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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
天使の章
81/135

第76話 この子は普通ではないな

謎が謎を(。´・ω・)???

「いや、違う」

「違うんですか?」


 首を横に振るウィルの言葉に、ユフィアは些かショックを受けたようだった。


「うむ。この子は異世界人ではない」


 ベッドの横たわる少女の髪をそっと撫でて、ウィルはそう断言した。


 結局あの後、慎也たちは気を失っている少女を担いで帰宅した。出迎えてくれたウィルはさすがに面食らった様子だったが、事情を説明するとふたつ返事で少女を迎え入れてくれた。


 見たことも無い奇妙な服を着た少女の正体が、この世界に転移して来たばかりの異世界人か、と期待していたユフィアだったが、少女のステータスを確認したウィルによってその期待は砕かれた。


「この子は<異界の民>の称号を持っていない。この世界の人間だ。しかし――」


 一泊おいて、ウィルは唸るように言った。


「この子は普通ではないな」

「普通じゃない、ってどういうことですか?」


 困惑を隠せない様子のウィルに、慎也が尋ねた。

 常に落ち着き払い、どんな時も慌てることの無かったウィルが困惑していることに、慎也は不吉な物を感じた。


「わしもこれまだ多くの人間のステータスを見てきたが、こんな奇妙なステータスは見たことが無い」


 困惑を隠せないまま、ウィルは自身で見た少女のステータスを紙に書いてくれた。


  名前:セリシエル

  種族:天使族

  年齢:16

  性別:女

  Lv:30

  HP:3277/3277

  MP:0/981

 EXP:25884/37982

  筋力:687(+74)

  魔力:788(+99)

  敏捷:711

  知力:423

  防御:587

  抵抗:612(+123)

  精神:471(+45)

  幸運:322


 スキル

 

 武器系

<小剣術512><小盾術455><魔法剣385><投擲429><■■■???>


 魔法系

<魔力操作500><光魔法481><火魔法521><空間魔法401><■■■???><■■■???>


 耐性系

<忍耐356><苦痛耐性601><恐怖耐性367><物理耐性503><病魔耐性400><毒耐性422><麻痺耐性452><火耐性437><雷耐性311><氷耐性371><風耐性361><水耐性216><精神耐性420><神聖属性吸収239><■■■???><■■■■???><■■■■???>


 索敵系

<観察眼347><聞き耳423><気配察知348><危機感知321><魔力感知439><空間把握547><■■■????><■■■???>


 運動系

<飛行597><立体機動361><天駆399><空中戦闘507><■■■???>


 芸術系スキル

<歌唱392><舞踏431>


 ユニーク系

<天使の翼-><光輪322><■■■-><■■■->


 称号

<守護天使><■■■■><■■■■■■>


 賞罰

 なし


<天使の翼>

 天使族の固有スキル。背中に生えた翼で飛行することが出来る。また、使用しない場合は消しておける。


<光輪>

 天使族の固有スキル。発現中はステータスが上昇する。上昇率と発現時間はスキルレベルに依存する。



「な、なんですか、これ?」


 突っ込みどころ満載な少女――セリシエルのステータスに、慎也だけでなく結衣やユフィアまで怪訝な顔になる。


 名前と種族は置いておくとして、まずパラメーターのいくつかに補正がかかっている。もちろん慎也たちのパラメーターにはそんなものは無い。

 さらに意味不明なのが、スキルの多くが文字化けしたような状態になっていることだ。スキルは存在するのに、名前やレベルが判らない。同じ現象が称号欄にも起こっている。


 慎也たちは、自分とパーティメンバー以外のステータスを見たことはなかったが、さすがにこれは普通ではないと理解できた。


「どうやら彼女は、天使族のようだ。天使族のことは知っているかね?」

「詳しくは知りませんが、背中に翼の生えた亜人種だと」

「その通り。天使族は浮遊島――彼らの言う《天界》に住まう種族で、総じて背中の翼による飛行能力を有し、神聖系の魔法を得意とする種族だ。寿命も長く、エルフと並ぶほどの長命種だ」

「浮遊島? 天界?」


 ウィルの言葉に出て来た魅力溢れる単語に、空かさずラノベマニアの結衣が目を輝かせて喰い付いた。


「天使族とその眷属が住まう、空飛ぶ群島のことさ。わしも行ったことは無いが、いくつもの島がまるで風船のように空に浮かんでいるらしい。何故浮いているのかは判らないが」

「空飛ぶ島! そんなファンタジーな物が実在するんだ! ね、慎也君、私行ってみたい!」


 興奮気味に捲し立てる結衣を慎也がチョップで黙らせる。


「すいません。続けてください」


 頭を押さえて痛がる結衣に代わって慎也が謝罪し、ウィルも気を取り直して説明を再開した。


「天使族は亜人ではあるが、他の種族と違って滅多に人前には姿を現さない。と言うのも、先も言った美麗な外見や寿命故に、ベルカ帝国が全盛期の時代、人間たちによって多くの天使たちが奴隷として狩られた過去が存在するからだ」


 その辺のことは慎也たちにも理解できる。美しく、しかも長命故に長い間その外見が保たれる種族と言うのは、愛玩奴隷としては1級品だ。

 旧ベルカ帝国は過剰な人間至上主義を貫いていて、他の種族を奴隷どころか家畜扱いしていたと言うから尚更だ。


「また、彼らの特徴である翼に生えた羽根は強い神聖系の魔力を帯びていてね。当時の貴族や王族たちの衣服、あるいは魔導具の原料として、翼を目当てに殺されたり捕らえられた者も数多くいたそうだ」

「酷い……」


 ユフィアが消え入りそうな声で呟いた。


「そのようなことが重なり、天使たちは自分たちの故国である天界に引き籠り、その後長く人間たちとの交流は途絶えていたそうだが、ベルカ帝国が衰退し、他種族融和主義のヤマト王国が興ってからは、歴代の王族たちの働きかけもあって、少しずつではあるが交流を再開したそうだ」


 いま、天使族とわずかながらでも交流を持っているのはこの国だけだそうだ――と。


「天使族が地上にいること自体、珍しくはあるがおかしなことではない。だがこのステータスは明らかに異常だ」


 ウィルは改めて少女――セリシエルの方を見た。いまだ意識が戻らず、穏やかな寝顔を覗かせる彼女からはそのような異常性はまったく感じられないのだが。


「ってことは、このステータスは天使族特有のものではない、ということですか?」

「うむ。ステータスは基本、どの種族でも共通だ。天使族のステータス画面も人間のそれと変わらないはずなのだが……」


 セリシエルのステータスがおかしなことになっているのは、天使族故の特別仕様ではないか、という慎也の推測は外れたようだ。


「パラメーターに見られる補正。通常、これらは上昇するとその分が既存の数値に加算されて上昇していく仕組みになっている。このような補正が加えられることはあり得ん」


 確かに、慎也たちのパラメーターもまた、レベルアップする度に既存の数値が加算されて上昇してきた。こんな補正が加えられたことは一度も無い。


「なによりスキルとそのレベル、称号が見えなくなっていること。こんな現象はわしも初めて見る。理由が皆目見当がつかん」


 困惑顔で首を捻るウィル。なんでも知っている物知り爺さん的なウィルの困惑ぶりに、慎也たちは目の前にいる少女がいよいよ普通でないことを改めて再認識した。


「なにか、認識阻害系の魔法や魔導具の影響と言うことは?」

「もしそうなら、ステータスそのものが見えなくなるはずだ。一部だけが確認できなくなることはない」


 ユフィアの推測を、ウィルは首を振って否定する。


「それに、おかしな点は他にもある」

「まだあるんですか?」


 慎也は怪訝な顔で紙に書かれたセリシエルのステータスに目を落とすが、パラメーターの補正とスキル、称号の不可視以外はおかしな点は見当たらない。


「彼女のレベルと経験値だ」


 言われて紙に書かれたセリシエルのステータスに目を落とす。彼女のレベルは30。同じレベルの慎也と比べて経験値もほぼ同じで、別段おかしな点は無いが。


「覚えておくと良い。レベルと言うものは、長命な種族ほど上がりにくいものなんだ」


 この世界には地球と違って人間以外にも様々な知的生命体が存在している。当然、種族によって寿命も異なる。

 人族は地球のそれと同じで70~100歳程度なのに対し、エルフは1000年以上の寿命を有している。

 そして、同じく地球には無いレベルやステータスと言った概念。それらの上昇率もまた、種族によって異なる。具体的には、長命な種族程、レベルアップに必要な経験値が多い。


 人間の10倍以上生きれれるエルフは、レベルアップに必要な経験値もまた、人間の10倍以上なのだ。


 言われて、慎也たちもようやく気付いた。

 セリシエルはエルフと同等の寿命を持つ天使族にも関わらず、16歳という若さでレベルが30もあり、しかも習得した経験値は人間である慎也とほぼ同じなのだ。


 異常と言えば、これが一番、異常と言えるかもしれない。


「いったい、何者なんでしょう?」

「さて、それは本人に聞いてみないと皆目見当が付かないが……この子は転移魔法で突然現れたと言っていたね?」

「はい。3人で休憩していたら、急に強い魔力の波動を感じて、そしたらいきなり目の前に魔法陣が出現して……」


 慎也の説明に、ウィルは「ふむ」と顎に手を当てて思案顔になった。


「魔法陣の大きさは、どのくらいだったか覚えているかい?」

「結構デカかったですよ」


 恐らく直径10メートルはあったはずだ。それに、発せられる魔力もかなり強かった。


「転移魔法は、転移する距離が離れていればいるほど多量の魔力を消費する。直径10メートル前後の転移魔法陣となると、正直、どれほどの距離を渡って来たのか想像もつかないな」

「この子のMPが0なのは、それが原因なんでしょうか?」


 セリシエルのステータスを眺めながら結衣がそんなことを言った。

 彼女のステータスには<空間魔法>があるので、ここまで転移する為に全魔力を消費したことは容易に推察できる。


 セリシエルが意識を失ったのは、全魔力を消費したことによる魔力欠乏症によるものだろうと、ウィルは推察していた。


「だが<空間魔法>のスキルレベルが400程度では、全魔力を振り絞ったとしてもそれほど長距離の転移が出来るとは思えん。なんらかの魔導具によるサポートがあったはずだ」

「どっから来たんでしょうね?」


 首を傾げる結衣。普通に考えれば天使族の住まう天界――浮遊島なのだろうが――


「逆に、どうしてここに転移して来たんでしょう?」


 慎也が気がかりなのはそれだった。

 何故、セリシエルは自分たちの目の前に――ヤマト王国スアード伯爵領の外れに現れたのか。


 この場所は2年前、自分たち異世界人が転移して来た場所のすぐ近くだ。故に、ユフィアはセリシエルが現れた当初、見慣れぬ服を着た彼女が異世界人ではないかと思ったのだが。


「はてさて、単なる偶然か、彼女自身の意志か。あるいは――」


 そこでウィルは言葉を切った。

 言いようの無い不穏な空気を孕んだ沈黙が部屋の中に満ちた。


 ◇◇◇


 その日の夜になってもセリシエルは目を覚ますことはなかった。たぶん、尽きた魔力がある程度回復するまでは目覚めないだろうし、それには一両日は掛かるだろうというウィルは推測した。


 なので、慎也たちはいつも通り夕食を取った後、それぞれの部屋で就寝に付いた。


(やれやれ、なんかやたら濃い一日だったな)


 ベッドの上に寝そべって、黒く染まった天井をぼんやりと見上げながら、慎也は嘆息した。


 盗賊の殲滅戦。初めての殺人。盗賊たちの協力する謎の男。そして、突如目の前に現れた、天使族の少女。不可解な彼女のステータス。


 ちょっと色々あり過ぎて酷く疲れた。疲れたのに色々気になって眠れないという、地獄のスパイラル。

 答えも出ないことを考えても仕方がないと判っていながらも、考えずにはいられない。それくらい訳の判らないことが多かった。


 何故、ケイドという男は自分を襲った盗賊団に協力なんかしたのか――

 セリシエルは何者なのか――

 どうしてステータスがおかしなことになっていたのか――

 この場所に現れたのは偶然なのか――


(ああくっそ! 頭の中がごちゃごちゃして眠れない!)


 ついに耐えきれなくなった慎也はベッドから飛び起きた。 少し夜風に当たって頭を冷やそう、と、その足で部屋の外に出る。みんなを起こさないよう、気配を消してゆっくりと廊下を進み、玄関から庭へと出た。


「え?」


 外に出た途端、間の抜けた声が口から洩れる。

 

 既にそこには先客がいたからだ。

 しかもそれは――


「セリシエル?」


 月明かりに照らされたその後ろ姿は、間違い無く件の天使少女――セリシエルのそれだった。

 寝る前に確認した時は確かにベッドで眠っていたはずの彼女が、何故かそこにいた。


 呼びかけに反応したのか、セリシエルがゆっくりと慎也の方を振り返る。


「っ――!!」


 彼女と目が合った途端、慎也は思わず息を飲んだ。

 夜の闇の中にあってもはっきりと判った。セリシエルの目に光が無い。瞳はまるで虚ろで、目が開いていても意識が定かで無い状態。いわゆる半覚醒によるトランス状態であることが見て取れる。


 人間がこういう状態になる原因は、大抵碌なことではない。慎也には身に覚えがあった。

『父親』との稽古で何度も半殺しの目に遭わされ、半分意識を失った状態に追い込まれたことが多々あった。


「おい、聞こえるか? オレの言葉が判るか?」


 距離を取ったまま、セリシエルに呼びかけてみるが、答えは無い。寝呆けたような顔のまま、セリシエルはゆっくりと右手を挙げ、慎也に人差し指を向けると――


 次の瞬間、彼女の指先から光線が迸った。

次回更新は未定です。今週中には投稿します。リアルが忙しくて。すいませんm(__)m

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