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一瞬

作者: 渡瀬 しをり

うっすらと灰色の雲が漂っている


夜空に星なんて一つも見えない都会の空。



空気は冷たくって 死ぬのにはぴったりだった。











私は普通に生活をしている。

どこにでもいる学生だ。


そこそこ勉強して、習い事に行き、テスト前になれば徹夜もする。

普段はだらけてSNSをみる。友達と連絡を取る。



趣味は読書だった。



作者が思い描く世界、いろんな思いを読み取るのが好きだった。自由な世界に憧れてた。


恋愛も、本の世界で触れていれば、何も不自由に感じることもなく、ただただ、平凡だった。








ある日新型ウイルスが世界で大流行し始めた。


人を殺すのだ


小さい小さい目に見えない何かが

一瞬で命を奪うのだ




そんな光景を画面越しに見ていた私。




いつもなら何も感じない。

他国で起きた事件も、災害も、少しだけ心の中で手を合わせるくらいだった。



でも今回は違う。



とても近くに迫ってきている。







咄嗟に心配になったことがあった。



身の回りの人が感染したら、どうしよう。と。




大切なあの子

親友のグループ

仲の良い幼馴染み

かつてのクラスメイト


祖父母

兄弟

両親




それらを失ったらどうなる?




そう考えたら途端に猛烈に怖くなった。




平凡だと自分は思ってた。それが当たり前だった。





なのに目の前には崖があって、ちょっとでも崩れれば皆引きずりこまれる。



怖い。



怖い。




皆がもし死んだら



死んだら?






自分は生きていけるのか









そんなことを考えてたら眠れなくなっちゃった。












ふらふらと屋上に出てみる。






夜風は心地よかった



やわらかい風だった



沢山の人々が生活してるであろう光の中で、


私と同じ気持ちの人はいるのか




そんなことをふと考えた





でもまあ、いっか。








そんなことを思いながら空中に体を投げた。









一瞬だった。



長いようにも感じた。





でもあっけなかった











当たり前だった平凡は何も不自由なかった


ただ怖くなっただけだった


死ぬ理由は怖かったから



本当にそれだけだった












もし、





そう考えたら止まらなかった





恐怖しかなかった









なのに、街にはまだ人が沢山いる。




無駄に外出してる人がいる。





自分は大丈夫だと思って遊んでる人がいる





そんな世の中に嫌気がさしただけだったのだ。














残した家族はどう思ってるかな

私がいなくなって嬉しいかな?悲しいかな?


周りの子が誰かでも私を想って泣いてくれたりしてたらちょっと嬉しいな





ごめんね





愛されたかったなんて言わないよ

失うのが

怖かったんだよ


失うって決まってたわけじゃないけど



その可能性すら怖かった








当たり前の日はいつ戻ってくるんだろうな




そんなことを考えてる余裕はなかった、









死ぬのは一瞬だった















4月の夜の1人の女の子が


空を飛んだ日

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