僕、転生して≪作家≫はじめちゃいました!!~ツンデレ有名美少女小説家の前世は最強魔術書作家!?~
「いいから書いてみてよ。」来都野 辺留がそう言い始めてから30分は経った。次の講義の時間はとうに始まっている。
それでも無理やりにも逃げ出さないのは彼女が端麗な見た目をしていること以外にも理由がある。
自分の中で小説家という夢をどこか諦められていない、つまりまだ書きたい物語は沢山あるということだ。
しかし、一度は捨てた夢を拾い上げて「インターネット小説」なんて生半可なモノでやり直すのは少し、いやかなりの抵抗感を覚えた。
「とりあえずあらすじだけでいいから。」
それでも彼女は執拗に「インターネット小説」での「執筆」を勧め続ける。もちろんこの長い長い押し問答の間に、小説はあきらめたこと、「インターネット小説」そのものに抵抗感があること、は説明してきたつもりであった。
僕は思い切って尋ねる。「正直さあ、あーゆー系よくわかんないんだよねw君もオタクなの?」
少し言い過ぎたかな、と考えている時には通夜のようなどんよりとした沈黙が流れていた。
「じゃあもういいや。バイバイ」
彼女はようやくあきらめたようだ。座っていたベンチから立ち上がり、何もなかったかのように教室の方へと向かっていく。
なんだったんだと少し腹立たしさを感じながらも、心のどこかでまた夢への焦燥感が芽生えていた。
「僕も行くか・・・」ベンチから立ち上がり、彼女の向かった方向とは反対側を向く。
「あらすじぐらいなら、書いてもいいかもしれなかったな」口には出さないが頭の中で小さく呟く。
ザクッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!
感じたこともない痛みと熱さを感じながら、異常な異物感の原因を探る。
「き、きみは・・・。」先ほどの彼女だった。すごいふとい包丁を血まみれにしながら握っている。
「一回体験してみればいいのよ。この気持ちを。」その時だけ彼女が言った言葉が鮮明に聞こえた。それ以外は周りの音も自分の声も、息もすべてが遠く暗くなっていった。
僕は死んだ。
~END~