タンザニアオオヤスデ
溢れんばかりの波打つ黒い水が、謎の光の射さない空間の窪んだ場所に溜まっていた。
よく見てみれば、玉になった血がいくつも数珠繋ぎになっているような見た目をしており、足が生えている。
まるでミミズに足が生えたような印象だ。
そんな時、どこからともなく声が聞こえてきた。
「あー、あー。人民の方、これは試験である。繰り返す、試験である。詳細は子細には教えられないが、これから君には虫と戯れて貰う」
唐突であった。
しかし、そうやって呆けている場合ではなかった。
「しかし、目の前のそこに飛び込んで貰う訳ではない。ワタクシが部屋一杯にしてやるから頑張ってくれたまえ」
そう言ったあと、突然声が途絶えて虫が気味悪く足音を立てながら山になり、こちらに流れ込んできた。
一瞬だった。
身体中にぶつかる虫の重みがすごく、すぐに足を取られて虫に紛れ込んだ。
それからはまさに地獄だった。
虫が背中を這いまわり、服の中にまで入ってくるのだ。
全身を細い足が触手のように撫で回し、赤黒い腹を何度も目の前で見たりする。
虫特有の無感情な軌道もとても恐ろしい。
全身を知らない何かに弄ばれるとはこういうことなのか、と知った。