ラストキッス
とっさにその体を突き飛ばした。
彼女とボクの間に光の境界線が浮かび上がる。
「いっ、何しやが……」
「動くな!」
お願いだから。
「ぇ、なん……え?」
「お願いだから、動かないでくれ」
こっちに来たら浄化に汚染されちゃうから。
たった数十センチ、それがボクらの間にある絶対の壁。
浄化と言う名のボクらを分かつ道。
幸せと言う感情も有りすぎたら毒にしかならないらしい。
頭の中がぐちゃぐちゃのめちゃめちゃになって、頭が言うことを聞かない。
訳が解んなくなるほどの幸福感と、戻らないといけないと言う使命感。
無理矢理に幸福感を振りほどき、歩みを進める。
たった数十センチ、その距離が長い。
元々幸せの真っ最中だったのに、神様も迷惑なプレゼントをくれたものだ。
ところで、彼女は無事だろうか?
突き飛ばしてしまったから、怪我などはしていないだろうか?
「………ろう、…ん…こと…やがっ…!」
さっきから彼女が何かを叫んでるみたい。
何て言ってるか上手く聞き取れないけど、どうしたんだろう。
袖で目を拭ってるし、まさか怪我したとか。
ボクはよく彼女に怒られて殴られるんだけど、ボクがなんかしたこと何て無かったのに。
ごめんね、今戻るから。
ごめんね、少しだけ待ってて。
右足、左足。
あれ?
こっちが右足だっけ?
ゆっくりながらも早く、今何処を歩いてるのかも解らないけど。
頭がスパークしながら何とか戻ってこれた、んだと思う。
「バカやろう、なんてことしやがった!」
怒鳴りつけながら、ボクの左手を彼女は引っ張る。
涙でぐしゃぐしゃになって、だめだよ。
笑って。
君は生き残ってるんだ。
だから、笑って。
ボクは君を守れたことが嬉しいから。
そんなに怒らないで、良くできたって笑って誉めて。
引っ張られた左手。
急に引っ張るからボクは思わずバランスを崩す。
彼女にのしかかっちゃうから危ないと思い、足に力を込める。
が、一歩踏み出した瞬間。
ザラッて音と共に足が崩れ落ちた。
慌てて逆の足でバランスをとろうとする。
ザラッ。
そこにはすでに足はなく、一歩前の足跡に足だった白い砂の山があっただけ。
両足が無いボクにはどうすることも出来ず、彼女の胸に倒れ込んだ。
「バカ、バカ、バカ」
ごめんね、落ち着いて。
落ち着かせようとして彼女の頭を左手でなでる。
撫でてる途中で崩れちゃったけど。
「いっつもお前はそうだ、人の気も知らないで」
泣き続けている彼女。
嗚咽を漏らしながら、それでも最後に何かと決別するように吐き捨てた。
「お前なんて大っ嫌いだ!」
「ごめんね、でもボクは大好きだよ」
残った右手で頬に手を当て。
無理矢理、唇を重ねる。
体にも負担がかかったみたいで、色々な所がが崩れ落ちた。
そろそろ……無理かな。
左目も見えないや。
最後に見えた彼女は、なんでだろう。
「卑怯者!」って言ってた気がした。
第六回目。別名、ブラッド・バニラの衝動。
とある小説家になろう上のweb有名小説、二十三話を読んだ。
これのせいで書きたくなった。
これはヤヴァい、テーマなんか知らずに出来てた。
死なないで欲しかった、でもそれが良い。




