『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』230
~~~チャコ~~~
書庫で調べものをしばらくしたけれど、夜も遅くなったから一泊させてもらった~。調べものを途中で中断するとモヤモヤするけど、休みも大切だよね~。
妖精用の寝床を用意してもらったので、ありがたく使わせてもらう。どこの家庭でもそうだけど、妖精用の寝床を持っている家庭はないから、基本的にはタオルやハンカチを使って布団っぽく作ってもらっているんだよね~。
そんな中で、この家ではひざ掛け用の毛布を用意してもらったので、かなり温かい。当然妖精にはサイズが大きいんだけど、寝る布団のサイズが大きすぎても困らないからね~。
体を残した状態のログアウトから戻って目を覚ますと、未黒先輩も紫帆先輩も既にベッドから抜け出してた~。耳を澄ますと外から声が聞こえてきたので、ストレージから服を取り出し着替えて、声が聞こえた方へ向かうよ~。
窓から外へ出ると、未黒先輩と紫帆先輩が木の棒をもってお互いに戦っていた。サリアスさんとシェリマさんが眺めているので、模擬戦をしているんだろうね~。
ふよふよと飛びながら、観戦しているシェリマさんの隣へ移動した。
「おはよ~」
「あ、おはようございます」
シェリマさんと挨拶だけ交わして、模擬戦の様子を見る。どちらも片手にショートソードっぽい長さの棒きれを持って、正面から打ち込みあっている。普段の戦い方とはちがうな~。素人目線ではあるけれど、戦闘は紫帆先輩のが押している感じがするよ~。
「シホさんって、すごいんですね。あれだけ近接戦闘が出来るエルフって、ほとんどいないですよ」
「エルフって、近接武器は使わないの~?」
「はい。普通は弓を使うのが主流です。近接用は護身用のナイフを手にするぐらいでしょうか。細身の剣を使う人も少数ながらいますが、剣術を中心とした戦闘よりも魔法を使うまでの補助として剣術を使っている人がほとんどです。シホさんのように、魔法を使うことなくあれだけ打ち込んでいるのは珍しいんですよ」
「サリアスさんは、昨日ミク先輩と剣で稽古してたよ~?」
「お婆さまは別の状態への変化が可能なので、純粋なエルフとしては例外になります。シホさんはエルフのままなのに扱えてるのがすごいのです」
紫帆先輩のスキル構成は特殊すぎるからね~。特殊能力が【武芸百般】で、どんな武器も単一スキルで使える凄い能力。近距離と遠距離にスキルが別れてるから完全に単一ってわけじゃないけど、斧やメイスなど種類が違う武器種を使っても剣専用の剣技が使えるのは、誰が聞いてもすごいスキルだよ~。
紫帆先輩が優勢で模擬戦が進んでたけど、指導しているサリアスさんが手を数回叩いたらふたりとも戦うのをやめたよ~。
「ミクさん、かなり良くなってますね。避ける癖をもう少し抑えたほうが良いでしょう。体が痛んでも胴体で受けたほうが早めに棒術を覚えられますよ。シホさんはスキル特性上どのような武器でも使えるので、ここで棒術の技を使いこなせるようにしておきましょう」
木の棒を持ったサリアスさんは、武器を構えた後に武器スキルをいくつか使って先輩たちに教えていた。切るような武器と違って、叩きつけるような動作ばっかりに見えるな~。
そういえば、シェリマさんがここに居るってことは、武器の練習をするのかな~?
「シェリマさんは、何か武器のスキルがあるの~?」
「私は護身用に杖だけです。弓も扱えますけど、学校の授業で習う程度しかできません」
シェリマさんが腰から外したのは、細身で真っすぐ伸びている杖だった。長くもないけど短くもない、お年寄りたちが歩行の補助に使うような杖のサイズで、シェリマさんが立って杖の先端を持った時に、ちょうど地面に着くようなサイズだ~。
「何人か仲間が杖スキル持ってるけど、防御用なんでしょ~?」
「防御には優れてますけど、攻撃も可能ですね。見ててください」
杖を持ったシェリマさんは、少し離れた位置に立ててある木の柱に向かう。あの柱、結構色んな場所が削れているよ~。
その柱の前に立つと、杖を両手で構えたシェリマさんは、持ち手を右や左に変えながら、木の柱に何度か攻撃をする。最後は柱へ真っすぐ突きを入れて終わった。
戻ってきたシェリマさんに拍手をすると、「まだ未熟なので」と照れていた。かわいい~。
「攻撃だと杖の操作を安定させるために、こうした真っすぐの杖の方がいいです。逆に防御に使うのであれば、ねじれた杖が良いですね。起伏の無い杖は持っている手まで相手の武器を流されると危険ですから」
杖で剣とかを受けると折れるじゃないかと聞いてみたら、魔法使い用の杖は魔力を通すのが簡単だから、魔力で折れにくくできるんだって~。けど、丈夫なのが逆に刃先を横に滑らせやすくなるみたいで、持っている手に相手の武器が当たると怪我がしやすいから、防御用は形がねじれているみたい~。
「シェリマも参加する? ミクさんと対戦してあげて」
「わかりました! では、行ってきますね」
杖を手に未黒先輩の前に立つシェリマさん。構え方が魔法使いじゃなくて戦士っぽい~。
職業的には戦士対魔法使いなんだけど、未黒先輩が棒スキルを取得していないから、シェリマさんが優勢な感じ~。杖の先端で棒の振り下ろしを止めて、反対側で攻撃を仕掛ける。右から降りぬかれた棒の攻撃を受け止めて、杖の回転で向きを変えてバランスを崩す。突きをした後、即座に手元で杖の角度を変えて防御に移す。
模擬戦は一方的にシェリマさん有利に続いてサリアスさんの声で終了した~。
「シェリマは筋力や体力をつけないとだめだね。スキルの無いミクさんにあれだけ粘られてるのは決定打が無い証拠だよ」
身内には容赦ないサリアスさんのアドバイス。身内だからこそ厳しいのかも~。この時代は帰還石がないから、手軽に復活はできない。だからこそ、戦闘訓練は真剣なのかも~。
「お母さま、そろそろ朝食ですよ」
家の方かチュリアさんの呼びかける声が聞えた。
「わかった。それでは、武器を片付けて汗を拭ってから食べに行こうか」
先輩たちやシェリマさんは道具をてきぱきと片付けて、準備してあったタオルで顔とか体を拭う。
あたしはやることが無いので、家の中でチュリアさんにお手伝いできることが無いか聞いてみたけど、大丈夫って言われた。魔法を使えば皿運び程度ならできるんだけどね~。
「ホツナルさんは~?」
姿を見かけない。誰かが呼びに行く様子もなさそう~。
「あの子はまだ寝てるんじゃないかな。夜遅くまで起きてるから、朝は別々で食べますね」
よくある研究者タイプか~。昨日調べた解読できない本について、別れた後も調べてたのかもしれないな~。
パンとサラダを中心とした朝食が運ばれるのを眺めていると、シェリマさんと紫帆先輩がやってきて朝食の準備を手伝いだした。
こうしてみると、紫帆先輩を家族の一員として扱ってるように思える。エルフに限らず、妖精も同族相手は距離感が近い気がするんだよね~。ギンガもすぐに弟子になったみたいだし、同じ種族って特別なものがあるのかも~。
朝食の準備が終わったので、ホツナルさん抜きで朝ごはんを食べる。妖精でも食べられるようなサイズに薄く切られたパンに、おいしいバターを塗って食べる。サラダも今朝摘み取った物らしく、香りは少し強いけどおいしく食べることができた~。
「皆さんはこれからどうするんですか?」
食事が終わるころに、チュリアさんがこれからのあたしたちについて聞いてきた。なんとなく未黒先輩を見る。
「うーん。海龍の方はコガネが動いてるから、緊急の要件は現状ないんよな。モエギとあおりんも店番と解読を続けるだろうし」
「時間があるのなら、ミクさんの訓練を優先させたらどうだろう。指導できるうちに覚えた方が、結果的に時間の短縮になると思うよ」
「そうですね。シホさんにも教えたいことがあるし、急いで出ていかなくても良いんじゃない?」
サリアスさんとチュリアさんが、先輩たちに教えたいことがあるようで引き留めている。未黒先輩があたしたちにどうするか視線を向けたので、「いいよ~」って答えておいた~。
「それじゃあ、もう少しだけお世話になるんよ」
「うん。しっかり鍛えていくからね」
もうしばらく、この家に残ることになってお願いしますってお礼を言ってる最中に、シェリマさんが立ち上がってお皿を台所に持っていった。
すぐ戻ってくるかと思ってたら、別の部屋に行って、戻ってきたときはお出かけする服に着替えていた~。
「じゃあ、学校から帰ってきても3人とまだ会えるんだね」
あ、学校に行くんだ~。
エルフがキャラクター制作時点で覚えらえる近接戦闘用の武器は、フェンシング系の武器となります。後から覚えることもできますが適正はありません。それ以外の武器を使っているエルフは、武器を持っている姿をみるだけで通常からは外れた何かを持っていると察することができます。ハイエルフの場合、キャラ作成時点で普通は武器スキルを覚えていません。ただし、適正はランダムで何かが存在ます。紫帆の場合は特殊能力からの例外です。




