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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
天使の章
88/135

第83話 なんで記憶喪失が称号なんだ?

プライバシーなのです( `ー´)ノ

「記憶喪失?」


 首を傾げながらフェルナが言った。


 オーク集落捜索の他、いくつか魔物退治の依頼を受注した慎也たちは、フェルナ、シアーシャと共にそのまま街を出て、オークの目撃情報のあった森へと馬車で向かった。


 その間、慎也たちはセリシエルについての詳しい事情をフェルナとシアーシャに打ち明けることにした。

 ヨルグたちと同様、2人は慎也と結衣が異世界人と知っているし、それなりに信頼も出来るので、下手に隠して後々面倒なことになるよりは良いだろうと、先んじて話すことにしたのだ。


「天使族とか、あたし初めて見た!」


 興味深げな目でまじまじとセリシエルを見つめるシアーシャ。


「しかも、ステータスに異常、ですか?」


 と、相棒とは対照的に困惑気なフェルナが、セリシエルを見る。


「フェルナさんたちは、ステータスの表示がおかしくなった、なんて話、聞いたことない?」


 御者をしている結衣が尋ねる。


「いえ、そんな話は聞いたことがありません」

「私もないなー。私自身、自分のステータスがおかしくなったことなんて無いし」


 と、2人は揃って首を振った。

 ウィルさえ知らない現象なのだから、若い2人が判らないのは当然だろう。結衣もダメ元で聞いてみただけのようだ。


「ちなみに、セリスちゃんはステータスがおかしいことになってても、なんともないの?」

「全然なんともないよ?」


 と、当の本人はあっけらかんとした様子だ。


「別に害があるって訳じゃないから、気にしないんだよ」

「そこはもう少し気にした方が良いと思いますけど……」


 セリシエルのあまりの能天気ぶりに、ユフィアも少し困り顔だ。


「まあ、原因が判らない上、害が無いのなら、オレたちが気にしてもしょうがないだろ。本人はこの通りだしな」


 やや投げやり気味に慎也が言った。

 セリシエルのステータス画面の異常について、最初こそ深刻に受け止めていたものの、本人になんの影響も無いらしいことと、あまりの危機感の無さに、気にするのが馬鹿らしくなったらしい。


「あ、そうだ」


 そこで、結衣がなにかに気付いたようにポンと手を打った。


「ステータスで思い出したけど、慎也君、セリスちゃんに《絆の契約パーティ・コントラスト》を使っておかなくて良いの?」

「あ、忘れてた」


 結衣の言葉で慎也も思い出した。セリシエルを自分たちのパーティに加えるには、《絆の契約パーティ・コントラスト》を使用しなければならないのだ。別に使わなくともパーティに加えることは可能なのだが、使っておいた方が利便性が圧倒的に高い。


「《絆の契約パーティ・コントラスト》?」


 当のセリシエルは《絆の契約パーティ・コントラスト》を知らなかったらしく、首を傾げている。


「えっと、《絆の契約パーティ・コントラスト》というのはですね……」


 そんな彼女に、ユフィアが《絆の契約パーティ・コントラスト》について簡潔に説明した。


「ふえー、そんな魔法があるんだね」

「知らなかったのか?」

「うん。いま初めて知ったんだよ」


 慎也は首を傾げた。

 自分たちも散々世話になってきたこの魔法は、世間では割と知られている。下手をすれば子供でも知っているくらいだ。

 それをセリシエルくらいの年頃の少女が、まったく知らなかったということが、少し気にかかった。


(記憶喪失というのは、あくまで過去が思い出せなくなるだけで知識まで無くなるわけじゃない。つまりセリシエルは、《絆の契約パーティ・コントラスト》の存在を忘れている訳じゃなく、本当に最初から知らなかった。記憶を無くす前から)


 その事実が、慎也には引っかかった。


(だが、《絆の契約パーティ・コントラスト》を知らない、ってのはどうなんだ? かなり有名な魔法だし、知らない人間の方が少ないくらいだろう。それを知らずに育ったってことは、ただの世間知らずか、それとも……)

「――さん? シンヤさん!」

「んぁ?」


 思考の海に沈没していた慎也の精神を、ユフィアの呼び声が現実に引き戻した。


「どうしたんですか? ぼーっとしてましたけど」

「ああ、悪い。少し考え事してた。で、なんの話だっけ?」

「ですから、セリスさんに《絆の契約パーティ・コントラスト》を使ってあげてほしい、という話です。セリスさんもぜひ使って欲しい、とおっしゃってます。やり方は教えましたから」


絆の契約パーティ・コントラスト》によってパーティを組む場合、必ずリーダーを決めなければならない。そして、新たなメンバーを加入させることができるのはパーティ・リーダーだけなのだ。


「そうか、了解だ」


 そう言って慎也は徐に右手を差し出した。


「《絆の契約パーティ・コントラスト》」


 彼が呪文を唱えると、掌を包み込むようにして青白い魔法陣が浮かび上がった。

 この魔法陣こそが慎也、結衣、ユフィアの3人を繋いでいる《絆の契約パーティ・コントラスト》の《接続リンク》であり、”絆”そのものなのだ。


「じゃあセリスさん、シンヤさんの手の上に右手を重ねてください」

「こう?」


 ユフィアに言われるがまま、セリシエルは魔法陣に包まれた慎也の右手に自分の手を重ねた。


 ちなみにその横で、シアーシャが絆の魔法陣にこっそり自分の手を伸ばそうとして、背後からフェルナに文字通り締め上げられたりしているのだが、慎也たちは気にしないことにした。


 セリシエルが慎也たちの”絆”に触れたことで《接続リンク》を形成。これによって、彼女が新たなパーティ・メンバーに正式に加わった。


 役目を終えた魔法陣が、光の粒と化して弾けて消えた。


「完了だ」


 接続が無事成功したのを確認して、慎也が手を放す。


「これで、セリスは正式にオレたちの仲間になった。改めてよろしくな」

「よろしくー」

「よろしくお願いします」

「えへへ~、こちらこそ、なんだよ」


 慎也たちの仲間になれたことが嬉しかったのか、セリシエルが子供の様にはにかんだ笑みを浮かべる。


 で、そうなると気になってくるのが、さっき話題になっていたセリシエルのステータスだ。《絆の契約パーティ・コントラスト》で結ばれた仲間は、互いのステータスを確認し合うことが出来るようになる。


「セリス、早速で悪いが、ステータスを確認させてもらってもいいか?」


 先日はウィルに手書きで教えてもらったが、やはり直接目で見て確認しておきたい。パーティメンバーになったのなら尚更だ。


 ただし、仲間のステータスを確認するには、本人の許可がいる。ステータス画面は生命線であり、プライバシーでもあるので当然だ。


「いいよー」


 が、セリシエルはあっけらかんと了承した。それで良いのか、と思いつつも、了解を得た慎也はセリシエルのステータスを開いてみる。



  名前:セリシエル

  種族:天使族

  年齢:16

  性別:女

  Lv:30

  HP:3277/3277

  MP:981/981

 EXP:25884/37982

  筋力:687(+74)

  魔力:788(+99)

  敏捷:711

  知力:423

  防御:587

  抵抗:612(+123)

  精神:471(+45)

  幸運:322


 スキル

 

 武器系

<小剣術512><小盾術455><魔法剣385><投擲429><■■■???>


 魔法系

<魔力操作500><光魔法481><火魔法521><空間魔法401><■■■???><■■■???>


 耐性系

<忍耐356><苦痛耐性601><恐怖耐性367><物理耐性503><病魔耐性400><毒耐性422><麻痺耐性452><火耐性437><雷耐性311><氷耐性371><風耐性361><水耐性216><精神耐性420><神聖属性吸収239><■■■???><■■■■???><■■■■???>


 索敵系

<観察眼347><聞き耳423><気配察知348><危機感知321><魔力感知439><空間把握547><■■■????><■■■???>


 運動系

<飛行597><立体機動361><天駆399><空中戦闘507><■■■???>


 芸術系スキル

<歌唱392><舞踏431>


 ユニーク系

<天使の翼-><光輪322><■■■-><■■■-><共有無限収納>


 称号

<守護天使><■■■■><■■■■■■><記憶喪失><7級冒険者><6級パーティ・メンバー>


 賞罰

 なし



 概ねウィルが教えてくれた通りなのだが、称号がいくつか増えていた。<7級冒険者>と<6級パーティ・メンバー>に関しては良い。パーティ共有スキルである<共有無限収納>もまた、慎也のパーティメンバーになった時点でセリシエルが使えるようになるのは当然だろう。

 気になるのは<記憶喪失>だ。


「なんで記憶喪失が称号なんだ? 状態異常じゃないのか?」


 慎也が首を傾げる。

 ステータスの存在するこの世界に置いて、怪我や病気なども状態異常の一種として認識され、ステータスにそのように表記されるので、慎也はてっきり記憶喪失も状態異常の一種だと考えていたのだが、何故かそちらは称号欄に表記されていた。


「ああ、それはですね――」


 そこでフェルナが説明する為に口を開いた。

 ちなみに、彼女の手元では、絞められ過ぎたシアーシャが白目を剥いてピクピクしていたりするのだが、慎也は意図して無視した。


「状態異常というのは、正常な、あるいは健康的な身体機能が阻害される状態が表示されるんです。大きな怪我や病気なんかは当然ですし、呪いや中毒も同じです。けど、身体機能が阻害されない、もしくは自然の過程でそうなった場合の異常なんかは表記されないか、あるいは称号欄に表記されるんです」

「自然になる状態異常って、例えば?」

「脱毛とか」

「例えがエグイな!」


 さらりとフェルナの口から飛び出した例えに、慎也は鼻白んだ。


「あと、妊娠とかもそうですね。状態異常ではなく、称号に<妊婦>と表示されます。もちろん、出産すると<妊婦>の称号は無くなりますけど。他にも、目が見えない人でも、そうなった原因によってステータス表記が異なります。怪我や病気によって目が見えなくなった場合、状態異常に『失明』と表記されますが、生まれつき目が見えない人の場合は、称号欄に<盲目>と記されるそうです」


 なるほど、と慎也は相槌を打った。結衣やユフィアも初めて知ったらしく、興味深げに聞いていた。もちろんセリシエルもだ。


「記憶を失った人に会うのは私も初めてなんですが、記憶を失っても身体機能や精神に問題が起きている訳じゃないので、状態異常とは判別されなかったんだと思います」

 

 言われてみれば、パッと見た感じ、セリシエルは身体的にも精神的にも問題があるようには見えない。

 つまり、その辺りが判断の境目、ということなんだろう。


(状態異常か称号か……その辺りは誰が、いや、なにが判断してるんだろうな) 


 気になることではあるが、考えてもどうにもならないことなので、慎也はそれに関して詮索するのは止めにした。


 要は、それがこの異世界の仕様――ルールと言うことなのだろう。


「けど、セリシエルを保護した直後にウィルさんがステータスを確認したときは、<記憶喪失>なんて称号は無かったはずだぞ?」

「称号の中には、本人が認識しなければ現れないものもあります。さっきの話では、セリスさんは何者かに精神操作され、解除後、目を覚ましてから記憶が無いことを自覚したそうですから、それが原因だと思いますよ」

「なるほど……」


 言われてみれば確かにフェルナの言う通りだ。ウィルがセリシエルのステータスを確認したのは、彼女が暴走する前、意識を失っていた時だった。本人は記憶喪失を認識していないどころか、意識すら無かったのだから、称号が現れないのは当然か。


 とりあえず、慎也はその辺りのことは納得できた。


「話は変わるけど、スキルや称号って、会得した順番にステータスに表記されていくんだよな?」

「そうですけど、それがどうかしましたか?」

「いや、セリシエルのバグを起こしてるスキルや称号って、全部後の方に習得したものばかりだからさ……」

「あ、そういえばそうですね」


 言われて初めて気づいたらしく、ユフィアがポンと手を叩いた。

 セリシエルの文字化けしたスキルや称号は、すべて一覧の最後の方に集中している。もちろん、偶然などではあるまい。


「精神操作されている最中に習得したもので、セリスがそれを認識していないからか。それとも他に原因があるのか……」

「さあ……そればかりはなんとも……」


 困った顔でフェルナは顔をうつ向かせた。


(しかし、なんだろうな、これ? 当人が認識していないというよりは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ような印象なんだが……)


 ゲームやプログラムを改造してチートを発生させるツールのことは慎也も知っている。セリシエルのステータスからは、それを使ってパラメーターやスキルを強化しようとして、バグを起こしたような印象を受ける。


 うーん、と慎也がセリシエルのステータスを凝視しながら唸っていると――


「あ、あの、シンヤ?」

「ん?」


 なぜか恥ずかしそうに頬を染めたセリシエルが、上目遣いで話しかけてきた。


「あんまりジロジロ見られたら、恥ずかしいんだよ……」

「は?」


 見られたら恥ずかしい? なにを? ステータスか?


「……いや、ステータスを見られたら、恥ずかしいものなのか?」


 その辺りの感性はまるで無いらしい慎也が問い返す。


「とーぜんなんだよ! だって、ステータスは私の全てなんだよ? それを見せるということは、私の全部を見せてるようなものなんだよ? 恥ずかしいと思うのは、女の子として当然だと思うんだよ!」


 声を荒げてセリシエルが主張した。


「うん。セリスちゃんの言う通りだと思う」

「本人の許可が無いと見れないのは、それが理由だからですよ?」

「私も少し、デリカシーが無いと思います」

「破廉恥だね」


 結衣、ユフィア、フェルナ、シアーシャが口々にセリシエルの意見を擁護し、じっとりとした目で慎也を睨んだ。


「……ごめん」


 四面楚歌に陥った慎也は、早々に白旗を上げたのだった。


次回更新は土日の予定です。


<共有無限収納>について記述し忘れていたので、加筆しました。やっぱ熱出した状態で書いてたら碌なことになりませんね。


※土日に更新すると予告していましたが、体調の悪化で果たせそうもありません。来週前半には投降するつもりですので、どうかご容赦を。

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