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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
冒険者の章
44/135

第41話 オレの勘だ

ゴブリン調査開始です(=゜ω゜)ノ

 マクレーンとエミリータ。ベテランである3級冒険者パーティと行動を共にすることになった慎也たちは、早速「マナクレイの森の調査」の依頼を受注し、2人ともに森へ向かった。

 ちなみに、依然受けたスライムとゴブリンの討伐依頼は現在も遂行中で、調査ついでに仕留めたスライムとゴブリンの討伐数もカウントされることになり、一石二鳥。しかも調査依頼の期間は無期限で、基本、失敗が無い(他者が先に原因を突き止めても、失敗扱いにはならない)という、非常に美味しい状況だ。


 しかも、3級冒険者の技術や知識を間近で見学できるのと合わせれば、一石三鳥である。


「じゃあ、マクレーンさんもエミリータさんも、スアード伯爵領ここが地元なんですね」


 街道を進む間、結衣がマクレーンとエミリータに色々と質問していた。


「ああ、生まれも育ちも、キアナの街だ。私もマクレーンこいつもな」


 先頭を歩くエミリータも、好奇心旺盛な後輩冒険者の質問の1つ1つに笑顔で答えている。見た目やしゃべり方に反して、面倒見の良い性格らしい。


「でも、スアード伯爵領は魔物が弱いから、強い冒険者はあまり居付かないと伺いましたが……」


 今度はユフィアが訪ねた。


「一応、キアナの街を拠点にしているが、ずっと留まってる訳じゃない。4日前までは海まで遠征していたしな」

「ったく、2ヵ月ぶりに帰って来てみりゃ、街はゴブリンの大発生でてんやわんやで、一刻も早く原因を突き止めて解決して欲しいって、わざわざオレたちの所まで押しかけて来やがった。もう少しゆっくり休ませてほしいもんだ」


 マクレーンの愚痴じみた言葉に、エミリータも肯定する様に肩を竦めた。


「同感だな。ゴブリン相手に、疲労した状態で臨むのは馬鹿げている」


 エミリータの言葉に、結衣は意外そうに目を瞬かせた。


「どうした?」

「いえ、ゴブリンって、弱い魔物ってイメージがあったので、ベテランの御二人が注意してるのが少し意外で……」


 結衣が正直に言うと、途端にマクレーンとエミリータは真面目な表情になった。


「その思い込みは危険だぜ、お嬢ちゃん」

「マクレーンの言う通りだな。確かにゴブリンはもっとも弱い魔物の一種だが、「弱い」と「危険」とは同義語じゃない。実際、キアナの冒険者が命を落とす最大の原因が、ゴブリンだ」


 強い口調になった2人に、結衣は少し身を固くしながらも黙って聞き入った。


「例えば、ドラゴンだ」

「ドラゴン?」


 ゴブリンの話をしていたエミリータの口から、まったく脈絡も無い魔物の名前が飛び出し、結衣は思わずオウム返しした。


「知ってると思うが、数ある魔物の中でもドラゴンは最強の分類に入る。君たちが先日戦ったワイバーンもドラゴンの一種だな」

「ドラゴンから見りゃ人間なんざ、ゴブリンと同じか、あるいはそれ以下だ。けど、オレたち冒険者は自分たちよりもずっと強いドラゴンを実際に狩ってる。何故なら、オレたちには知恵があるからだ。1人1人の力は弱くても、それを補う為に武器を持ち、鎧を纏い、魔法を使い、戦略を練り、罠を張り巡らし、仲間と力を合わせることで、自分たちよりも遥かに強いドラゴンを倒すことが出来るんだ」

「知恵と言うものは、私たち人間に与えられた最大の武器と言っても過言ではない。そして、ゴブリンにはそれがある。自分たちの力の弱さを、武器や数、罠などの戦略によって補う戦い方は、まさに冒険者わたしたちの戦い方と一致する。その怖さは、私たち自身が誰よりもよく知っているからな」


 それに関しては結衣にも思い当たることがあった。というか、実際に何度もゴブリンと戦ったことがあるので、直に見ている。

 ゴブリンは、いや、ゴブリンだけでなく、トロルやオーガといった鬼人系の魔物の多くは武器や防具を使う。時には雑だが家や集落を作ったるすることもあるくらいだ。


「ゴブリンが弱い魔物だという情報も間違っちゃいないが、希少種はそうでもない。特にさっき言ったジェネラルやキングなんかは、オークやオーガよりも断然強いしな」


 マクレーンの言う通り、個体差こそあるものの、オークもオーガもレベルは10台半ばだ。レベル20超えのゴブリン・ジェネラル、30超えのゴブリン・キングに比べれば弱い。


「キアナの冒険者がよくゴブリン相手に命を落とす理由がこれだ。”ゴブリンは最弱の魔物”という言葉を鵜呑みにし、奴らの危険性を認識しないまま不用意に縄張りや巣穴に足を踏み入れ、罠にかかったり、強力な希少種と遭遇して返り討ちにされる、というパターンが後を絶たないんだよ」

「オレたちだって、罠に嵌ったり希少種と遭遇したらヤバいしな」

「だからこそ、ゴブリンは決して侮って良い敵ではない。むしろ、最大限警戒すべき難敵と言える。判るかい?」


 エミリータが結衣に目を向けながら問うと、彼女はしゅんとした様子で――


「ごめんなさい」


 ――と、素直に自分の油断と侮りを認めた。

 実際、つい先日、自分たちと同じ駆け出し冒険者パーティががゴブリンに壊滅させられたのを見たばかりなのだ。


「判ってくれたら良い。君たちみたいな前途ある若者がゴブリンに殺されるなど、あってはならないことだ」


 いっそ凛々しいとさえ言えるエミリータの横顔を見て、慎也は納得した。


 ベテラン冒険者とそうでない者の違いは、レベルや強さなんかじゃない、と。


 技能、知識、戦略、思慮――それに裏打ちされた冒険者としての経験値こそが、冒険者の最大の武器。単純な強弱で敵を評価せず、相手の長所と短所を綿密に分析し、自身の実力と照らし合わせた上で合否を判断し、不可能であれば臆せず他者に助力を要請することのできる柔軟な思考。


 これこそが、冒険者をベテランと呼べる域に至らしめるスキル。


 それが無い駆け出しの冒険者が命を落とす一方、危機を乗り越え、修羅場をくぐって経験を重ねた冒険者は、生存率の高いベテランになるのは道理。


(オレたちがこの域に達するまで、果たして何年かかることやら)


 すぐ近くにあるようで、決して届きえぬ2人の3級冒険者の背中を眺めながら、慎也は独りごちた。

 心の隅で羨望を抱く一方で、それは彼の野心という名の火種に油を注ぐものでもあった。


(けど、必ず追いついて――いや、追い越して見せる! 目指すは1級冒険者だ!)


 声には出さず、慎也は自分の心の中だけでそう誓った。

 その為に、今日は可能な限り2人の冒険の仕方を観察するのだ。

 見て、習い、盗み、糧にする。特にエミリータは自分と同じ魔法戦士である以上、見習うべき技術や戦い方は多いはずだ。


 そんな彼の心の声が反応したのか、あるいは背中に注がれる視線に気づいたのか、前を歩いていたマクレーンが慎也を振り返った。


「よう、どうした、大将? さっきから黙りこくってるが?」

「大将?」


 妙な呼ばれ方に、慎也は一瞬前までの決意や野心も忘れて間の抜けた声を出してしまう。


「お前さんはパーティのリーダーなんだろ? だったら、大将じゃねぇか」

「いや、そんな大したもんじゃないですから」


 手を振りながら慎也は否定した。大将なんて呼ばれたのは、実際に生まれて初めてである。


「まあ、それはさておき、お前さんはなにか聞きたいことは無いのか? 3級冒険者が冒険者が7級冒険者と一緒に行動するなんざ、滅多に無いことだぜ? 聞きたいことがあったら、遠慮せずにどんどん質問しな」

「そうですね」


 見る、習うだけじゃなく、聞くことも成長するにあたって大事な要素だ。

 さしあたって、いま2人に最も聞きたいことといえば――


「御二人がいままで、どんな冒険をしてきたか、ぜひ伺ってみたいです」

「あ、私もそれ気になります!」

「私もです」


 慎也の提案に、結衣とユフィアが空かさず同意した。


「ああ、構わないぜ」


 子供のような純粋な好奇心に、マクレーンは思わず笑みを浮かべて言った。見ると、エミリータも同じような微笑ましい表情を浮かべている。


「じゃあ、街に帰ってくる前にオレらがなにしてたか、話してやろう」

「確か、海まで行かれてたんですよね?」


 ギルドでの会話を覚えていた結衣の質問に、マクレーンは「ああ」と頷いた。


「スアード領の南にカラナスって港町があってな。そこで――」


 3級冒険者の貴重な冒険譚に耳を傾けながら、一行は一路、マナクレイの森を目指して歩みを進めるのだった。


 ◇◇◇


 マクレーンの冒険譚がひと段落した頃、一行はようやくマナクレイの森に到着した。キアナの町から見て北東に位置する場所で、ウィルの小屋からはだいぶ離れた位置だ。街道からも外れ、人家も無く、慎也たちも初めて訪れる場所だった。


「ここを調べるんですか?」

「そうだ。厳密には、この奥だけどな」


 ユフィアの質問に、マクレーンが答えた。


「差し支えなければ、どうしてこの場所に目を付けたのか、教えていただいてもよろしいでしょうか?」


 丁寧なユフィアのお願いに、マクレーンはにやっと笑ってこう言い放った。


「オレの勘だ」

「勘?」


 予想外の答えに、ユフィアだけでなく慎也と結衣も目を丸くした。


「そんな訳ないだろう」


 と、呆れ交じりの嘆息を吐きつつ、エミリータが訂正してきた。


「この依頼を受けた時、ギルドに頼んで、ゴブリンが増加し始めた後の、襲撃場所や目撃地点を詳しく教えてもらったんだ。元々この森はゴブリンが多く生息していたので目撃情報自体は分散しているんだが、ここ最近、王都へ繋がる街道と、北のヴァードナー王国に通じるクルエーナ街道での遭遇が多くなってきている傾向がある。で、これら2つの街道の間に位置するのが、この森だ」

「なるほど」


 慎也は納得した。

 この森にゴブリンを増加させているなにかが存在し、それによって発生した、或いは引き寄せられたゴブリンが、人通りの多い街道へ向かっているのではないか、と2人は考えている訳だ。


「この辺りは人家もありません。川はありますが、ゴブリンの獲物になるような野生動物も少ないし、ゴブリンが集落を作るような場所ではないはずです」


 ユフィアの意見に、エミリータも同意する様に頷いた。


「私も同感だ。だからこそ、依頼を受けた他の冒険者はここに目を付けた者はいないそうだ。だが、今回は明らかに異常事態だ。しかもその原因が古代神器(アルティカ・ノーツ)である可能性が高い以上、地形やゴブリンの習性に捕らわれず、発想を飛躍させる必要がある」

「なるほど、発想の飛躍、か」


 慎也は頷いた。

 一流の冒険者になるには、常識に捉われてはならない――

 異世界転移という、非常識極まりない現象を経験した慎也にとってはいまさらだが……


「そういうまどろっこしい説明は良いんだよ」


 面倒くさそうなマクレーンの声が、慎也を現実に引き戻した。


「心配しなくても、異変の原因はこの奥にある。間違い無ぇ」


 自信満々に断言するマクレーンに、慎也は少し不安を覚えた。


「どうして判るんです?」

「言ったろうが。オレの勘だ、ってな」


 凄みのある笑いを浮かべて言い張るマクレーン。慎也は元より、結衣やユフィアも少し呆れ気味だ。エミリータに至ってはやれやれ、と言わんばかりに肩を竦めている。


「オレの直感が言ってる。「ここだ」ってな!」

(一流の冒険者になるには、勘も必要……なのか?)


 マクレーンとエミリータの冒険の仕方をつぶさに学ぼうと決めた慎也だが、早くも少し不安になってきた。


「よし、行くぞ、お前ら!」


 そんな慎也の心中など露知らず、マクレーンは身を翻して森に向かって歩き始めた。

ここ最近忙しくてストックがヤバ目です。次回更新は9/24の18時の予定ですが、遅れるかもしれませんm(__)m

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