2月2日 『ワタナベ2』
やはり、想像した通り雨だった。雨が降り続ける中、俺はホテルに向けて静かに外へ足を踏み出していた。13時に家を出てお母さんに駅まで送ってもらう。そこから、電車をついでここまで辿り着いたのだった。お母さんからは、自分の力を出し切ることだけを望まれていた。空から落ちてくる無数の水滴が、僕の傘に溜まる。この雨がどれくらい打っているのだろうか?昨日、雨が降るとは言っていたけど、こんなに降るとはな。
僕は、紺色の傘を広げながら、ゆっくり歩いていく。ここから、ホテルは約4分くらい。スマホを見ながら進んでいく。スマホの地図を見ると、右左と曲がっていく。思ったよりもわかりにくいな。雨の中、傘をさしているということもあり、前が見にくい。どうやら、ここら辺の街は、とても静かなようだ。道路があるのに、全く車は通っていない。まるで車の少なさがこの街全体を現しているように思う。僕が進んでいく道の横にある道路は、時折水たまりができており、車が通ると、水たまりが一気にはじける。
水たまりがはじける様子は、まるで心の中が爆発するような感覚だった。なんでそんなこと思ったのだろうか?さっきまで乗っていた新幹線の中で読んでいた小説の影響かもしれない。さっきまで、小山の新作である『ワタナベ2』を読んでいた。この本は、3月末に映画化される予定で、アイツと一緒に観に行く約束までした。それなのに、、、、、、。アイツのことを考えてしまうと、一気に気持ちが沈んでしまう。テストは明日に迫っているというのに。できるだけ考えないように、スマホに目をやった。
スマホからは、残り2分と表示されていた。この大雨の中歩いていたこともあり、靴の底から水の冷たさを感じる。どうやら、靴を通り越して足まで染み込んでくるようだ。こういう状態はたまにある。でも、ムズムズして一刻も早く家に帰りたくなる。でも、どうしようか。予備の靴下は一枚しかないな?乾かせばいいか。
ようやくホテルが見えてきた。少しずつ通り過ぎる人も増えてきた。みんな急ぎ足で傘を差して歩いていく。まるで雨を避けるかのように急いでホテルから出ていく。田舎ということもあり、タクシーもあまり通っていない。本当にこんな大学でよかったのか?少し疑問だった。僕がいつも迷っていた時、アイツは僕の進むべき道を照らしてくれた。大学に受かって今度は僕が照らさなきゃ。もう大丈夫。そう言い聞かせてホテルへと入っていった。