になるか。あれは今回の建築のために作られた高層建築専用の支持車両なんだ。知っての通り、この都市では地面深くに穴を開けられないだろう? だから低い建物しか建てられなかったのだが、地上から建築中の建物を支える車を作ることで、7階建てという高層建築を建てることが可能になったんだ。ここから見えないけれど、対角線の反対側にも同じ車両があって、双方で支えているんだ」


 すっごい早口でしゃべる。


「なるほど~、地面を掘れないとそうなるんですね~」


 考えたら、建築に土台って重要だもんね。現実の高いビルは土台から整えるし。空を飛ぶ都市は地上とは違った事情があっても不思議じゃない。


「地上で建築されたセンタービル以外はどうしようもなかったからな。だが、これが上手くいけばこれからは高層建築の時代だぞ」


 男の人は目をキラキラさせてその支持車両を見ている。上手くいけばここから新しい街並みが始まるんだから、やりがいのある仕事だよね。


「パルトさんはあの車両の操作もするんですか~?」


「あれを動かす訓練もしたからね。支えるための車両だから、的確な位置にT型アームを設置する技術が求められるんだよ」


「なるほど~、パルトさんすごいんですね~」


 茶子がいつの間にか男の人の名前を知っている! なんて積極的な……まぁ、ゲームではそれぐらいでちょうどいいのかもしれない。


 その時、ギシと音が鳴った。それから、ギギギという音に変わっていく。


「何か音が聞こえるけど」


 周辺を見るけど、何か変わっている様子はない。


「確かに……いや! 支持車両がズレている!」


 素人目にはわからないけど、支持車両がズレているみたい。パルトさんは作業場の奥に走って行った。

 キックボードで50キロも相当怖いと思うのですが、普通に飛ばしています。風圧はすごそうですが、ゲームなので少し風が強いと感じる程度になっています。


変更点

・アチーブのミッションクリア数を20→30に変更しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ