1月25日 カフェ
まさか、今日も来るとはな。もともと、今日来る予定はなかった。しかし、昨日アイツに言われたもんだから来るしかなかった。アイツが昨日言おうとしていたのはなんだったのか?僕は、それを聞くためだけに今日来てしまったのだ。アイツのそんな一言にそそのかされている自分が情けない。ただ、アイツのことがわかるだけでいい。そう思う自分が心の中にいる気がしてならない。本来であれば、アイツが東京に何しにいったっていい。僕には全く関係のない話だ。それなのに、なんでこんなに気になってしまうのか。
いつものようにドアを開ける。すると、店内には、カフェミュージックが流れている。木製のテーブルと椅子が店内の様々なところに並べられている。今日は、土曜日ということもあり、いつもより人が多い様に感じる。どこか、席空いてないかな?心地よいコーヒーの香りが漂っているのに、店内は人がいっぱい。一気に気持ちが下がってしまう。もう、テラス席しかないかな?さっき、外は見てきて空いているのは確認していた。
さっきとは、逆方向に歩き回る。こっちの壁には、様々な画家が描いたであろうアートが所狭しと飾られている。カフェミュージックと綺麗にシンクロしていた。前にいた4人組の大学生たちは、この時間をとても楽しんでいるようだ。壁側の一人がけの先には、女性が一人でノートパソコンを打っていた。仕事をしているのだろうか?時折、窓の外を眺めながら、指を動かす彼女の表情には真剣そのものだった。やっぱり働くってこういうことを言うのかな?ソートミル株式会社に入社しようとしていた私は、一気に不安になってしまう。
やっぱりテラス席しか空いてない。僕は、カバンを置きアイツを待つことにした。しかし、もう約束の時間から20分もたっている。遅刻とかいうレベルじゃない。さらに連絡すら来ていない。何をしているのだろうか?とりあえず、注文しにいくことにした。今日頼んだのは、コーヒーのエムサイズ。高校生は、こういう店に行ってもコーヒーなんて頼まない。けど、僕はこういう文化が嫌いだった。ホントはこういう時に、流行りのものやみんなが注文しているものにしないといけないのに、それが昔からできなくて歯がゆかった。僕は、コーヒーを一口いれる。苦味が口の中に入り混ざり、少しだけ顔がこわばる。俺の手元には、いつものマグカップだった。再び、あたりを見渡し、アイツがいないか探し始めていた。