『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』233
「こことは逆に、魔力が噴き出す場所とかあるの~?」
「あるのかなぁ?」
「聞いたことある気がするのですよ」
フップちゃんが腕を組んで首をかしげている。ルックちゃんも上を向いたり横を向いたりしているから、知ってても思い出せないのかも~。
下を見ると、ウサギのランちゃんは魔力が吸引されている穴をのぞき込んでいて、キツネのクォックちゃんはじっとあたしを見つめている。
「クォックちゃん、どうしたの~?」
「クーは知ってるコン」
「魔力が噴き出す場所?」
コクコクと頷くクォックちゃん。「どこにあるの~?」って聞いたら、その場所まで案内してくれるみたい~。
案内をお願いしたらと、他のみんなも見に行きたいって手を挙げてたので、全員でついていくことに~。
二足歩行でぽてぽてと歩いて案内してくれるクォックちゃんは、迷うことなく一直線に進んでいく。少し高い位置に飛んでいるあたしが進行方向の先を眺めても、どこに向かっているかわからない。背の低い草で覆われた草原に所々生えている木や、少し離れた場所で流れている川など、現在位置を特定できそうなものはあるけれど、進む先に巨大な木があるとか橋があるとかみたいな目立つ目印はない。
それでも、クォックちゃんは先へ先へと迷うことなく歩き続ける。
「真っすぐ向かってるけど、目印になる物があるの~?」
「あるコン。でもここからは見えないコン」
記憶力が良いのか~。周辺の地図を覚えていて、方向感覚もあるのかもしれない。
……ゆっくりと、でも迷いなく進むその姿に、ちょっとしたデジャヴを感じる。なんだろ、知り合いに似てる気がする~。
ルックちゃんに近寄って、こっそり話しかける。
「クォックちゃんって、遊びの待ち合わせとか早く来る子~?」
「ううん。遅かったり、来なかったりするのですよ」
……紫帆先輩タイプかも~? いや、紫帆先輩は来れない場合は連絡を欠かさないから違うよね~。
けど、クォックちゃんが遅かったり来ない理由が迷子とは限らない。とりあえず今はついていくことにしよう~。
「妖精の国って、地図とかあるの~?」
一応、迷子になった時の保険に地図があるか聞いてみたんだけど、そもそも地図の説明から入る必要があった~。これは無さそうだね~。
「そういったのはないよ! 作ろうとする妖精が居ないからね。あっても役に立たないし」
「このあたりは木や川がよく歩くのですよ。昨日はこのあたりも木が多かったけど、今日は木がどこか行ったのですよ」
「川は逆に近寄ってるピョン」
木や川だけではなく、小高い丘も気が付いたら移動するなど、あらゆるものが移動するんだって~。例えばさっき魔力が流れる場所に対してランさんが穴を掘ったんだけど、その穴もいつの間にか移動したり埋め立てられたりするらしい~。唯一動かないのは、ダンジョンの出入口なんだけど、間違えて外に出て帰ってこれないと困るから、近寄らない人が多いらしい~。
そんな不思議な世界の中で、果たして完全に道案内ができるのかな~?
途中で、進み続けていたクォックちゃんが立ち止まり、左右を確認している。そしてそのまま、何もなかったかのようにまた真っすぐ道を進んでいく。
う~ん。不安な気持ちが色々とないまぜになったままついていく。
かなりの距離を直線移動した後で、クォックちゃんが立ち止まり、進行方向へ爪を向ける。
「あれコン」
クォックちゃんが指さしたところは、小高い丘になっている花畑だった。花を踏まないように進むクォックちゃんは、丘を登って一番高い場所に到着すると地面を両手で示す。
「ここから出てくるコン」
クォックちゃんの指定した場所を見ると、妖精サイズのあたしが手で持ち上げられそうな程小さな、灰色の四角い石が見えた。ダンジョンとか妖精の国に入るゲートっぽいよね~? とりあえず【魔力感知】を使う。
……疑ってごめん、クォックちゃん。完全に魔力が石から緩やかに噴き出している。むしろ、ここまで一度も曲がることなく来れるレベルで方向感覚が鋭いのは驚異的だよ~。
「地面から出てくるね」
「むかーし見たことあるのですよ」
ピクシーのふたりは、地面に降りたって石をペタペタと触っている。よく考えると、全員【魔力感知】が使えるんだよね~。そういえば、地面に吸収される魔力も見えてたよ~。
「ふたりは、この魔力ってどんなものかわかる~?」
あたしの【魔力感知】レベルは高くないから、ふたりのほうがレベルが高くて色んな情報を見つけられるかもしれない。
「うーん。ちょっと色がついてる感じ?」
「変な感じはしないから、汚れてるって感じではないのですよ」
汚れてるわけじゃないけど、色がついている。魔力に何か見えない種類があるのかな~? 色について聞いてみたけれど、何がどんな色なのかははっきりわからないみたい~。感覚として、色がついてるように感じるんだって~。
クォックちゃんによると、魔力が引き込まれる場所と違って、魔力が噴き出す場所はたくさんあるんだって~。魔力が引き込まれる場所は周辺魔力の流れをたどっていけば見つかるのだけれど、噴き出す場所は魔力の流れを逆らって進んでも場所を見つけられないことの方が多いみたい~。噴き出す魔力の量が少ないのも見つけにくいのだとか~。
「クーは歩き回るのが好きなんだコン」
クォックちゃんの行動範囲はかなり広いらしくて、妖精の国を隅々まで歩き回ってるんだって~。魔力の流れに頼らずに歩き回るから、偶然変わったものを見つけることが多いみたい。色んな場所のことを知っているクォックちゃんだからこそ、この場所が他にはない魔力の流れがあるって気が付けたとか~。
でも、遊ぶ約束をしていても、気が付いたら遠くに移動してしまうこともよくあるようで、約束した場所に時間までにたどり着けないこともよくあるみたい~。
「クォックちゃんは、どうやって道を覚えてるの~? 目印なさそうだけど~」
ここに来るまでに、迷うことなく一直線に向かってきている。なぜそれができたのか気になるよね~。
「魔法つかったコン。場所を覚えてたからこれたコン」
魔法か~。詠唱した様子はなかったけれど、何か方法があるのかも~。
何の魔法を使ったのか詳しく聞いてみる。どうやら使ったのは【知識魔法】で、初期魔法に含まれない[ロケーション]という魔法。位置情報を数値で示す魔法なんだって~。
この数値情報を覚えていたから、この場所に真っすぐたどり着けたみたい~。途中で周りを見ていたのは、座標ずれを直すために通りやすいルートを探していたんだって~。真っすぐ進んでいたようで、じわじわと目的地からずれていたみたい~。
「あたしでも使える~?」
「教えたことないからわからないコン」
そもそも、あたしは【知識魔法】を覚えていないからな~。教わる土台ができてないんだよね~。それを超えて教えてもらうのは無理そうだよ~。
「また今度来たときに教えてほしいって言ったら、教えてくれる~?」
「やり方を言うだけならできるコン」
教えるのがだめなわけじゃないのなら、まだ手はあるかもね~。何しろ、今いる場所はエルフの学者さんたちの家だからね~。【知識魔法】を教えてくれる可能性はありそうだから、その後に来てもいいかも~。
魔力が吹き出している石を持ってみたけれど、ピクリとも動かない~。ふんわりと地面近くを浮き上がってるのがダンジョンっぽいよね~。
試しに【妖精の隠れ家】を使ってみたら小さな扉が生まれたので、ダンジョンと同じ性質のもので間違いないよ~。問題は、あたしサイズの妖精でもくぐることができないほど小さいから、入り口としてつかえないこと~。
他にも、魔力を噴き出すところなんかはダンジョンにはない性質なんだけど、どんな意味があるんだろう。噴き出すだけなら龍の王笏と同じ役割に見えるけれど、それらしいものは見つからない。
あ、一応、多分あれなんじゃないかな~って気持ちでクォックちゃんに質問をしてみた。
「噴き出す場所の数? 7つは見たコン」
やっぱりね~。
前に妖精の国に登場した犬のブルと猫のミャンですが、既存のクーシーやケットシーなどをイメージしていたけれど、妖精の国だから何でもいいだろうと思い種族関係なく動物を歩かせることにしました。




