1月15日 2053
前方で試験監が話している中、教室の隅で、僕は試験終わりの合図を静かに待っていた。鋭い鉛筆の音が最後と言わんばかりに響いていく。受験者たちは、最後まで粘っていた。残り試験時間は、4分。緊張した空気が部屋に漂んでいるが、それは朝から変わらない。受験生は、必死な顔もちで試験を解いているみたいだ。中には落ち着きなく足を揺らしたり、消しゴムで文字を消しているのも見える。試験が終わるのを待っていると、私の視線は一人に釘付けになった。
それは、前前列に座る女性だった。彼女の一生懸命に解答用紙に書く姿勢は、決意に満ち溢れているようだ。気合の入ったポニーテールが揺れており、真剣さを物語っていた。彼女の机には、鉛筆が5本、消しゴムは3つと準備に余念がなかった。試験官が静かにドアを開け、新しい人が部屋の中に足を踏み入れた。その瞬間、鉛筆を動かす音はピタリと止まり、部屋が一瞬静寂に包まれる。しかし、時間はまだある。まだ終わっていない人は、ふたたび筆を走らせた。
残り3分。試験監督は、再度受験番号と名前を確認するように促した。簡単な説明を述べると、生徒たちは一斉に問題用紙に手を伸ばし確認し始めた。私も名前と試験番号に目を通す。私の試験番号である"2053"がきちんと書かれており、ホッと胸を撫で下ろした。鉛筆の走る音が再び鳴り響く。私はカンニングしてるように見られてはいけないが、気になって辺りを見渡した。先ほどの女性は、問題用紙の上を注意深く見つめた。そして、再び書き出した。彼女の眉はわずかにひそみ、高速に鉛筆を動かしている。残り1分。部屋の緊張がさらに高まっていった。あぁ、終わった。僕は、鉛筆を置き、残り30秒をだまって待っていた。蛍光灯の明かりが教室を照らし出し、生徒たちの真剣な表情を浮かび上がらせていた。静寂を破ったのは、試験監の声とともになるチャイムだった。さっきまで聞こえていた鉛筆の音がなくなった。
待ちに待った本番だった。もう間もなく終わる。今日は、頑張ったけど結果は自己採点してみないとわからない。明日もあるから、早く家に帰ってねる。そして、明後日から自己採点をしようかなと思っていた。点数とれなかったらどうしようという思いはあった。僕の解答用紙は、サラリと試験監督が持っていってしまった。もうこれから、どうこうはできない。あとは、1点でも高いことを願うことしかなかった。