第55話 ゴブリン・エンペラー
ラスボスゴブリン登場(=゜ω゜)ノ
重厚な見た目に反し、扉はイアンが軽く押しただけであっさりと開いた。
扉の向こう側にあったのは闇――一切の光源も無く、夜の闇を掻き集めて放り込んだかのような真っ暗な黒に満たされた空間。
一寸先も見えぬ闇の中に最初に踏み入れたのはイアンだった。右手に剣を、左手に魔灯杖を掲げ、ゆっくりと慎重に歩みを進める。彼の後に続いて討伐隊の面々が隊列を組みながら、1人、また1人と中へ踏み込んでいく。
慎也は隊列のほぼ中央に位置していた。ちょうど彼の後ろに、結衣やユフィア、リネットといった後衛の魔導士組が続いている形だ。
ちなみにフェルナとシアーシャの《槍穹の翼》も慎也と同じ中衛だ。
(広いな……)
周囲は暗闇に閉ざされていてまったく見えないが、討伐隊の足音とその反響音から、自分たちが踏み入れた空間がかなりの広さを有していることだけは判る。
(さて、鬼が出るか蛇が出るか……)
程無く討伐隊の最後の1人が門を潜ると、まるでそれが合図であったかのように空間内に異変が生じた。
ボッ、という音を立てて、慎也たちの遥か上の空間に赤い炎が灯った。さらにボボボボボという連続した発火音を立てて、無数の灯が連なって円を描いた。
突如として発生した光源によって、闇に沈んでいた空間が露わになる。
「なんだ、こりゃ……?」
呆然とした冒険者の声が反響した。
慎也たちの踏み込んだ部屋はほぼ完全な半球状になっているようで、半径は100メートルを超えている。
遺跡を構成していた石材とは違う材質で出来ているのか、この空間には目立った劣化が見られない。しかも壁の表面は、慎也にはさっぱり理解できない幾何学的な紋様がびっしりと掘られていた。
「あれを見ろ!」
それの存在に最初に気付いたのはイアンだった。
慎也達討伐隊が入って来た入り口とはちょうど反対側に設けられた、見るからに邪悪なデザインの玉座。
そして、そこに腰かけている何者かの影――
一瞬、慎也は石像かと思ったが、ギラリ、と目の辺りに炯光が灯ったのを見て間違いだと気付く。
眼光を皮切りにして、それはゆっくりと玉座から立ち上がった。
「ゴブリン……?」
討伐隊の誰かが呟いた。
確かに、全体的なシルエットはゴブリンのそれだった。大きく曲がった鼻に尖った耳と裂けた口を有する醜悪な顔の造形はゴブリンそのものだ。
だが、彼らが知っているゴブリンとの共通点はそれだけだ。それ以外の容姿は、他のゴブリンとは決定的に違っている。
まずは大きさだ。平均的なゴブリンの大きさに比べ、そいつは圧倒的に大きかった。ゴブリン・キングには劣るものの、2メートルを超える逞しい巨体を有している。
さらに、キングを含めたゴブリンの肌の色は――例外を除いて――緑色のなのに対して、そいつの肌は鮮血を思わせる深紅だ。
なにより決定的な違いが、その威厳だった。
それは、人間なら誰しもが見下し、蔑むであろう矮小なゴブリンなど及びつかないような昂然とした威厳と威圧感に満ちている。身に纏う醜悪な鎧と、魔物の骨を加工して作られたと思われる冠、肩に羽織ったマントと、右手に携えた、杖を思わせる大型のメイスがそれらをさらに際立たせていた。
「なんだ、あいつ……」
騎士の1人が震える声で呟いた。
その答えが、既に慎也たちには見えていた。
(やっぱり鬼が出たか……)
ゴブリン・エンペラー
レベル:46
生命力:6650
魔力値:981
闘気値:1052
筋力:1201
敏捷:593
スキル:<戦棍術611><体術455><火魔法449><雷魔法478><氷魔法421><魔力操作422><魔法棍569><闘気509><闘気術443><統率500><鬼帝の威厳-><眷属召喚-><特殊召喚->
【ゴブリンの皇帝。守護者】
<鬼帝の威厳->
ゴブリン族のステータスを30%上昇させる。
<眷属召喚->
魔物の固有スキル。自身と同種の魔物を発生させる。召還する眷属の数が多いほど、レベルが高いほどMP消費は大きくなる。自身のレベル以上の魔物は召還できない。
<特殊召喚->
特殊召喚獣を発生させる。<眷属召喚>と違い、MPを消費しない受動系のスキル。
「ゴブリン・エンペラー」
「エンペラー!?」
戦くような慎也の呟きに、イアンは驚愕の声を上げる。
「ゴブリン・エンペラーなんて聞いたこともないぞ!」
「どうやら、この遺跡の守護者のようです」
守護者と聞いて、討伐隊の面々の間に「やはりな」という空気が広がる。今回の事態や遺跡の規模等からして、守護者が存在している可能性が高いという思いは、メンバーの誰しもが抱いていた。
そしてそれが的中した。
慎也自身、守護者のことはウィルから聞かされていて知っていた。
古代アルティカ文明が作り出した人造の魔物。その名の通り、要所や宝物、扉などを守護する役割を負った魔物であり、通常の魔物よりもかなり強い。
盗視の指輪で見れば一目瞭然だし、その際に見える備考の説明文が極端に短いのも守護者の特徴だ。
慎也は唸った。
レベル、ステータス、スキルレベル共にウォー・ウルフを凌ぐ、過去最強の魔物。
加えてステータス欄に「闘気値」なる見慣れない項目がある。恐らく<闘気>に関するものだろうということは、その名称とスキル欄にある<闘気><闘気術>から容易に想像できる。
<魔法棍>というのは<魔法剣>の棍バージョンだろう。
だが、それ以上に気になったのは<眷属召喚>だ。
自身と同種の魔物を発生させるスキル、とある。
ゴブリン・エンペラーはその名の通りゴブリン類。ということは、召喚できる魔物もまた、ゴブリンということになる。
さらにリネットは、大量のゴブリンの気配はこの部屋に続いていると語っていた。
つまり――
「まさか……あのゴブリンの大群は、みんなこいつが召喚したのか?」
まさか、とは言いつつも、慎也はほぼ確信していた。
遺跡の守護者――このゴブリン・エンペラーこそが、今回のゴブリンの異常増加の発生源であり、千数百匹ものゴブリンを統率していたリーダーだと。
「こいつが全ての元凶か……なら、こいつを倒しちまえば万事解決、って訳だな」
獰猛な笑みを浮かべたマクレーンが、愛用のツヴァイハンダーを、ぶんっ、と振るい、ゴブリン・エンペラーに向ける。
「簡単じゃありませんよ? こいつレベルが46もありますし、ステータスもスキルも馬鹿みたいに高い」
レベル46と聞いて、再度討伐隊の面々に驚愕と動揺が広がった。なにしろ、彼らの中で最もレベルの高いマクレーンですらレベル35。他にレベル30を超えている者は、レベル32のエミリータと、レベル31のイアンだけ。他は全員が20台だ。
ギシャアアア!!
突如、ゴブリン・エンペラーが吠えた。ゴブリン・キングのそれを上回る大音響に、空気がビリビリと鳴動し、討伐隊の耳朶を打つ。
その咆哮に込められた意味を全員が理解した。
出て行け――ゴブリン・エンペラーはそう言っているのだ。
指揮官であるイアンの元に、討伐隊のメンバーからの視線が注がれる。
「……戦う。いや、奴を仕留める!」
イアンは即座に決断した。既に決断していた、と言った方が正しいか。
「今回の事態の原因が奴なら放置できない。ここで退いて奴に時間を与えれば、またゴブリンを召喚され、守りを固められる。そうなれば2度と今回にように楽にここまで辿りつくことは出来ないだろう。チャンスはいましかない! ここでこいつを倒し、この事態を終わらせる!」
「そう来なくっちゃな!」
イアンの声に真っ先に、嬉しそうに反応したのはマクレーンだった。強い敵と戦えるのが嬉しくて仕方ない、といった感じだ。
他のメンバーも、マクレーン程浮ついてはいないが、覚悟を決めたらしく、各々の武器を構える。
「魔法使いたちはいつでも魔法を放てるように準備! マクレーン組、ラウダ班、《朱い月》は前へ。他は中衛だ!」
イアンの指示を受け、討伐隊が即座に陣形を組み、各魔法使いたちは攻撃魔法の詠唱を始める。
ギシャアアアアアアアアアアア!!
ゴブリン・エンペラーがひと際大きく吠えた。
彼らの行動を自分への宣戦布告と受け取ったようだ。右手に持っていたメイスを掲げ、石突を地面に打ち付ける。
それが合図であったかのように、ゴブリン・エンペラーの玉座の前に禍々しい黒い光の塊が6つ、突然出現した。さらにその中から、重厚な鎧を纏い、大振りのハルバートを手にしたゴブリンが現れる。
インペリアル・ゴブリン・ガーズ
レベル:20
生命力:1000
魔力値:346
闘気値:423
筋力:344
敏捷:370
スキル:<槍斧術329><闘気321><闘気術355><防護381>
【特殊召喚獣。ゴブリンの近衛兵】
<防護>
物理ダメージと魔法ダメージを半減させる。ただし使用中は動くことが出来ない。
「なにあれ?」
突然出現した新手のゴブリンに、シアーシャが訝し気な声を上げる。
「どうやら、奴の近衛みたいだな」
盗視の指輪が知らせてくれる敵の情報を、慎也が彼女に教える。
特殊召喚獣とあるから、ゴブリン・エンペラーの<特殊召喚>によって呼び出されたのだろう。
並みのゴブリンに比べてステータスやスキルレベルが高く、しかも<闘気>まで使えるらしい。
「なるほど。皇帝って言うくらいだから、そりゃ近衛兵くらいいるわよね」
納得顔のシアーシャを他所に、6体のゴブリン・ガーズはハルバートを振りかざし、奇声を上げて討伐隊に押し寄せてくる。
「魔法使い、攻撃しろ!」
イアンの合図で、先程から詠唱を行っていた魔法使いたちが、各々の魔法を一斉に放った。結衣は《爆火の炎矢》を、ユフィアは《聖なる光弾》をそれぞれ放つ。
炎、雷、氷――様々な魔法の奔流が着弾し、魔力の爆発が6体のゴブリン・ガーズを包み込む。
ただのゴブリンなら、いや、例え希少種であろうと一溜りも無く粉砕されるであろう、魔法の集中砲火。
だがはたして、土煙が収まると、そこには平然と2本足で立つゴブリン・ガーズたちの姿があった。
「嘘だろ?」
「効いてないの!?」
魔法使いたちが愕然とする。
実際、ゴブリン・ガーズは6体すべて健在であり、あれだけの魔法に直撃されたにもかかわらず、HPは5分の1も減っていない。
よく見れば、ゴブリン・ガーズの身体の表面を、金色の光の膜のようなものが覆っている。
「たぶん、<防護>っていうスキルの効果だろう。近衛兵の名は伊達じゃない、ってことか」
慎也が忌々しそうに吐き捨てる。
ゴブリン・ガーズを覆っていた<防護>の光が消えると、再び奇声を上げて突進を再開した。やはり<防護>を使用中は動けないようだ。
つまり、走っているいまなら攻撃は通る。
「これならどう!?」
シアーシャが背負っていた矢筒から矢を引き抜き、素早く弓に番える。すると、俄かに彼女の矢が陽炎のような白い光に包まれる。
(<闘気>を使えるのか――)
横目でそれを見た慎也が内心で驚いた一瞬後、シアーシャは矢を放つ。闘気を帯びた彼女の矢は、通常の矢よりも遥かに速く、しかも放物線を描くことなく、文字通り一直線に空を裂き、ゴブリン・ガーズの1匹に命中――
ギンッ!
「うそっ!?」
――する直前、ゴブリン・ガーズはハルバートでシアーシャの矢を無造作に払い落した。防がれるとは思っていなかったらしく、シアーシャが驚きの声をあげた。
(見切りやがった。やっぱ他のゴブリンとは訳が違うな!)
慎也が内心で驚嘆している間に、ゴブリン・ガーズたちはハルバートに闘気を纏わせ、さらに距離を詰めてくる。
「こいつら<闘気>が使えるのか!」
「気を付けろ! <闘気>を使える魔物は大概、防御力が高くてしぶとい!」
騎士や冒険者たちが互いに注意し合いながら武器を構える。
「前衛、迎え討て!」
「よっしゃぁ、行くぜぇ!」
イアンの合図で、マクレーンら前衛組がゴブリン・ガーズを迎え討つ。
武器と武器。闘気と闘気がぶつかり合い、激しい金属音や爆発音が木霊し、十数人の騎士と冒険者、6体のゴブリン・ガーズが入り乱れる。
「くそ、こいつら硬ぇ!」
冒険者の1人が毒づいた声を漏らした。
重厚な鎧姿にや<防護>といったスキル構成に見合わず、ゴブリン・ガーズは防御力が高く、攻撃がヒットしてもなかなかダメージが与えられない。
「うぜぇんだよ、ゴブ公!」
業を煮やしたのか、マクレーンが2体のゴブリン・ガーズ目掛けて、闘気を込めたツヴァイハンダーを薙ぎ払った。
「なに!?」
ところが、ゴブリン・ガーズたちは大きくジャンプして斬撃を回避し、そのままマクレーンの頭上を飛び越える。
「抜かれたぞ!」
前衛組との戦場から2体のゴブリン・ガーズが抜けだし、その後方、中衛組に襲い掛かる。
「魔法使いに近づけるな!」
イアンが指示を出す前に、慎也が刀を抜いて1匹の前に立ちはだかった。
(防御力が高いだけでなく動きも反応速度も速い。厄介だな)
ゴブリン・ガーズも慎也を標的に絞ったらしく、まっすぐ突っ込んでくる。
(だからこそ、良い実験になる!)
イクサに魔力を通し、慎也が走り出す。
(この前のワイバーン戦では未完成だった、新技のな!)
ギギー!!
ゴブリン・ガーズが大きくジャンプした。闘気を込めたハルバートを頭上に掲げ、落下速度を上乗せした斬撃を打ち下ろす。
「っらぁ!!」
それに対し、慎也も渾身の魔力を帯びた斬撃で迎え討る。
魔力を宿した慎也の刀と、闘気を帯びたゴブリン・ガーズのハルバートが激突し、凄まじい火花を上げる。
拮抗は一瞬。
純粋な力のぶつかり合いでは、筋力や魔力値で上回る慎也に軍配が上がった。加えて、ゴブリン・ガーズは落下中――つまり空中浮遊状態にあり、踏ん張りが効かなかったことも有利に働いた。
結果、ゴブリン・ガーズはハルバートもろとも大きく弾かれ、万歳をするような形で後ろへ飛ばされる。
慎也は刀を振り抜いた体勢から大きく身体を横に回転させつつ、右手を柄から放し、腰の魔法銃を引き抜くと、がら空きになっていたゴブリン・ガーズの胴体目掛けて引き金を引く。
銃口から吐き出された魔弾は、本来のそれとは明らかに形が違っていた。
まるで槍の穂先のような鋭利な形状の魔弾。
それはゴブリン・ガーズの鎧の胸に突き刺さるや、頑強な胸甲をまるで紙のように突き破り、ゴブリン・ガーズの身体そのものを貫いて背中から飛び出した。
胸に貫通孔を開けられたゴブリン・ガーズのHPが瞬時に消滅し、出現した時と同じ、黒い靄のような光と化して消え去った。
(特殊召喚獣は死ぬと消える訳か……まあ、なにはともあれ、実験は成功だな)
拳銃型戦技――ピアッシング・ネイル。
数日前にワイバーンと戦った際、頑強な鱗を貫くことが出来ずに苦戦した経験から、慎也が編み出した新技。
通常の魔弾に比べ、連射性に劣る代わりに従来の数倍の貫通性を持たせた魔力弾だ。
慎也自身、ワイバーンの鱗も貫通することが出来ると自負していたが、ここまで使う機会が無かったので、防御力の高いゴブリン・ガーズは良い実験台と言えた。
(とはいえ、やっぱり魔力消費がデカい。慣れないうちは連射は無理だな)
見れば、たった1発でMPを60も消費している。慎也の魔力値は532なので、10発も撃つことが出来ない。ただ、スキルレベルが上がると威力を保持したまま魔力消費を抑えられるようになるので、それまでは多用しないよう、と心に決める。
「おい、あいつ、1撃で仕留めちまったぞ?」
「マジかよ、さすが《鬼神》の弟子だな」
他の冒険者が苦戦しているゴブリン・ガーズを1発で仕留めた慎也に、中衛組の他の冒険者や騎士が驚きを露わにしている。
(っと、考えてる場合じゃない。もう1匹は――)
前衛組を突破したゴブリン・ガーズの片割れを探して視線を走らせると、少し離れた所でフェルナと打ち合っているのが見えた。
フェルナの槍と、ゴブリン・ガーズのハルバート。互いに間合いの広い長物同士が何度もぶつかり合って文字通り火花を散らしている。
勝負はほぼ互角――いや、フェルナの方がやや押しているように見える。
ギギ!?
振りを悟ったのか、ゴブリン・ガーズは一旦バックステップして後方へ下がろうとした。
「ふっ!」
だが、フェルナはそれを許さなかった。空かさず前方へ跳び、一気にゴブリン・ガーズとの距離を詰める。
(近づき過ぎだ!)
慎也が思わず毒づいた。
槍という武器は長物という性質上、対象とある程度の距離を取らなければ効果を発揮できない。なのに、フェルナは槍を縦に掲げ、穂先を頭上に向けた奇妙な構えのまま、明らかに必要以上にゴブリン・ガーズに接近した。いや、接近するというよりは、そのまま体当りでもするかのような勢いで突進する。
フェルナの行動が予想外だったのか、ゴブリン・ガーズは立ち止まり、ハルバートを横に構えてフェルナの突進を食い止めようとした。
縦に掲げられたフェルナの槍と、横に構えたゴブリン・ガーズのハルバートがちょど「十」の字を描いて交差した。
その瞬間、フェルナは交差した部分を支点にして槍を一回転させ、石突でゴブリン・ガーズの顎を打ち上げた。
鈍い音を立てて、ボクサーのアッパーカットをまともに喰らったような形でゴブリン・ガーズの顎がかち上げられる。
意識を持っていかれたのか、ハルバートを握っていた手から力が抜け、フェルナの目の前に、鎧に覆われていない無防備な首が晒される。その一瞬を狙い、フェルナは回転させた槍を持ち替えて、回転の勢いそのままに穂先をゴブリン・ガーズの首に突き刺した。
さしものゴブリン・ガーズも、鎧の隙間から急所である首を刺し貫かれては一溜りも無かったらしく、グゲッ、というくぐもった断末魔を漏らして消滅した。
「ふう……」
額に滲んだ汗を拭い、息を付いたフェルナと目が合う。
「お見事」
「ありがとうございます」
フェルナの見事な機転と槍捌きを率直に称賛する慎也に、フェルナは笑顔でそう答えた。
「おらぁ!」
雄叫びと、名状し難い破砕音が轟いた。
マクレーンがゴブリン・ガーズの1体を頭から真っ二つに両断していた。勢い余って床まで盛大に粉砕していたが。
「はぁ!」
そのすぐ近くでは、エミリータが剣の延長線上に発生させた巨大な冷気の魔力剣で2体のゴブリン・ガーズを同時に刺し貫いていた。
長剣型戦技――アイシクル・ブレイク。
鎧ごと貫かれたゴブリン・ガーズたちは瞬時に凍結し、氷の彫像となって粉々に砕け散った。
6体出現したゴブリン・ガーズの内、5体を仕留めた。最後の1体は、他の冒険者や騎士たちの集中攻撃に耐えきれず、程無くHPを全損させて消滅した。
これでゴブリン・ガーズは全滅だ。
「よし、取り巻きは片付いた。全員でエンペラーに――」
そこまで言って、イアンは自分の視界に映った情景に瞠目することとなった。
玉座の前に立ったまま傲然とこちらを見下ろしていたゴブリン・エンペラーの前に再び6つの黒い光が現れ、中から新たなゴブリン・ガーズが湧き出して来たのだ。
作中にある「闘気」に関して、普通に闘気と表記しているものと<闘気>というものと2種類あるのですが、ややこしいので何故このような書き方をしているのか説明させていただきます。
闘気=純粋に目に見える闘気のエネルギーことを指しています。例えば「武器に闘気をまとわせる」、みたいな感じで「魔力」と同じ扱いだと思ってください。
<闘気>=スキルのことです。
判りにくいかもしれませんが、理解していただけると幸いです。
次回更新は11/8日か9日の18時予定です。




