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あちーぶ!  作者: キル
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『テラパレット』10

 1階の入口側、真ん中の部屋へ通じる扉の前に来た。部屋の中からゴブリンリーダーが出てくる様子はない。土台で扉が開かないようにした扉はというと、外のゴブリンが扉を叩いて入ろうとしている。こっち側から外に出るのは難しそうだ。


アオナ:スタミナは回復しておこう。

チャコ:1回でも多くスキル使える方がいいよね~。


 蒼奈はゴブリンの杖を受け取り、それぞれ戦闘の準備ができた。この杖、1日1回だけMP消費無しでファイアが使え、その後はMPを消費すればファイアが使えるようだ。ただ、さっきゴブリンメイジが1日1回を使ったので、今はMPを消費しないと使えないみたい。

 蒼奈の今のMPは自動回復して万全。とはいえ、蒼奈の最初の役割は松明係。さっきちらっと下を見たけど、薄明りで暗かったから、松明をいくつか地面に設置して見やすくする。


アオナ:開けるね。3、2、1、0!


 私と銀華が真っ先に駆け込む。銀華は、さっき下に降りたゴブリンメイジを優先して攻撃する。

 そのゴブリンメイジは……いた、ゴブリンリーダーの右奥! 銀華一人ではゴブリンメイジにたどり着けなさそうなので、並走して支援する!


 銀華がゴブリンリーダーの横を駆け抜けられるようにするため、銀華とゴブリンリーダーの間に入る。普通のゴブリンと比べ、ゴブリンリーダーは体が大きく背が高い。今まで戦ってきたゴブリンは、私たちより背が同じか低かったけど、ゴブリンリーダーは私たちよりも高い。

 そのゴブリンリーダーが私に向けて、剣を振るってきた! え、横薙ぎ!?


 グザッ!!


 やばい! 胴体に直撃!! 縦攻撃と思って油断した!


「アカネ!」


 体を見るとおなかが真っ赤だ。体の動きも鈍くなってて、ここから離れにくくなってる。ゴブリンリーダーを見ると、次の攻撃体勢に入ってる。攻撃方向は……また横薙ぎ!


 【パリィ】


 偶然盾を持っている方向からの攻撃だったから、そのまま合わせてパリィを使って、なんとかしのいだ。ゴブリンリーダーの体勢が少し崩れたので、その隙に離れよう。赤ポーションを取り出しながら、後ろに下がると、茶子の矢がゴブリンリーダーの胸へと向かったのが見えたが、皮の鎧の効果か赤いダメージ判定は少ししか広がらなかった。


 ゴブリンリーダーが腕を横に広げて……魔法!? 盾が腕に結び付けられているから盾側の手を使って魔法が使えるのか! 狙いは――銀華!


「ギンガ後ろ!」


「【ヒール】」


 ポーションを使う前に蒼奈からヒールが飛んできた! これで動ける! せめて腕への攻撃!


「にゃああああ!」


 腕ではなく、盾に当たった。それでも、狙いがずれて銀華の手前の地面に着弾した。銀華も、ちらっとこっちを見て横にずれる回避行動をしたからこそ回避できた。避けてなければ当たっていた。


 胴体のダメージ色が黄色になったおかげで、体の動きも問題なくなった。改めて構えなおして正面に立つが、銀華が来るまで防御に専念した方がいいんじゃないかな。


 そう思っていると、今度は剣を縦に振るってきた! 行動速度速い!


 急いだから盾は間に合ったものの、パリィは使えなかったので、そのまま剣を盾で受け止めると、バキッとまた盾の音が鳴った。攻撃を防ぐことはできたけど、盾が壊れそう。


 再度剣を振り上げるゴブリンリーダーに、今度は後ろにさがって距離を取る。すると、振り下ろすのを止め、突きの体制に移るゴブリンリーダー。難易度かなり上がってる!


 【パリィ】


 突き攻撃を、なんとかパリィで防ぐ。パリィで防ぐと、盾の耐久がそこまで減らないのか、衝撃の割には盾から音が鳴らなかった。

 今度はこちらから攻撃、と思って剣を構えたが、ゴブリンリーダーは後ろに下がって距離を取った。そして魔法を発動させる。魔法ってパリィできるのかな!?


 ファイアが飛んでくると思って身構えたが、何もなかった。そのかわり、ゴブリンリーダーの腕が青く光っている。


「青色は強化魔法!」


 蒼奈の説明を聞いて、今まで以上の動きで来るんだと身構える。確実に防がなきゃ。


 茶子の矢が何本も刺さっているけれど、それを気にする素振りの無いゴブリンリーダー。鎧をよけて攻撃しているおかげで、腕や足は一部が黄色いダメージになっているけれど、倒れる様子はない。

 蒼奈は銀華の手助けに向かった。あちらも、さっきから魔法の音がドカンドカン鳴っている。視界の端に、蒼奈がファイアを使っている姿が見えた。


 ゴブリンリーダーが、剣を横薙ぎに振るってきた! 盾を横に向けて【パリィ】! 攻撃はうまく弾く。けれど、弾かれた体勢を利用してゴブリンリーダーが剣を突きの構えに変えた。やばい!


 そのまま左肩を貫かれ、盾を持つ左腕が上がらなくなる。

 茶子が慌てて、左肩に赤ポーションを降り注いだけど、赤色からは治らない。それでも、全く動かない状態から、バランスを取る程度には動かすことができるようになった。


「メイジ倒した!」


 奥から、蒼奈と銀華が走ってきた。蒼奈が盾を持っておらず、銀華が持っている盾が蒼奈の盾だ。ゴブリンメイジ戦で壊れたんだろう。銀華はそのままゴブリンリーダーに向けて盾を構えている。


「アオナ~! ヒール~!」


 茶子が私に指さして、蒼奈にヒールを頼んだ。茶子が防御に回り、蒼奈がこちらにたどり着いた。


「【ヒール】……完全復活は5分後だって」


 蒼奈は申し訳なさそうな感じで言うが、腕が赤色から黄色に治った。なんとか盾も構えられそうだ。追加で蒼奈から緑ポーションを貰ってSP10回復。パリィ3回で消費9だったから、1点もったいないけど使えるときに使わないとね。


「ありがとアオナ。ギンガ! 防御するからよろしく!」


 防御に専念している銀華と位置を入れ替わる。銀華の腕が黄色くダメージを受けているし、持っている盾も蒼奈から受け取ったばかりなのに、折れ曲がっていた。パリィの有無は大きいみたい。


 私はパリィが確実にできるよう、剣を持つ手も盾を持ち、動かしにくい左腕をサポートする。


「ギンガ! カバンおろして!」


 蒼奈が銀華に指示をする。運搬スキルで小さくなってたナップサックが地面に置かれると、元のサイズに戻された。木材を消費したから中身が減っているが、それでもまだいろいろ入っている。何か使いたいものがあるんだろう。


 ゴブリンリーダーが私に近寄って、剣を振り上げて縦攻撃をしてくる。両手で持った盾を動きに合わせて【パリィ】を使う。そして、盾が切られた。パリィの効果はあったようで、体勢を崩しているけれど、盾が壊されるとは思わなかった。


「アカネ、これ~!」


 茶子の盾が地面を滑るようにこっち向かってきたので、足で踏んで止め、すぐさま拾い上げた。

 ゴブリンリーダーが体勢を崩した隙に、足を攻撃した銀華が近寄ってきた。


「攻撃力がすごいな!」


「パリィがないと無理!」


 銀華の言葉に頷き答えた。さっきまでの攻撃力とかなり違う。強化魔法はかなり脅威だ。けど攻撃速度が上がってないのはよかった。これで速度があがってたらパリィのタイミングがつかめない。


 そのまま、ゴブリンリーダーが距離を取り、左手をこちらへ向けてファイアを発動。やばい、パリィで防げないのに!


 そのファイアが放たれる直前、別のところからファイアが飛んできてゴブリンリーダーの腕を弾き、こちらに向かってくる予定のファイアの軌道がそれた。ちらりと見たら、蒼奈が杖を向けていた。ナイス!


 銀華と一緒にゴブリンリーダーとの距離を詰める。私がゴブリンリーダーの盾を持つ左手を上から振り下ろして攻撃するが、盾をかざしたリーダーに攻撃を止められる。

 その左腕を狙って、銀華が【強打】で振り上げるように攻撃! 矢の攻撃とさっきのファイア、加えて今の強打のおかげで、ゴブリンリーダーの左腕が真っ黄色になった! 


「ギンガ! さっき防御してたときどんな攻撃受けた?」


 今の魔法攻撃で気になったことを聞いた。


「ファイアと縦攻撃!」


アオナ:横、横、魔法、縦、突、魔法、横、突、魔法、縦、縦、魔法。


 考えたことをそのまま文字表示してくれるので、こういう時はチャットがすごく便利。


アオナ:次の2回横か突き! その後魔法!

ギンガ:! わかった!


 ゴブリンに言葉が通じるとは思わないけど、念のためチャットで送った。突きになる理由はわからないけど、攻撃2回の後魔法を使うのは確定だ。


 一応、縦攻撃の可能性も含めて防御はしていたけれど、予想通り横から剣を振ってきた! 方向さえわかれば、余裕をもって防御できる! 【パリィ】! 

 銀華も防御のタイミングに合わせて、今度は右手を攻撃する。ダメージは通ったようで、腕の半分が黄色くなってる!


 ゴブリンリーダーは一歩後ろに引き、剣を突く体勢に入る。どこを狙ってくるか……顔!?


【パリィ】 


 あぶない! あれが当たったら倒されてた! 突きで前に出てきたゴブリンはまた後ろにさがり、ファイアの準備をする。狙いは――蒼奈!

 狙いがわかった瞬間、私と銀華が剣でゴブリンの腕を攻撃する体勢に入った。それを待っていたのか、ファイアの狙いがこっちに向いた! 


 ドゴォン!!


 蒼奈の放ったファイアがゴブリンリーダーの胴体に命中し、ゴブリンリーダーのファイアが銀華に命中した!


「ギンガ!」


「【ヒール】」


 一瞬、真っ赤になって倒れた銀華の胴体が、黄色に変わった。蒼奈はそのまま、赤ポーションを銀華に使い、なんとか銀華が立ち上がった。


「ありが、と」


「ギンガは呼吸整えて」


 蒼奈が銀華を支えながら立たせ下がらせる。さすがにこの場所は危険だから無理にでも離れないとね。


アオナ:もうMP1しかないからヒールできない。

アカネ:わかったー。


 縦の攻撃! 【パリィ】! よし、縦横の順番は正解っぽい。


アオナ:次は突き。

アカネ:わかるんだ!

ギンガ:復活!

アオナ:突きを防いだらアオナはこっち来て。ギンガは魔法を使いだしてから左腕を強打。


 突きを警戒していると、言った通り突きの体勢を取って攻撃してきた!【パリィ】! いつもはこのタイミングで銀華が攻撃をするが、今回は少し待つ。

 アオナの所まで下がると、緑ポーションを渡されたので使用する。


アオナ:チャコの攻撃後、これをゴブリンに使って。


 これって! 確かに使えたら便利。けど、肝心の茶子の姿が見えない。いや、姿に関してはこの部屋が暗いからわかりにくいだけかもしれないけど、気配もしない。何か計画中なんだろうね。


アカネ:使うって、どうやって?

アオナ:強引に。僕では筋力足りない。

アカネ:わかった。

アオナ:あと、直前のダメージ無しで突き。魔法でリセット。


 なるほど。1振り目でダメージを与えたら次は同じ攻撃、避けられたら突きか。

 銀華を見ると、魔法を使うゴブリンリーダーの腕に切りかかっていた。真っ黄色で動きが鈍くなった左腕に強打を当てて、無事に魔法の軌道がそれていた。そのおかげで、ゴブリンリーダーの左腕が赤く変化した!


チャコ:次の縦攻撃の後に転倒させるから押さえてね~


 転倒? どうやってやるかはわからないけど、縦攻撃まで粘らなきゃ!

 銀華の前に出て防御に専念――右からの横攻撃を【パリィ】! からの、突き警戒――当たり! 【パリィ】!

 ゴブリンリーダーは後ろに下がり距離を取る。ファイアの魔法――じゃない! 赤いポーション持ってる!

 銀華が妨害のため前にでるが、剣が届く前にゴブリンリーダーがポーションを握りしめ、パリンと音が鳴って、ゴブリンリーダーの左腕の赤い個所が黄色に戻ってしまった。


ギンガ:回復もあるのか!

アオナ:魔法が使えないときの行動かな?

チャコ:次の縦で仕掛けるからよろしく~。

アカネ:はーい。


 まだ5分経ってないけど、腕の調子もかなりよくなってきた。茶子が仕掛けやすいようにパリィする!

 前に出て構え、相手の動きを集中して見る――来た! 


【パリィ】


 盾の中央で受けたから、相手の体勢が大きく崩れた! 

 その瞬間、茶子が私とゴブリンリーダーの隙間を縫うように駆け抜け、すぐさま急カーブしてリーダーの背後へと走っていった。

 どこにいたのか全然わからなかった!

 それからすぐにゴブリンリーダーが転倒! 足にロープを絡ませたのか!


「押さえて!!」


 蒼奈の叫びで、蒼奈、銀華、そして戻ってきた茶子がゴブリンリーダーを押さえつける。私は、さっき蒼奈に渡されたアイテムをもってゴブリンリーダーの頭へ。

 ゴブリンリーダーの口を、筋力全開で無理やり開き、口の中へ無理やりあのキノコを突っ込む。

 食べたら確定スタン30秒! 手を噛まれ右腕にダメージ受けて黄色くなったけど、ゴブリンリーダーにスタン表示がされた!


「【強打】!!!」


 スタン後、銀華が首のあたりを狙って強打を放つ。茶子も弓で同じ場所を攻撃。蒼奈は足のロープを結んでいる。


 私も剣を取り出して攻撃! 蒼奈もナイフを取り出し、全員で攻撃し続けた結果、ゴブリンリーダーは赤い粒子になって消えた!


「「「「勝ったぁあぁああぁああぁあ!!」」」」


 システム:アチーブメント『ゴブリンの敵』を獲得しました。『レシピ:修理道具(装備)』と『レシピ:修理道具(施設)』を自動取得します。


「きた!!!」


「目標~~クリア~~~!!」


 嬉しくて一人一人にハグをし、喜びを伝えあった。ようやくだよ~、最後のゴブリンリーダー強かった! 両手が黄色表示でかなりダメージが溜まっているけど、最後まで保ってくれてよかった。


「剣がドロップしてる!」


「未鑑定の本もある~」


「例のコインもあるよ」


「鑑定は帰ってからね。MPが限界」


「裏でサイレントも使ってくれたからね~」


「あ、それでチャコの気配がなかったのか」


 MPの回復手段が、今は自然回復だけだから使用回数が少なくてかなり厳しそう。早めに青ポーションを作れるようにならないとこの先大変そう。


「【探索】使ったんだけど~、ゴブリンリーダーの寝床の裏に隠し扉があるよ~」


「お宝!」


「罠はあるかな?」


「罠系のスキル誰ももってないよね。僕の鑑定も少し待たないと使えない」


「じゃあ、鑑定待ちだね」


 MPが少し回復するまで待つことになった。戦闘中はMPの回復速度は非常に遅いけれど、今みたいな非戦闘中はゆっくりだけど確実に回復する。その間に、荷物をまとめていたんだけれど、


「ギンガのナップサックが!!」


「ごめん~、ナップサック解体してロープにしちゃった~」


 銀華の叫びが響いた。

 キノコを取り出すためだけじゃなくて、ロープを作る目的もあって銀華のカバンを下してもらったのか。

 よく見ると、柱にロープが括りつけられて、ゴブリンリーダーの居る場所まで延びている。柱からピンとロープを引っ張ってゴブリンリーダーを転倒させたのか。当初持ってきたロープの長さでは全然足りない。銀華の袋が大きかったから、すごく長いロープも作れたんだね。


 素材としての木材はかなり使ったので、残っているものは少ない。大きいのは鉄素材だけだ。


「銀華が私のナップサックを持てば全部入る?」


「ナップサックも小さくなるから、入る量は変わらないんだ」


「ロープをまた解体してナップサックにしよう~。サイズ半分になるけど~」


 銀華のナップサックに入れて持ってきていた作業台に茶子が移動し、作業を開始した。

 暇になったから周辺をうろついたら、ゴブリンメイジの部屋でもう1冊本を見つけた。下に降りたゴブリンメイジの杖は消えていたので、今ある杖は茶子があの場で引き抜いたから残ったのだろう。


「鑑定したけど、罠があるかは判らなかった。ただ、扉の名称が『ボス扉』だった」


 休憩後、鑑定に向かった蒼奈が戻ってきて鑑定結果を教えてくれた。ボス扉……このゴブリンリーダーはボスの前の前座?


「つまり、もっと強いボスがこの先に居るってこと?」


「多分」


 4人がお互い見つめあう。私と銀華はダメージを受けまくってボロボロの状態。蒼奈もMPが尽きてるし、唯一動き回れそうなのは茶子だけ。


「帰ろう!」


「そうだね~。今は無理だよ~」


「ゴブリンリーダーをもっと余裕で倒せないとね」


「今回の目標も達成したからね」


 ということで、ナップサックの完成を待ってから帰る準備を始めた。

 相変わらず表側はゴブリンが扉を叩いているので、裏の扉から帰ることにする。橋を架けた崖の先には幸いゴブリンが来ている様子もなく、元来た道を戻る。

 途中の小部屋を探索したけれど、何もなくて疑問だけ残った。「奥のボスを倒すと変化するかも」という意見があり得そうなので、今回はそのまま帰ることにした。

 道中のゴブリンを何体か倒して無事に第2拠点へ帰還。そのまま荷物整理をすることなくログアウトをした。


~~~~~~


「おわったーー!」


 なんとか目標のアチーブメントを取得して一安心。部室の椅子に座り、机に倒れこむ。この三日間集中してやっていたから、結構大変だった。


「かなりの期間やってたよね~?」


「ゲーム内で16日間。約32時間だけど、昼から入ったり夜スキップしてるから時間はもっと短いかな」


 さらりと日数がでてくるのがさすが蒼奈だ。私は数えようとも考えなかった。

 そう思いながら部室のキッチンに向かい、水切りかごの中に急須がさかさまになって干してあったので、それを手に取る。お茶の葉を入れ、ポットからお湯を注いでテーブルへと運ぶ。蒼奈は食器棚から湯呑を4つ取り出して急須の傍に並べている。


「銀華もパリィ覚えた方が楽だったかも!」


「運搬が無ければ帰りの橋が作れなかったし、役割分担はちょうどよかった」


「そうだね~。それぞれの役割も決まってきたよね~」


「あ、お茶いい色出てる」


「ありがとー。……ゲームは良いんだけど、食事がパンだけなのがつらい!」


「そうそう。口が寂しいよね」


「それじゃ~、このあとどこかで食べよ~?」


「いいね。甘いものが食べたい」


 そうして思い出話を続けたあと、出掛ける準備をした。急須と湯呑は、茶子と銀華が洗っている。蒼奈はシープの清掃に向かったので、私はごみの分別。

 生ごみの茶葉は金網の籠ごと分解機へ。明日には金網だけ洗った状態で下の排出口に出てくる。ミルクティーのペットボトルは、プラスチック粉砕機へ。プラスチックの細かい分別は自動的にやってくれるので、ある程度洗った状態ならそのまま入れておしまい。


 鞄に荷物をまとめて、部室の棚の上に置いてお手洗いへ。戻ったら3人とも廊下に出ていて、蒼奈から鞄を受け取る。


「何食べる?」


「ソフトクリームがいいな!」


「お店探そう~」


 すでに行先の話をしていたから、私もARを起動。3人が見てるスイーツの写真や地図が一気に表示された。ついでに、お店にピンを刺しているのか、廊下がすでにルート案内の矢印表示されている。でもまだ行先は確定していなさそう! 茶子の前にあるスイーツ情報を眺める。


「私はここがいいかなー?」

 拡張現実のARは日常生活に溶け込んでいます。町中を歩くときは常に使うのが普通です。穴が開いているのに穴を映像で塞ぐなどの違法行為は、AIにより即座に修正され、行った人物の現在地を特定し通報されます。

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