12月24日 坂道
もう、クリスマスイブなんて信じられない。クラスで行われていたパーティーを横目に、俺は教室を通り過ぎていった。家でもクリスマスだからといって、何かするなんて、もう随分していない気がする。小学生くらいまでは、クリスマスプレゼントで那由多とたくさん話していたけど。
あれだけ昨日話していたアイツは、どこにも見つからなかった。何をしているのだろうか?まぁ、なんかしていて後で合流するのだろうとは思うのだけど。見つかる前に早く学校を出ることに決めたのだった。
俺は、ゆっくりと自転車置き場へと向かう。昨日、アイツに言われた言葉を思い出した。東京かぁ。行っても行かなくても。自分の気持ちを素直に吐き出さないでいた。自分が上手く人と関われないことをただの言い訳にしていないだろうか?
自分で自問自答してしまっていた。俺は、階段を降り、坂道を降り始めた。もうクリスマスだから、通い慣れたこの学校に来るのも残り3ヶ月ほど。つまらない毎日から抜け出すためにも、頑張る必要があるのかと思った。今日は、いつもより生徒が少ないような気がする。部活動も、野球部とサッカー部くらい。
坂道から、ピッチング練習をしているのが見えた。たしか、あれは小川だ。小川は、2年から先輩の試合に出ていた選手ということは聞いていた。180cmほどの長身から投げ下ろすボールは、とても早く感じた。野球をほとんど知らない俺には、とてつもなく凄く見えた。そんな小川の後ろには、3年の橘と橋本が立っていたのだった。
キャッチャーから返ってきたボールを受け取った小川は、二人と何やら話しているみたいだった。そんな三人をが話しているのを片目で見ながら、坂道を下っていく。先ほどの道を左に曲がれば、徒歩で校門に辿りつくルート。右に曲がれば自転車置き場につくルートだった。もう、間もなく自転車置き場だ。やっと帰れると安堵した。
すると、何やら自転車置き場に人だかりができていた。なんだ?前方には、女生徒がたくさんいる。そして、先生も何人か来ていたのだった。早く帰りたいけど、この人だかりを抜けないと、自転車置き場には辿り着かない。しかし、なかなか人だかりがなくなることはなさそうだった。
諦めて遠回りすることに決めた。さっきまで通った道を引き返す。そして、100mほど来た道を戻ることにした。こうなるとわかるなら、最初から左の道を選択しとけばよかったのにな。