野菜嫌いなお姫様
とても遅い投稿となってしまいすみません。その分自信はちょっとだけあるのでこれからもご愛読ください
「お前前より顔色悪くねえか?」
「ああ、最近ファストフードしか食ってないしな」
「お前が?珍しいねえ。てっきり家事でもなんでもできる完璧超人だと思っていたんだが」
完璧超人は女神様か。と隼人は一言。
「いや、あいつ、完璧超人なんかじゃねえよ。」
ん?とした顔をした隼人におれは失敗したと思い、一応弁解した
「今のは忘れてくれ。別に彼女に接点があるわけでもないし、興味もない」
しかし、興味がないといえば嘘になる。昨日の彼女の態度をみた伊織は少なくとも彼女に興味を抱いていたのであった。
「なあ伊織。女神様となんかあったか?」
きづいたら隼人はのどかと俺を目で行ったり来たりしながら俺に話しかけていた。
「めっちゃにらまれてんぞ」
隼人の言う通り、文字通り睨まれていた。誰に?のどかにだ。
すると、のどかは立ち上がって、早歩きでこっちに向かってきた。そして、とんでもないことを抜かすのであった。
「伊織さん?今日のデートは覚えてますでしょうか?」
.......!!!!!??
なんてことをいいやがる。凍りついたように静かになる教室。こいつ自分のしたことに危機感はないのか!..いや、きっとわざとだ。周りに聞こえる程度の声のデカさ。口は笑っているが、目は笑っているというよりも、嘲笑うのほうが近しいだろう。周りがざわざわと騒ぎ立ててきたところでおれも反撃に出る。
「女神様の白雪さんじゃないですか。俺がデートなんておこがましい。人違いじゃないでしょうか?」
少し笑顔が歪み、予想外の俺の反撃にムカついたような顔をしたのどか。
「あら〜?私と同じマンションの同じ部屋で一緒に写っているこの男の子はだれでしょうね?」
一枚の写真を取り出し、ひらひらと俺とのどかが対面してハンバーガーを食べているところを見せてきた。
「っっっっっ!いつ撮りやがった」
「いつでも撮れますよ〜なんたって家のなかにも監視カメラはあるので」
「その猫の皮をいち早く脱いだほうがいいんじゃないのか?のどか?」
えっどういうこと?同棲?名前呼び?は、○ネみたいなざわつきが増えているところで担任の風間が入ってきた。
「ざわついてるところ悪いが、HRだ」
完敗とまではいかないが、俺は必ず勝ちとらなければならない平穏な学校生活の切符をつかみ取れなかったようだ。この世の終わりを感じながら10分ほどのHRを周りからの痛い視線を受けながら過ごしたのであった。
「で、どういうことだよ」
一番最初に言ってきたのは隼人だった。
「見てのとおりだよ」
「伊織は婚約指輪さえ寄越さなかったがな」
小声だが素の口調にもどったのどかには最初はびっくりしていた隼人だが、すぐ納得したように
「まあ、硬かったもんな他の人と喋っているとき白雪さんは」
のどかは女神様といわれるのを心底嫌っており、それは姉である麗奈こそふさわしい称号だと語っていた。だからこそ、隼人は突き刺すような眼光と圧に気圧され、女神様呼びをやめることになったのだ。
「それにしてもびっくりだよ。伊織が同棲なんて、更に借金とはなんとベタな」
「うるせえ」
「あと質問ラッシュにはおまえも付き合ってもらうからな。のどか」
「それはプロポーズか?」
「違うわ。バカ」
そのセリフは普通反対なんだけどな、と隼人は苦笑する。
「はぁぁ」
「お疲れか?」
「ああ、お前のせいでな」
あれから俺たちはクラスメイトからの質問ラッシュにただの幼馴染でその日はたまたま遊びに来ていただけだと説明した。デートはこいつのジョークとして処理され、本当のことは信頼できる隼人にしか言ってない。
「まあ、俺の口は堅いからな、二葉は軽いが」
口を開けば二葉、二葉、この男も呆れたものだ。
こいつなら絶対浮気しないし、いい旦那にはなると思うが、生活がああだといつ死ぬかわからないもんだ。こいつの汚部屋には幾度となく踏み込み探索(掃除)してきたのだから。
「お前の手料理を毎日食べれるなんて、白雪さんも役得じゃないのか?」
えっ、といった顔でのどかは俺を睨んできた。
「お前、私と同士じゃなかったのか!?裏切り者め!家賃プラス!」
こいつは料理ができない、というか家事諸々できない。洗濯も任してくるのだから困ったものである
「お詫びに私に毎日、私の好きなものを食べさせろ。お前は一生私の召使いだ」
ははーおおせのままにー。と軽く返事をし、この日を終えるのであった。
帰宅後、俺は土曜は午前中のみだったので昼の買い出しのために、スーパーにいた。執事の葛城さんと一緒に。
「お嬢様はかなり偏食です。野菜は駄目、魚も駄目。以前より偏食の矯正に幾度となく挑戦してきましたが、一度たりともそれを成功させたことはありません」
マジかよ。とはいいつつも予想はしていた。ハンバーガーもレタスしか入っていないあとは肉ばかりのを食べていたし、なにより、サラダは全部オレによこす。あいつは俺のためだと言っていたが、やはり嫌いだったのか。
「じゃあ、だったらなおさらですよ。野菜、買っていきましょう。僕が調理するんで」
「そうですか?お嬢様は食べないと思いますが」
まあ挑戦もいいことでしょう。と達観した様子でどこか期待するような眼をしていた気がした
「げっ」
そう言ったのは紛れもないのどかだ。
「ねえ私が野菜嫌いなの気づいてるでしょ?嫌がらせ?」
「そうだな」
「肯定すんな」
「それもあるが、俺の料理はお前の全財産を使ってでも雇えないミシュラン顔負けの腕前を誇っている。ここで食わないと一生食えないぞ?」
「黙れ、それでも無理なもんは無理」
はあ、と俺は息を吐き、自分の作ったパスタをなるべく多く、ミニトマトがついてくるように巻き、のどかの口の前に持っていった。
「あーん、だ」
「は!?」
「俺が食べさせてやる、だから食え」
「いや無理だし、伊織に食べさせてもらうとか...」
すこし赤みがかった頬を隠すようにして顔を背けた。だが、俺には必殺技がある。こいつを揺らすにはこれしかない。
「ビビってんのか??」
「ああ?ん、んなわけねえだろ。おま、えこそビビんなよ?」
言葉では強がってるが、その声は弱々しく震えていた。そんな彼女に俺はニヤケを抑えながらも、十分にトマトが巻き付いたフォークを彼女の口の中に突っ込んだ
「...モグモグ」
「もっと可愛い擬音語はなかったのか」
そう軽口を叩いていると、のどかは眼を見開き、興奮した様で
「..美味しい。想像以上にうまい!」
「ああ、知ってる。俺の料理だもんな」
これでお前の胃袋は俺のもんだなと得意げに吐いた。
「これから出かけるわけだが、夜は野菜多めにするからな」
「ふざけんな。まだ認めてねえし、肉のほうが上手いし。まあでもお前の作る料理でなら食べんこともない」
「はいはい、左様ですか。ほら、残り食べろよ」
でも、のどかの手は一方に動かない。
「どうした?具合悪いのか」
「..せて」
「ん?よく聞こえねえ」
「食べさせて..残り全部」
.......?こいつ今なんつった?食べさせて?俺が?
「ど、どうした?のどか」
「うるさい、自分で食べられない。野菜まだ、怖い」
可愛い、、というのもいつもは口調のせいで気にしていなかったが、のどかはかなりの美少女だ。そんな奴に、こんな顔されてねだられたら俺でも可愛いと思ってしまう。
少しためらったが、どうしてもというので思い切って了承してしまった。
「...ほらよ」
「ん」
「はい」
「ん」
「ほら」
「ちょっと、ちょっとまって、、伊織全然食べてない」
「そらそうだろ。お前にやってんだから」
のどかは少し考えたあと、ちょっと貸してと俺が持ったフォークを奪い、俺の口元に近づけた。
「はい、あーん」
「え?ちょっとまて、俺がする方だ。される側とは聞いていない」
慌てふためく伊織を見て、すこし調子を戻しつつ
「食べて。私だけされるのは不公平だ」
俺は、少し強引ながらものどかからのあーんを受けた。しかし、味は全くしない。
「顔赤くなってやんの」
そう言われて初めて自分の顔が紅潮してることに気づいた。
「んで、感想は?」
「味がしない」
「んじゃなくて、食べさせられてどう思ったんだよ」
「非常に、その、、自分が居た堪れない、です」
「そう、じゃあ仕返しだ。これから、可能な限り、食べさせ合おうじゃないか」
のどかは調子に乗るがおれは、絶対やだとお断りした。
あなたの理想のデレといえば...?