表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/21

幸せの行方

 俺は今まで何を捨ててきただろうか?

 友を捨て、家族を捨て、時間を捨て。

 きっと、命以外のモノ大半は捨ててきたと自負出来る。

 それで別に命を守りたかったわけじゃないし。

 今まで守ってきたモノが有るかと問われれば、無いと力強く答えれるだろう。

 だから、『浄化アポカリプス』が始まっても別に何があるって訳でもなかった。

 この身残らず白い砂となるなら、それもまた運命。

 ってな感じに考えてた訳だ。


 で、実際に浄化に襲われてみると凄い。

 何が凄いのかは良くわかんないけど、とにかく凄い。

 だって、今まさに目の前の物が音もなく砂になっていくんだぜ!

 俺が消えるって言う恐怖とか、現実感が無いって感じの浮遊感とか。

 でも、結局はみんなこれで白い砂になるんだろうなって思える諦観とか。

 いろんな物がグチャグチャになって、一つになってゆく。

 それが痛みすら無く、むしろ幸せな気分ってのは何の冗談なんだろうな?

 そんな全てが白い砂になりゆく中、俺は砂になりだした手で窓を叩き割った。


 こいつらと会ったのは何ヶ月前だろう?

 最初に会ったのは鉈一本を振り回して適当に人を襲い、少しの食料と水を確保していた時だったと思う。

 ほんの気まぐれに見た小屋の中で、こいつらはお互いを庇い合うように部屋の隅で転がっていた。

 こいつらを飼ってみるのも良いかな、非常食にもなりそうだし。

 そんな軽い気持ちで今に至る訳だ。


 で、やっぱ浄化は凄い。

 何が凄いのかは良くわかんないけど、とにかく凄い。

 だって、今まさに目の前の物が音もなく砂になっていくんだぜ!

 俺が消えるって言う恐怖とか、現実感が無いって感じの浮遊感とか。

 でも、結局はみんなこれで白い砂になるんだろうなって思える諦観とか。

 いろんな物がグチャグチャになって、一つになってゆく。

 ああ、怖い、こわい、コワイ。

 幸せなのにコワイよぅ。

 ちょっとは諦めたつもりだったのに、自分の命ってのは簡単に切り捨てらんないんだな。

 あれ?

 俺、さっきと同じ事考えてないか?

 崩れかけた体、溶けかけた思考で無理矢理に体を動かし、鉄の扉を開いてやる。


 切り捨てることが強さだと思っていた。

 それがどうだ、笑えるじゃないか。

 今まで全て捨ててきたと自負していた俺が。

 この俺が。

 最後の最後に、こいつらを守ろうとしているとは。

 そのことに後悔は……


 有る訳無ぇよ。


 また会おうぜ、俺の幸せ。

 お前たちの羽なら逃げ切れるかもしれないだろ。


 部屋の一室に置かれた少し大きめの鳥籠。

 鉄の扉は開かれ、窓は壊されている。

 一対の青い鳥たちは、驚きながらも自分たちの希望に向かって羽を広げた。


 青い羽根をはためかせながら。

 ああ、この手を離れて。

 徐々に近くに……。 


 近くに?


 「……何で戻ってくるんだよ、ばか」

二回目は難産

『浄化(直撃)』『青い鳥』『自分より大切な物』

最後の台詞がやりたいが為のストーリー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ