表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
冒険者の章
42/135

第39話 少し騒ぎになるな

不穏な兆候です((((;;OдO;lll))))

 ワイバーンを倒した慎也たちは、早速ワイバーンの魔晶核(コア)を回収する為、解体を始めた。ワイバーンは食用には向いていないので肉自体は価値が無いが、鱗は防具の素材として高値で取引されているので、併せて剥ぎ取っていたところへ、キアナの街の警備隊が30人ほどやって来た。

 慎也たちが助けた商隊が街の門まで辿り着き、警備隊に事情を説明して助けを求めたらしい。


 道中にワイバーンに襲われ、自分たちを逃がす為に若い冒険者が戦っている、と。


 通常、冒険者が市街で魔物に襲われても警備隊が救助に来ることは無い。もちろん、戦えない一般人なら話は別だが、魔物退治を生業とする冒険者が、魔物に襲われる度に警備隊が出動し、兵士たちを危険な目に遭わせるのはナンセンス極まりないからだ。

 だが今回の場合、襲われた場所が旅人や商人がよく利用する街道だったことや、襲った魔物が極めて危険なワイバーンであったことから、警備隊の隊長は、自分たちが出動する案件だと判断して、部下を引き連れて駆け付けた訳だ。

 慎也たちの救援目的ではなく、どちらかと言うと、確認と調査目的で。


 で、着いてみたらすでにワイバーンは退治されており、たった3人の若い冒険者が、ほぼ無傷でワイバーンを仕留めたという話に驚き、しかもその3人が先日冒険者になったばかりのど新人だと聞いてまた驚いていた。


 警備隊はワイバーンがすでに倒されたことを知ってすぐに引き上げていったが、その際、特別に荷馬車と馬1頭を慎也たちに貸し出してくれた。行商人の一行を救い、キアナの街にとっても大きな脅威になりかねなかったワイバーンを退治してくれたお礼だそうだ。実際、はぎ取ったワイバーンの鱗は重量物になるのでどうやって運ぼうか悩んでいたところだったので、慎也たちは警備隊の好意にありがたく甘えることにした。

 その際、行商人の一行について尋ねた所、幸い死んだ者はおらず、怪我人の方もすでに医療院へ搬送済みだということだ。


 安心した慎也たちは、時間をかけながらもどうにかワイバーンの解体を終え、はぎ取った鱗と魔晶核(コア)を持って意気揚々とキアナの街へ戻った。

 はぎ取った鱗のうち、3分の1程度はヨルグへのお土産にして、残った鱗と魔晶核(コア)を売却したところ、なんと300万テラという、いままで見たことのない大金を手にすることになった3人は、若干挙動不審にしながらも、この日も無事に帰宅することができた。


「そうか……ワイバーンが出たのか」


 帰宅した慎也たちは、早速今日の出来事をウィルに報告した。


「少し騒ぎになるな」

「どうしてですか?」


 腕を組んで難しい顔をするウィルに、結衣が不思議そうに訪ねた。


「わしも長くこの森に住んでいるが、その間、ワイバーンの襲撃を受けたという話を聞いたことが無い。たまに森や山の上を飛んでいるのを見たというのは、何度かあるがね」


 慎也と結衣も、この世界に来たばかりの時に森の上を飛んでいるワイバーンを見た。


(あの時襲って来られてたら、一巻の終わりだったな)


 今日、身を以て思い知ったワイバーンの強さを思い返し、あの時襲われなくて本当に良かった、と慎也は密かに胸を撫で下ろした。


「お爺様、ワイバーンは人を頻繁に襲うんですか?」

「いや、ワイバーンの生息しているのは人里離れた高い山の上で、滅多に人間の生活圏には入ってこない。人型の魔物が好物なのは事実だが、どちらかというと人間よりも魔物の方を好む」

「けど、そいつが現れたということは……」


 既に答えを予想しつつも、慎也は確認する様にウィルを見た。彼も慎也の考えを予測し、頷いた。


「十中八九、ゴブリン目当てだろうね」


 ここ最近、マナクレイの森にはゴブリンが増加しつつある。ゴブリン等の人型の魔物を好むワイバーンにとっては格好の餌場だろう。


「最悪の場合、森に生息するゴブリンを狙って、もっと多くのワイバーンが飛来する可能性もある」

「そんな……1匹倒すのでも3人がかりで凄く苦労したのに……」

「あんなのがいっぱい来たら、結界から出られなくなっちゃうよ」


 ユフィアが愕然とし、結衣がテーブルに突っ伏しながら愚痴めいた言葉を吐いた。だが慎也は、それよりも気になることがあった。


「ウィルさん。最近森に棲むゴブリンが妙に増えた気がするんですけど、ゴブリンの数だけが極端に増加することって、よくあるんですか?」

「いや。わしも初めてだよ」


 首を横に振りながらウィルは答えた。


「実はわしもそのことが気になっていてね。君たちが出かけた後、森を見て周ったんだが、確かにゴブリンの数がずいぶん増えている印象を受けた」


 深い憂慮を刻んだ表情でウィルは続ける。


「魔物が増加することはままあることだ。例えば、災害などで住処を追われた魔物たちが別の領域に移り住んだり、魔素が増加して自然発生する魔物が増えたり。だが、今回のそれは少々違う」

「どこが違うんですか?」


 今度は結衣が訪ねた。


「増えているのはゴブリンとその亜種だけで、それ以外の魔物の数はさほど変わっていないんだよ。災害にしても魔素の増大にしても、他種の魔物も同時に増加するはずなんだが、今回のように一種類の魔物のみが極端に数を増やし、他の魔物の数はそのままという事象は、少なくともわしは初めてだ。仮に森のどこかにゴブリンの集落が出来ていたとしても、少々多すぎる気がする」


 自然現象が原因では考えにくいゴブリンの増加。となると、慎也が思い付く原因はひとつしか無い。


「……人為的に増やされている、ってことでしょうか?」


 誰かが、意図的にゴブリンを増やしているのではないか――


 荒唐無稽とも取れる推測だったが、慎也には他に可能性が浮かばなかった。

 誰が、なんの意図を以てゴブリンを増やすのか?

 そもそも、そんな方法が実在するのか?

 そう問われれば答えることが出来ないが、慎也には最近のゴブリンの増加は、人為的なものが原因でじゃないかと思えて仕方が無かった。


「判らない」


 と、ウィルは首を振った。


「だが、君と同じことを考えている人間はいるはずだよ」


 そう言って、彼は窓の外に目をやった。


「彼らは今頃、原因をどうやって突き止めるか、どう解決するか、頭を抱え、論を交わしているはずだ」

「――でしょうね」


 当然だった。ゴブリンの増加だけでも頭が痛いのに、それがワイバーンを大量に呼び寄せる原因にもなかねないのだから、為政者や冒険者ギルド、あるいは商工会にとっては死活問題だ。もちろん、一般市民にとってもそうだが、問題の解決策を見出すのは上に立つ者の役目だ。それが出来ない者は無能のレッテルを張られ、その地位を他者に譲り渡すことになる。


「まあ、明日になれば、進展があるだろうね」

「どうなるか、なんとなく想像できますけどね」


 苦笑を浮かべる慎也に、ウィルも笑顔で頷いた。


「たぶん君の想像通りになるだろう。もし君が可能だと思うのなら、手を貸してあげなさい。原因がなんであれ、この森で起こっていることである以上、わしらも無関係ではないからね」

「了解です」


 そんな言葉を交わす慎也とウィルを、蚊帳の外に置かれた結衣とユフィアが見ていた。


「うぅ、ユフィアちゃん。慎也君とウィルさんがなに言ってるのか、よく判らないの」

「私もです。2人だけで堂々と内緒話するなんて、酷いと思います!」


 悲しそうな結衣とむくれるユフィアに、慎也とウィルは顔を合わせて、互いに苦笑を浮かべるのだった。


 ◇◇◇


「なるほど、こういうことね」


 翌日、キアナの街の冒険者ギルドで、依頼ボードに張り出されたとある伝票を見て結衣が納得気に頷いた。


   番号:732(常時受け付け)

 依頼内容:マナクレイの森の調査

必要ランク:7級以上

 成功報酬:50万テラ

   期限:なし

   説明:知っての通り、マナクレイの森に生息するゴブリンがここ最近、異常

      に数を増やしている。単一の魔物とその亜種だけが短期間に極端に数

      を増やすという事象は前例が無く、マナクレイの森になんらかの異常

      事態が発生し、それがゴブリンの増加の要因になっている可能性があ

      る。マナクレイの森を調査し、ゴブリン増加の原因を突き止めてほし

      い。なお、原因が判明次第、この依頼は取り下げるので注意。


「昨日のワイバーンの一件で、行政側もオレたちと同じ結論に達したんだろうな。しかも、かなり危機感を強めてる。で、森を調べるには冒険者に依頼するのが一番手っ取り早い、って訳だ」

「森でなにが起こってるんでしょう?」


 自分が住んでいる森で起こっている事態に、ユフィアは不安の色を隠せない。


「慎也君、どうする? ランクは足りてるし、この依頼、受けてく?」

「んー……取りあえず、受付で詳しく聞いてからな」


 現在もスライムとゴブリンの討伐依頼は継続中だ。森を調べるだけなら依頼を熟しながらでも出来るし、自分たちの地元でもあるので受けておいて損は無いのだろうが、森の奥深くに調査に入るのはかなり危険でもある。ここは詳しい話を聞いてから決めた方が良いと、慎也は判断した。


「すいません。この依頼について……って、あれ?」


 空いている最寄りの受付に移動した慎也は、そこに意外な顔を見つけて驚いた。


「あ、どうも皆さん」


 気が無く挨拶をくれたのは、2階の窓口で冒険者登録の受け付けをしていたはずのウィニアだった。


「あ、ウィニアさんだ」

「どうしてここにおられるんですか? 確か、2階の窓口が担当だったはずでは?」


 結衣とユフィアも意外そうに尋ねた。


「元々、ここの受付を担当してた子が病気で来られなくなって……なので、急きょ私が応援として来たんですよ」

「なるほど……」


 説明を聞いて、慎也は納得した。


「それより、聞きましたよ、皆さん。冒険者になったばかりなのに、ずいぶん活躍なさってるそうじゃないですか。初めての魔物討伐でゴブリンに捕まった冒険者を救ったり、次の日には行商人の人たちを助けてワイバーンを倒したっていうし」

「ええ、まあ……」


 童女のように目を輝かせながら矢継ぎ早に語りかけてくるウィニアに、慎也たちは少し引き気味だ。


「そ、それより、この依頼のことなんですけど――」

「ああ、すいません! 私ったら、つい……ええっと、732、森の調査に関してですね」


 謝罪を皮切りにようやく仕事モードになったのか、ウィニアは真面目な表情で伝票に目を通し始めた。


「まず、この依頼の内容は、森でゴブリンが増加している原因を調べる、といったものですよね?」

「その通りです。ゴブリンの増加は、単なる自然発生ホップの増加とは考えづらいので、恐らくなんらかの異常事態が森で生じていると考えられます。この事態を放置するとゴブリンだけでなく、ワイバーンと言ったゴブリンを捕食する魔物の増加にも繋がりますので、その原因を突き止めてほしいという訳です」

「ちなみに、ギルドはなにが原因でゴブリンが増えたと考えてるんですか?」


 原因を突き止めてほしい、というのは簡単だが、やるのは容易ではない。なんの手掛かりも無く調べるより、少しでも事前情報があった方が良いと慎也は考えた。


「誰かが人為的に森にゴブリンを解き放っているとは考えづらいので、恐らく、なんらかの古代神器(アルティカ・ノーツ)が原因ではないかと」

古代神器(アルティカ・ノーツ)?」


 初めて聞く単語に、慎也は眉を顰めた。


「ご存じありませんか?」

「いえ、初耳です」


 後ろを振り返ると、結衣とユフィアも首を横に振っていた。


「かつてこの世界には、アルティカ文明という非常に発達した先史文明が栄えていたんです。ですが、長きに渡って栄華を誇ったアルティカ文明も、いまから2000年前に突如として滅亡してしまいましたが」

「内乱、天変地異、あるいは魔族によって滅ぼされたとの説もありますが、原因は判っていません。ただ、アルティカ文明時代の優れた魔導技術によって生み出された魔導具のことを、古代神器(アルティカ・ノーツ)と呼ぶんです。それこそ、現代の魔導具とは比較にならない性能を持つと言われています」

「古代文明か……慎也君が好きそうだね」


 結衣の言葉は無視して、慎也(戦国という古代史のマニア)は話を続ける。


「つまり、ゴブリンを増やす、或いは引き寄せる古代神器(アルティカ・ノーツ)を、誰かが悪用している、と?」

「そこまでは……」

「そうですか……」


 慎也は考えた。

 優れた技術力を有した先史文明の残した遺産。超常の力も持った魔導具。確かに興味はそそられるし、それが原因でゴブリンが増えているというのなら、キアナの冒険者ギルドの所属する者としては見過ごせない。


(どうせ今日も森で魔物狩りをする予定だったし、依頼を受けて損は無いか……)


 そんなことを考えていると――


「森に調査に向かうってんなら、オレたちと一緒に行かないか?」


 背後から、やたらとハスキーな声が聞こえた。


次回更新は9/17の18時です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ