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妖精と神官  作者: 爽健茶美
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5 属性診断

 

 フリードリヒ宰相を質問攻めにして一旦落ち着いたレイは、トランクの中からお外でもギリ履けるルームシューズを取り出してミュールと履き替えた。


「脚が疲れ気味なので、癒しの使いヒーラーさんとかいらっしゃいませんか?」


 と聞いてみたのだが、


「それは……お医者様のことですか」


 と、普通に返されたので治療は諦めた。


 その後、属性を調べるため、アルフレッド王子とフリードリヒ宰相に連れられ、王を支える側近達が待つ神殿へ案内された。


 側近達は信仰深いフィンレー王国の神官達だった。

 神殿は城から馬車ですぐの場所にある。

 丈夫なクリスタルのようなもので出来ているのか傷一つなく、壁も床も柱も全てが光を反射して、七色に輝いていた。

 ちなみに神殿の中では、全ての属性は無効化される。

 稀な話だが、属性力が強すぎる子供は、属性診断時に魔法を暴走させてしまうことがあるらしい。


 レイ達が歩いてくると側近達は、いかにも神官です的な白いロングローブに身を包んで立っていた。

 彼らは、レイが見た最初の異世界人?であるあの精霊もどきが両手を広げた姿のほぼ原寸大のクリスタルでできた神の像の下で一列に並んでいて、レイを見ると優雅にゆっくりと頭を下げた。

 アルフレッド王子は神官達に簡単な自己紹介をするよう言った。


 レイは控えめに頭をたれた人々の中に、一際輝く人を見つけた。

 彼は、他の神官達よりも真っ白に輝く、それでいてシルクのようになめらかで高級そうなローブに身を包んでいた。


 腰まである長い銀の髪。

 大人なのに、天使の輪が出来ている。

 ゆったりとした服を着てはいたが、手を見ると体型は細くて筋肉は少なめの長身細っそりさんだった。 

 やがて、彼が面をあげ自己紹介を始めると、レイは息を呑んだ。

 外人顔なのに、一つ一つの顔のパーツは大きすぎず、鼻の高さも丁度いい。

 瞳は紫で、奥二重の切れ長垂れ目の超美人さんだ。


 何?

 この色気しかない目元の黒子は

 私を殺す気なの?

 肌が真っ白だけど、外には出られないのかしら

 エル様というのね

 風属性をお待ちで……

 声も艶っぽくて素敵ね

 それでいて、役職は神官長?

 もう、タイプがどーこーいう次元じゃないわ

 一体誰とこの出逢いに乾杯すればいいの?

 でも待って

 大事なことを忘れてはいけないわ

 彼が今シングルなのか後で確認が必要よ

 そもそも神官って男女の関係になれるのかしら


 レイは、神聖な場所で己の煩悩に任せ、脳をフル回転させていた。


 今も私が見つめているせいでお顔が赤いけど、もう可愛いすぎるわ

 攻め攻めでいくしかないわね


「エル様、レイです。お名前が二文字で似ていますね。どうぞ宜しくお願い致します」


 レイがさり気なくエル神官長の両手を包み込むように握ると、その他の神官達は何故彼だけ?という顔をし、エル神官長はカアッと赤くなり、小動物のようにカタカタと震えだしてしまった。


 気の毒に思った王子が、


「もうその辺にしておいてください、ね?」


 と、レイを引き剥がした。


 そう。

 レイは肉食だった。

 そしてやはり、(エル神官長)以外の自己紹介は聞いちゃあいなかった。



「レイ様、おめでとうございます!一番人気の光の属性でいらっしゃいますよ」


 レイがクリスタルでてきた水晶玉に手を当てると、水晶玉をジッと見たノアという名の神官が言った。

 レイには全くもって変化がわからなかった。


「光の。それはどんな特徴があるんですか?」


 レイは、エル神官長をチラ見しながら聞いた。

 神官長は黙って、目を伏せていた。

 ノア神官は、得意そうに胸を張った。


「光の属性の方は、光を見ても眩しく感じません。炎天下でも、皆が黒眼鏡をかけて目を細める中、レイ様におかれましては、何と裸眼で問題ございません」


 ……それって多分サングラスのことよね

 全然かけて歩いても構わないのだけれど

 まさか、それだけじゃないわよね


 ノア神官は、そうですか、と反応の薄いレイに少し焦って付け加えた。


「えー、それからですね、光の属性の方の近くにいると、気持ちがこう、前向きになると言いますか、とても癒されますね」


 それは貴方の主観よね


 レイは魂の抜けた目をした。


「他にもまだ何かありませんか?」


「ええと、そうですね……あ、そういえば雷が落ちても大丈夫ですし、訓練すれば光を操れますね」


 ノア神官は、これは大したことないですが、的なニュアンスでつまらなそうに言った。


 インパクトからしたらこっちを先に伝えない?

 そもそも雷がバンバン落ちてたら外出ないし

 服とか丸焦げになったらイヤーン的なことになったりするんじゃないの?


 数分後、光属性のその他スキルを諦めきれないレイとノア神官との押し問答がまだ続いていた。


「なるほど。では静電気は大丈夫、と」


「はい」


「というか、静電気で通じるのですね」


「ええ。学校で異世界人の先生から専門的に学ぶことができますから」


「それは便利ですね」


 レイは、冬になると静電気を貯めまくってあちこちで放電しまくっていたので、光属性になれたことで、これだけは嬉しかった。

 

 あれ結構痛いから


 その後、他の属性についても軽く説明を受けた。

 城内に戻る途中、何とも説明し難い気持ちをかかえたまま、某有名ホテルのスイートルームのような部屋へ案内された。


 聖女もいない、魔王や勇者もいない。

 ポーション作りもダンジョンも無い。

 で、一人につき一つの属性がある。


 光属性ってフツーはヒーラーよね

 さっきお医者様がどうこう言われた時はまさかと思ったけど、本当にいないなんて……

 光に強いだけとか静電気とか超ショボいわ

 何で人気なの?

 心が読めちゃう闇属性とかの方がカッコいいのに

 属性って交換できないのかしら?


 

 寒色でまとめられた部屋は、レイには広すぎてちょっと怖かった。

 奥にあるベッドルームには、特大サイズの天蓋付きお姫様ベッドがドンと中央に置いてあった。

 部屋にはお風呂もついていて、バスタブは日本人仕様でしっかり肩まで浸かれるように、深めに作られていた。

 そしてちゃんとトイレは洋式の水洗トイレだった。

 レイは既に準備よく沸かされていたお風呂に入り、何かのハーブでできた髪も身体もしっとりする石鹸を使い、ハーブオイルのようなシャンプーで髪を洗うと半日分の汚れを綺麗に洗い流した。

 何かのハーブの香り漂う浴槽に浸かると、一気に疲れが取れる気がした。


 それにしても神官長のエル様は稀に見る美人だったわね

 明日は絶対に宰相様にでも、彼がシングルかどうかを確認しなきゃ


 お風呂から出ると、ふかふかタオルにバスローブが用意されていたが、レイはタオルだけ使うと、トランクから自分のモコモコルームウェアを出して着た。


 その後、ルームサービスのようなサンドイッチの軽い夕食が出されたので頂くと、急に眠気が襲ってきて、歯を磨くとすぐに倒れるようにベッドにダイブして眠ってしまったのだった。



 水 水を操れる 水中でも溺れない

 火 火を操れる 燃えてる炎中でも燃えない 

 土 土を操れる 地中でも窒息しない 

 風 風を操れる 風で飛行できる

 光 光を操れる 眩しくない 感電しない

 闇 闇を操れる 闇で目が見える 心が読める 

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