『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』240
ミカン:先輩方すいません、集まってもらって。
ミク:いや、方針の会議なんよな? そろそろ話し合っても良いと思ってたからちょうどいいんよ。
キリ:アカネちゃんが持ってきた情報も合わせて話をしようと思いまして。とりあえず、海龍の封印地の修復についてです。
コガネ:予定では、初期時代の王様から短剣を受け取る予定だよね?
ミカン:そうなんすけど、単純に王笏を設置するだけなら、アカネ単独で乗り込む案もあるっすね。所有者の手元から離れたばかりの本を盗んでも、アカネは犯罪履歴が残らないらしいっす。
シホ:犯罪履歴って、NPCからの好感度が下がったり宿に泊まれなかったりするあれよね?
キリ:そうだね。普通のプレイヤーだと、クエストも一定期間受けられなくなるから面倒ごとが多いんだけど、アカネちゃんだとその不利益が発生条件が緩いみたいです。
アカネ:ミカン先輩からは、【猫適応】がカンストした影響だと聞いてます。
ミク:なるほど、ありえるんよ。そもそも、猫には法律の適用がなさそうなんよ。
コガネ:せいぜい、捕まえるための罠を設置するくらいだよね。猫の討伐依頼なんて聞かないし。
猫の討伐依頼なんて、考えただけで恐ろしい。猫科ならともかく、猫限定の依頼は他のゲームでも聞いたことがない。猫は人にとって大切な生き物だからね、無いのが普通なのです。
コガネ:問題があるとすれば、プルトさんたちの動向だね。見つかった場合、なぜ飛ばした猫がそこにいるのか追及されるんじゃない?
ミカン:それなんすけど、アカネの認識って向こうからしたら首輪なんじゃないすかね。聖女のほうはどう思ってるかわからないっすけど、プルトはアカネ本体をオマケだと思ってそうっすよね。
キリ:アカネちゃんの意思で首輪を外すことができるので、傍から見たら普通の野良猫と変わらないのではないかと。
ミク:うーん……個人的には、現状の王様からのルートでいいと思うんよ。今回に限らず、再度王笏を壊されたら、またあかちゃんが侵入することになるんよ。それだったら、最初から顔をつないでおけば、何度壊されても顔パスで修復することが可能になるんよ。
ネプチュン王国以外の封印地は、強い魔物が居ることを除けば自由に出入りが可能になっている。許可が必要ないから壊されても何度も修復は可能だけれど、ネプチュンの封印地は国が管理している場所なので、気軽には直せない。
ミカン:そうれはそうっすね。壊す側も何度も破壊可能なのは間違いないっす。
モエギ:最後のひとつなんだから、何か変化が生まれないか確かめるために、1回やってみるのもありな気はするけどね。
コガネ:けど、変化によっては次に侵入できなくなる可能性もあるし、壊れたときのためを考えると正規の手順の方が安心はできそう。
シホ:そうなると、ネプチュンの王笏の方針はこのままで良いってことでしょうか?
ミク:オリハルコンが出来なかった場合は、あかちゃんに頼む方針に切り替えることも検討するんよ。
ということで、私が潜入して修復する作戦は先送りになった。犯罪にならないからといって、進んでやることでもないからね。
キリ:次に、アカネちゃんの持ってきた本についてミカンと読み進めたのですが、正直に言って信頼できる本なのかどうかはわからないですね。特に、歴史の本の上巻に書かれている内容が別世界過ぎて創作を疑います。
歴史の本に書かれていた内容を共有する。あの話が本当だとしたら、今の世界とどんな関係で結ばれているんだろう。
キリ:それでも確信めいた書かれ方をしているので、無視して良い内容とは思えません。
ミカン;並行世界とも違うっすね。あちらの歴史の出来事がこちらに影響を与えたって書かれてるっすから、時系列は上巻が先。ただ、どれほど前なのかが曖昧でわからないっす。
龍やダンジョンなどが作られた順序からすると、明らかに上巻が過去の歴史に見える。それでも過去と言い切れないのは、各龍が認識している年齢と比べると、7つの王国が長く続きすぎている点にある。何千年も同じ国が成立し続けるのは不自然だ。
アオナ:ダンジョンの壁から魔力が吸収できたのも、ダンジョン内に魔物が多く居るのも、元が魔石の再補充施設だと書かれた本の内容からすると理解はできます。施設の再補充という役割から考えると、どれだけ魔物を倒してもすぐに魔物が生み出される仕組みに納得ができます。
アカネ:王都の地下がエネルギー貯蔵庫だから、龍の肉体となる魔力が集まってたってことだよね。
ミカン:エネルギーの貯蔵。つまり集めるって性質がまだ残ってるのなら、帰還石の行き先が王都なのも納得できるな。死亡して解放された人たちの魔力の残滓が貯蔵庫に引き寄せられてるってことだからな。
ミク:王都が貯蔵で、封印地が魔力の排出なんよな。それなら、王笏の魔力を吸い上げる役割は、吸い上げるというより送り届けるほうが近いんよ。
シホ:元々は地下から汲み上げるパイプのようなものってことでしょうか?
コガネ:汲み上げた後、王都や各施設にも繋がってたのかもね。
チャコ:だから7つ集まっても合体しなかったんだ~。
モエギ:それぞれが別々に作られた物なら、ひとつにはならないからね。
ギンガ:じゃあ、欠片ってそのままの意味なんだ!
ミカン:壊れたパイプラインの一部って解釈なら、まさに欠片で正解だろうな。
コガネ:パイプラインだとしたら、残りの部分はどこに消えたんだろう?
アオナ:残りの部分のありかはわかりませんが、おおよその予想はつきます。吸い上げたエネルギーの行先は、アクアさんの話だとマーキュラスではなく中央を挟んだ反対側にある現在のヴィリスです。加えて、彼女の力が及ぶのは周辺の山々だと言っていたので、パイプが通ってるルートは封印地と王都を直径とした円周となるルートではないかと思います。
チャコ:それだと、マーキュラスと海龍のマーレさんがかなり遠回りだよね~。パイプラインにしては遠回りすぎない~?
ミク:エネルギーに何らかの条件があったかもしれないんよ。移動できる土地が限られるとか。そうでなければ円周で終わらせずに、それぞれの円周をつなげて蜘蛛の巣みたいにしてたかもしれないんよ。
キリ:アクアさんの話を聞く限り、他の円周とつなげていたとしても、その接続は切れたと思ってよさそうですね。
ギンガ:アクアが、マーキュラスとは関係がないって言ってたからね!
シホ:蜘蛛の巣状のパイプラインって、効率が悪くありませんか?
ミカン:さすがに切り替え装置くらいあっただろうな。
蜘蛛の巣かぁ。丸い大地にパイプがつながる光景を思い浮かべる。7つの国に繋がるように、7本の線が広がる感じ――。
アオナ:円に対して繋ぐように広がったパイプラインって、王笏を刺した例の杖の形状に似てませんか?
ミカン:あぁ、そういわれてみればそうだな。中央から各方向に広がっているように見える。あの杖に円形の何かをつけ足せばそっくりだな。
ギンガ:あの形って7つの国じゃないの?
シホ:そういった意味もあるのではないでしょうか? むしろその方が自然ですわ。
コガネ:杖の機能がわからないからどうしようもないけど、王笏の欠片って魔力噴き出す以外に他の使い道はないのかな? わざわざパイプの痕跡が残されて現存していることに意味がある気がする。
王笏の使い道……あれかも。
アカネ:中央の街の地下に王笏を入れる遺跡っぽいのがあったよ。
アオナ:そういえば話してたね。中に吸い込まれたんだっけ?
アカネ:うん。アストロラーベを龍の封印地に設定して遺跡にはめると、王笏を入れる空間が出てきた。試しに差し込んでみたら、封印地と同じような感じで分裂して入っていったよ。
モエギ:入れた王笏って、1本だけ?
アカネ:うん。
アオナ:あぁ、だから王笏が増えてたんだ。
シホ:何か心当たりでもあるのかしら?
モエギ:廃墟時代に中央の街の神殿で、王笏の杖部分だけ手に入れたって言ったでしょ? このあいだアオナちゃんが取り出したときに、王笏が1本だけ刺さってたんだよ。手に入れた時は1本も刺さってなかったのに。
コガネ:アカネちゃんが刺したから、未来が変わったってことか。
ミカン:となると、廃墟時代のアカネが見つけた遺跡は、全ての王笏が差し込まれた後って可能性が高いな。
アカネ:未来が廃墟になった理由と関係あるのかもね。
(全員):……
――いや、なんか会話が止まったんだけど?
236話にて茶子が会議終了と言っていた会議の中身です。あの話に出てきた話題は次回です。




