2月3日 帰り道
車窓には流れ星のように過ぎさっていく景色が見えていた。僕がいる座席は、クッションの手触りと、革張りの柔らかさがあり、車内の灯は夜を象徴していた。どうだったと言われても、わからないというのが正直な答えだった。今回受けたテストは、国語、数学、英語の3教科だった。どれも、難しく合っているか間違っているかは検討すらつかない。自分のイメージの中では、50〜70点くらいだった。70点になる可能性もあれば、40点の場合もある。そんな感じのテストだった。合格ラインは、3教科平均60点以上。約180点となる。今日のテストのできからすると、僕の合格パーセンテージは、30〜50%だろうな。
先ほど流れてきた車内アナウンスは、まもなく群馬を通り過ぎるというものだった。お母さんから、何時に迎えにこればいいかという連絡が入っていた。今の時間から逆算すると、大体21時くらいだろうか?とりあえず連絡を入れていこう。お母さんだけでなく、兄の那由多からも連絡がきていた。「テストどうだった?」というとても直近な質問だった。これで、もしよくなかったら、那由多は、なんて返すのだろうか?相変わらずよくわからない兄である。ときおりレールの響きが、座席の背もたれに振動のように体を震わしていた。僕は、窓際の席に身を寄せ、指先で窓枠の縁を撫でながら、なんて那由多に返信しようか迷っていた。
家にいればなぁ。直接話せるんだけど。近くにいないからこそ、どのように伝えたらいいかわからなかった。「まぁ、普通だよ」、「まぁまぁかな」なんていう曖昧な返事をすると、必ずツッコンできそうだ。かと言って、「できたよ」なんて返事をしてしまうと、落ちてしまった後に、しめしがつかない。考えれば考えるほど余計わからなくなってしまっていた。車内を見渡すと、本当にいろいろな人がいることがわかる。私の横には、30代後半くらいのサラリーマンがノートパソコンと睨めっこをしている。僕もいつかこうなっているのだろうか?そう思うと、なんとも言えない気持ちになってしまう。僕の後ろの席には、年配の女性が折りたたみ傘を丁寧にカバンの中にしまっている。そして、通路には子どもたちが動いているのをお母さんが注意している光景が見られた。いろんな人がいる中で、僕たちはこれからも生きていかないといけない。それは、理解しているようでしていなかった。当たり前と思っていても、いつか当たり前ではなくなる。それをいつか理解しなければいけないのだ。