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とある雪の日

 雪は全てを覆い隠す。

 喜びも悲しみも、全部。

 見たいことが少ない今なら、雪は恵みとなるだろう。

 浄化汚染地域の境界線を調べながら、私はふとそんな事を思ってしまった。

「やはり、浄化地域には雪は降らないのか」

 まるで別世界のように区切られた境界。

 この線からこっちは冬。

 この線からあっちは常晴れ。

 実際に浄化汚染地域は雨すら降らない。

 

「きっと、それは泣くモノが居ないのだろう」

 突然後ろからかけられた声。

 さっきまで何の気配もしなかったのに。

 脱兎の如く逃げだそうとし、私は諦めた。

「雨は涙だ、泣くものが居なければ降ることもない」

 ハットを目深に被り、最近では見ない汚れのない服。

 全身黒ずくめで、多少統一感を出し過ぎた感じもあるが、その男にはこれ以上無いほど似合っていた。

 その男がいつの間にか目の前に立っている。

 さっきまで声は後ろだったのにも関わらず、だ。

「そう警戒しなくても良い、俺は話し相手が欲しいだけだ」

 ハットのせいで目は見えないが口元は不敵歪んでいて、とてもじゃないが警戒を解ける気はしなかった。


「それで、何かようでしょうか?」

 胡散臭いと警戒心を丸出しにして聞いてやる。

 男は諦めたかのように肩をくすめ。

「いや、なに。

 賢者の疑問に悪魔が答えるのは必然だろう?

 まぁ、最近は愚者すら減ってしまった。

 故に話し相手が乏しくてな。

 つい、聞きもしないのに悪魔が答えてしまったのだよ」

 身振り手振り多く話す自称悪魔は、実に演劇役者の台本のような大仰さで話を続ける。

「雪は全てを覆い隠す。

 とは、実に的を得た考えだ。

 雪は慈悲。

 悲しみで溶けてしまわぬように、憎しみで壊れてしまわぬように、雪の冷たさが心を凍らせる。

 冷たさと白と言う色で、全ての時間を凍らせる慈悲だ」

 仰々しい身振り手振りを持って、話を私の考えを肯定する彼。

 その仰々しさが意外にも子供っぽくて、私はついつい笑ってしまう。

「わ、笑うとは何事だ!」何て拗ねる様もまるで子供のようで。

 私はいつの間にか警戒心なんて何処かに行ってしまっていた。


「ところで私、雪云々って言葉にしていた?」

「俺は悪魔なのだ。

 心を読むぐらい造作も無い」

 すっかり彼の自称悪魔を冗談の一種と信じ込んだ私は。

「へぇ、そうなんだ」

 なんて、簡単に流せるようになり。

 本当だ!何て吠えてる彼を見て、こんな時間も悪くは無いかも知れない。

 なんて、いつの間にか思うようになった。


 突然彼が心配そうに。

「なぁ、俺はまた来ていいかな……?」

 なんて、つぶやくから。

 やっぱり私は笑ってしまう。



「アナタ、悪魔なんでしょう?

 『奪っていく』ぐらい言ったらどうなの」

五回目の変わり種。

『悪魔』『調査』『雪』をテーマに。

悲劇が一番書いているジャンルなのでイマイチ盛り上がらない。

でも、ほのぼのが書ける様に精進したい。

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