あー!手が勝手に!
「行ってらっしゃ〜い♪」
「しっかりやるんだぞネムー!」
「兄ちゃあぁぁぁぁぁん!!」
「もう泣かないのノノちゃん」
たった7日程度で入学手続きとやらは終了。あのオッサンが母さんにビビり散らかし、必死こいて準備を進めた結果としてこんなにも事が早まったらしい。クソが。
母さんも母さんでしっかり制服を間に合わせやがるし。このクオリティの物を何で数日足らずで完成させてしまうのか。
隣に立つライが着ている制服は、青を基調として所々に金色の刺繍があしらわれた、これぞ制服って感じのデザイン。イケメン具合が更に倍率ドンである。
きっと学園でもキャーキャーイヤンイヤン言われまくること間違い無しだな。ペッ!
さて、対する俺はと言えば、青と金なのはライと同じなのだが、デザインが完全に狙ってて母さんに対して殺意を覚えてる。
そりゃ、ミニスカとかじゃなかっただけマシだとは思うよ? でもだからってロングコートみたいな感じじゃなくてもさ……華奢でチビな俺が着たら確実に女の子にしか見えないんだわ。
首元のリボンもそれに拍車をかけてるし、どっからどう見ても女でしかない。足がブーツなのは俺なりの抵抗である。効果の程は知らんけど。
「ノノ、凄い泣いてるな」
「そりゃ心から尊敬して止まない愛しい愛しいお兄ちゃんと離れ離れになるんだから当然だろ。本音を言えば今すぐにでも引き返してノノと熱烈なハグしたいわ」
「いいなぁ。俺もしていい?」
「ざけんなカス」
「カス!?」
ノノとハグしていいのは俺と未来の旦那だけだ。身の程を弁えろよライ。って何か前にも似たようなやり取りしたような? ……まぁいいや。
背後から聞こえてくるノノの悲痛な泣き声に、根こそぎ持ってかれんじゃねーかってくらい後ろ髪を引かれながらも俺は歩みを進めた。
我ながら諦めが良い……とは思わない。この7日、俺はあらゆる手を使って学園行きを回避しようとしてきた。
しかし、足掻けば足掻くほど運命選択が邪魔しまくりやがってずっと平行線。だから流石に途中で察したよ。この運命は避けられねーって。
「ところで、学園の場所とか知ってんのか? 俺その辺まったく知らないぞ?」
「それについては任せてくれ! しっかりネムをリード出来るように色々と予習したんだ!」
「別にリードしてもらわんでもいいけど……まぁ案内は任せるわ」
「ああ!」
謎にライがやる気満々なのは何故なんだ……。
さて、運命選択も珍しくおとなしいまま、しばらく歩き続けた俺達は街へ到着した。昔から時々ライと街に遊びに来ていた甲斐もあり、門兵に止められることもなく顔パスで通行可能だ。
しばらくは街に寄り付かないでおこうって決めていたのにな……何でこうなったし。
とは言え来てしまったものは仕方ない。開き直ってそこかしこにある出店に寄り道したい気持ちを我慢しつつ、ライに案内されるまま街の中を只管歩いていく。
見慣れた道から知らない道へ。可愛い娘でも居ないかなとチェックしながら進んでいると、ついに目的地に到着してしまった。
「確かここの筈」
「へー、こんな場所あったんだな」
見上げた先には巨大な建造物。周りの建物とはまた違った造りのそれは、確かに学園っぽい。相当な広さだなこれ。
ここの生徒だろうか、チラホラと正門を潜って行く人達も居る。どういう訳か割と歳行ってそうな奴も居るけど。教師? いや、でも制服っぽいの着てるしな……。
「なんか、周りの奴らの年齢層バラバラじゃね?」
「ここはあくまでも贈り物の使い方を学ぶ場所だからだよ。贈り物を受け取ってすぐに通う人も居れば、ある程度大人になってから通う人も居るんだってさ。
入学時期も皆バラバラだから、式とかも無い感じ。好きな時に申請して、通れば通って良し」
「ほーん……ってか詳しいなお前」
「調べた!」
「褒めて遣わす」
「へへ〜」
学園について分からない事があれば、ライに聞いたら大体なんとかなりそうだな。持つべきものは親友だぜ。
「そういや今更なんだけど、俺達手ぶらで来ちゃって良かったのか?」
「必要な荷物は後から寮の方に直接送るってオリアナさんが言ってたぞ」
「何で実の息子よりお前の方が詳しいこと知ってんだよ」
「そりゃまぁ、点数稼ぎ?」
「何だそりゃ」
別に点数稼ぎなんぞしなくても元から母さんからの評価高いだろお前。これ以上高くしたって別に何も貰えないぞ。
……にしても、結構不用心だよなこの学園。正門は開きっぱ、見たところ警備をしてる人も見当たらない。これじゃ部外者入りたい放題じゃん。
「なぁ、これ入ってもいいのか?」
「んー、いいと思うけど。話しは通ってる筈だし、追い出される心配は無いでしょ」
「ホントかよ。まぁ入ってみれば分かるか」
ここで駄弁ってても埒が明かない。本音を言えば回れ右して帰りたいけど、そんなことをすれば母さんからの鉄拳制裁が待ってる。
もはやこれまで。そんな感じで諦めて正門を潜った、その瞬間。
「ひえっ」
「おおっ」
何か得体の知れないものが全身をかけ巡った感覚を覚え、2人して変な声を上げてしまった。
慌てて周りを見渡し、たった今潜った正門を振り返ってみるが特に異常は無い。何だったんだ今の……?
「なぁライ、今の」
「ネムも感じた?」
「キショかったな。全身触られた感覚だったぞ」
「……全身。許せないな」
え、何かライが急に殺気立ってるんですけど。確かにキショかったけど別にそこまでなるほどでもなくない?
「そ、そこの2人〜っ!!」
たまーに見せるライの謎怒りに戸惑っていると、不意に学園側から声が。そっちを見ると、何やら年若い女性がこちらに向かって走って来ている。
肩辺りまで伸ばされた淡い緑髪と、風に靡く白いカーディガン。パッと見て「あ、この人ゆるそう」と思わせてくれる顔立ち。そして何よりも──。
(でっ、デケェっ……!!!!)
足を一歩踏み出すたびに激しく揺れ動く凶悪な二つの膨らみ! 他の要素なんてどうでもいい、もはや俺の視線はそこだけに集中していた!
何だあの最終兵器は!? 人類に許されていい領域ではないだろう!? いや、でも素晴らしいよお嬢さん! もっと激しく行ってみようか!?
「はぁっ……はぁっ……はぁぁ〜間に合ったぁ」
「えっと……貴女は?」
「待てライ、俺が話そう」キリッ
「お、おう! 任せるぜネム!」
聞き分けがよろしい。ここは俺がこの人と交流しポイントを稼がせてもらおう。断じてライには渡さんぞ、このわがままボディだけはな。俺の嫁となれ。
「焦らなくても良いですよ。ゆっくり息を整えてください」
「は、はいぃ、ありがとうございます。すぅ……はへぇ〜。えへへ、運動不足が祟っちゃいましたぁ」
くっ、こんな兵器を積んでいるというのに何だこの小動物感! お持ち帰りしたい!
【素敵なおっぱいですね】
【触ってもいいですか?】
おうコラァ!!! おとなしいと思ってたのにとんでもねぇ選択肢ぶっ込んで来てんじゃねぇよ! セクハラにも程があんだろ!
何がヤバいって、どっち選んでも最悪衛兵に突き出されるパターンなのが詰んでる。……じゃあ結果は変わらないってこと?
よし、どうせ捕まるくらいなら良い思いをしよう。時には諦めが肝心だ。それに悪いのは俺じゃなくて運命選択のクソバカだもんね。
⇨【触ってもいいですか?】
「突然失礼します。少し触っても?」
「え? あぁはい、どうぞ?」
本人からの許可も出た。これは無罪だよね? それに体の自由も利かないし、どう足掻いても無罪だよね。
「じゃあ失礼して」
「ひゃっ……!?」
「ネム!?」
徐に伸ばされた俺の手は、寸分違わず女性の胸に吸い込まれていった。
言葉では言い表せないほどの心地よさが手のひらいっぱいに広がり、俺の脳を破壊する。
なんだこれ……これが人類に許されていい物だってのか? 揉んですらいないってのに、どこまでも沈み込んでいくこの感覚。ここが天国か!
ていうかマジで触った! 俺はてっきり、触るにしても頭とか服とか、どうせぬか喜びパターンだと思ってたよ。運命選択やりやがった!
はいこれでブタ箱行き確定! じゃあもう知らんもんね! 思う存分楽しむもんね!
【とりあえず意味深なことでも言って身を引こう】
【んほぉぉぉぉ! 辛抱たまらん! 俺の初めてを捧げるぜ!】
バーカ! このバァァァァァカッ!! 最後までやるのは単なるヤベェ奴だろうがよ! いや今も十分ヤベェけど、そこまでじゃねーわ!
んだよ期待させといてこの野郎が! もうちょっと揉ませろよ!
⇨【とりあえず意味深なことでも言って身を引こう】
「フッ、考え過ぎだったか。俺も鈍ったもんだ」
「ぇと、ど、どうして胸を……?」
「まさか、ネム! その可能性すら考えてたってのか!?」
「当然だろ」
「さすネム過ぎるぜ!」
何がだよ説明しろよバカライ。可能性って何だよ俺が聞きてーわ!! しかもこのタイミングで体の自由も戻ったし! ほら見ろ、説明しろやボケェみたいな目で女性が見てきてんじゃん! だから知らねーんだわ!
えぇい仕方ない、ここは超解釈に頼るしかないな。
「ライ、説明してあげてくれ」
「ああ! いいですか? よく聞いてくださいね」
「は、はい。どうぞ」
「俺達にとってこの場所は未知。そんな場所で見知らぬ人が明らかに俺達を目指して走ってきたら、当然警戒します。少なくともネムはそうだった。
でも、相手は危険物らしき物は持っていないし、それを隠せるような服装でもない。じゃあ安全か? いいえ、そこで安心しないのがネムなんです。
もしかしたら貴女が胸部に何かしらの武器を隠し持っているかもしれないという結論に至り、先程の行動に出た……といったところですね」
「な、なるほどですっ。でも、あの短時間でそこまでのことを……?」
「当然です。ネムですから」
ドヤ顔してるところ悪いけどさ、お前の思考回路ホントにどうなってんの? そりゃ結果的に良い方向に向かってるから文句はねぇよ? でもその超解釈はお前のどこから湧いて出てきてんのよ? 不思議過ぎるだろ。
女性も女性で謎に納得してるし、バカしか居ねーのか。……まぁいいや、深堀りしたら面倒くさくなりそうだし話題変えよう。
「で、結局のところ貴女は?」
「あっ、そうでした! こほんっ……はじめまして。私はこの学園の教員兼、学生寮の寮母を担当しているエルラン・トーラです。
ラインハルト・ノーヴァくん、ネムリア・クワイエさん。今日は貴方達2人の案内役として頑張らせてもらいますので、よろしくお願いします」
「あ、どうもご丁寧に。……って案内役?」
「はい。学園長からの指示なんです。くれぐれも丁重に、且つ失礼の無いようにご案内しなさいとのことで。特にネムリアさんの機嫌は損ねないようにと言われています」
「ネムの機嫌って、もしかして」
「まず間違いなく母さん絡みだろうな。ビビリ過ぎだろあのオッサン」
俺に万が一の事があれば母さんが飛んでくるとでも思ってんだろうな。そこまで過保護じゃ……いや言い切れねぇわ。
いつだったか、小さい頃どっかのヤンチャ坊主に突き飛ばされた事があった。その時たまたま近くに母さんとライが居た訳だけど、あの時もまぁ凄かったっけ。どちらかと言えばライが。
「ところで2人共、正門を潜った時に何か感じませんでした?」
「あったな」
「ああ。ネムが全身セクハラされたって」
「そうは言ってねーよ!?」
「よかったぁ。ちゃんと正常に機能したみたいですね」
「機能?」
「はいっ。この正門から先は学園の生徒や関係者、もしくは学園側から招待された方以外は通れなくなっているんです。
今回2人は入学という形ですので、こちらで予めネムリアさんとラインハルトくんの情報を魔導具に覚えさせて仮登録しておいたんです。
あ、その情報は贈り物所有者かどうか確認する際に用いられた魔導具から取り出した物で、不正に入手した訳ではないので安心してくださいね?」
あー、オッサンが持ってた玉のことか。あの時いろいろと身体的な情報まで抜かれたって感じなのかもな。……不正じゃね? まぁいいか。
「今正門を潜ったことで正式に登録が完了した筈ですから、晴れて2人は本校の生徒になったわけですね。その証拠に、左手の甲に紋様が刻まれていると思います」
「紋様? うわっ、マジだ」
「おー。これどうなってるんだ?」
エルラン先生に言われて手の甲を見てみると、なるほど確かに魔法陣っぽい赤い紋様が刻まれている。ちょっと格好いいなこれ。
「これで2人はいつでも正門を行き来できるわけですが、休日等に外出する際は予め申請を……ってそうでした、2人は特待生ですからその必要も無いんでしたね」
「特待生、ね。他とは違うってことか」
「はい。学園長の意向で、2人はあらゆる規則から逸脱して良しと。妙に声が震えてたのが気がかりなんですけどね」
そりゃ半端な扱いしたら母さんが半殺しに来るだろうからね……。
「あ、他の生徒よりも自由が許されてるとは言え、一応2人も学生の身ですからねっ。節度ある行動を心掛けてください」
「その辺りは理解しています。ちなみに、これは絶対に破っちゃいけないって規則はあるんですか?」
「え? ん〜……強いて言うなら、魔導具が保管されている大倉庫には立ち入らない事ですかね」
「ほ〜ん、ま当然だわな。魔導具って基本的には貴重品だし、下手に生徒を近付けさせる訳にはいかないんだろ」
「だな。分かりました。俺もネムも問題ありません」
(ある意味で問題児かもしれないって聞いてたけれど、2人共普通に良い子っぽそう。素行が悪い訳でもないし……学園長はどうしてあんなにも動揺していたのかな。
あ、でもいきなり胸を触られたのは……まぁいっか、女の子だし)
なんか今、ものすごく不名誉なことを思われてる気がする。こういう時って大体当たるんだよなぁ。
「それでは、さっそく校舎の方へ案内を……あれ? あれっ? ええぇぇ!?」
ようやく案内が開始されそうってところで、急にエルラン先生が自分の両手を交互に見ながら慌てふためき出した。体全体で表現するもんだから揺れる揺れる。眼福です。
「どうしたんですか?」
「大事な資料を寮長室に忘れてきちゃいましたぁ〜!」
「……」
「あわわわわ、朝一番に学園長に渡さないといけないのにっ、あれ? そもそも昨日の夜に記入したっけ……? ううん! した! した、はず……あれぇ〜!?」
うん、薄々分かってた。たぶんエルラン先生はドジっ娘属性持ちだ。これで教員兼寮母とか不安の塊でしかない。
仕方ねぇな。俺が嫁に貰って面倒見てやるよ。おら股開け。
【あの感触をもう一度】
【よせバカ。ライのケツで我慢だ】
【同行して美味しくいただこう】
バカはお前な!? 対象は違えど全部セクハラじゃねーか! お前は俺をどうしたいんだよ!
どれ選べばいいんだよこんなの……ライのケツなんて死んでも嫌だし、となれば必然的に二択。
いや、3つめの選択肢もありなのでは? エルラン先生緩そうだし、押せ押せで行けば案外コロッと落ちる可能性もある。
(フッ、ナメ過ぎなんだよ運命選択。据膳食わぬはって言うだろう? ならお前が用意したご馳走、ありがたくちょうだい──)
そうして3つめの選択肢を選ぼうとした刹那、脳裏に過る悲しそうな最愛の妹の姿。
初日から妹の想いを裏切っていきなり事に至るバカがどこに居る! 愛されるどころかゴミを見る目で俺を見下すようになるかもしれないだろ!
お前それで生きられんのか!? いいや無理だね! 妹成分無くして俺という存在は成り立たん!
(兄ちゃんはお前を裏切ったりなど……しないっ!!)
⇨【あの感触をもう一度】
ここでライを選ばない辺り、俺の欲は果てしないんだな〜って。ははは。
「ふひゃあっ!!?」
「ネム!?」
先程よりも力強く、かつ若干捻り上げるようにエルラン先生の兵器に片手を埋めた。
この指先に感じる少しばかり硬い感触……お前もちょっとは分かってるじゃねぇか運命選択。だがな、そこまでしておいて体の自由を戻すのは良くねーな。最後までお前がやれや!
言い訳だ! 言い訳を考えろネムリア!
「柔ら……おほんっ、落ち着きましたか?」
「ふえ……?」
本音がダダ漏れそうになるのをギリギリ抑えて、当たり障りのない一言を放ちながらエルラン先生から手を離す。
すると、エルラン先生よりも早く声を上げたのは誰あろう愛すべきバカだった。
「なるほど! そういうことか!」
「え、えと……どういうことなんでしょう……?」
ね? おら俺にも分かるように説明してくれよ勇者様。
「端から見てもエルラン先生の取り乱し様は凄かった。少し声をかけたくらいじゃ落ち着きを取り戻すのも難しい。
そう結論付けたネムは、少々強引ながらも今の行動に出たんですよ。実際、エルラン先生も驚きの方が勝って落ち着けたでしょう?」
「「た、確かに……!」」
「え?」
「あ、ごほんっ! そう、流石の洞察力だライ」
あぶねー、相変わらずの超解釈に思わず納得の声を上げてしまったぜ。だけど、それで納得するようなら世の女性達は触りたい放題だ。普通なら問答無用ではっ倒されても文句は言えない。
「そういうことだったんですね……あの一瞬で即行動に移せるなんて普通じゃできません。凄いですねネムリアさんっ」
しかし悲しいかなエルラン先生は普通じゃなかった。いや助かるけども。
その純粋な眼差しが俺の心に刺さって痛い痛い。
「エルラン先生はその忘れた資料を取ってきてください。俺とネムで先に校舎の方へ行っておきますよ」
「うっ、すみません……案内役として失格ですね」
「人間誰しもネムを除けば失敗するものですよ」
サラッと俺を超人扱いすんのやめろ!!
「ふふ。分かりました、それじゃ先に行っててもらえますか? 校舎はここを真っ直ぐ進んだら見えてくる階段を登った先です。
他の生徒さん達も出入りしてる筈ですから直ぐに分かると思いますよ」
「分かりました。じゃ行こうぜネム」
「おう」
これ以上事をややこしくしないためにも余計な一言は発さず、俺達はそそくさと歩き出した。
【校舎が見えてくるまで逆立ち移動だ!】
【初めのインパクトってのは大事だ。大声で歌いながら行こう】
ざっけんなお前ゴラァっ!! ややこしくしたくねぇって言ってんだろが! どっちも漏れなく変人扱いされちまうじゃねーか!
クソがっ、こんなもんパッとやってパッと終わらせる方がいいに決まってる! 不特定多数に聞かれるリスクがある下は論外だ!
⇨【校舎が見えてくるまで逆立ち移動だ!】
「おらぁついて来いライ! うおおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「す、すげぇ! こんな時でも自分を鍛えることを忘れないのか! さすネムだぜ! なら俺も負けてられないな!」
こうして、登校初日に逆立ちで爆走する奇妙な2人組の図が完成したのである。
どうでもいいけどお前まで逆立ちする必要なくない?
「……変わった2人だなぁ。ハッ、じゃなくて資料資料……!」




