2月5日 この先
机には、ほぼ使ってないんだろうなと思える教科書とワークが積み重なっていた。机がお兄ちゃんを物語っていた。壁紙は少し黄ばんでおり、一人暮らしにしては少し古びてきているようだった。
那由多「へぇー。なるほどな」
この部屋のあかりは、ここだけ。おそらく、普段は家にずっといないんだろうな。そう思った。
那由多「今は、勉強いいのか?」
僕 「さっきまでしてたしいいよ」
もし落ちたら、次のテストは2月25日。まだ、時間はある。
那由多「じゃあ、今日は勉強しないのか?」
僕 「ああ。心配しなくても大丈夫だよ」
那由多「ならいいけど」
時間はゆっくりと流れるようで、意外と早い。もう、22時を過ぎていたのだ。お母さんから持っていくように伝えられたカップ麺たちを置いていたのだ。
僕 「今日は、大学ないの?」
那由多「ああ。ないよ。お前が来るまでずっとバイトだったよ」
僕 「そうなんだ」
意外だった。もっと遊んでいるのかと思っていただけに。
那由多「俺もそろそろ、これからのこと真剣に考えないといけないからな」
僕 「そうなの?」
那由多は、4月から大学4年生になる。いわゆる就職活動に入るのだ。
那由多「お前も大学生になればわかるよ」
僕 「僕は、研究者になりたいんだ」
那由多「大変だぞ?研究者は」
僕の中では、大学はあくまでも一つの通過点。
僕 「まぁね、、、、、、」
那由多「じゃあ、大学院まで行くのか?」
僕 「ああ。学費もかかるし、バイトもしないといけないな」
大学に行けば、勉強から解き放たれるとは思っていなかった。それ以上に、お金や遊びなどシガラミの方が多い。
那由多「もし、お前が大学院に行くなら俺が学費出してやるよ」
僕 「えぇ、ほんと?」
那由多「まぁ、頑張ってくれてるしな」
お兄ちゃんとしての器の広さを感じる瞬間だった。昔から、那由多はチャランポランに見えてしっかりしてるところがあった。ここ一番には、必ず力になってくれていた。僕が高校1年生から大学受験の勉強をしていたこともきちんと見てくれていたのだろうな。
僕 「まぁ、まずは大学に受かることが優先だけどな」
那由多「大丈夫だよ。お前なら必ず受かる」
どこかホッとした自分がいる。那由多に言われて、嬉しい気持ちになっていた。