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あちーぶ!  作者: キル
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『プラモワールド統合版』05

 翌日、レベッカさんの応援にプラモスタジアムまで蒼奈と一緒にやってきた。観戦は無料で、座席も自由座席だけど指定席も取れるらしい。萌黄先輩が指定席を取ったので、そちらへ移動。まだ先輩は来ていないかったけど、受け取った座席チケットを、座る座席に認証させて座る。テンポの良い音楽も流れていて、イベントって感じだ。

 周囲を見ると、やっぱりコスプレをしている人の割合が多い。


 そんな私たちも、今回は買ってもらったコスプレ衣装をしている。


 私は髪の長さを普段より長めに変更。髪の一部を耳の高さあたりまで編み込んで白と黒のリボンを付ける。白いシャツは襟が大きく丸くて、手首はひだ飾りをキュッと締めている。シャツの上に短めの黒いビスチェ。スカートは膝よりやや上の、総レースの黒いプリーツスカート。フリルのある白いショートソックスにリボン多めの黒くてソールの厚い靴。バトルポッド内では戦いやすくなるようにソールは薄くなるらしい。

 服としてのベースは可愛い感じなんだけど、首に光る電子部品のようなリングを装着。腕は左手首に丸くて大きめのブレスレットをつけ、もう片方が何やら包帯を巻いている。足は素足じゃなくてベージュのタイツを履いているんだけど、そのタイツが一定期間ごとに青い筋状の光を放っている


 何かのアニメで登場した人造人間のパイロットで、前期シリーズで一度壊れたけど、後期に修理されて復活した子らしい。最終的にはエネルギー切れで動かなくなるが、最後の直前にバーサーカーと化したこの子が主人公を追い詰めるシーンは見ものだとか。


 蒼奈の方は、青い髪をいつもより少し濃くして、前髪を伸ばし片目が髪にかかるようにする。頭にはは白いリボンのあるカチューシャ。服は、学生のような白いシャツに明るい茶色のジャケットで、赤いリボンを首元をにつける。スカートもリボンに合わせた赤系統のチェック柄で、ひざより少し上丈のプリーツスカート。黒いソックスに茶色のローファー。周囲に無害な静電気のような雷が常に輝いていなければ、普通の学生さんだ。


 この姿はリルダインの登場人物で、メインヒロインとは別の、ハーフペーネ。人気キャラだけど、悲惨な人生を送っているようで、ヒロインがハーフであることを恐れるようになったきっかけの少女のようだ。


 しばらく話をしていると、萌黄先輩もやってきた。今日の先輩は普通の白いワンピースだ。けど、日焼けをしないゲーム内で日傘を持っている姿を見ると、やっぱり何かのコスプレなんだろう。


「おはよう。ふたりとも早いね」


「「おはようございます」」


 先輩も座席チェックをして座る。

 予選はすべての試合が同時に進行するらしい。

 最初はフリー対戦で行われ、人数が減ってきたら白いバトルポッド、そして残った8人で中央の青いバトルポッドを使うようだ。


 時間を見ると、試合開始5分前。萌黄先輩が目の前に大きく画面を出してくれた。私と蒼奈にも画面共有がされているので、一緒に観戦できるけれど、他の人からはこの画面が見えないので、画面を大きく引き伸ばしても外の人の迷惑にはならない。


 レベッカさんのロボットは……片腕?

 よく見る人型ではあるけれど、腕が片方しかない。その片方の手は銃を持っている。胸のパーツが大きめで、腰がやや細く足の付け根が大きい女性的な形のロボットで、足のふくらはぎの部分が大きく広がっている。


「新作だね。思い切った構造してる」


「バランスとか大丈夫かな」


「バランスを必要としていないのかも」


 何にせよ、どう戦うのか楽しみにしていよう。


『……! ――さぁ! プラチナカップトーナメントの個人戦予選が開始だ! 全員準備は良いか!!!』


 先ほどから会場中で実況の人の声が響いている。その声に合わせて、観客も盛り上がっている。あんまり聞いてなかったけど、お祭り感があって楽しい。


『Plastic Model Battle!』

『Countdown!』


「「きた!」」


 私と蒼奈が同時に声を出した。


『5・4・3・2・1』

『Battle Begins!』


 倉庫からレベッカさんのロボットが外に飛び出した!

 そのまま、飛行タイプに変形! 腕が胴体を中心にグルリと周り、体の正面へ移動。腕は折りたたまれ、持っている銃を頭上に伸ばす。左腕があっただろう個所は、背中に回り、そこから細長い光が現れて、飛行機の先端部分のように尖った。腰の位置にある羽根が広がり、足はすこし畳まれて、ふくらはぎの広がった部分がロケットに。


 少し間を置いて、一気に飛行機が急加速!


「はやい! すごい早いよね!?」


「うん。ステージ全体が見えるからわかる。同じ飛行タイプの相手より2倍以上速い」


 一瞬で相手との距離が縮まる。相手と接触距離になる前には、飛行する軌道を上下や左右に揺らして変えているようだけれど……。


『Battle End!』

『Winner レベッカ!』


「「えええええ!」」


 どうなったの!? 一瞬で終わっちゃった。


 リプレイを確認。通過する瞬間、手にした銃が少し変形する。銃口の下から剣が飛び出し、さらにビームが剣がを覆う。そのまま通過と同時に相手を切り裂いて終わった。


「あんなにすぐ真っ二つにできるものなの?」


「接触直前、銃が変形したでしょ? アカネちゃんのミサイルもそうだけど、実体がある武器はビームより強い。銃から実体剣が飛び出して、それをビームでコーティングした剣に飛行速度を上乗せして、通過と同時に切ったんだよ」


「通過と同時って、難しいよね? すごい操作技術」


「だよねー、絶対難しいよ」


「それができるのがレベッカさんのすごいところだよね」


「それだけではないぞ!」


 後ろから声がかかる。この声は!


「ダリオさん! よくここがわかりましたね?」


 腕を組んだダリオさんが後ろに居た。前と見た目が変わっていない。

 座席を確認して「ちょっとまて、予約する」と言って座席を予約し、その後に座った。現地で予約して座れるんだね。


「場所はレベッカから聞いた。ふたりのプラモを見せてもらいたいからな!」


「あ、そういえば……はい、どうぞ」


 私と蒼奈がプラモデルを実体化して渡す。


「うむ、ありがとう。ところで隣のお嬢さんは?」


「あ、部活の先輩です。先輩、こちらレベッカさんの知り合いのダリオさんです」


 萌黄先輩とダリオさんが挨拶してる。先輩が驚いているから、ネームカードを受け取ったんだろう。


「よくできているな。初心者にも関わらず、丁寧に作っておる。次の課題はゲート処理だな。二度切り用のニッパーを用意して切る速度を落とすだけで白化がかなり解消されるぞ。白化専用の溶剤もあるから検討してみると良いな。基本のヤスリがけも覚えてもらわねばならん。だが、ヤスリの前に出来るところから予防するのがいいだろう。まず体験するところからだな。となると……」


 なんかまたスイッチが入ってる。話の半分以上わからない。


「ダリオさん。さっきの、それだけじゃないって何ですか?」


 蒼奈がプラモデルに夢中になってるダリオさんに質問すると、ダリオさんは気が付いたように顔を上げた。


「おお、そうだ。問題となるのは速度だ。普通に作ってもあの速度は出ない」


「PBCを複数入れたとかじゃないんですか?」


「濃度100%の液体に、まったく同じ濃度100%の液体を混ぜたところで変わらぬように、PBCを並べたとて性能は変わらん。使えるエネルギー量は増えるから、長距離移動は可能になるがな」


『Plastic Model Battle!』

『Countdown!』


「次が始まるぞ」


『5・4・3・2・1』

『Battle Begins!』


 レベッカさんはさっきと同じようにスタート。相手は地上に降りて木の中に潜んだ。


「飛行速度が生かせませんね」


「レベッカさんは『超光速の魔女』って言われててね。空だけじゃなくて地上戦も得意だよ」


 ふたつ名? レベッカさん、かなりすごい人なのか。


 相手の付近まで飛んで、地上に降りる。途中ロボット形態に変形した。


「今、相手が変な場所からビーム攻撃しませんでした?」


「あれはサテラね。サテライト兵器。本体から離れて移動や攻撃ができる小型の武器だよ」


「ガ〇ダムを履修すればわかるが、あれは〇ァンネルビットのようなものだ。使用者の意思で武装だけを飛ばし、好きな場所からひそかに攻撃できるぞ」


「ええ、ずるい! 撃ち放題じゃない」


「なに、PBCから離れた兵器など威力が低いから、けん制程度にしか使えん」


「相手は隠れてるけど、隠れる意味はあるの?」


「センサーはね、相手との間に90%遮蔽する何かがあったら反応しないんだ」


「その割には相手に真っすぐ突っ込んでるけど」


「サテラの位置から割り出したんだろう。有効範囲の限界は決まってるからな。不用意なサテラ攻撃は上級者には意味がないぞ」


 レベッカさんは歩くのではなく、地上を滑るようにして相手に接近する。歩くよりも何倍も速い!

 輝く黄色の膜を正面に出しながら、滑るように相手に接近するレベッカさん。


「あれはビームシ〇ルドだ。左腕の接続部分に盾を付けたんだろう。腕で持たずともあれで効果は十分果たせるから不要な左腕は外したんだな。その分PBCを節約して他に回せる」


 盾を前にし、銃を正面に構えながら相手に接近する。

 位置がばれた相手はその場から離れ、銃を撃ちながら後退。その攻撃を盾で防いだり、回避しながらレベッカさんが加速。相手に接触した頃には銃が剣に変わっていて相手の胴体に中央から突き刺さる。そのまま股下まで振り下ろした。

 それでも、切り裂かれた相手はそのまま動き出す。バトルポッドがまだ生きてるのか!


 直後にレベッカさんの背中へサテラの攻撃が直撃して、少しのけぞった。

 そこから急にレベッカさんは振り返り、攻撃したサテラを確認。手に持った銃を背中に背負い、サテラからの攻撃をビーム盾で防ぎながら、サテラを掴む。

 そのままレベッカさんは、足の噴射を全開にして相手のサテラを掴んだまま高速で移動する。どんどん移動して……。


『Battle End!』

『Winner レベッカ!』


「最後移動しただけだよね?」


「相手はサテラ内部にPBCを設定したんだろう。気が付いたのは終盤のサテラ攻撃だな。明らかに威力が違った。それで、サテラのPBCを他のPBCから分離することで稼働条件を満たせずに敗北だ」


「このあいだアオナと戦ったとき、腕のPBCを落とされて距離ができたけど、それとは違うの?」


「破壊による分離と、もともと分離するのとでは扱いが違う判定がされる。腕が壊されて本体と離れたPBCは、本体のPBCと接続が解除される。一方で分離してるPBCは接続状態のまま離れることで、同一プラモが複数ある判定になり敗北となる。」


 PBCの応用として、出力を落とす代わりに、効果範囲を広げる設定ができる。ただし、出力する方向を限定しても出力の強さや効果範囲の拡大にはならない。

 その効果範囲を広げればサテラを遠くまで動かすことも可能だけど、威力も低くなる。

 効果範囲を広げたPBCを直接サテラに乗せて移動したら、PBC同士のつながりでかなり遠く離れた場所まで離れることはできる。ただ、これも威力が弱くなる上に、注意しないと接続切れで負けてしまうため、かなり難しい。


「もともと分離するものが破壊された上で距離を取った場合はどうなるんですか?」


「破壊が優先だな。距離による制限はPBCが生きているときに限る」


「これ、かなりPBCに左右されるゲームだね」


「その一面もあるが、あくまでプラモのバトルだ。どれだけPBCを工夫しようが、プラモ本体の工夫が無ければ勝てはしない。レベッカの元機体は、人型と飛行型に変形するだけだったのを、回転式の腕やホバー移動ができるように改造して出来たものだからな。PBCだけではあの戦い方はできないぞ。まあ、レベッカはその枠をさらに超えた戦いをするのだが」


『Plastic Model Battle!』

『Countdown!』

『5・4・3・2・1』

『Battle Begins!』


 次のステージは宇宙だった。周囲に隠れられそうなのが少しもない。


「レベッカさんは、宇宙戦が一番強いよ」


「機体の性能を最も発揮しやすいからな」


「レベッカさん止まってる」


「もう少しだよ。見てて」


 しばらく飛行機のまま宇宙に漂っている。それが、しばらくしたら胴体部分が金色に光りだして、それが足の部分まで光が到達し、全体に輝きが広がる。


 それからは、とんでもない速度で相手に急接近した。マップ全体の半分以上は距離が離れていたのに、今は近づくどころか、相手の真後ろに居る。


『Battle End!』

『Winner レベッカ!』


「……強すぎない?」


「過去にプレイヤーの要望で運営による調査が入ったが、正式な運用と判断された。あれはだれでも再現可能な技術だと」


「宇宙要塞の内部や、洞窟戦が不得意だから、負けた試合ってマップによる能力低下が一番の原因なんだよ」


「確かに『超光速の魔女』って言われるはずだよね。魔法のような技術で光のように移動してる」


「およそ4倍速と言われているぞ。もし現実にあるならば生身の人間では耐えられないな」


 レベッカさんの戦闘があまりに速いので、他の試合が終わるまで待つ時間がかなりある。試合一覧を表示させて、蒼奈と一緒に見る。1画面に12試合が一度に動画で表示されていて、一定時間ごとに画面が別の試合に切り替わり、様々な試合をまんべんなくみられる。

 お互い格闘をしていたり、長距離狙撃で撃ちあったりと様々だ。猫ロボットで戦ってる人を探したけれど、誰もいなかった。


「戦車で出場してる人いた」


 蒼奈がその戦いを拡大をする。人型ロボットと戦車の戦いだ。

 ロボットがビームを撃つけれど、戦車が前に進んで回避した。後ろに逃げてたら当たっていたかもしれない。そのままロボットに近寄って、砲塔を振り回し足をすくって転倒させた。

 ロボットはフラッシュを使って、戦車の計器を使用不能にし、体勢を立て直す。

 そのとき、サングラスを掛けた戦車のパイロットが砲塔から顔を出した。そのまま、砲塔をロボットに向けて旋回し狙いを定めて攻撃。体勢を整える予定のロボットが、さらにダメージをうけて転倒。それから追撃の砲撃をつづけ、戦闘終了。


「パイロットって外に出られるの?」


「外に出られる設定にすればバトルポッドから出られるけど、出た瞬間バトルポッドの位置がばれるからおすすめはしないかな」


「そっか。弱点をさらすわけだからね」


 その後、白いバトルポッドに移っての予選になったけど、2試合連続でレベッカさんが圧勝。ベスト8まで勝ち進んだ。


「すごかった。ずっと圧勝だったよ」


「うん。どの戦いも圧倒的なスピードで制してた」


 予選ともいえる試合はこれで全て完了した。この後の3位決定戦を含めた合計8試合は、真ん中の青いバトルポッドで試合することになる。


 あ、レベッカさんが居る。でも、サイン希望者のファンに囲まれてる。


「すごい人気だね」


「うん。でもわかる。圧倒的な強さだからね」


 他の選手の試合は、レベッカさんの試合が終わってから見てた。つまり、他の試合を見る時間がとれるほどの速さで勝利するレベッカさんは圧倒的にすごいと思う。


「おーい! レベッカー!」


 そんな中、ファンに囲まれてる状況もお構いなしにダリオさんが大声でレベッカさんを呼ぶ。

 レベッカさんも、こちらに手を振って、しばらくしたら人の山の中からこっちへ移動してきた。


「助かるわ。移動したかったけど無下にもできなかったのよ」


「ま、いつものことだからな。今回の機体も調子よさそうじゃないか」


「ええ、まだ一番の見どころは見せてないのだけどね」


「おいおい、まだあるのか。さすがだな」


 レベッカさんが後ろの席に座ったので、私たちも後ろを向く。


「試合すごかったです! びっくりしました!」


「強かったです。操縦技術もどうやってるかわからないくらいでした」


「ふたりともありがとう、それと、服似合ってるわよ。モエギちゃんもね。ありがとう、助かるわ」


「いえ、私は見てただけですし、ふたりとも後輩ですから」


 あ、レベッカさんが萌黄先輩に私たちのこと頼んだのかな。そういえば席とか開始時間とか色々教えてくれてた。


「それで、ふたりとも何か気が付いたことがあった?」


 レベッカさんがシーポンを操作して手元にドリンクを取り出し、ストローで飲みだす。ダリオさんが「おお、あの作品のドリンク」とつぶやいてたりする。


「はい。あれだけスピードがあっても、決着は接近戦の実体武器が多かったです」


「バトルポッドの被弾による決着より、全体の損傷のが影響が大きいのがわかりました」


 レベッカさんが、ドリンクを両手で持ちながら頷く。今日のレベッカさんは、体にぴったりとした、ダイビングスーツのような、それよりちょっと分厚い服を着ている。体のラインがはっきりわかりすぎて、もし私が着るってなるとためらうかな。ただ、似たような服を会場でよく見かけるので、ここでは着ても注目されるような服じゃないのかも。


「良いところ見てるわね。実体弾、あるいは実体剣を持った方が決着はつきやすいわね。ビームのエネルギー切れは、PBCの時間経過による回復で元に戻るから便利だけど、威力が思うほどでないのよ。あと、バトルポッドは見つかったら良いって感覚で戦った方がいいわ。ヒントの少ない推理みたいなものだからね。逆転のために探して狙うって考える時点で、相手は格上だから油断は誘えないのよ」


 他にも、サテラの距離感やどの程度のビームなら無視できそうかなどを聞いた。


「そういえば、金色のすごかったです!」


「うん。すごくきれいだった」


「ありがとう。残念だけどあれを公表するのは運営会社に禁じられてるの。プレイヤーの探求の結果見つけてほしいってね。公表済みなのは、名称が『ゴールドモード』なのと、あの金色の光がPBCの金色の光ってだけね」


「あ、確かにPBCって金色のパーツだ」


「パーツが漏れ出てるのかな? わからないね」


 蒼奈が考え出したけど、わからないものはわからない。


「次の試合まで1時間の休憩よ。最後の試合に勝ってからすぐログアウトして向こうでも休憩したから、あとはこっちでのんびりできるわ」


 実際の時間で午前9時に試合開始。こっちで2時間経ったけど、実質まだ午前10時。まだ時間はたっぷりある。


「それじゃあ、5人で食事でも行くぞ! お金なら心配しなくていいからな!」


「若い子たくさん引き連れてお食事? 会長さんもやるわね」


「いやいや、若い子にはたくさん食べてもらいたいからな!」


「データだけどね。まぁ、ちょうどいい休憩になるわね」


 お食事? お金の心配ない?


「いただきます!」


「ごちそうになります」


「私も? ありがとうございます」


 その後、スタジアム内のフードコートに移動。せっかくなのでおいしそうなイチゴパフェを注文。このパフェのイチゴジャム、ジャムなのにイチゴの形が残ってておいしそう。

 蒼奈は、チョコパフェ、萌黄先輩は、あんみつ。レベッカさんは、クリームの乗ったプリンで、ダリオさんは、チーズケーキ。ドリンクはみんなコーヒーだけど、ミルクや砂糖の有無はバラバラだ。

 甘いパフェにコーヒーで味覚をリセット。砂糖は入れてるけど苦味が残ってるからちょうどいい。


「お互いベスト8まで残ったな『超光速の魔女』」


 みんなでデザートを楽しんでいると、目を覆った仮面に、白いヘルメットをかぶり、赤い軍服っぽい服装に、短いマントを身に着けた男の人が現れて、レベッカさんに声をかけた。


「あら、『白い閃光』さん。ええ、今度こそあなたと戦うのを楽しみにしているわ」


「地形の運で優勝をかすめ取った言われるのは癪に障るのでな。ぜひとも1戦交えたいものだ」


 何やら因縁がある感じ。ライバル的な何かなのかな?

 ダリオさんとも挨拶しているし、3人とも知り合いなんだね。


「先輩、あの方知ってますか?」


「うん。前回の優勝者だよ。レベッカさんは、彼と戦う前の試合で極端に狭い洞窟と水中のステージで負けちゃったから」


 それで、運とか、かすめ取るって話なのか。でも実力で優勝したのも確かなんだし、すごいと思う。

 レベッカさん達としばらく話をした後に、仮面の男がこちらを向く。


「失礼。お嬢さん達3人には退屈な話だったかな? こちらを差し上げよう。美しい花の水転写式デカールだ。登録をすれば現実にも配送される」


 テーブルにスッと3枚出されたのはシールだ。多分プラモデルに関係するんだろう。


「あら、私にはないの?」


「敵に塩を送る余裕はないものでね。私が優勝したら送らせてもらおう」


「いらないわ。届かない贈り物なんて期待できないもの」


「同感だ。クリスマスプレゼントを待つだけにはなりたくないものだな」


「ええ、欲しいものは自分から手に入れる主義なの」


「良い心がけだ。この後の試合も期待できる――では、後ほど」


 仮面の人はサッと背中を向け、片手を軽く振って去っていった。

 シープで食事をしても現実の空腹や飢餓感は解消されません。現実での間食を制限できるためダイエットに使えますが、基本寝ているシープの環境では現実の食事量を調整しないとダイエットできません。そのために、現実の空腹を無視してログインを行っても制限がかかります。(ep7後書き)

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