表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
冒険者の章
47/135

第44話 敵将、討ち取ったりー!

タイトル、盛大なネタばれですね(´・ω・`)

「ゴブリン……キング……」


 掠れた声でユフィアが呟くように言った。

 2体のゴブリン・ジェネラルと、その背後に昂然と佇むゴブリン・キング。

 臆病なゴブリンに属するものでありながら、いまし方、100匹近いゴブリンの大群を、森ごと両断したマクレーンの前に臆することなく現れたのは、よほど己の力量に自信がある証拠だ。


 いままで戦って来たゴブリンとは比較にならないほどの威厳と圧力に、慎也の頬を嫌な汗が流れ落ちた。


「なんで、こんな奴がこの森に……」


 マナクレイの森にゴブリンが多く生息しているのは確かだし、これまで嫌になるくらい狩ってきたが、こんな大物は初めてだ。


(ゴブリンの王……ゴブリンが増えたのはこいつが原因か? それとも、こいつも増えたゴブリンの1匹でしかないのか? このまま異変を放置すれば、こんな奴がわんさか湧いて出るってのか? 冗談じゃないぞ!)


 ただのゴブリンでさえ、一般人や新人冒険者には危険な存在なのだ。だが、目の前にいるジェネラルもキングも、レベル、ステータス共に並みのゴブリンとは比較にならない。熟練の冒険者ですら勝てるかどうかという次元だ。

 こんなものが頻繁に出るようになれば、それだけでスアード領は大変なことになる。


「まさか、本当に出るとはな」


 呆れ、驚き、感心が等分に入り混じった声でエミリータが呟いた。


「だから言ったろう? オレの勘は当たるって」


 答えたマクレーンの声には、微塵の恐怖も含まれていなかった。あるのはただ、強敵を前にした戦意と、抑えきれない闘争心だけ。

 戦う気満々のようだ。


「そうだな。シンヤたちを誘ったことも含めて」


 ちらり、とエミリータが慎也たちの方に視線を寄越した。その意味が理解できないほど、彼らは馬鹿では無い。

 思考を切り替えて、慎也は現状を分析した。


 キングのレベルは35で、ジェネラルは2体とも28。

 対して、こちらはマクレーンがレベル35、エミリータは32、慎也は28、結衣が25 ユフィアは27。


 数、レベル共に勝てない相手ではない。もちろん、レベルやスキルだけで戦いの勝敗が決まるものではないので油断は出来ないが。


(まあ、向こうもやる気みたいだし、戦うしかないよな)


 そう考えて、慎也はエミリータに頷きを返した。結衣とユフィアも追従する。


「キングはオレがやるぜ!」


 大声で宣言して、マクレーンはツヴァイハンダーの切っ先をゴブリン・キングに向けた。その意図を理解してか、ゴブリン・キングが応ずるように吠える。


「では、私とシンヤでジェネラルを1体ずつやろう。ユイとユフィアは、後方から援護してくれ」

「はーい」

「判りました」


 エミリータの作戦は単純なものだったが、現状では理に適っていると慎也は認めた。

 こちらの前衛系は数、レベル共に向こうと拮抗している。マクレーンはキングと、慎也はジェネラルと同レベル。そこに結衣とユフィアの魔導士組が援護に回れば、勝算は非常に高い。


「ゴブリン退治のまっ最中で、目の前にゴブリンがいるとなれば、やるしかないでしょ」


 これまでのゴブリンとは一線を画するであろう強敵。しかもレベルで互角。戦ってみたいという気持ちが無いといえば、嘘になる。正直に言うとキングと戦ってみたいが、さすがにレベル差があり過ぎていまの自分には荷が重い。マクレーンに譲るしかないだろう。


「助かるよ」


 こいつら相手に、もし自分とマクレーンだけだったなら、恐らく厳しかっただろうとエミリータは思った。


(しかし、本当になにが起こっているんだ?)


 エミリータは内心で呻いた。

 この森に住まう魔物はほとんどはレベル一桁の弱い魔物のはず。たまにイレギュラーに強力なのも出るが、それらの強力な魔物はたいてい単独で現れる。それが3匹同時に現れた。どう考えても普通ではない。


 ちらりとマクレーン(相棒)の方を振り返れば、戦意に満ちた獰猛な笑みを浮かべてゴブリン・キングを凝視している。エミリータの心中など露ほども気に掛けていない様子だ。


(まったく。本当に世話の焼ける)


 いずれにせよ、まずこの状況を乗り切らなければ異変の調査もままならない。ゴブリン・キングなんて大物が出たからには、この森に異変の原因があるはずだ。


(それを突き止める為にも、まずはこいつらを倒さないとな)


 覚悟を決めて、マクレーンの隣に並ぶ。反対側には刀を携えた慎也が立つ。彼らの背後には、杖を構えた結衣とユフィア。


 ウオオオオオオオ!!


 キングが吠え、地響きを立てて駆け出した。

 倒木を、ゴブリンの遺骸を踏み潰しながら、巨体に見合わぬ速さで重戦車の如く突進してくる。その左右を、同じ速さで2体のジェネラルが並走する。

 同時に、慎也たちも並んで駆け出した。敏捷値に秀でた慎也が、マクレーンとエミリータを引き離す形になった。狙いは向かって右のゴブリン・ジェネラル。

 ジェネラルの戦斧が魔力を帯びて青白い輝きを発した。慎也のそれとまったく同じ色の光。


(魔法戦士型のゴブリンか……こんな形で同じ魔法戦士と戦うことになるとはな)


 皮肉なものを感じつつ、慎也は尚も距離を詰める。

 恐れること無く目前まで迫ってきた慎也に、ゴブリン・ジェネラルが魔力を帯びた戦斧を傲然と振り下ろす。斧の刃と魔力、そこから生み出された衝撃波が地面を爆砕させ、倒木やゴブリンの躯を粉砕し、宙に舞い上げた。


 片手斧型戦技――ガイア・ブレイク。


 その名の通り、大地を粉砕するほどの強烈な破壊力を秘めた、一撃必殺の大技。


 だが肝心の慎也は、ゴブリン・ジェネラルの攻撃速度を正確に把握し、速度を殺すこと無く寸前に斜め横へ飛び退いていた。そしてそのまま、すれ違いざまにこちらも魔力を込めて青白い光を発する刀を、ゴブリン・ジェネラルの首目掛けて奔らせる。

 だが、相手の攻撃を見切っていたのは向こうも同じらしかった。ゴブリン・ジェネラルは左腕に装備したスモールシールドで慎也の斬撃を受け止める。

 慎也のイクサは、刀身に魔力を通すことで格段に切断力を上昇させている。普通であれば、ただのスモールシールドなど紙切れのように斬り裂いてしまう。実際、慎也はそのつもりで斬撃を放ったのだ。

 だが、ゴブリン・ジェネラルの盾は斬れなかった。慎也のイクサを受け止めたゴブリン・ジェネラルのスモールシールドもまた、青白い輝きを発していたからだ。


(盾にも魔力を通せるのか!?)


 慎也は驚愕に目を見開く。

 その一瞬の隙を逃すこと無く、ゴブリン・ジェネラルは振り下ろした戦斧を今度は真横に薙ぎ払う。


「やべっ!」


 間一髪、慎也は後方へ飛んで鼻先すれすれで回避した。後ろに飛びながら魔法銃を抜き、お返しとばかりに魔弾何発か放つが、これも魔力を帯びた盾に弾かれてしまう。


「なかなかやるな……」


 刀と魔法銃を構えなおし、改めてゴブリン・ジェネラルに向き直る。


 バギャン!!


 鉄を破裂させるような金属的な轟音に、慎也はゴブリン・ジェネラルに注意を向けつつ、わずかに目線を動かしてそちらを見やった。

 

 マクレーンとゴブリン・キングが互いのツヴァイハンダーを交差させ、鍔ぜり合いを演じている。力同士の押し合いは、恐るべきことに互角。マクレーンの闘気とゴブリン・キングの魔力が激しくぶつかり合い、紫電を迸らせている。


 その向こう側では、もう1体のゴブリン・ジェネラルが、エミリータを剣戟を打ち合っていた。お互いに片手武器と盾を装備した魔法戦士同士の戦いは、ほぼ五分と五分だ。


(って、他人を気にしてる場合じゃない。こっちに集中しないと)


 再びゴブリン・ジェネラルがこちらに向かって突進してくる。慎也は魔法銃で迎え討つが、先程同様、魔力を通した盾で防がれる。そのままこちらの間合いに入るや戦斧を薙ぎ払う。<斧術251>は伊達では無く、重たい戦斧を持ちいて放つ一撃一撃に隙が無い上、重く、速い。しかも<魔力操作>スキルを持ちいて威力を増幅させているのだからなおのこと厄介だ。


(とはいえ、あくまで武器に魔力を通せるというだけだ。技量もそれほどでもない。盾に魔力を通された時は驚いたが、この程度ならどうとでもなる)


 ゴブリン・ジェネラルの<斧術>のレベルが251で<魔力操作>が339なのに対し、慎也の<刀術>は539。<魔力操作>は439。

 メイン武器の技量に関しては慎也が倍以上に上回っている。


(とはいえ、膂力は明らかに向こうの方が上。武器の差も含めれば、攻撃力自体は相手に分がある。なら、それ以外で勝負してみるか)


 考えている間にもゴブリン・ジェネラルの猛攻は続く。だが、いくら攻撃力が高くとも当たらなければ意味が無い。敏捷さで上回る慎也はゴブリン・ジェネラルの攻撃を危なげ無く躱し続け、一向に当たる気配が無い。しかも、魔力を込めた攻撃を連続して使用し続けたせいで、魔力値を大きく減らした上、息も上がり始めた。


 こちらの敏捷性(長所)を生かし相手の攻撃力(長所)を封じ、疲弊させてその隙を付く。ウィルに教わったセオリーに準じた戦法。

 いくら将軍の名を冠していよと、相手はゴブリン。身体能力が秀でていようと、技量、戦法といった知能がものを言うスキルに関しては人間に分がある。


 ガアアアア!!


 一向に攻撃が当たらないことに自棄(やけ)になったのか、ゴブリン・ジェネラルがひと際大きな雄叫びを発し、自身の武器である戦斧を慎也に向かって投げ付けた。


「うおっ!」


 さすがにこれは予期していなかった慎也は一瞬驚いたものの、間一髪で身体を横にずらし、回転しながら飛んで来た斧を躱す。


(馬鹿かこいつ……ここで唯一の武器を捨てるなん……いや、違う。これは)


 一見すると自棄になったゴブリン・ジェネラルの暴挙に見えるが、慎也はすぐにそれが間違いだと気付いた。

 慎也の背後に飛び去った戦斧が、そのまま弧を描いてこちらに戻って来る。


 片手斧型戦技――トマホーク・ブーメラン。


 その名の通り斧投げの技で、ただ相手に投げ付けるだけでなくブーメランの様に手元に戻って来るように投げることで、相手の不意を突いたり、遠距離にいる多数の敵を一度に薙ぎ払えるというものだ。

 恐らくゴブリン・ジェネラルの狙いは前者。慎也に、武器を投げ捨てた、丸腰になったと思わせるのが狙いだったのだろう。もしそこで、好機とばかりにゴブリン・ジェネラルに突っ込んだりしたら、戻って来た斧によって背中からバッサリとやられていただろう。


 だがゴブリン・ジェネラルは知らなかった。慎也は<空間把握>のスキルを持っているのだ。これにより、慎也はある程度離れた場所、目に見えない位置にある物などを感知することが出来る。もちろん、ゴブリン・ジェネラルが投げた戦斧が弧を描いてこちらに戻ってきているのにも気付いていた。


(馬鹿だな……)


 慎也を相手に、技とは言え、武器を手放す。これは実際、最悪の悪手だった。

 魔法銃をホルスターにしまうと、空いた左手を、回転しながらこちらに飛んで来る戦斧へ向ける。すると突然、戦斧の軌道が大きく曲がり、投げたゴブリン・ジェネラルではなく、慎也の手に吸い寄せられるように収まった。


 ギッ!?


 愚かなゴブリンの将軍が愕然と目を見開いた。慎也が最も得意とする物理系魔法《見えざる手(アステロイド)》。テレキネシスに似た見えない手を使って遠くの物を掴んだり、持ち上げたりできるこの魔法を使って、飛んで来る戦斧を回収したのだ。


 これによって、不意打ちのつもりが、ゴブリン・ジェネラルは本当に自分の武器を失って――否、奪われてしまう結果となった。

 焦燥感も露わに動揺するゴブリン・ジェネラルに、慎也は冷たく言い放つ。


「慌てるな。オレは他人の武器を盗む泥棒みたいな趣味は無いんでね。ちゃんと返してやるよ。ホラッ!」


 などと、慎也は尤もなことを言いながら、ほとんど全力投球で戦斧をゴブリン・ジェネラルの顔面目掛けて投げ付ける。

 真正面から飛んで来た自身の戦斧を、ゴブリン・ジェネラルは咄嗟にスモールシールドで受け止めた。ガキン、という派手な金属音を立てて戦斧が弾かれる。


 この時、ゴブリン・ジェネラルは再度、過ちを犯した。


 飛んで来る戦斧から盾を使って顔面を庇った為、当然の如く視界が遮られ、慎也から視線を外してしまうという致命的な失態を犯してしまった。


 ゴブリン・ジェネラルが慎也のいた方に目を向けた時、そこに彼の姿は無かった。


 ギッ!?


 慎也を探そうとゴブリン・ジェネラルが頭を振る前に、その首が、鮮血の尾を曳いて宙を舞った。


「不意打ちってのは、こうやるんだ」


 地面に転がったゴブリン・ジェネラルの頭部を見下ろして、慎也は冷たく吐き捨てた。

 なんてことは無い。ゴブリン・ジェネラルが盾で自分の顔を庇った瞬間、<閃駆>を使って一瞬に背後へ回り込み、イクサで首を刎ねたのだ。


「以外と楽勝だったな」


 同レベルの敵だと知った時には緊張したが、終わってみれば慎也の圧勝だった。どんなに高レベルでも、ステータスが優れていようと、所詮は頭の悪いゴブリンということなのだろう。


「ゴブリンの将軍っていうから、どれほどかと思えば……ん? 待てよ、将軍?」


 自分で言って、慎也は気付いた。

 ゴブリンの将軍を倒したのだ。文字通り首を取ったのだ。

 ならば、このセリフを言わない訳にはいくまい。


「敵将、討ち取ったりー!」


 イクサを高々と掲げ、慎也は昂然と宣言したのであった。


次回更新は10/5、18時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ