妹ちゃんの秘め事
時刻は夕暮れ時。
決まってしまった贈り物養成学園への入学に辟易としていた俺は、本人そっちのけで盛り上がる母さん達を見限って畑仕事へと繰り出した。
外で汗を流していたノノと合流していつもの農作業。しかし頭の中は今後の不安でいっぱいで集中もクソもない。
ふざけんなと声を大にして言えばよかったかもしれないが、余計なことを言ったら高確率で運命選択が割り込んでくるのは目に見えていた。
だからもう諦めた。たぶんもう、どう足掻いても入学の道は避けられない。どうとでもなれだ。
「……」
「兄ちゃん」
「……」
「兄ちゃん!」
「……うぇ?」
畑仕事も終えて夕食が出来上がるのを待ちながら、特に何かを考えるでもなくボケーっと自室のベッドの上に寝転がっていた時、ふと横から声が。
間抜けな声を上げながら頭を動かすと、いつの間にやら横にノノが居た。頭を俺の肩の上に置いて、何やら心配そうに見つめてきている。
控えめに言って可愛い。妹じゃなかったら惚れてる。いや既に惚れてるみたいなもんだけど。超可愛いね、結婚しよ。……いや、母さんの雷が落ちそうだからやめとこう。
「今日、ずっと変だよ。私が話しかけても上の空だったし、ギュってしても反応薄いし」
「……あー。うん、何でだろうな」
察しの通りノノにはまだ入学の件を話していない。母さんや父さんもノノの気持ちを理解してるから話していないのだろう。
何だかんだ今までずっと仲良し兄妹だったからな。突然、学園に通うことになりましたなんて言ったら悲しまれるのがオチだ。
家から通うとかならまだしも、去り際に言い残したオッサン曰く学園は全寮制らしい。つまり、入学すれば否応なしにノノと離れ離れなのだ。
そんな簡単に言えるかよ。
「朝、うちに来てた人達が関係してるの?」
「……そんな訳ないじゃないかー」
「兄ちゃんって嘘下手だよね」
「失礼な。最愛の妹に対して嘘を吐くのが苦手なだけだ」
「どっちにしろ嘘なんじゃん」
「鋭いな。流石はノノ」
「むぅ〜。こっち見て話してよ。そんな悪い兄ちゃんにはこうだっ」
「ぐえっ」
気まずさから視線を逸らして話していたのがいけなかった。痺れを切らしたノノが俺の腹に跨って見下ろしてくる。
咄嗟に顔を逸らそうとしたが、その前にノノの両手に捕まってしまった。グイッと顔を近付けてきたノノは分かりやすくご機嫌斜めな様子だ。
うーむ……しかし本当に俺の妹可愛いな。長いまつ毛、きめ細かな白い肌、透き通った瞳、聞く者全てを虜にするキャワワボイス。
未だ13歳でこのレベルなのだから、あと数年もすればとんでもない美人さんになるのは言うまでもない。
肉体的にもしっかり女性として成長してきてるし、これは男共が黙ってはいないだろう。まぁ寄ってきたら俺が蹴散らすが。
「隠し事は良くないと思う」
「なんのことかなー」
「言わないなら、このままち、ち、チュー、しちゃうから」
「え、望むところだけど?」
「むー!」
思ってた反応と違ったからか、ノノの機嫌がますます悪化した。膨らませたほっぺが素晴らしいよね。
でもさ、仕方ないだろ? 世界一可愛い妹からチュー宣言されて拒否する兄貴なんて居るか? いいや居ないね! おら来いよ!
「……じゃあ、話してくれないならもう口聞かない」
「学園に行くことになったんだよ」
鉄壁の守りを誇る我が口も、妹の前では砂の城である。ノノに嫌われるくらいならライの秘密全部を世界中にぶちまけた方がマシだ。
「学園?」
「そ。贈り物の扱い方を学ぶための施設なんだと。ライの奴がとんでもない贈り物を受け取ったせいで俺まで巻き添え」
「へぇ~、凄いねライさん」
あ、ライに対するノノの好感度が上がった気がする。しまった、早計だったか。
「ん〜、でもそれならいっかぁ。兄ちゃんと暮らせなくなる訳でもないみたいだし」
「……」
そら来た。どうすんだよこの気まずい状況。言えねーよ。
【妹に隠し事はできない。正直に話す】
【よし、煽ろう】
煽ってなんの意味があんの!? お前やっぱノノに恨みでもあんだろ!?
⇨【妹に隠し事はできない。正直に話す】
「その事なんだけどな、ノノ。どうも学園へは家から通う訳じゃないらしくてさ。向こうの寮に入ってそこで暮らすんだと」
「……え?」
「だから今までみたいには過ごせないんだよ。ごめんな?」
「……」
本当なら「冗談でーす!」と言いたいところだが、悲しいかな事実が故に訂正も出来やしない。
何となく気まずくて視線を彷徨わせる。肝心のノノは何かを言ってくるわけでもなく終始無言だ。
「……? んむっ!!?」
流石に妙だなと思い視線を戻したその瞬間、視界いっぱいに広がるノノの顔。そして唇に感じる柔らかな感触と熱。
あまりに唐突過ぎて思考がフリーズ。どれだけ見ても今の状況が理解できない。
何で俺は本当にノノからチューされてるんだろう?
【よくも俺のファーストキッスを! 妹とて許さん!】
【受けに徹するなど男ではない。色々とねじ込んでやる】
【ちょっとした意趣返しだ。逆に押し倒して立場を分からせる】
おおぉぉぉぉぉぉぉいっ!!! どれ選んでも状況悪化するじゃねーかよ! もっと他にあっただろクソバカがっ!
何をどう許さないの!? 何をねじ込むの!? 押し倒してどうすんの!? 詳細を教えろや!
よく考えろネムリア、これはおそらくノノの好感度に直結する重要な選択肢だ。間違えれば俺は社会的に死ぬ、ないしは母さんにチクられてどの道死ぬ。
一つ一つ考えていこう。まずは一番上の選択肢。
これは分かりやすく論外だろう。選んだ途端にノノに対して暴力的な行動に出そうで怖い。そもそも俺はファーストキスなんぞ重要視していないのだがね。乙女じゃねーんだよ俺は。
次に真ん中。これもこれでどうなのだ。ねじ込むってなんなんだよ。この状況からねじ込むのだから、普通に考えて舌か? いや、舌だけならまだしも色々とと書いてあることから最悪の場合、ナニをねじ込む可能性がある。
そうなったらもう後戻りできない。責任を取って兄妹で禁断の恋物語を始めるか、母さんに金玉潰されるかの二択。
そして最後の選択肢。これが最も安全そうに見えるが、果たして本当にそうだろうか?
どの選択肢にも言えるが、何をするのか明確には書かれていない。だから安全そうに見えて実は一番えげつないってパターンも十分考えられるのだ。
押し倒した後すぐに体の自由が戻る保証も無い。あまりにリスキー過ぎる。
どうする、どれが正解だ? どれを選べばノノを傷つけずに終わらせられる?
最悪俺だけ悪者になるのは致し方ない。だがノノだけは巻き込めない。俺の妹への愛情ナメんなよクソ贈り物め!
えぇい、賭ける他ない!
⇨【ちょっとした意趣返しだ。逆に押し倒して立場を分からせる】
「んんっ!?」
一番下の選択肢を選んだ途端、相変わらずの謎パワーを発揮して上体が引き起こされる。繋がった唇はそのままにノノを持ち上げ、押し倒し、あっという間に立場が逆転。
真ん丸に目を剥くノノの瞳を真っ直ぐに見つめながら、俺は静止した。
……ん? いや、え?
なんで止まってんの? ここから何かしらのアクションがあるとかだろ? 何でずっとチューしてんの!?
「っっ〜〜!!」
ノノが恥ずかしそうに目を閉じた。にも関わらず両腕は俺の背中に回されて更に強く抱き締められる。
羞恥心やら何やらで小さく震えているのに、俺の唇を必死にこじ開けようとしているのは間違いなくノノの舌。
俺の妹エロかわ──ゲフンっ! そうじゃなくて! ノノはともかく俺は何してんだって話だよ! 立場を分からせる云々はどこ行った!?
「ぷはっ。ぁ、兄ちゃん、口開けてほしい……」
「ふん。俺の口内を蹂躙しようなどと10年早いぞ。こう見えても俺は口が固いからなぁ。これ以上を許すつもりはない」
「むぅぅぅ」
あ、分からせるってそういう……。別に俺はノノが満足するまでやってもらっても構わないのだが、まずこんな行動に出た理由をノノに聞くのが筋ってもんだろう。
幸いにも体の自由は戻った。素早くノノから離れてベッドに座り直し、問い掛ける。
「で、こんな暴挙に出た理由を教えてもらおうか。理由によっては続きをしてやってもいい」
キスまでならセーフだと思います。
「だって、兄ちゃんと暮らせなくなるし……寂しいじゃん」
「かわ、おっほん! それだけか?」
「……学園ってことはさ、いろんな生徒が居るんでしょ?」
「まぁ、そりゃそうだろうな」
「そんなところに泊り込みでずっと通ってたら、絶対寄って来る。悪い虫が」
悪い虫? ふんふむなるほどなるほど、そういうことか。やれやれ、うちの妹ちゃんは心配性だなぁ。
「つまり、その悪い虫が俺を食べちゃう前にツバつけとこう。あわよくばネットリグッチョリな深い繋がりを作っとこうってわけか。……なーんて言ってみたり」
「そうだよ」
そうだった。え? 本気で言ってるのかノノ? 俺はてっきり、かわいい嫉妬心故の衝動的な行動だと思ってたのに、想像の遥か上を行きおった。
深い繋がりって意味分かってる? ……うん、真っ赤になってるノノの顔を見るに理解はしてるっぽい。マジか。
そりゃ俺としてはまったくもって構わないしノノなら大歓迎だけど、それを許してくれないのが社会&両親ってもんだ。
「兄ちゃんは格好いいし、可愛いし、優しいし、何だかんだ誰かのために行動できる凄い人だもん。
そんな兄ちゃんを他の人が放っておくはずない。私は、兄ちゃんが取られるのだけは絶対に嫌なのっ」
「お、おいノノ……?」
長年一緒に過ごしてきたが、こんなに必死なノノは初めて見る。泣きそうと言うよりか、あれだ、好きで好きでどうしようもない相手に精一杯想いをぶつけようとする女の子。まさにそれ。
ここまで言われて気づかないほど俺もニブチンではない。
昔からノノは俺を慕ってくれていると思っていた。でもまさか、それが本気の恋だったと誰が想像しただろう。少なくとも俺は兄妹愛でしかないと思っていた。
「お願い、兄ちゃん」
そのお願いがいったい何を意味しているのか。艶っぽい表情で俺を見つめるノノが徐々に近付いてくる。
くっ! これで13歳とは恐れ入る! ノノが妹じゃなかったら既に服を脱ぎ捨てているところだっ!
【いただきます】
【いただきます】
【いただ、き……?】
おいふざけんなテメェ! どういう選択肢だよそりゃ!?
えぇいクソッ、上2つは論外だ。意味の分からん選択肢しか選べないが、問答無用で事に至るよりは遥かにマシだろう。
⇨【いただ、き……?】
「そうか。それがノノの本音か。なら俺にも応える義務が…………ひぇ」
途中までは完全に運命選択による支配で動かされていた。しかし何故か徐々に視線が横を向いていき、扉がある方で動きは止まり、そこからジッとこちらを覗く紫色の目を発見した途端に体の自由が戻った。
どんなタイミングで戻してんだバカ。……いや、今回に限っては良いタイミングだったのかもしれない。
扉の隙間から覗く何者かの正体なんて知れている。この家で薄い紫色の瞳を持った存在は、俺とノノを除けば1人しか居ないのだから。
何やってんだ母さん。
ひとまず正体は分かった。でもこの状況をどう説明すべきだろうか。今まさにやることやろうとしていた実の兄妹を目の当たりにした母親の心境や如何に。
まずもって高確率で俺がぶっ飛ばされるよね。
それは避けられない。だったら甘んじて受けよう。俺がすべきは怒られるのを回避するのではなく、ノノを正気に戻す事だ。
俺が好きで好きでしょうがないのはめっっっっっちゃくちゃ嬉しいけども、ノノには道を外れてほしくないからな。
……あと、マトモな事を言えば多少お説教も和らぐかもだし。
「兄ちゃん?」
「ノノ、俺達は血の繋がった兄妹だ。踏み越えちゃいけないラインってもんがあるのは分かるだろう?」
「分かってる。でも、私はそれでも、兄ちゃんが好きっ。今までずっと兄ちゃんのために色々頑張ってきたもん。
ライさんよりもずっとずっと、私の方が好きだもんっ」
何でそこでライが引き合いに出てくんのか理解できないけど、まぁ置いとこう。それどころじゃねぇ。
「それでもだ。それにノノはまだ13歳、青春はこれからだぞ? この先、それこそ近い将来他に好きな人が出来るかもしれない。
その気持ちはソイツのために取っておくのが一番だと俺は思うわけだ」
「それはないかな。兄ちゃん以外に恋なんてまずないよ。うん、絶対ない。意地でも恋しない」
頑なっ! すっげぇ好きじゃん俺のこと! 抱きしめてもいいですか!?
いやいや落ち着け。勢いでチューしちまったもんだから、今のノノは引くに引けない状態なんだろう。こうなったら行くとこまで行く考えは嫌いじゃないぜ。
でもダメなんだよノノ。なんたってお母様が見てるからな! 間違っても道を踏み外せないんだよ! 手を出した瞬間、即ちそれは俺の死を意味する!
そこで刮目するがいい母さん! これが息子の鋼の精神ってもんだ!
「だとしても、ダメなものはダメだ。俺はノノの兄貴なんだからな。分かってくれ」
「この意気地なしっ!!!」
「ブバァァッ!!?」
刹那、俺の顔面にめり込む足。なすすべなく吹っ飛ばされ、俺は壁に叩きつけられる形となった。
ノノではない。何故か静観を決め込んでいた母さんが突撃してきてドロップキックをかましてきやがったのだ。
「お、お母さん!?」
「よく言ったわノノちゃん。お母さんずっと2人の仲についてヤキモキしてたから、一歩踏み出したノノちゃんは本当に偉いと思う! あとでいい子いい子してあげるわねっ」
「え、いや別にそれは……」
「それに比べてネムちゃんときたらもう……あそこまで気持ちをぶつけられて手を出さないなんて本当に私の子供かしら? 兄妹なんてちっちゃなこと気にしちゃっても〜、ムカつくわ!」
えぇ〜……? まさかの肯定派なのかよ。何で至極当たり前のことを言ってた俺がこんな仕打ちを受けねばならんのだ。納得できねぇ。
「倫理的にダメだろ! 俺間違ってない!」
「倫理? 兄妹だから? 禁断の恋? 上等じゃない。お母さんの前ではどれもこれも雑魚同然。
お母さんは本人達の意思尊重派なの。世間が許さないって言うのなら、力ずくで認めさせちゃうわ」
考え方が悪党のそれ!
「そもそもお母さんの種族は家族間での恋なんて普通よ? 実際、兄妹の間に生まれたのがお母さんだし」
「なにサラッととんでも発言してんだよ! 初耳だわ! というか人間にそんな常識があってたまるか!」
「あら、お母さんが人間だなんて言ったことあったかしら?」
「「違うのっ!!?」」
ノノと反応が被った。そりゃそうだよ、いきなり人間じゃないよ〜ってヌルっと言われたら誰でもそうなるわ!
「正確に言うと、2人は人間の血も混ざってるからハーフね。お母さんは紫眼族っていう特殊な種族なのよ。
世界的に見ても珍しいから、あまり認知されてないのよね〜。少なくともこっちに来てからは同族に会ったことはないわ」
「待て待て待て! そんなスラスラ言われても頭の理解が追いつかないって!」
「ちなみに紫眼族の特徴として、いつまでも若々しい姿ってのがあるの。歳は重ねても美しく凛々しく、一生涯モテモテだから勝ち組よねぇ」
だから母さんって昔から見た目変わらないのか! おかしいと思ってたんだよ……見た目ずっと子供なんだもん俺の母親。
「ほ、他にはどんな特徴があるのっ?」
「ノノ!?」
なんてこった食いついちゃった! やめて聞かないで! 何か嫌な予感がする!
咄嗟にノノを止めようとするも、当の本人は既に聞く気満々のご様子だ。母さんもやけにノリノリになってるし!
「そうねぇ。紫色の髪と瞳が特徴的で、戦闘種族だから基本的に強い人達ばかりなのと、魔力制御に長けてる点。
閉鎖的であんまり他の種族とは交流もしなくて、独自の文化を築いてるわね。男女ともに愛情深くて身内には極端に甘い。女性は特に性欲が強め。あ、あと性別関係なく女性顔で全体的に身長が低いってことくらいかしら」
うわあぁぁぁぁぁぁ!!! 最後の最後に聞きたくなかった事実が暴露されたぁぁぁぁぁぁ!!!
ほら見ろ! 嫌な予感は当たるもんなんだよ! 他の癖つよ要素がどうでもよくなるくらい最後の衝撃が凄い! この見た目が嫌いな俺からすれば死刑宣告と変わりねぇ! 絶望的じゃねーか!
「まぁでも2人はハーフだし、この特徴が必ず同じとは限らないわ。その証拠に、ノノちゃんは背も伸びてきてるでしょう?」
っ! そ、そうか! まだ望みは絶たれていない!
母さんの言う通り、ノノは俺を越す勢いで成長し始めている。即ちそれは、俺にもまだ伸び代があるかもしれないってことだ。
頼むぜ父さんの遺伝子よ! 俺にその身長と男らしさを分け与え給え!
「と、簡単に紫眼族について説明したところで……ネムちゃん?」
「あ、はい」
どうやらまだ話は続くらしい。母さんから発せられる謎の圧に押し潰されそうになり、俺は慌てて姿勢を正した。
「ネムちゃんにもネムちゃんなりの考えがあるのは分かるわ。でも、ノノちゃんの想いを簡単に突っぱねるような真似はしちゃダメよ?
今すぐに答えを出さなくてもいい。どれだけ時間がかかっても、しっかり考えて応えてあげなさい。いいわね?」
「母さん……」
「そしてさっさと可愛い孫を見せてちょうだい」
おい本音ぇ! 既に俺とノノがくっつくの確定してるじゃねーか!
……ん? いや待てよ? 確かに世間的に見れば許されないが、その紫眼族ってのはそういうことにも寛容で、しかも母さんは肯定的。
つまりこれって、別にノノを娶っても問題ないのではなかろうか。うひょっ。
「(ってバカ! そもそも妹をそういう目で見ること自体キショいだろ! 確かにノノは世界一可愛いが、やはり超えてはならない一線がある!)」
暴走仕掛けていた思考を何とか押しとどめ、ふかーく深呼吸。
そうだ、いくら周りが許しても、ノノは妹。家族であって恋人ではないのだ。まったくどうかしてるぜ。
紫眼族はどうだか知らんが、俺はあくまでも真っ当な関係性でまだ見ぬ嫁さんと添い遂げるのだっ。すまんノノ! これもお前を想うが故!
【前向きに検討する】
【今夜が本番だ。体を清めて待っていろ】
【そんなこと言ったって母さん。私にはもうライという旦那が!】
お前さぁ……ホント、お前って奴はさぁ……。
結局、選ぶべき選択肢など一つしかなく、俺は今後もノノと向き合っていくことになるのだった。
余談だが、この日からノノがやたらと夜這いを仕掛けてくるようになった。まだまだ子供故の可愛いものだから揺らぐことはないものの……いやごめん、揺らぎまくってるけど、これ成長した姿でやられたらどうなるのかと今から震える思いである。




