『亡国の異世界 7つの王国と大陸の覇者』01
初投稿です。
拙作ですが、よろしくお願いします。
歩きながら動画を見たりゲームをしてはダメというものの、歩いている時間がもったいないと思うとついついやってしまう。私の場合も、一応周辺の安全を確認して、周囲に人がいないと判断したら癖で動かしてしまう。
何をするかは人にもよるけれど、私の場合は動画投稿サイトで猫動画を見ることが多い。文字を打つほど集中力は必要ないし、周囲の警戒もわりとしやすい。
動画の途中で、ふと視界の端が気になり視線を画面から離しそちらを見ると、道路に子猫が居た。かわいい! まだよちよち歩きで、両手両足をピンと伸ばして歩いている! 手のひらがおおきく開いてるのがかわいい!
けど、道路の真ん中はちょっと良くない。非常に危ない。かといって、母猫はいないようで、子猫だけしか居ない。移動させるにしても、子猫に人の匂いが付くと母猫は育児をしなくなると聞く。どうしたものか。
そう迷っていると、遠くからトラック向かってくるのが分かった。うん、迷ってる暇はないな。これは猫助けであって、仕方がないことだ。今なら安全に道路から避難させてあげられる。そう判断して、道路に入り子猫を抱え上げ道路から避難してあげた。いい子だね、よかったね。
その時、道路の反対側で猫が鳴いていた。そっちを見ると、子猫とそっくりな毛色の猫が居た。母猫かな? それと同時に、腕の中の子猫が暴れる。そして腕から抜け出し地面に降り立つと、母猫にむかって一直線に走っていった。ちょっと、あぶない!!!
~~~~~~
周囲に何もない真っ白な空間に、私が到着した理由をわかっていただけただろうか。
「うん……境界線も影も何もないと、立っているのに浮いている感じがする……」
遠くを見渡しても地平線があるかどうかもわからない空間だけど、それでも何か目印になるものが無いのか見渡してみる。
くるりとその場で一回転すると、何もないこの空間のなかで、一か所だけ光の点があるような気がした。
「あれかな?」
周りが真っ白なので、距離感はつかめないけれど、近くにあるんじゃないかと思う。とりあえずそっちに向かって進んでいくと、さほど進んでもいないのに光がどんどん大きくなった。明らかに大きくなってるよね?
近寄るほどに大きく膨れ上がる光が、急にはじけ飛とび、光り輝く美人の女の人が現れた! その女の人は、長く伸びるた金色の髪で、風も無いのに大きく広がりなびいていた。白い肌を覆う純白の布は、帯状の布のまま、体の周りを浮かび上がりながら纏っている。その布は真っ白な光を放って輝いており、この世の物とは思えないほど美しい。
現れたときから、空中にふわりと浮かび続ける女の人は、閉じていた目を開くと金色に輝く瞳をしている。すっごく、キラキラした瞳だ!
「ようこそ、勇者よ。私は光の女神。あなたたちの世界とは別の世界に住む女神です」
透き通った美しい声だ。話す速度もゆったりとしていて、聞き取りやすい。
「あなたには二つの選択肢があります。このまま死を受け入れ全てを虚無へと帰るか、それとも私の世界に来て世界を導く勇者となる生を受けるかです」
「そちらの世界に行きます!」
即決である。ここで迷うことなどありえない。
「わかりました。それでは、こちらの世界で過ごしやすいように、あなたに健康な肉体と言語を理解する能力を与えましょう。それと、勇者であるあなたには特別な力を授けましょう」
女神は、両手のひらを胸の前で向かい合わせにした。すると、手のひらの間に光の球体が浮かび上がる。バスケットボールほどの大きさの球体は、そのまま私の目の前に浮遊してきた。
「あなたは、人族と獣人族が選べます。そして、あなたに付与される能力ですが……」
緊張の一瞬だ。体がないはずなのに、ゴクリと喉が鳴った気がする。
「幸運+10です」
「リセットで」
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真っ白な空間からリセットして、車に引かれた交差点より50メートル離れた学校の校門の前に戻った。グラウンド側を見ると、見覚えのあるストレートボブの女の子が居たので駆け寄って合流した。同級生で幼馴染の蒼奈である。
「アカネは、どうだった?」
「獣人だったけど、能力が幸運+10だった。アオナは?」
「ナイトウォーカーで、聴覚判定+5%だった」
お互い、女神からもらった能力について語り合う。蒼奈もダメだったかぁ女神からの能力付与ってうまい具合にはいかないんだよね。
「やっぱり典型的な転生じゃあ大した能力はもらえないのかぁ」
「意外性のある方法がいいからね」
転生と気軽に言ってるけれど、本当に転生しているってわけじゃない。
新作のファンタジーRPG系のVRゲームで、キャラクタークリエイト空間と、スタート地点である王都周辺のみマップが解放されている。周辺のみといっても、王城はすごく立派だし、マップもかなり広いから、全部解放されていなくても楽しめるらしい。
その話題のゲームに、高校の部活のメンバーで参加することとなった。ちなみに、部活の活動内容は、ゲームに自分自身を投影可能なVRゲームで遊ぶだけだ。Eスポーツ部の派生らしいけど、細かいところはよくわからない。
自分をゲーム内に投影するというのは、自分自身の五感全てをゲーム内の仮想空間にそのまま入り込ませることである。物をつかむ感触も、食べ物を食べる味覚も、すべて備わっていて、現実世界がもう一つ増えたような感じだ。今の世界、この仮想空間に投影されることが当たり前となっている。
この仮想空間全体を『シープ』と呼ぶ。VR空間に入っている間は人が寝ている様子から、羊の英語読み『シープ』となったみたい。
シープには、パブリックタウンと呼ばれる空間がある。そこはゲームとは無関係の、VR空間のみで構成された街になっている。現実の都市に近い町だったり、まったくの異空間だったりする。
そのパブリックタウンに接続する部屋を、誰もが1部屋持つことになる。その場所から、外にでてパブリックタウンで遊んだり、ゲームを起動してゲーム世界に入ったりするのだ。
この技術が生まれてから、産業の発達速度が今までの数倍もの速度だと言われている。現実での1時間が、シープ内の体感では10時間以上もの経過も可能なため、研究にかける時間が実質的に短縮されているようだ。
私たちみたいな学生は、勉強に使うのは当然として、遊びやゲームで楽しめる世界だという認識でしかない。
今いる場所は、ゲーム内に作られた疑似的な仮想空間であって現実の町じゃない。今ログインしているゲーム『異世界転生 7つの王国と大陸の覇者』では、自分の分身であるキャラクターを作ることができる。
そのキャラクターには、それぞれ転生特典が付与されるんだけど、その転生特典は、今いる町で何らかの方法で体力をゼロにすることで先ほどの女神の場所に移動し、そこで能力を付与されるのだ。
その体力をゼロにする方法によって転生特典の種類や効果が違う。さっき私がもらった幸運+10は大した能力ではない。そのままゲームを始めても、苦労するだけ。そのため、自分が欲しい特典の効果を探し出すために、私たちを含めて、様々な人がこの町で試行錯誤をしているのだ。
……このキャラクリに賛否両論があるらしいけど、今のところサービスが止まることはなさそうだ。今の時代、交通事故や転落による死亡は先進国では存在しないからゲーム感覚で楽しむ人が多数なんだろう。
私が女神の元から戻ってきたときに帰還場所となった校門では、様々な人が光の中から次々と現れている。女神の元から帰ってきた人達だ。その中のひとりが、こちらを見て手を振ったので、お互い歩み寄る。私たちはやや駆け足だ。
「シホ先輩、お疲れ様!」
「アカネちゃん、アオナちゃん、どうだった?」
「ふたりともぜんぜんだめだった!」
「そっか、残念ね。私も、ハイエルフで腕力+50と強かったんだけど、武器スキルが何もなかったのよね」
頬に手を当てて困ったように話すのは、部活の先輩である高校2年の紫帆先輩。ふわりと広がる長い髪で、優し気な瞳をしているので、お嬢様っぽいのだが、ときどき変なことをする。
「両手剣背負った上で、パラシュートの紐が取れて開かずに落下して転生って設定にしたのに。――武器は背負うのではなく使った方がよかったのかしら?」
ときどき? いえ、これはこのゲームでは平常運転です。
紫帆先輩が何か操作をしている。
「キリとミク先輩が公開配信で転生するそうよ。シービーズのコードはこれね」
紫帆先輩からコードを見せてもらい、自分のシーポンのカメラから情報を受け取って映像を確認する。
『シーポン』は、手元で自由に操作できる小型端末。
『シービーズ』とは、シープ内にある動画配信のアプリケーションの名前で、手軽に動画の配信や編集ができる。
このゲームでの転生の場合、修正を入れた動画ではなく、リアルタイムでの公開配信のことをさす。
配信されている映像を見ると、真っ白い布に囲まれた空間の中で、部長の未黒先輩と2年の黄里先輩が和服を着て映っていた。未黒先輩は、白い着物を着て正座している。目の前には、神社でよくみるあの四角いテーブルの上に、小さい刀がある。もともとの髪形がポニーテールだから、武士っぽさが増している。黄里先輩は、未黒先輩の後ろで、黒っぽい和服を着て、刀を構えて立っている。外ハネのショートヘアで、力強い美少女剣士の雰囲気があってかっこいい。
未黒先輩が細長い紙になにやら文字を書いている。それが終わった後、目の前の刀を手に取り、テーブルを後ろに移動した後、着物の前をはだけて刀を胸の下に当てた。その瞬間、映像から男性の野太い声が聞こえてくる。
先輩大胆だなぁ。布でさらしを巻いているとはいえ、大きな胸を見せつけるように出した上に、公開配信とは……。というか、あのさらしの巻き方、まったく胸を押さえつけてないというか、むしろ目立たせているような。……刀で胸を弾ませてる。ぜったいにわざとあの巻き方をした! 視聴者数が200人近くいるけど、動画拡散怖くないのかな。
そしてそのまま刀を腹に刺し……ってそこで後ろからトラック転生か! 背景の布を突き破ってトラックがすべてを巻き込んで転生していった!
「さすがミク先輩。ドラマ性のあるトラック転生だった」
蒼奈が配信を見てうんうんと頷いている。確かに、こんなトラック転生はなかなかないだろう。
「公開配信の転生だからポイント高いわよね」
紫帆先輩が言う通り、転生シーンを公開配信するのは拡散のリスクもあるけれど、非常にポイントが高い。大抵は良い結果を獲得しやすい。
しばらくすると、門から先輩ふたりが現れてやってきた。
「見てくれた~? いいのもらえたよ~、セーブしておいたよ~」
和服姿のままの未黒先輩がニコニコしながらこっちにやってきた。というか、よく笑う先輩なので、いつも通りとも言える。
「キリもおつかれさま、どうだった?」
「うん、そこそこ良いのはもらえた」
紫帆先輩と黄里先輩が仲良く話をしている。私と蒼奈みたいに、このふたりも仲がすごくいい。
「あかちゃーん、どう、このステータス?」
「あかちゃんじゃありません! って、すごい!」
未黒先輩はいつもあかちゃんって呼んでくるんだけど、どうも小さい子の赤ちゃんって呼んでいるような気がしてならない。
それはともかく、先輩が女神からもらったステータスがすごかった。
種族:人族または鬼族
ステータス:筋力+30% 魅力+40%
スキル:刀、地魔法、演技、魅了
特殊能力:薄衣豪剣(防御箇所が少なければ少ないほど攻撃力上昇。最大+500%)
「すごいですね、先輩。エロい」
「でしょう? ばっちり狙い通りのスキル出してやったんよ」
「特殊エロ能力もですか?」
「それは知らんよ~」
パタパタと手を横に振って否定する未黒先輩。真っ白な着物がゆらゆらと揺れるのはいいとして、緩い隙間から胸元が見えるのはどうかと思う。
「服着替えないんですか?」
「かっこいいでしょ?」
未黒先輩は腰の刀を抜く直前のポーズを決める。まるで抜刀術だ。
「元の制服にはいつでもボタン1つで戻れるからね。せっかくならコスプレ気分で過ごすのがマルなんよ。あかちゃんも猫耳着けて申請したらどう? 気分あがるよ?」
「それはいいですね! せっかくならマズルも着けたい! あ、肉球も! 猫足のスリッパも必須ですね! しっぽは長いのにするか短いのにするか迷いますね!」
猫耳だけで猫さんを表現するのはもったいない! せっかく自由に着けられるなら、色々あった方がいいに決まってる! 着ぐるみが一番いいけど、今は部活で来てるから誰が誰だかわからないのも困るよね!
「うんうん、相変わらず猫の話はメーターぶちぎれるね」
未黒先輩と楽しく猫の話をしていると、シーポンに連絡がきた。同じ1年生仲間の茶子だ。音声通話だったので、そのまま繋ぐ。
「チャコどうした~?」
『アカネ~、良いの出たから思わずスタートしちゃって~、キャラクリに進んじゃったんだけど~どうしよう~? そっちに戻ったら引きはキャンセルにならないかな~?』
「あー、ちょっとまってて。先輩に聞いてみる」
顔を上げたら、すぐに未黒先輩が通話画面に割り込んできた。こういう時の先輩は頼りになる。
「ちゃちゃ? 歯車マークの設定みえるかな? それの下の方に能力保管庫が見えるかな? 今はオートセーブで保管されてるけど、そこの下のセーブスロットにセーブしておけば、キャラクリから離れても後でその能力でキャラクリ再開できるんだよ」
『はい。あ、ありましたぁ! 助かりまーす! すぐそっちに行きますね~』
「了解、待ってるよー」
通話を切って、茶子を待つ。というか、私も新たに転生リセマラした方がいいかな?
「アオナはどうするの? 私はチャコ来てから転リセするつもりだけど」
「僕も同じ。頑張って光属性ヴァンパイア目指す」
「だねぇ。ここで頑張らないと出来ない組み合わせだもんね」
「うん」
通常できない組み合わせが発生するのが、この転生リセマラの良いところだ。私も、獣人で適性の無い治癒魔法を取得したい。獣人さえ取得できたのなら、イヌでもネコでも選び放題だから、ぜひ猫耳つけたキャラクリをするのだ。
あ、紫帆先輩がどこかへ移動していった。また転生リセマラのチャレンジかな? それと入れ替わりで黄里先輩がやってきた。
「シホがまた転生してくるって。どうしてもハイエルフで近接戦闘がしたいらしい」
ほんの少し低めの声をした黄里先輩が、未黒先輩に話しかけている。エルフではなく、ハイエルフというのが困難らしい。魔法特化のハイエルフは、武器は杖だけしか装備できない。エルフの代名詞ともいえる弓でさえ、普通のキャラクリでは扱うことができないのだ。
「弓ハイエイルフの強キャラなら条件わかってるのにね」
「あれは配信前提だから、シホはやらないだろうな」
動画を公開配信にすると、転生にボーナスが付いて、良い条件を得られやすい。そのかわり色々な人に見られる欠点はあるけれど、それをモノともしない人が強い人になっていくんだろうなぁ。
さっき話に出た弓ハイエルフの強キャラは、胸のサイズが大きい女性専用で有名。配信を公開しながら、弓道場でビキニの水着を来た女性が、弓を射ると同時に弦が胸にあたってその痛みで転生。
このキャラがやたら強く、それでいて手順が簡単なので、女性のハイエルフが量産されている。胸のサイズも有料で大きくできるから、お金があれば誰でも可能。
私は条件を満たせそうだけど、ハイエルフになるつもりはない。なぜなら猫が最強だからである。能力が最強かはしらないけれど、猫を超える種族は存在しない。
猫系獣人希望の私は、過去に公開配信された最強獣人転生動画を見る。
全身タイツに猫耳と猫しっぽをを着けた男性が、土下座スタイルからクラウチングスタートに体勢を変えて一気にダッシュ、前方倒立回転、手を使わない側転のエアリアルから、後方2回転半宙返りで逆さまになった姿勢のままトラックに引かれそうな白猫をキャッチ、そのまま半回転して屈伸し跳躍体制をとり、華麗にトラックの運転席を超える跳躍、両手は上に伸ばし猫を支え、足は左右に180度ビシッと伸ばす姿勢のまま、トラックの荷台の上になぜか置いてあるグランドピアノに衝突して転生。猫はピアノに着地。
この結果、獣人で筋力と敏捷と知力が高い上に、魔法5属性という、希少な組み合わせが出来上がった。この空間では痛覚はほぼゼロになるが、運動能力は現実の自分の能力しか発揮できないので、普通の人にはマネができないため、後続が出たという話は聞かない。
とはいえ、猫を助けるというのが獣人になりやすい条件なのはわかっているので、それをどう組み合わせれば治癒魔法が出てくるかを考えればいいわけだ。この動画主のステータスに治癒魔法が含まれているので、何かヒントがあるのだろう。
「ただいま~」
「チャコおかえりー。あ、モエギ先輩、こんにちわー」
茶子が3年の萌黄先輩と一緒になって合流したので、近寄って茶子の手を握った。
「こんにちは。アカネちゃんは元気だね」
萌黄先輩が私の頭を撫でてから、未黒先輩と何か話している。萌黄先輩は部員全員の頭を撫でまくってくるし、頬っぺたもつついて回っている。長い髪を肩のあたりで二つに分け、おさげにしている。ほんわかした先輩で、皆を可愛がる優しい先輩だ。
茶子の手を引っ張って、少し離れた場所で調べものをしている蒼奈の所へ行く。
「チャコが来たよー」
「ん、お疲れ様。チャコは妖精出たの?」
「そうそう、ばっちりレア種族出したよ~! ステータス補正はないけど、スキルが高速飛行ついてて完璧だった~」
「おお、やったね! 飛行系最高速スキルだ!」
「よかったね、おめでとうチャコ」
「ふたりともありがとう~」
茶子の手を握っている側を上下にブンブン振って喜びを伝える。友達がうれしいのはこっちもうれしく感じるよね。蒼奈は落ち着いた感じで話してるけれど、心底祝福しているのは表情からわかる。長年一緒にいるから、そのあたりは誰よりもわかると思っている。
「それじゃ、僕はもう一度挑戦してくる。調べた結果、おそらくブドウジュースのお風呂に入りながらビルの倒壊で転生すればヴァンパイアになれるはず。あとは光魔法取得のためにヒゲメガネがあると可能性は高まるらしい」
「へ~、配信はするの~?」
「やらない。服を全部脱いで風呂に入るから」
茶子の疑問を即否定する。まぁ、服を脱がなくても蒼奈は公開配信をするような子ではないよね。
「じゃあ、行ってくる」
そうして、蒼奈は手を軽くこっちに振ってから校門の外にある受付に向かった。受付で必要な小道具や施設を申請することで、全て条件を満たした場所に転送されるのだ。
「ギンガ、ずっと繰り返してるのかなぁ~?」
「そうじゃないかな? ギンガの体力無限だからね」
同じく1年生の銀華は、ログインする前からパワー全開のドワーフになると言って別れたままだ。
ちなみに、本名は銀華と書いて「ギンカ」と読むけど、宇宙っぽくてかっこいいからという理由で、ギンガって呼ばせている。さすがに先輩には呼ぶようにお願いしていないようだけど、1年が使っているから呼び方がジワジワ浸透している。
横を見ると、いまだに着物姿の未黒先輩は、刀を振り回して殺陣の物まねをしている。
……なんか嫌な予感がした。
「チャコ? 女神のところから復帰するときって、転生直前の服装で校門に戻されるんだよね?」
「そうだね~」
「裸で転生した場合ってどうなるのかな?」
「「……」」
慌ててゲームのヘルプを確認する。しばらく検索して情報を探し回ってると、茶子が答えを見つけた
「未成年は全裸で転生しても、謎の光で一部が隠されて戻ります。光は消えませんが、下着程度しか隠れないので注意してください……だって~。受付が終わったら転生キャンセルしても申請した恰好で戻るみたい……やばくないかな~?」
「やばい! アオナに連絡して、先輩やギンガにも応援頼もう!」
その後、マントの着用を申請、キャンセルして、蒼奈が戻ってもすぐにマントで覆い隠せるように部員全員で校門に待機した。
その甲斐あって、無事に全裸蒼奈を1秒もかからずに確保できた。あぶなかった!
「ミク先輩、なんで学ランなんですか?」
「大正ロマンなんよ」
この世界の日本人、飛行機から落下してもビルが倒壊しても、謎な粒子で無傷です。熱や呼吸も問題ありません。恐怖心は取り除けませんが。
次回別のゲームです。
変更点
・未黒のステータス 筋力+70→筋力+30%