12月23日 移動教室
明日は、クリスマスイブかぁ。横で、高田や寺崎たちが話を聞いているのを見て思った。確かにクラスには、クリスマスの木が作られており、よくわからないがそこにたくさんの願い事も書かれていた。何が欲しいのだろうか?
アイツ「優斗、明日何してんの?」
僕 「別に何もしてねぇよ」
休憩時間は、残り5分だった。後ろにいた何人かの生徒は、次の移動教室のために動き始めた。
アイツ「じゃあ、明日、クリスマスパーティしようよ」
僕 「しねぇよ」
みんなは、クリスマスパーティとかするのか。平和だなぁ。俺も、机に置いていた音楽の教科書を持った。
アイツ「だって、みんないるし行こうよ」
僕 「嫌だって」
アイツ「いいじゃん」
こういう流れの時は、たいてい押されて負けるのがこれまでだった。
僕 「明日、行ったら26日休んでいいの?」
アイツ「いや、そういうことじゃないから」
今度は負けまいと交渉させる。
僕 「それだったら行ってもいいけど、どうする?」
アイツ「いや、両方来てよ」
さすがにこの提案にはのれないみたいだ。
僕 「それは、無理」
アイツ「なんでよー」
僕たちの横を生徒たちが通っていく。次の時間は、音楽だから移動しなければならなかった。
僕 「もう、休み時間終わるし、行くよ」
ポケットに手を突っ込んで歩き始めた。
アイツ「ちょっと待ってってば」
僕 「はいはいはい」
僕の後ろから声をかけてくる。
アイツ「あっ、そうだ」
僕 「ん?」
僕の横まで来て、話を続ける。
アイツ「もし、行ったらさ東京代わりに行ってあげるよ」
僕 「なんだよ。それ」
東京?頭の中でハテナが浮かんでいた。
アイツ「だって、行きたくないんでしょ?」
僕 「東京?」
あっ、そうか。この前のお兄ちゃんと話していた話のことか。
アイツ「うん」
僕 「そりゃあ、そうだけど」
階段を上がっていく。
アイツ「お兄さんは、安く行けたらいいんでしょ?」
その通りだ。俺のお兄ちゃんは、安くいくことしか考えていない気がした。
僕 「うん」
アイツ「じゃあ、代わりに誰か呼んであげるよ」
僕 「全然わかんねぇし」
アイツは、僕に言い返したかのように、ドヤ顔をして、音楽室に入っていたのだった。