表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
天使の章
89/135

第84話 やっぱり『くっころ』なんだ……

物知りフェルナさんは怒ると怖いんです(´;ω;`)

「わぁー、これ、凄くおもしろいんだよ!」


 などとご機嫌な声を上げながら、セリシエルはさっき買ってもらったばかりの自分の剣や盾を<共有無限収納>の異空間に入れたり出したりを繰り返している。


絆の契約パーティ・コントラスト》の恩恵によってセリシエルも<共有無限収納>が使えるようになった。無限に物が出し入れできるスキルと言うのが彼女の琴線に触れたらしく、説明された直後から物を入れたり出したりを繰り返して遊んでいるのだ。


「いいなぁ、あのスキル……」


 そんなことをしていたら、シアーシャまでが羨ましそうにしだした。

 意図した訳では無いが、慎也たちは<共有無限収納>のことを彼女たちに話しておらず、実際にフェルナとシアーシャが<共有無限収納>その存在を知ったのはついさっきだった。

 無限に物を収納出来、尚且つその効果をパーティで共有できるということで、さっきからシアーシャは指を咥えんばかりに羨ましがっていた。


「見てきたよー」


 御者の結衣が荷台の面々に声を掛けた。


 見れば、山間部に走る川沿いに佇む、小さな集落が見えた。


「ええっと……なんて村だっけ?」

「ケミナ村。今回の依頼主だぞ」


 首を傾げる結衣に、慎也が顔を顰めた。


 今回の、オーク集落の捜索依頼を出した村だった。


「……ねぇねぇ、慎也君。私たち、なにか悪いことした?」


 いきなり、結衣が妙なことを聞いて来た。


「いや、なんにもしてないだろ? なんでだ?」

「なんか、村の人たちが凄い怖い顔してこっちを見てるんだけど……」


 言われて慎也も初めて気付いた。

 村の入り口辺りで、武装した村人らしき男たちが10人ほど集まり、険しい顔でこちらを睨んでいた。武装と言っても、持っているのは木の枝の先端を削って尖らせた木槍や、武器ではなく、伐採用の斧、鎌や鍬などだ。よく見れば、奥の民家の屋根に弓を持った者もいる。


(一揆でも始めるつもりか?)


 拙い手作りの武器で武装した村人たちを見た慎也は、戦国マニアらしい感想を抱いた。


「慎也君、どうする?」

「別にやましい理由がある訳じゃないんだ。そのまま行ってくれ。ただし、念の為、いつでも戦える準備はしておいてくれ」


 慎也が指示を飛ばすと、他のメンバーから了解の返事が返ってきた。見た感じ、単に武器を手にしているだけの村人だ。万が一、戦いになっても勝てるだろう。こちらからは戦いを仕掛ける理由は無いし、なにより彼らが依頼主である以上、接触し無い訳にはいかない。


(にしても、なんであんな殺気立ってるんだ?)


 オークに対する備えか、とも思ったが、だとしたら人間である自分たちを警戒する理由は無いはずだ。


(ま、直接聞いてみれば判るか)


 そうこうしている内に、馬車は村の入り口へとたどり着いた。すると、村人の中からひと際大柄な中年の男が進み出てきた。


「あんたら、村になんの用だ?」


 誰何する声からは警戒心が滲み出ている。


「オレたちはキアナの街の冒険者だ」


 馬車を降りた慎也は、両手を上げて敵意が無いことをアピールしつつ男性の前に進み出た。ちなみに、他のメンバーは念の為に馬車に残ったままだ。

 アドベンチャー・ライセンス・カードを見せて、自分たちが怪しい者ではなく、正真正銘の冒険者であることを証明する。


「オークが出たんで調査して欲しい、という依頼を受けて来たんだが……」


 ざわっ、と背後の村人たちからざわめきが漏れた。


「……あんたらが冒険者ってことは判った」


 大柄の村人が言った。だが言葉に反し、その視線には懐疑の光が宿ったままだ。その視線を、馬車に残った結衣たちに向ける。


「けど見た感じ、女子供ばかりみたいだが?」


 彼の言う通り、慎也以外は目麗しい少女や女性ばかりだ。パッと見た感じ、お世辞にも強そうには見えない。疑うのも無理はないだろう。

 が、それが看過出来ない者もいる。


「女子供なら、なにか問題でも?」


 愛槍を携えたフェルナが馬車から降りてきた。目が据わっている。どうも女子供扱いされたことにお怒りらしい。


 フェルナは槍を半ばで握ったまま真横に構えると、無造作に薙ぎ払った。

 弱いとはいえ、闘気が込められた一振りはそれだけでちょっとした突風を発生させた。

 突風をまともに浴びた村人たちは、よろめいたり倒れたりする者こそいなかったが、フェルナの実力は充分に理解できたらしく、一様に青くなっている。


「おう、悪かった」


 発端である大柄な村人も、降参とばかりに両手を開けた。


「なにせ、こっちはしがない樵なもんでな。生憎と外見だけで実力を量るみたいな器用なことは出来ねーんだ。すまなかった」

「……謝罪は受け入れました」


 フェルナも素直に矛を収めた。


「んじゃ、話を戻すが、オークのことを調べに来た、ってのはホントか?」

「ああ。この依頼、この村から出されたものだ、って聞いた」


 そう言って慎也はギルドで受け取った受注伝票を見せた。


「ああ、間違いねぇ。うちが出した依頼だ」


 伝票を確認した大柄の村人は頷いた後、何故か苦い顔になった。


「よりにもよって、村を救いに来てくれた冒険者を邪険にしちまうとは……改めて謝罪させてもらう。すまなかった」


 大柄の村人が深々と頭を下げると、後ろの村人たちも彼に倣って頭を下げた。


「オレはヒューゴ。さっきも言ったが、この村で樵をやってる。オークに関しては、村長から詳しい説明があると思う。案内しよう。付いて来てくれ」

「その前に、ひとつ聞かせてくれないか。こんなに大勢で武器を持って、いったいなにを警戒してたんだ? オークか?」


 慎也が尋ねると、ヒューゴは、しまった、みたいな顔をした。


「すまねぇ、説明するのを忘れてた。オークもそうなんだが、近くに質の悪い盗賊が出る、って話を聞いてな」

「質の悪い盗賊?」

「ああ。なんでも、盗賊のくせにトロルをテイムしてるらしい」

「!」


 はっとして、慎也たちは互いに顔を見合わせた。セリシエルだけははてな顔だ。


(そういえば、ここから例の盗賊のアジトがあった場所って、割と近いな)


 おおよその位置情報を脳内で計算しても、この村から先日の盗賊の出没していた場所まで、直線距離でも数kmほどだ。


「噂じゃ、街道沿いで商隊の隊列を襲ったらしい。この村もいつ襲われてもおかしくねぇ。だから村中総出で警戒してる、って訳だ。ったく、オークのことだけでも面倒なのに、盗賊まで出てくるとはな……」

「なるほどね。だったら、もうそっちの方は警戒しなくていいぞ」


 肩を怒らせ、苛立たし気に吐き捨てるヒューゴに、慎也は視線を反らし、頬を掻きながら言った。


「警戒しなくていい? なんでだ?」

「その盗賊なら、この前、オレたちが討伐したからさ」

「は?」


 ◇◇◇


「初めまして、冒険者の方々。この村の村長をしております、ホルクと申します」


 ヒューゴに事情を話した後、慎也たちは村長宅に案内された。

 出迎えてくれたケミナ村のホルク村長は、鼻の下に髭を生やした、70歳くらいの恰幅の良い老人だった。


「話はヒューゴから伺いました。村を脅かしていた盗賊を討伐して下さったそうで。村を代表して、お礼を申し上げます」

「いえ、仕事ですから」


 自分の孫ほども年の離れた慎也たちに敬語を使い、躊躇うこと無く頭を下げる村長に、慎也は逆に謙遜してしまった。


「早速ですが、オークに付いて教えていただけますか?」

「判りました」


 そこで、フェルナが慎也に代わって村長に尋ねた。さすがに盗賊退治に慣れているだけあって、平静そのものだ。


 そもそもの始まりは半月ほど前、マナクレイの森の山間部の街道沿いの村に”野菜泥棒”が出没し始めたことに始まる。


 十中八九、その野菜泥棒とは、慎也たちが先日討伐した盗賊の一味だろう。

 元々あの依頼は、野菜泥棒をする盗賊をなんとかして欲しい、というものだった。それを引き受けたフェルナとシアーシャが調べてみれば、高度な罠を使用し、おまけにトロルまで引き連れた大規模な盗賊だったため、慌てて慎也たちに助成を頼んだ、という流れだった。


 話を戻す。


 実はこのケミナ村も野菜泥棒の被害を受けたそうだが、やられたのは1度だけな上、未遂だった為にそれほど深刻には考えていなかったらしい。

 ところがその数日後、森で遊んでいた子供たちが「豚みたいな怪物が出た!」と、大騒ぎしながら逃げ帰ってきた。この時も、大人たちは、イノシシか野ブタに出くわしたのだろうという結論に至り、ほとんど警戒していなかったそうだ。


 だが数日後、今度は別の村で村人の1人が森の中でオークを見たと騒いだそうだ。

 ただその男、当時ひどく酔っぱらっていた為、皆話半分以下に聞いており、誰もその話を信じなかったという。


 ところが、その翌日、ケミナ村の樵たちがいつもの様に斧を担いで苅場に出向いたところ、オークの子供が1匹、苅場でウロウロしていたそうだ。

 樵たちは即座に回れ右をして、一目散に村へ逃げ帰った。さすがに魔物の多いマナクレイの森の近辺に暮らしている樵たちは状況の把握と行動が的確だった。


 オークの子供がうろついているということは近くに親がいるということだからだ。


 基本的に魔物は魔素から発生するものと、繁殖するもの、あるいは両方が可能なものの3種が存在するが、人型の魔物は基本的に発生、繁殖の両方を兼ね備えている種が多い。しかもそのほとんどは雄しか存在せず、他種の人型生物を襲って妊娠させるという、もはや悪意の塊としか言えないような生態を有している。


 その代表格とも言うべきがゴブリンであるが、それに次いで有名なのがオークだ。


 同じ人型の魔物であるが、オークはゴブリンの上位種に辺り、ゴブリンに比べて遥かに強い。樵たちもマナクレイの森で生活している中で、何度もゴブリンとやり合ったことがあったが、さすがにオークともなると分が悪いと悟り、即座に逃走を選んだ。


 知らせを受けた村人たちはすぐに冒険者ギルドに調査の依頼を出すことに決めた。と言うのも、目撃されたオークが子供だったということが問題だった。

 

 先に述べた通り、オークもまた、魔素から発生、他種の雌を介しての繁殖という2種類の方法で増えるが、魔素から発生するオークは例外無く成体――大人の状態で発生する。もちろん、オークに限らず、魔素から生まれる魔物のほとんどが成体の状態で誕生する。


 逆に、他種の雌を介して生まれる場合、当たり前の話だが、赤ん坊の状態で生まれてくる。そこから成長し、大人になると、魔素から発生した個体と見分けが付かなくなるが。


 つまり、子供のオークと言うことは、それは他種の雌――女性から誕生した個体であるという証しに他ならない。

 母体となった者の種族にもよるが、オークの場合、妊娠期間は1カ月程度と極めて短い上、一度の妊娠で3匹から5匹程度生まれる。

 複数の女性が母体とされた場合、短時間の内に爆発的に繁殖する恐れがあるのだ。


 村人たちもそれを理解し、一刻も早く巣を見つけてくれるよう、村中の金を掻き集め、冒険者ギルドに依頼を申し込んだ、という経緯らしい。


 オークの出現によって戦々恐々となった村人たちに追い打ちを掛けるように、トロルを率いた盗賊の一団が、街道で商隊の隊列を襲うのを、偶然通りかかったケミナ村の村人が目撃したそうだ。幸いにも盗賊たちに見つかること無く逃げ帰り、彼はこの事態を村に知らせた。


 オークの群れと、トロルを率いた盗賊。


 2つの脅威に脅かされ、村を守るべく厳戒態勢でいた所に、慎也たちがやって来た、という流れらしい。


「オークの子供、ですか……」


 話を聞き終えたフェルナが、深刻そうな顔で俯いた。


「人か獣人か……いずれにせよ、母体を介して繁殖しているのは間違い無いですね。問題は、どれくらいの規模なのか、ですが……」

「そう言えば、フェルナたちはオークに付いて詳しいのか?」

「オークと戦ったことは何度かあります。いずれも数匹程度の群れでしたが……」

「見た目不細工な上に獣欲ギラギラで、ホント不愉快な連中だったわ」


 慎也の問いに、フェルナが真面目に、シアーシャがおどけた様子で答えた。


「やっぱり『くっころ』なんだ……」


 結衣がなにかぼやいていたが、慎也は聞こえない振りをした。


「ゴブリンたちは基本的に洞窟みたいな薄暗い場所を好んで巣穴にしますが、オークは暗い場所は好まず、比較的明るい、開けた場所を住処にする習性があります。基本的には数匹から十数匹程度の群れで行動しますが、繁殖用の母体――つまり人族や亜人などの女性を手に入れると、短時間で爆発的に繁殖してしまうことが良くあるそうです」


 それを聞いて、結衣、ユフィア、セリシエルの3人が怯えた様に身を寄せ合ってプルプルと震え出した。

 セリシエルはともかく、似たような習性を持つゴブリン相手に何度も戦ってきた結衣やユフィアがどうして怯えるのか?


「そして、子供が生まれると移動を止め、その場に住処を作って子育てに専念するそうです」

「意外と子供想いなんだな」


 変なところで慎也は感心した。


「数が増えると集落を形成することがままあるそうです。聞いた話では、200匹前後の集落を形成した例があるとか……」

「200……」


 それを聞いて、さすがの慎也も顔を青くした。


「ただ、1個の集落に住み着くオークの数は、最大でも200~300匹程度なんだそうです。それ以上増えると巣別れを行います。数匹、或いは数十匹程度が群れを離れて旅立つんだとか……」

「巣別れによる人口調節か……まあいずれにせよ、オレらにとっては迷惑以外の何物でもないな」


 慎也の言葉に、村長やヒューゴを含めたその場にいる全員が頷いた。


「村長さん。それで、目撃されたオークの子供は1匹だけなんですか?」

「そう聞いております」


 村長が答えると、フェルナは再び考え込んだ。


「迷子か、それとも近くに親がいたのかは判りませんが、子供の行動範囲はそれほど広くありませんから、巣は割と近い場所にありそうですね。まだそれほど増えてなければいいんですが、集落を形成されるほどの数だと、私たちだけでは厳しいですね」


 オークのレベルは平均して10前後から10代半ばとされている。もちろん、希少種はもっと高い。それが数十匹もいたとしたら、確かに慎也たちだけでは討伐不可能だ。


「ただ、数がどれだけにしろ、巣、もしくは集落には水が必須。河にほど近い、比較的見通しの良い開けた場所を住処に選ぶ筈です。村長さん、そう言う場所に心当たりはありますか?」

「心当たりと言われましても、なにぶん、この森は広く、人が通れない場所も多々ありますので……」


 フェルナの質問に村長が窮していると――


「あるよ!」


 元気の良い声が、家の外から聞こえてきた。

お久しぶりです。インフルエンザにやられてしまった太公望です。m(__)m

長期間、行進が滞って申し訳ありません。取りあえず、執筆に問題が無い程度に体調が回復しました。いまだに喉がガラガラで声が出ませんが。取りあえず、依然と同じペースで更新していくつもりです。


春先は体調を崩す人が大勢いるそうです。皆さんもどうぞ気を付けて。そして、これからもご愛読の程をよろしくお願い致します。m(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ