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箱の猫は生きている

 ここは最後の村である。

 村に住む者はここをそう呼び。

 村人たちも誰一人とそのことを疑わない。

 周りは浄化と呼ばれるものに囲まれているが。

 町の外に出ようとすれば、その身は一片も残らないだろう。

 そう言われ続けたし、実際そうだったと思う。

 だから生まれてこの方、村の外を見たことが無い。

 それが悲しいとか、不幸なのだとか。

 そんなことは思ったことが無く。

 村の外なんて物は知ろうが知るまいが、どうでもいい。

 ようは我々は、生きてさえ行ける面積の土地があり。

 その区画から出ないよう気をつければ。

『生きる』それ自体には何の影響もない。


 この箱庭に生まれ、この箱庭で死ぬ。


 俺の人生ってのは所詮そんな物で。

 日々は無感動の繰り返し。

 飛び抜けた不幸もなければ、飛び抜けた幸福も無い。

 ただ生きる、それは悪いことだとも思わないし。

 とても楽な人生だったと思う。

 そのことに対して何の後悔も、何の不満も無い。

 俺はベッドの上で一人、漠然とそんな事を考えていた。


 そういえば。

 この箱庭に対して真っ向から対立した奴が一人いた。

 俺はあいつと友達でも何でもない。

 それでも、あいつの生き方を否定する気もないし。

 むしろ、俺には出来ない生き方と応援してやりたい気もする。

 あいつは今、元気にしているだろうか?


 事の初めは穀物の収穫中、浄化と村の境界付近での事だ。

 村人全員での収穫の最中、一人だけ働きもせずに境界を見つめており。

 年の近い俺は注意をするため、あいつに近づいた。

「あんた、働きもせずに何やってるんだい?」

 拾っては小石を境界の外に投げ、それを繰り返すあいつ。

「何やってるかなんて、お前は見てわかんないのかよ。

 境界の向こう側に石を投げてるのさ」

 そう言って、こちらの存在を無視するかのように投げる手を止めない。

 声をかけてからも俺を見ることは無く。

 ただ、淡々と石を投げては見続ける作業を繰り返している。

「あんた、そんなことをして何が楽しいんだい?」

 そう聞いた瞬間、あいつはようやくこちらを見て。

「楽しいわけないだろう、こんな石投げ。

 お前は永遠ずっと繰り返す代わり映えの無い事は楽しいのか?

 この村と言う代わり映えの無い世界と同じほど、つまんないね」

 吐き捨てるように言い切ると、面白くもなさそうに境界を睨む。

「しかたないだろ。

 それをしなければ生きて行けないし。

 生きて行く分にはそれだけを遵守すればいい。

 面白いとか面白くないとか、そんなの関係ないと思うけどな」

 それを聞いたあいつは何か不思議な物を見るような目つきになり。

 少し考えるような空白の間の後、閃いたように頷いた。

「お前凄いな。

 ようやく解った、お前たちがこの村で生きて行ける理由が。

 生き延びるって事に精一杯で身動き出来ないんだ。

 面白いとか面白くないとか関係なく、生きていたいって感情で動いているのか!」


 あいつはその後、壊れたように笑い狂った。


 正直、俺にはあいつが笑う理由も検討がつかないし。

 笑われる理由も無い。

 遠くから村人達の冷たい視線を感じながら、それでもあいつは笑い続け。

 我慢できなくなった俺は、あいつに聞いた。

「あんた、何がそんなに面白いんだい?」

 可笑しそうに腹を抱えながら、それでも息を整えて俺に答える。

「まず、自分が面白いのさ。

 同じ事を永遠ずっと考えていたけど、結局答えなんてすぐそこにあった。

『百聞は一見にしかず』なんて本当にあるんだな。

 何で此処に居続けているのか不思議だったんだが。

 確かに『生きる』ことだったら此処ほどの環境はないからな。

 そんな俺の頭の悪さが面白い」

 指を折るようにて自分の考えを纏めているのか。

 それでも頬は可笑しそうに歪んでいる。

「そして、お前たちが面白い。

 ここが『最後の村』と言うことを受け入れているお前たちが」

 ひとしきり、笑い終え。

 一息つくと、あいつは浄化の向こう側を見つめ。


「じゃあな、箱庭の猫たち。

 精々、毒入りの餌だけは食うんじゃないぞ」


 そうして、あいつは全速力で村の外へ駆け出した。


 遠くで怒号が響き渡り、サイレンが鳴る。

『最後の村』からの脱走者が出たからだ。

 この実験場、町の外には無数のカメラが配置してあり。

 かなり遠くで鳴ったから、もしかすると脱出出来たのかもしれない。

 成る程、石を投げていたのはカメラの場所を探していたのか。


 ここは実験場『最後の村』、五つ有った実験場で最後に残った場所。

 4つ、いずれも脱走者からのタレコミで世間から叩かれ消滅した。

 故に此処は厳重な警戒の元、脱走者は躊躇無く浄化ころされる。


 例えあいつが脱走出来ても、俺達は実験場の消滅を望まない。

 それぐらい。あいつも解っているだろう。

 だから、あいつが上手く脱走出来たかは誰も解らない。


 まぁ、あいつのことだ。

 今頃は人生を楽しんでるんじゃないか? 

13回目、浄化を使った名前トリック。

今までを読んで貰っていないと引っかかりません。

作品中で一番浄化アポカリプスが関係しない作品。


実は途中破棄と破棄作品を合わせると40作品はゆうに越えてます。

大体完成を迎えるのは三分の一程で。

さらに面白いのと言われると……。

最近、面白いネタも無くなって来た。

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