『テラパレット』11
ギンガ:zzz
アカネ:zzz
アオナ:zzz
チャコ:zzz
コガネ:ごめんwww すぐ寝るからwww
ゲーム内の自分の家で作業していたコガネは、すぐにベッドにもぐりこんだ。その後、すぐに朝になったけれどそのままログアウト。
「さすがに1年生の初ログインは邪魔できないよね。とはいえ、テラパの気分だったんだよね。……よし!」
再度テラパレットにログイン。部活の校内ローカルサーバーではなく個人のストレージにマップを新規作成する。
キャラクター制作は、小学生頃の自分のデータを引き出す。パブリックではない限り自分の過去のデータを自由に使える。
多少の容姿変更も可能だが、今回は誰かに見せることもないので、そのまま変更することなく開始。
黄金音はひとり、テラパレットの初期地点でログイン。必ず海岸が初期地点だけれど、マップそのものはランダム生成される。
黄金音は海に向けて走り、海岸に到着したら海岸線を進む。途中で船を見つけた。
「船の座標チェックヨシ」
座標確認して通過。
先へ進むと川を発見し、そのまま川を遡上する。川沿いを進む途中で、目当てのキノコを発見したから回収。
ほどなくして寂れた村を発見。村は川沿いに生成される確率が高いけど絶対ではないのでホッとした。村に入りそれぞれの家を物色する。
「ワールド生成直後の日中は、ゴブリンが来ないから助かるー」
村で小麦の束を大量に発見。それぞれの家の裏にある薪は、木材素材として使える。布団を集めて、その中のひとつを糸に解体し、木材素材と組み合わせて弓を作る。作業台や石窯は村の家に設置されているのでそれを利用する。
家の裏にはかつて飼っていただろう鳥の羽があるので、それも回収して矢を5本作る。
小麦からパンを7つ作り、布団の布で袋を大小ふたつ作った。余った小麦や布団は長いロープ2本に変える。
生産によってレベルがふたつ上がったので、知力を+2。
作ったものを持ち運びながら村を散策。扉だけ壊れている家を発見し、扉を修理。これで今日の宿は決定。
その後も散策し、古い鉄の剣と新品に近いナイフを発見。それぞれ回収。
倉庫を見つけたので、入口の閂を触る。閂だけじゃなく鍵がかかっているので、倉庫の中は見れない。壊せば開くが、高い確率で食糧庫なので労力に見合わない。
探していた魔術師の家を発見したので、錬金釜とガラス瓶を持ち出して今日の宿へと運ぶ。錬金釜は重いので、転がして移動させた。作業台や石窯も宿に運んだところで、暗くなってきたので後はその辺にある薪を沢山拾って家に入る。
錬金釜にガラス瓶とキノコを組み合わせてスタンポーション完成。錬金釜を使用する最低知力は3なので、ギリギリ要件を満たしているが、質はお察し。スタン成功率が下がるが、今回はそれでも問題ない。
使い終わった錬金釜を解体する。解体に時間はかかるけど、鉄ブロックが複数手に入る。
「素材の量を増やすとツルハシのサイズ大きくできるんだよね」
鉄ブロック全てと薪を組み合わせて大きな鉄のツルハシをふたつ作った。柄の長さも長く、胸の高さまであるので、普通の採掘には向かないけれど、これが必要になる。
家の外が暗くなったので、ゴブリンが来ている。もちろん、家を修理しているので、この部屋には入ってこれない。
家の中を改めて見ると、樽に使われている金属パーツが見つかったので、それを石窯で溶かし、古い剣と組み合わせて切れ味を取り戻す。
小さい袋にはパン5個とロープ2本、木材ひとつを詰め込む。大きい袋には、残りの木材とパンを詰め込んだ。鉄の剣と弓矢は袋に入れず、ツルハシのふたつは大きい袋と並ぶように置いた。
そろそろ夜が明けそうなので、荷物を詰め込んだ小さい袋、剣、弓矢を持つ。外にゴブリンが居ないことを確認して、家を出る。地面にはゴブリンの足跡があるので、それを追跡していくと、ゴブリンの拠点を発見。
その場所から離れた位置を探索すると、裏口を発見した。ゴブリンシーフが居るので、後ろからこっそり近づいてパンを投げる。それに釣られたゴブリンシーフに一気に近寄り後ろから刺して倒す。
「さすがに、まだ不意を突かないと倒せない」
ドロップした紙を開き、ゴブリンリーダーの拠点を攻略するクエストを受注。そのまま裏口へと入る。入ってすぐの壁面に生えた光る苔を食べる。味は苦くておいしくないけれど、しばらく暗視効果がある。
裏口を進むと、下の穴が見つかるので、一度止まる。残りのパン4つのうち、1つはこの場で食べ、残り3つを穴の中に投げ入れる。下に居たゴブリンはパンに夢中で、穴を通過した黄金音には気が付かなかった。
通路を進むと、広間に出る。ほとんどのゴブリンは寝ているので、そのまま広間に出て隠れながら進み、広間に出る正規ルートの入口から洞窟を戻る。
分かれ道で折れ曲がり、何もない小部屋を通過して進むと地面に亀裂の入った場所にたどり着く。
「さっきの小部屋、未成年には関係ないんだけど、あの子たち気になるかな?」
亀裂の中を確認し、目標近くの岩にロープを括りつけ、ロープを垂らして下に降り鍵を拾う。
上へ戻り、ロープを引き上げ、先端に矢を結ぶ。その矢を弓に番え、狙いを探す。二つの大きな岩に挟まれたわずかな空間。そこへ矢を放つ。その後ロープを引っ張るとロープと矢がT字になり、両岩に挟まって抜けなくなった。
こちらとあちらの岩に挟まれたロープのたるみを張って、そのままロープにぶら下がり進む。
「子どものころ公園にあった遊具を思い出す」
小柄な体型のキャラクターにしてあるので同様に体重も軽く、結果、矢が壊れることなく亀裂の反対側へと渡ることができた。
鍵を使い、裏口を開け、入口に向かい薪を取り出して閂を扉に生成して塞ぐ。対策をしておかないと、ゴブリンリーダーにダメージが入った時点で外のゴブリン達が入ってくる。ただし、裏口は無関係。
2階へ上がり、別々の部屋で寝ているゴブリンメイジ2体をこっそり倒し、杖を回収。寝ている隙に、最初は口を狙って攻撃すれば魔法が使えなくなるので、杖はそのあとの回収が効率的。
ここまでの戦闘や生産でレベルが4つあがっているので、筋力に2、技術に2を振る。これで全ステータスが3になったため、【クリティカル】のスキルが表示されたので取得。効果は低確率で防御無視攻撃に加え、レベルに応じたダメージ上昇。
1階へ戻り、寝ているゴブリンリーダーに向けてスタンポーションを飲ませる。ポーションになるとスタンの成功率は下がるが、寝ている間に使うと成功率100%になる。また、普通はスタンポーションは相手に振りかけて効果が10秒だが、飲ませた場合はキノコを食べさせた場合の30秒との間、20秒に効果時間が延びる。
スタン状態の相手を狙うとクリティカル率が上昇し、弱点部位を狙うとさらにクリティカル率が上昇する。
それを踏まえて、鉄の剣で足の両スネを攻撃。片足にクリティカルが入った。足が真っ赤になったので首を狙って2回攻撃したところでスタンの効果が切れたのか、動き出した。しかし足が使えないので立ち上がれず前に倒れたところに、首の後ろ側を狙って再度攻撃。4撃目でクリティカルが入りゴブリンリーダーを倒した。
ドロップアイテムで鉄の剣が出たので今の剣と交換。本はここに放置。コインは回収。ゴブリンリーダーが寝ていた場所を調べ、隠し通路を開く。そのまま中へ進み階段を1段飛ばしで降りていく。ゴブリン拠点で罠のある階段は偶数固定なので、そのまま罠を回避して下層へ到達。
現れたゴブリンゴーストを杖のファイア3回で倒し、初回確定ドロップのファントムポーションを獲得。効果は幻覚作用だが、睡眠状態の相手には一定時間の昏睡状態を付与する。
奥に見えるゴブリンキングは、太っている巨体で巨大な椅子に座っている。立ち上がると4メートルにも達する。
そのゴブリンキングの近くへ到達する前に、壁を登りゴブリンキングの上側面へと移動。
ゴブリンキングの頭上にある、ゴシック建築のようなアーチ状の天井の隙間に矢を放つ。矢を引っ掛かけて、ロープにぶら下がれそうな強度を確認した後にぶら下がり、一気に上へ登って天井に足を引っかけ逆さになる。
矢で引っ掛かったロープにぶら下がり続けると、矢の耐久が耐え切れずに、ロープごと落下しかねないので、ロープを屋根の頑丈な部分に結びなおす。矢は、外す手間を短縮するために折って天井の梁の上に置き捨てる。結びなおしたロープを使って、下へ移動すると、ゴブリンキングの数メートル上に到達。
寝ているゴブリンキングにファントムポーションをかけて昏睡状態にする。その隙にゴブリンキングの頭にある王冠を奪う。昏睡状態のゴブリンキングは、胴体の上に乗っても目覚める様子もなく、地面まで無事に降りた。そのまま来た道を逃走する。階段を1段飛ばしで駆け上がり、ゴブリンリーダーの家を走り抜け、崖のロープに到達。
今いる側のロープから矢を剣で壊して外し、体に巻き付けてそのまま崖へ飛び下りる。対岸側の崖の下に降りれたので、登ってロープを回収。
広間から連絡通路を通ってそのまま裏口を使い外へ駆け抜ける。
廃村まで戻り、大きい袋とツルハシを持って海岸の船の場所へ移動。座標確認をしたので、最短距離で向かう。到着後、袋に詰め込んだ木の材料で船を修理。船の中にあるアイテムをすべて外に出し、ゴブリンキングの王冠を船の上に置いてそのまま船ごと海へ流す。すると、謎の渦巻きが海に発生し、船が巻き込まれ沈んだ後に、謎の黒いポータルが出現。
「王冠持って海に入ったら、潜水スキルが無い限り全ロスなんだよなぁ」
その間、大きい袋から残りの木材とパンを1つ取り出し、小さい袋を大きい袋に詰め込んだ。
レベルも上がっているので、ステータスを均等に割り振る。HP、MP、SPは上げない。
荷物を持ってポータルへ侵入。出たところは険しい山だった。周囲を見渡し、崖を発見してそちらに向かう。崖の周辺は草木も生えておらず、崖の下は真っ暗で、落下したら助からなさそうなのを確認して、ここから進むことに決めた。
危惧していたポータルを抜けた直後の敵の襲撃はなかったので、気をそらすために用意したパンを食べる。襲撃がなかったので、パンが1つ余ったけど邪魔にはならないからそのまま持ち運ぶ。
これから手持ちで移動するのは、ツルハシふたつと弓と矢を3本とロープ。ツルハシをロープに結び付け、落下防止に備える。ロープは長いので、先端1メートル程度の幅でツルハシ同士をつなぎ、残りのロープは束ねて体に巻き付ける。
大きい袋は、黄金音の体に巻き付くように結びつけ、剣をそこへ差し込んだ。
その場所から、ツルハシを使って崖の垂直な部分を横に移動する。ツルハシにぶら下がるのではなく、ツルハシを足元の壁面に刺し、それを足場のようにしてツルハシを進行方向へ交互に突き刺し、上を歩くように進む。小柄な体型と大きめのツルハシだからこそ出来る移動方法だ。鉄のツルハシなので、耐久力や貫通力にも優れている。
飛行タイプの魔物は、この辺りにはいない。草木がある森林であれば出てくるが、そうでないのを確認したので、空からの襲撃で落ちることはない。
また、この辺りを住処とする鹿タイプの魔物も、崖から落ちたら真っ暗な闇の中へと落ちるこちら側へは来ない。そのため、魔物の攻撃を気にすることなく進むことができる。
しばらく進むと、崖と平地の境目のあたりに、豪華な箱が置いてあった。見た目は宝箱だが、ミミックだ。この地域のミミックはレベル60~70。このあたりの地域が推奨レベル50だと考えるとかなり強力だ。
ツルハシを使い体勢を整え、ロープのツルハシを結んだ反対側に矢に結び付け、弓に矢を番えて矢を放つ。ミミックに中ったが、ダメージは無い。それでも、ロープで矢を回収して同じことを繰り返す。
通常のダンジョンなどでは、狭い通路にミミックがあるため、ミミックの索敵範囲に入ってしまうのが普通だが、この場所は高さも距離もあるので、攻撃されることもなく攻撃を続けられる。
そのうえで、索敵範囲外からの攻撃はすべて不意打ち判定が入っているので、クリティカル率も上昇。クリティカルの防御無視がレベル差を無視してダメージを与えられるため、それを期待して何度も攻撃を続ける。
「ここが鬼門。運がいいと10分だけど……」
無機物からなる魔物には自動回復はない。それを踏まえて、ミミックを攻撃すること30分、2本目の矢も交換するべきかと思うタイミングでミミックが消滅。近寄ってドロップアイテムを確認。金と銀、それにいくつかの宝石とブーツが入手できた。
格上を倒したため極端にレベルが上昇する。ステータスをすべて10に上げると【アイテムボックス】スキルが出てきたので、使わないアイテムはすべてそこに入れる。重量もサイズも無視できるけれど、収納量は少ない。【鑑定】スキルを取得し、ブーツを鑑定。呪いが無いのを確認して装備する。2歩だけ空中歩行ができるブーツだったので、これで落下することは無くなった。
崖を登り、上から周辺を見渡すと、しばらく進んだ先の崖のふもとに煙が昇っているのを確認。それを目指して移動を開始する。
10分後、煙の場所へ到着。今は使われていない廃村だ。廃村の中央には、魔物除けの無限炎が立ち上っている。先ほどの煙はこれだ。最も、修理をしないと正しく効果を発揮しないので、今はただ周りを明るくしているだけだ。
廃村で状態のいい家を見つけ、補修が必要な場所は他の家から剝ぎ取って直し、拠点を構築。村の中にある自販機のような箱の中にコインを入れると携帯食料が10日分でてきた。運が悪い。手持ちのコインあと2枚を使い、1枚はプラスチックのコイン入れ。もう1枚は固形燃料F(小型宇宙船 Fタンク専用)だった。目的のものが出なかったので、さっき出た銀をコインに変える必要がある。それもダメなら金を。とはいえ、まだすぐ必要とはしないから後日で良い。
今日のところは、そのまま拠点へ戻ってログアウトした。
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「あ、黄金音先輩、クッキー食べます?」
ログアウトして部室の談話室に入ると、黄里と紫帆の2年生組がくつろいでいた。机の上には3人分の湯呑と、皿の上にかわいらしいレースのペーパーを乗せて、その上に様々な形のクッキーが並べられている。湯呑が多い……蜜柑ちゃんも来てるのかな?
「ありがとう、いただくね。……黄里ちゃんがつくったの?」
椅子に座ってから、ティッシュを机の上に広げ皿代わりにして、四角いクッキーを一枚手に取る。
「はい。紫帆と一緒に遊んでる『クッキーショップSIN』ってゲームの影響です。実際には紫帆に教えてもらいながら作りました」
……あのゲーム、チョコチップを黒胡椒に変えたクッキーや、イチゴジャムに見える激辛唐辛子ジャムを客に提供するんだけど、大丈夫だよね、これ。
「確率は1/30です」
「さらっと、とんでもないもの薦めるね」
こっそりつぶやく紫帆に戦慄する。黄里は普段通りの顔をしてるから――紫帆、盛った?
……見てても始まらないので、意を決して食べる。パクリ……甘い。
「うん、すごく美味しい。バターの香りがいいね。サクサクしてる食感も噛んで楽しい」
「ありがとうございます。無事に焼けてホッとしました」
「黄金音先輩、お茶でよろしかったですか?」
紫帆が急須を引き寄せながら確認をしてきた。確かに、何か飲みたいな。
「うん。あ、いいよ自分で湯呑持ってくる」
紫帆が立ち上がったのをとどめ、ティッシュの上にクッキーを置いて、部室のキッチンに向かう。そのとき、奥の部屋からバタバタと音がして1年生がやってきた。
「休憩ー!」
「あ、黄金音先輩。さっきはありがとうございました」
勢いよく入ってきた銀華の後に続いて蒼奈。その後ろから残りのふたりもやってきた。
「「「ありがとうございました」」」
「いいよ、寝てなかったこっちも悪かったから。それより、進んだ?」
「はい! 鉄を見つけたり、かわいい羊さんを見つけたりしました!」
「服が作れるといいよね~」
「装備素材って石からいきなり鉄になるんですね。銅とか青銅はないんですか?」
「道具の素材としてはあるけど、武器や防具のメイン素材としては使われないかな。銅を加工して金属装備の模様に使うことは出来るけど、防御力の底上げには使われないよ」
ふむふむと頷く蒼奈。
未黒のお気に入りが茜だとすると、私のお気に入りは蒼奈かな? ゲームでもよく考え真剣になるタイプで、それが見ててかわいいので応援したくなる。もちろん、後輩は全員かわいい。銀華も含めて。
「クッキーだ!」
「お、銀華ちゃん食べる?」
「うん!」
「じゃあ、好きなのどうぞ。他のみんなも。2枚でも3枚でもいいからね」
「黄里が作ったのよ」
「すごい!」
「いや、紫帆に教えてもらったから作れたんだからね?」
「黄里先輩、いただきます!」
「「「いただきます!」」」
あぁ、無邪気にあんな笑顔でパクパクと……。あ、ゲームの名前聞いたら蒼奈と茶子がむせた。
うん、時間もあるし、一緒に食べながらお話しよう。当たったら、それも含めてきっと楽しいよね。
先輩達が干渉することなく見守るのは、効率プレイではない楽しみを味わってほしいからです。
『テラパレット』、いったんこれで終了です。




