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あちーぶ!  作者: キル
202/245

『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』132

~~~アカネ~~~


 彫り物のように見える古い機械を中心に、黄金音先輩とチェリルさんと私が円を描くように囲む。お互いの手を握って……私は握られてだけど、その手の部分を意識しながら目を閉じる。

 黄金先輩とチェリルさんは私に必要な魔法を貸し出す意識を念じ、それに対して私が念じられた意識を受け取る。上手く受け取れたら物質魔法[リペア]を発動する。


「受け取る側は、重さのある魔法の感覚が流れてきます。コガネさんの方が貸し出す魔法が多い分だけやや重く感じると思います。貸し出す側は集中し続けてください。アカネさんが感覚をつかみやすくなります」


 シェリマさんが隣で丁寧に教えてくれるので、手に重さがかかる何かを探りながら集中する。


 1分後、なんとなく両手に重さを感じた。疲れたとかではなく、突然手が重くなった感じだ。これかな?

 あとは、この重い感覚を自分の胸まで引っ張りこむ。そこまでできたら、後は魔法を発動するだけ。


「――[リペア]」


 ググッと魔力が減った気がする。集中しすぎて魔力を調節しなかったからか、それとも魔法の儀式だから魔力が多く減ったのかはわからないけど、8割近く消費した気がする。


 対象となる機械に魔力の光が灯り、表面の茶色いものが剥がれて、綺麗な銀色の機械が現れた。時計とは違うけど、よく似ている。

 黄金音先輩が手を離したので、そちらの手で機械を触る。特に何かがあるわけじゃなさそう。何だろ?


「知っている見た目とは違うけれど、多分これアストロラーベの一種じゃないかな?」


 上からのぞき込むように見ているホツナルさんが、機械の名前を推測した。アストロラーベ?


「空の星から、時刻や現在地を調べる道具ですね。私が知っているのはもっと単純でしたけど」


「壊れた船の付近に落ちていたのなら、航海で使ってたんでしょうね」


 黄金音先輩と黄里先輩は知ってるようで、船の上で現在地を図る昔の計測器らしい。それなら、拾った状況からしてピッタリなのかな?


「けどこれは似ているけど違うものですね。この家にあるのを持ってきます。チェリル、場所を教えるからついてくるように」


 シェリマさんが立ち上がると、チェリルさんは私を抱えて立ち上がった。家の奥にある、倉庫のような場所に入り、指定された箱を棚から降ろすようにチェリルさんが指示を受けた。その間、私はテーブルの上に座る。

 降ろされた箱が開けられると、猫には少しサイズが大きめの丸い機械が現れた。よく似ている。

 それを持って元の場所に戻り、リペアされた機械の横に並べる。確かによく似ているけれど、形状が違う。


「外側に動かせるリングがあるね」


 修復したほうを黄金音先輩が持ち上げて、円盤外周の厚みのあるリングを動かす。円盤の中心を通る半径を軸にリングが90度傾いて止まる。スカスカな部分が多いけど球体になった感じ。


「この金色の部分が動くね」


 円盤部分には金色の小さな丸いパーツと歯車のような機構が付いていて、金色のパーツは側面のダイヤルを回すと、歯車の動きとともに自在に動く。全体が銀色でできているから、何か役目がありそう。


「このダイヤルにある数字は座標かな?」


「高さは関係なさそうですね」


 X軸とかY軸ってやつかな? 金色のパーツを座標に当てはめるようになってるらしい。


「こういうのはスキーレさんが詳しいんじゃないかな? 考古学の専門家だからね」


 龍の専門家のスキーレさんは、それ以外にも詳しいそうだ。考古学全般に詳しくて、その中でも龍が特に詳しいのだとか。


「聞きに行こうか。何か知っているかもしれない」


 ちょっと前に別れたスキーレさんは、まだ木龍の近くの小屋にいるはず。今回は私たちだけで移動かと思ったけれど、チェリルさんも一緒に移動するとか。私たちだけでは[ウォーターボート]を使えるのが黄金音先輩だけなので、チェリルさんも使ってくれるとすごく助かる。


「行ってきます」


 シェリマさんの家を出て、もう一度小屋へと戻る。黄金音先輩の[ウォーターボート]は何人か乗れるサイズで発動したので、ギンガと黄里先輩がそちらに乗り、チェリルさんの方は蜜柑先輩と私が乗った。


 危なげなく[ウォーターボート]を操作して、スキーレさんが居る小屋に到着し、ノックをすると中から助手のセタノさんが迎え入れてくれた。


「なるほど、これの使い方か……ふむ。こうして……こうか。あぁ、なるほど……」


 スキーレさんに相談をすると、さっそく機械を広げたり動かしたりして調べてくれた。よくわからないパーツを開いたり閉じたりしている。


「うむ。おおよそは理解できた。実践してみようか?」


「お願いします!」


 もう理解できたんだ! さすが、考古学の先生!

 スキーレさんは肩に鞄をかけ、機械と魔法に使う杖を手に持って外に出るのでチェリルさんに運ばれながらついていった。

 スキーレさんは木があまり生えてない草地にたどり着くと、鞄から本を取り出す。


「恥ずかしながら植物魔法は覚えてないから、魔法書を使わせてもらうよ」


 そういいながらも魔法所を手にして詠唱する姿は熟練の魔法使いって感じだ。


「少し離れていなさい。そう、そこで待つように。[サークルカッター]」


 魔法が発動すると、魔法の効果範囲にあった草が綺麗に円形状に刈り取られていた。


「すごいまんまる!」


「だよね!」


 魔法の発動範囲は円か球体が多い。ただ、それは範囲ってだけで、実際に攻撃などで使うといびつな円形になることがほとんどだ。それなのに、目の前の草が刈り取られた後はいびつさを感じさせないほどきれいな円形。魔法を制御する能力がすごく高い証拠だ。


「本来は農作業に使う魔法なんだ。形状も円以外にも楕円や四角など様々に変えられる。村に使い手がひとりでもいれば……と、違うな。この道具の使い方だった」


 魔法の効果を話し始めたスキーレさんは、助手さんに袖を引っ張られて話を中断した。

 それから、魔法の杖を円の中心に突き刺す。


「それでは、使い方と用途を説明しよう。この道具は、確かにアストロラーベの機能を有しているから、そう呼んで問題ない。ただ、追加された別の要素がある。それは、観測した座標の縮尺図を作ることができるのだ」


 機械――アストロラーベを私たちに見せて、使い方を説明してくれる。


「最初にこのボタンを押すと光が発生する。夜間でも使えるのと、後で光が重要になってくる。次に、測定するため草を直径10メートルの円で刈り取ったから、その直径をダイヤルで設定。方位も同じく設定をする。円の中央部分の座標を入力する。あとは観測したい座標を入れると、この金色のピンが移動する」


 円盤の側面にあるダイヤルを動かすと、金色の部分が動く。


「このダイヤルを見てほしい。中途半端な数字から始まっているのがわかるだろう?」


「0から始まるものもあれば、80から始まるものもありますね」


 チェリルさんに抱えられてるので遠くてダイヤルの文字が見えない。黄金音先輩が読みあげてくれて助かった。


「恐らくだが、このアストロラーベはこの大陸に限定して使われるように座標が設定されている。この三角形に合わせると大陸のサイズと等倍距離になるから、現在地の座標を逆算して測定できる。この大陸で実際に測定した座標を入力し、縮尺したいサイズの大陸の直径を入力すれば自動的に計算してくれるようになっている」


 スキーレさんはアストロラーベを黄金音先輩に渡す。


「その金のピンの位置を意識しながら、この円の中を動いてみたまえ。方位と中心の杖を頼りに動けばおおよその位置がわかるはずだ。正しい場所の付近まで行けば、上部にある水晶板にピンからの光が映ってないか? その光が水晶の中央部にある十字と重なる場所が座標の正確な位置となる」


 黄金音先輩がアストロラーベを持って移動していると、途中で動きが遅くなり微調節をしている動きに変わった。


「ここです」


「うん。そこが金色のピンで示した座標の位置だ。それを使えば、今より正確な地図が作れるかもしれないな」


 スキーレさんはアストロラーベの他の機能も説明をしてくれた。

 現在位置を座標で示す機能には、一度設定したら場所を移動しても今いる座標を自動で更新して表示する機能がある。もちろん、ストレージに入れたら時間も停止するため設定をやり直す必要があるけれど、収納しない限り洞窟に入っても位置の自動更新は行われるみたい。


「そうか、これが必要だったのか!」


 黄里先輩がアストロラーベを見つめながらちょっと大きな声を出したので、思わずそちらを見る。みんなが見ているのに気が付いたのかハッと気が付いて軽く謝ったあとに言葉をつづけた。


「中央の街の形状はこの世界の縮図に見えたから、龍の位置や王都の位置を探したのですが、障害物も多く距離もわからなくて特定できなかったんです。もしかしたら、実際の座標を調べたうえでこれを使えば全部わかるかもしれません」


 そういえばそんなことを言ってたような気がする。教会に話題がすぐに移ったから、そのあたりの話は飛ばしてたかも。


「それじゃあ、龍の座標の位置をあつめないとね」


「一応、各王都も集めるっすね」


 龍巡りは、もう少しやることが増えた感じになった。

 わかりにくい感じですが、アストロラーベに製図を補助する機能が追加された感じです。アストロラーベの回転盤のリート部分を、過去の茜は波のようだと思っていたようです。

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