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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
冒険者の章
60/135

第57話 加勢します

予約投稿に失敗してしまいましたm(__)m

「くそっ! こいつら、ゴブリンの分際で――」


 ごつい長剣を携えた若い冒険者が、インペリアル・ゴブリン・ガーズのハルバートを弾きながら忌々し気に唸った。

 今回の作戦で討伐隊のメンバーに選ばれただけあって、彼自身、5級冒険者であり、キアナの冒険者ギルドに所属する者の中では腕の立つ方だった。これまで何度もゴブリンやその希少種を仕留めて来た彼だったが、いままさに刃を交えているゴブリン・ガーズは、これまでのどんなゴブリンよりも手強かった。


 そもそも、ゴブリンという種は基本的に練習ということをしない。当然、戦いでは力任せで大雑把な攻撃しか出来ない。故に、1対1では冒険者の敵には成り得ないのだが、このゴブリン・ガーズは違った。

 奴らの槍斧術は熟練の冒険者と比べても遜色無いレベルだし、なにより<闘気>を使う。通常、<闘気>は長く厳しい訓練と研鑽を重ねることで体得できるものだ。


 彼自身もまた<闘気>の使い手であるが故にそのことは嫌と言うほど理解していた。それを、最弱の魔物と言われているゴブリンが使っていることが、彼のプライドを酷く逆撫でした。


 だが、それよりなにより彼を怒らせたのは、自身がゴブリン如きに苦戦を強いられているという現実だった。


「生意気なんだよ、ゴブリン如きが!」


 怒りを超え、憎しみすら混じった声で吠え、彼は剣を振るうが、ゴブリン・ガーズはそれを難なく受け止める。


 冷静さを失った思考が、彼の行動をさらに大雑把に、精密さを欠如したものへと変える。


「剣を振り回さないで下さい。一緒に戦えません!」


 背後で同じ討伐隊の女性冒険者――《槍穹の翼》のフェルナが加勢しようとしていたが、怒り任せに振り回される彼の剣戟が邪魔で入り込めないでいた。

 ゴブリン・ガーズもそれが判っているのか、若い冒険者を盾にするように動き回り、フェルナに回り込む隙を与えないでいる。その動きがまた、若い冒険者には自分をおちょくっているように見えて、ますます怒りのボルテージを上げてしまう。


「うるさい! こんな奴、オレ1人で――」


 ――倒してやる、と言いかけた所で、突然、眼前のゴブリン・ガーズが、びくり、と身体を震わせ、同時に、ゴェッ、という潰れた苦鳴を漏らして動きを止めた。


「……なんだ?」


 手から力無くハルバートが抜け落ち、全身をだらりと弛緩させた。

 そこで若い冒険者はようやく気付いた。

 ゴブリン・ガーズの喉笛の辺りに刀の切っ先が生えていることに。


 ゴブリン・ガーズの身体が黒い粒子となって霧散すると、その向こうに、彼よりも若い、それこそ少年と呼べるような年頃の冒険者が立っているのが見えた。

 その顔をこの若い冒険者は知っていた。スアード領民なら誰もが知っている元1級冒険者――《鬼神》ウィルの弟子だ。

 つい先日冒険者になったばかりだというのに、その日の内にゴブリンに捕らわれた新人を助けたり、ワイバーンを倒したりと色々噂になっている奴だ。


 若い冒険者からすれば、いけ好かない、という評価に分類される奴だった。


 そのいけ好かない奴が、彼が戦っていたゴブリン・ガーズを背後から刺殺したのだ。


「余計なことしやがって……」


 獲物を横取りされた、と言わんばかりに若い冒険者は吐き捨てた。


「そいつは失礼。ずいぶん苦戦しているみたいだったんでね」


 いけ好かない奴――慎也は肩を竦めてそう言った。


「あんな奴、オレだけで倒せた!」

「あんたが勝っても、周りが負けてしまったら意味が無いだろ? これは決闘じゃなくて、集団戦闘(レイド)なんだから」

「ッ!」


 若い冒険者は反論しようとしたが、慎也の言っていることの方がどう考えても正論なので、ぐっと押し黙ることしか出来なかった。

 

「あともうひとつ。オレが知ってる大昔の偉人が言った名言の中に、こんなのがある――怒りは敵と思え」


 さっきみたいに怒り――感情に任せた無茶な戦い方では、勝てる戦いも落としてしまうぞ、と慎也は言った。


「余計なお世話だ!」

「それは失礼、っと!」


 言葉を言い終わると同時に、慎也がその場から背後へ飛び退いた。一瞬後、慎也のいた空間を闘気の斧が斬り裂き、地面に大きな亀裂を穿った。


 新手のゴブリン・ガーズが慎也を奇襲しようとしたが、元々気配察知に優れた慎也にあっさり気づかれて躱された。


「加勢します」

「よろしく」


 そこへフェルナが加わり、2対1でゴブリン・ガーズを攻め立てる。

 慎也とフェルナが肩を並べて戦うのは今回が初めてだったが、即席にしては息の合った動きでゴブリン・ガーズを翻弄していく。ゴブリン・ガーズの方も懸命に応戦するが、如何ともし難く、堪り兼ねて離れようとしたところに、別方向から飛んで来た矢に左腕を貫かれた。

 矢の飛来した方へ目を向けると、得意げな顔で弓を構えるシアーシャと目が合った。

 そしてその間、ゴブリン・ガーズは、本来の敵である慎也とフェルナから注意を逸らしてしまうという致命的な失敗を犯す。


 気付いた時には既に慎也が懐に飛び込んできており、振り上げられた刃によってハルバートを握っていた右腕を付け根辺りから斬り飛ばされ、たたらを踏んだところを、低く身を屈めたフェルナが地面すれすれの高さを槍で薙ぎ、両足首を切断する。バランスを失ったゴブリン・ガーズはその場に倒れた。


 自分が苦戦していた相手を、目の前で簡単に倒された事実に、若い冒険者はまた歯噛みする。


 倒れたゴブリン・ガーズに止めを刺すべく、フェルナは立ち上がって槍をゴブリン・ガーズに突き刺そうとして――


「待て!」


 慎也に大声で制止された。


「どうして止めるんですか?」


 困惑気味にフェルナが問う。


「こいつはもう戦えない。ほっといても無害だ」


 確かにこのゴブリン・ガーズは両足と右腕を失い、地面に倒れたまま苦し気に呻いているだけで、どう見ても戦えるような状態ではなかった。不思議なことに手足を切断されたにもかかわらず血が出ていない。代わりに、消滅するときに飛び散らす黒い靄のような物を切断面から立ち上らせている。

 これもまた、特殊召喚獣の特徴なのだろう。


「はぁ!? てめぇ、頭おかしいんじゃねぇのか! 魔物に情けを掛けるつもりかよ!?」


 信じられない、と言わんばかりに若い冒険者が食って掛かる。フェルナも口には出さないものの、慎也の判断に困惑しきった顔になるが、当人は首を振って否定した。


「情けをかけたんじゃない。ちょっと確かめたいことがあっただけだ」

「確かめたいこと?」


 フェルナが聞き返すと、慎也は頷いて周囲を見回す。


 既に他のゴブリン・ガーズは中衛隊の者たちによって倒され、ことごとく消滅していた。が、やはり苦戦を強いられたらしく、数人の負傷者が生じて後方で魔法使いたちに治療を受けている。


 離れた場所では、大元であるゴブリン・エンペラーと前衛部隊の戦いが続いている。全身を満遍なく闘気で覆い、メイスに魔法を纏わせて暴れ狂うゴブリン・エンペラー。しかし、ベテラン揃いの前衛隊は数と経験の利を生かして猛攻を凌ぎ、逆に死角から攻め立て、少しずつではあるがゴブリン・エンペラーを追い詰めつつあった。


 前衛隊優勢で進んでいた戦いに変化が起こった。

 ゴブリン・エンペラーの周囲に再び黒い靄が生じ、3度(みたび)インペリアル・ゴブリン・ガーズが召喚された。

 だが、1度目と2度目とは様子が違う。


「5体?」


 騎士の1人が呟いた。

 そう、最初と2度目の召喚時は6体ずつ現れたゴブリン・ガーズが、今回は5体しか現れなかったのだ。


「やっぱりな……」


 その様子を見て、慎也は自分の予想が的中したことを確信した。


「どういうことですか、シンヤさん?」


 訳知り顔の慎也に、フェルナが尋ねる。少し離れた場所で指揮を取っていたイアンも、5体しか召喚されなかった理由が知りたいのか、興味深げにこちらを見ていた。慎也もそれに気付いていたので、あえて彼に聞こえるよう、大きめの声で言った。


「ゴブリン・エンペラーの<特殊召喚>で召喚されるゴブリン・ガーズは、最大6体まで。同時に、召喚中のゴブリン・ガーズの数も最大で6体までなんだと思う」


 最初にゴブリン・エンペラーのスキルを見た時から気になっていた。

 MPを消費すること無く眷属を召喚する<特殊召喚>。もしも文字通り際限無く魔物を召喚できるのなら、ハッキリ言って無敵(チート)に近いスキルだ――と、慎也は当初はそう思っていた。


 初めに違和感を感じたのは、2度目の召喚時に現れたゴブリン・ガーズの数が最初と同じ6体だったこと。6体だけでは討伐隊には勝てないと判っているのにそれだけしか出さなかったということは、1度に6体までしか召喚できないということだ。


 だが、それなら6体召還した後、もう1度<特殊召喚>を使えば、計12体、さらにもう1度使用すれば18体にまで増やせるはずだ。そうして数に任せて戦えば、討伐隊に勝ち目は無かっただろう。


 なのに、ゴブリン・エンペラーはそうしなかった。召還したゴブリン・ガーズが不利になっても増援を出さなかったし、自分自身が前衛隊に攻撃された時も自ら武器を振るって戦った。


 それを見た慎也は考えた。<特殊召喚>というのは、思ったほど便利なスキルではなく、いくつもの制約があるのではないか、と。


 スキルの説明欄にはこうあった。「受動(パッシブ)系スキル」と。


「たぶん、<特殊召喚>というのは”発動中に一定時間ごとにインペリアル・ゴブリン・ガーズを召喚し続ける”というもの。1度ゴブリン・ガーズを召喚するとしばらくは新手は召喚されない。そして、ゴブリン・ガーズの()()()は6体まで。これは、1度に召喚できる数であると同時に、召喚中の最大数でもある。つまり、ゴブリン・ガーズの数は6体を上回ることはない。最初に召喚されたゴブリン・ガーズが、次の<特殊召喚>発動時に生きていれば、その分だけ新手の数は減るんじゃないか、と思ったんだけど、大正解みたいだったな」


 召喚時にクールタイムがある上、6体の内の1体でも生きていれば、その分だけ次回召喚時の新手の数は減る。例えそれが、戦うどころか立つことさえできない瀕死であっても。


 これが<特殊召喚>の弱点であり、制約だ。


(たった2回でそこまで気付けるとはな……まだ新米で行動に危なっかしい部分はあるが、伸びしろは大きいな)


 慎也の評価を改めつつ、イアンはせっかく彼が暴いてくれた弱点を有効活用すべく、新たに指示を出そうとしたところで、問題に気付いた。


 新たに召喚された5体のゴブリン・ガーズが、ゴブリン・エンペラーを守るように周囲を取り巻き、包囲する前衛隊と睨み合いになっている。

 さっきまでは現れるなり三々五々と各個に戦っていたゴブリン・ガーズだが、エンペラーのすぐ側に敵がいるとあってか、攻めるよりもゴブリン・エンペラーを守る方を選択したようだ。


「おいイアン、なんとかしてくれ!」

「判った!」


 マクレーンの催促に、イアンはすぐさま指示を出す。


「魔導士組、弓士組は攻撃の準備。前衛隊はいったん奴らから距離を取れ。中衛隊はいつでも援護出来るように準備しておけ。ゴブリン・ガーズはなるべく生かしたまま戦闘不能にするように!」


 敵が一カ所に固まって動かないなら魔法の格好の的だ。突撃して来れば数で押し包んで分断し、再度ゴブリン・エンペラーを前衛部隊で攻囲し、ゴブリン・ガーズは中衛部隊で各個撃破。その際、ゴブリン・ガーズを殺さずに瀕死にして生かしておけば、新手の出現を抑えられる。


 ややあって、ゴブリンたちに魔法使いたちの放った無数の魔法が炸裂。例によって効果は薄かったものの、このまま固まっていては的にされると悟ったゴブリンたちは、ゴブリン・エンペラーを中心に固まったまま討伐隊へ斬り込みを仕掛けた。


「弓隊、射かけろ!」

「これでも喰らいなさい!」


 イアンの合図でシアーシャたち弓士が闘気を帯びた矢を一斉に射かける。そのほとんどはゴブリン・ガーズたちに例の如く払いのけられてしまうが、他の弓士より一拍遅れて放ったシアーシャの矢だけは違った。


 放物線を描いてゴブリンたちの上から迫っていた矢が突然弾け、無数の光矢となって豪雨の如くゴブリンたちの頭上に降り注いだのだ。


 弓型戦技――ダウンプーア。


 数十本の闘気の矢を浴びることになったゴブリンたち。さすがにゴブリン・エンペラーにはほとんどダメージを与えられず、ゴブリン・ガーズたちも<防護>のスキルを発動させて凌いだが、2匹ほどは発動が間に合わず、剥き出しの手足を射抜かれた。

 動きを止めたところへ、前衛隊と中衛隊が殺到し、乱戦となる。


 最初はゴブリン・エンペラーを守るように戦っていたゴブリン・ガーズたちだったが、ハルバートという武器の性質故にゴブリン・エンペラーが近くにいる状態では振るいにくく、討伐隊の巧みな挑発、牽制もあって個別に引き離され、各個での戦いを強いられることになった。


「やあ!!」


 袈裟懸けに振り下ろされたゴブリン・ガーズのハルバートを、フェルナが闘気を込めた槍で弾き返し、返す勢いで石突で鎧の胸甲を突く。ダメージこそ与えられなかったものの、衝撃でゴブリン・ガーズが数歩後退したところへ――


「スイッチです!」


 ――隙かさず慎也が斬り込んだ。

 フェルナの突きが浅かったのか、間一髪で体勢を立て直したゴブリン・ガーズは咄嗟にハルバートで迎え討つ。慎也は構わず走りながら、斜め上から振り下ろされるハルバートと交差する形でイクサを振り抜いた。

 ガキンッ、という金属音を立てて、両者の身体がすれ違う。


 慎也とゴブリン・ガーズ。どちらの身体にも傷は無い。互いに相手を仕留めそこなったかと思われたが、そうではなかった。


 ゴブリン・ガーズのハルバートが、半ばから切断されて、斧部が宙を舞っていた。


 刀型戦技――砕刃。


 切断に特化した刀特有の戦技で、その名の通り相手の武器を破断する刀術だ。


 ハルバートを破壊されたゴブリン・ガーズが驚愕の声を上げるその向こうで、勢いのままゴブリン・ガーズの背後へ走り抜けた慎也が、ダッシュ状態の前屈みになった体勢のままジャンプ。頭を支点にして身体を回転させながらホルスターから魔法銃を抜き、ちょうど半回転、つまり、空中で逆様の状態になった一瞬を狙い、視界に映ったゴブリン・ガーズの後ろ姿目掛けて立て続けに2度発砲。ゴブリン・ガーズの両足の膝裏を撃ち抜いた。


 グギャア!!


 両足を砕かれたゴブリン・ガーズが絶叫を上げて倒れ込むと同時に、身体を捻りつつ慎也が着地し、再度ゴブリン・ガーズに銃口を向けるが、武器と両足を失ったゴブリン・ガーズは地面を転げまわっているだけで反撃する様子は無い。


「ここまでですね」

「ああ、次に行こう」


 このゴブリン・ガーズは戦闘不能になったとみなした慎也とフェルナは、互いに頷き合って他メンバーの加勢に向かった。


 そんな2人の様子を、結衣は複雑な面持ちで見つめていた。


「慎也君とフェルナさん、凄く息が合ってるね」

「そう、ですね……」


 心なしか元気の無い声でユフィアが応じた。


 剣士である慎也と槍士であるフェルナ。魔法使いである自分たち。その違いが、この戦いではまざまざと現れていた。

 

 前衛系である慎也とフェルナが肩を並べて戦うのを、後ろから眺めていることしか出来ない自分たち。

 

 その事実が、2人の胸に澱のような感情を抱かせていた。


 仕方が無いことだ。これは集団(レイド)戦闘。仲間同士でサポートしあいながら戦うのが基本だ。そして、魔法使いであり、身体を使った直接戦闘が苦手な自分たちは、どうあっても慎也と肩を並べて戦うことは出来ない。だから、同じく前衛系であるフェルナがサポート役として適任なのは火を見るよりも明らかだ。

 だがそれでも、納得できないことはある。


 慎也は男で、フェルナが女な点だ。


 2年間、同じ屋根の下で凄し、共に戦い、憎からず思っていた男性が、会ったばかりの女性と肩を並べて戦っているという事実は、2人の胸に複雑な感情を呼び起こすには充分だった。


「浮気だね」

「そ、それはちょっと違うと思います」


 半眼で呟いた結衣に、ユフィアが慌てた様子で言った。


「そうかな?」

「そうです!」


 何故か力んだ様子で否定の言葉を述べるユフィア。


「でもさ、私たちのパーティって、前衛系が慎也君しかいないよね?」

「そうですけど……」

「もしこの戦いが終わった後で、慎也君がフェルナさんを勧誘(ナンパ)したらどうする? オレには君が必要なんだ、とか言って」

「そそ、そんなこと、シンヤさんが言うはずありません!」

「そうかな?」

「そうです!」


 首を傾げる結衣に、プンプンと怒った様子でユフィアは珍しく声を荒げた。


「フェルナさんが来ても、私は良いと思うけど」

「え?」

「いくら強くたって、前衛が慎也君1人っていうのは無茶だと思うんだ。私たちは後ろから援護することしか出来ない訳だから、やっぱり同じ前衛で彼の背中を守ってくれる人は絶対に必要だよ」


 結衣の言葉は正論だった。どんなに強くとも、やはり1人は1人。1度に戦える数は限られている。

 これまでは戦う魔物がゴブリンのような格下だったり、ウィルやマクレーン、エミリータといった先輩冒険者の助けがあったが、彼らはパーティメンバーではないのだ。いつまでも助けてくれはしない。

 前衛系のパーティメンバーはどうしても必要だ。


 実際、結衣は今回の討伐戦で目ぼしい前衛系冒険者がいればスカウトする様に慎也に勧めるつもりでいた。いまの所、その最有力はフェルナだった。


「でも、フェルナさんは別のパーティのメンバーですから、難しいと思いますよ?」

「うーん、そうなんだよね」


 腕を組んで悩むように首を傾げる結衣。

 そこへ――


「おいお前たち、余計なおしゃべりしてないで、戦いに集中しろ!」

「「す、すいません!」」


 戦闘中に場違いなおしゃべりに興じてた結衣とユフィアに後衛隊の騎士の雷が落ち、揃って頭を下げて謝罪する羽目になった。


「取りあえず、話の続きは後でね」

「はい」


 頷きあって、いつでも魔法で味方を援護出来るように意識を集中する。


(シンヤさんを守る人――)


 前衛で慎也と共に戦える人間。

 自分には出来ないことが出来る人。


 いままさに、慎也とフェルナが互いに助け合って戦っている姿は、ユフィアの胸に鈍い痛みをもたらした。

 フェルナという女性が、自分にはどうやっても出来ないことを平然とやっていることに対して、悔しいと思う気持ち。


(わたしって、心が狭いんでしょうか?)


 そんな感情に対して、ユフィアは自己嫌悪になってしまう。

 フェルナが一緒に戦ってくれていれば、それだけ慎也に振りかかる危険が減るということ。本来は喜ばしいことなのに、悔しいと思ってしまう自分が、嫌な人間になってしまったような気がした。


 それがまったく別な、極めて純粋な感情から来るものだと彼女が気付いたのは、この直後だった――

次回更新は11/16日の18時です。今度は間違いないです!


作中に出る「怒りは敵と思え」と言った人は、徳川家康です。

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