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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
冒険者の章
38/135

第36話 前から不思議に思ってたんだけど……

セリフが多いです(。・ω・)ノ゛

「そうか……ゴブリンに捕らわれていた冒険者を助けたのか」


 その夜、帰宅した慎也は今日起こった出来事のあらましをウィルに報告した。


 スライムとゴブリンの討伐依頼を受注したこと――

 途中で他の冒険者の痕跡を見つけたこと――

 ゴブリン・ナイトの群れを倒したこと――

 冒険者の痕跡を結果、死体を見つけたこと――

 ゴブリンの足跡を追いかけ、巣で捕らわれていた冒険者を助けたことを。


 その後、街へ戻った慎也たちは、ミリィを伴って冒険者ギルドに赴き、彼女のパーティの壊滅を報告し、遺品を提出。念の為、ミリィを自宅まで送り届けた後、深々と頭を下げて礼を述べる彼女とその家族に別れを告げ、帰宅した。


 結衣とユフィアは、少し前まで起きていたのだが、自分たちだけでの初めての魔物討伐で疲れたのか、先程そろって寝てしまった。


「それで、ギルドには依頼完了の報告をしたのかい?」

「いえ。期日は2週間ということでしたので、ギリギリまで続けてみようと思います」


 今日1日で、複数のゴブリンとスライムを討伐している。故に、受注した依頼に関しては既に達成していることになるのだが、期日はまだ13日も残っている。ここで依頼を終えてしまうのはもったいないということで、3人で相談した結果、2週間ギリギリまで討伐を続けることにした。


「それが良いだろう。ただ、充分気を付けてな」

「判ってます。油断したらどうなるか、この目で見ましたから……」


 自分たちと同じ様に、初めての魔物討伐に赴いたミリィのパーティの末路は、慎也に少なからぬ衝撃を与えていた。

 1歩間違っていたら、自分たちも彼らと同じ末路を辿っていたかもしれない――

 そう思うと、心臓が鷲掴みにされたような恐怖を感じざるを得なかった。


 新人冒険者の死亡率は知っていたが、やはり聞くだけなのと実際に見るのとでは大違いだ。


「なら良い」


 慎也が、言うまでもなくそのことを肝に命じているのを見抜いたウィルは安心したように頷いた。


「ところで、ユフィアの様子はどうだった?」

「どうだった、とは?」

「あれは昔から騎士や冒険者に憧れていてね。夢だった冒険者になれたことで、色々と無茶なことをしていなかったかな?」


 鋭いな、と慎也は思った。

 だが考えてみれば、ウィルはユフィアの祖父であり、ずっと共に暮らして来たのだから、彼女の性格や行動パターンくらい熟知しているだろう。


「……正直、少し危なっかしい感じはしましたね」


 少し迷った末、慎也は忌憚のない感想を述べることにした。


「善意と正義感は強いんですが、そのせいで無茶な行動をしてしまうタイプだと思います。人を助けたい、力になりたいという理想はあっても、その先の展望が無い。一言でいえば、慎重さが足りないと思います」

「……やはり君もそう思うか」


 軽いため息を付いて、ウィルはユフィアの自室の扉に目を向けた。


「あの子の性格は、わしが原因かもしれんな」


 少し寂しそうな声色で、ウィルは語り出した。


「もう知っているだろうが、わしは現役の頃、数少ない1級冒険者の1人だった。その上、誰が言いだしたかは知らんが、《鬼神》などという異名で呼ばれていた。そのことを、一時期は誇らしく思っていたよ。だが、いまとなっては後悔しかない」

「何故ですか?」


 冒険者として名を上げ、尊敬の念を抱かれることに、なんの後悔があるのか? 慎也には判らなかった。


「息子は、そんなわしに強く反発してね。わしの――《鬼神》の息子と呼ばれ、常にわしの影が付いて回ることに耐えられなかったんだろう。成人してすぐにわしの元から飛び出して、冒険者ではなく、騎士になることを選んだ」

「……」


 そのことは、慎也も少し共感できるところがあった。

 ヨルグやウィニア――ウィルに少なからぬ恩を感じている者たちを初め、名も知らぬ冒険者たちも、みんな自分たちを「ウィルの弟子」として見ていた。慎也はそのことにコンプレックスを感じたことは無かったが、彼の息子、ユフィアの父親は耐えられなかったのだろう。


「あいつは、騎士として幾多のいくさを潜り抜け、大いに名を上げた。そしてついには、《白銀の騎士》という異名で呼ばれるまでになった。たぶん、わしを超えようとしていたのだろうね。わしを超えることで、初めて自分は「《鬼神》の息子」では無く、自分という1人の人間になれる――そう考えていたんだろう。だがそれが、息子とその妻の命を奪う結果になってしまった」


 そう言ってウィルは窓の外、夜の帳の降りた空を見上げた。

 ある意味、自分の息子夫婦が旅立った場所を。


 そこまで聞いて、慎也はウィルが言わんとしていることが理解できた。


 ウィルは、ユフィアが父親と同じ運命を辿るのではないかと心配しているのだ。


 父親は反発。

 ユフィアは憧れ。


 一見正反対だが、どちらも「ウィルに負けないくらい立派な人間になりたい」という思いは同じだ。

 しかもユフィアの場合、両親も有名な騎士や冒険者だっただけに、その思いは強いだろう。慎也自身も「ウィルさんの弟子の名に恥ずかしくない活躍をしなければ」と心に誓ったほどだ。


 初対面であったウィニアはともかく、昔からの知人だったヨルグとケーナは、ウィルに命を救われた経緯がある。ユフィアはが本人たちからその話を聞いていたとすれば、祖父に憧れる彼女が、自身の危険を顧みずに他者の命を救おうと考えるのは当然だ。


 恐らくは、彼女の父親もそうだったのではないか。

 その思いが、死に繋がったのではないか。


「ユフィアも小さい頃から親に似て、正義感が強くて思い込みが激しい所があったからね。冒険者や騎士になって人助けをしたいというあの子の夢を応援してやりたい気持ちはあったが、ユフィアの性格があの子の死に繋がるんじゃないかと、ずっと心配していたんだ」

「だからオレたちとパーティを組ませたんですか?」

「その通り。幸い君は、ユフィアとは違って、冷静で現実的な性格だった。自分の力や出来ることの限界をきちんと見極めている。君なら、ユフィアのストッパー役になってくれるだろうと思ってね」


 ウィルのその見立ては的中していた。実際今日も、救助を焦るユフィアを、慎也は自分たちの力と現実を天秤にかけた上で冷静に諭し、嗜めている。


「シンヤ君、ユフィアを頼んだよ」

「勿論ですよ。絶対に死なせたりしません」

「出来れば、冒険者家業以外でもあの子を頼みたいんだがね」

「え?」

「いや、なんでもない」


 意味有り気にウィルは笑い、慎也はその意味が判らず首を傾げた。


 ◇◇◇


 ダン! ダダダダン!!


 翌朝、森の一軒家から少し離れた場所で無数の銃声がこだましていた。

 もちろん、原因は慎也の魔法銃の試し撃ちである。

 空き地の一角にごつい丸太を立て、それを的にしておよそ20メートルの位置から2丁の魔法銃で魔弾を撃ちこんでいた。


 そんな彼の様子を、少し離れた所で結衣が興味深そうに眺めていた。


「……まだ威力が安定しないな」


 丸太に出来た銃創を見ながら慎也は一人ごちた。見れば、丸太に空いた穴の大きさはまちまちで、慎也が魔法銃に込める魔力が一定ではないことを示している。


「魔法銃って、魔法剣の銃版みたいなものだよね?」


 後ろから結衣が質問してきた。


「ああ。基本的には同じなんだが、魔力を剣に込めて振るうのと、銃に込めて撃ち出すのとでは大違いだ」


 基本的に剣の場合だと一度刀身に魔力を流せば、後はそれを維持するだけで済むが、魔弾の場合は1発撃つごとに込めた魔力がリセットされる為、撃つ度に魔力を込め直さなければならない。1発1発の魔力消費はそれほどでもないが、何発も撃てば消費量は相当なものになる。


「魔法剣と同じってことは、エンチャントも出来るの?」

「出来るぞ」


 何気ない結衣の質問に、慎也は実際に黒のスコールに《戦具に宿りし火の精(フレイム・エンチャント)》を掛けた上で再度丸太を撃った。真っ赤な炎を帯びた魔弾は丸太に突き刺さるや、穿たれた銃創から火を噴き出して炎上を始めた。


「次、《戦具に宿りし氷の精(コールド・エンチャント)》」


 今度は黒のハティにエンチャントを掛けて発射。真っ白な魔弾が炎上する丸太に命中した途端、パキィンという甲高い音を立てて炎が一瞬で消え、さらに丸太の上半分が凍結してしまう。


「すごーい」


 パチパチと拍手する結衣が、ふとなにかを思い付いて手を止める。


「慎也君、2つの銃に、別々の属性をエンチャントすることは出来ないの?」

「いや、2丁の銃に同じ属性のエンチャントを掛けることは出来るけど、別々の属性ってのは無理だな。練習すれば出来るようになるかもしれないけど……」


 かもしれない、と言いつつ、その眼は、必ず習得してやる、という野心に満ちているのに結衣は気付いていた。銃に関しては、まったく妥協が無いようだ。


「前から不思議に思ってたんだけど……」

「なにがだ?」

「慎也君ってさ、銃を使うことに抵抗とか無いの?」

「? 逆に、なんで抵抗なんか感じると思ったんだ?」

「だって慎也君、戦国マニアでしょ? 刀は判るけど、他の武器は槍とか弓が普通だと思うの。騎馬武者みたいだー、って乗馬にも拘ってたし」


 結衣の意見に、慎也は、判ってないなー、と言わんばかりに頭を振った。


「結衣、オレは確かに戦国マニアだし、戦国武将が大好きだ。けど、その中でも好きな武将と嫌いな武将がいるんだよ」

「そうなの? 私は異世界転移物のラノベに好き嫌いは無かったよ?」

「そりゃジャンルの話だ。そうじゃなくて、ラノベに登場するキャラクターの中でも、好きなキャラと嫌いなキャラがいただろ?」

「あー、それはあった。特に女の子に酷いことするキャラは嫌いだった」

「それと同じだ。ちなみに、オレが1番好きな戦国武将は誰だと思う?」

「そんなこと急に聞かれても判んないよ。歴史の授業とかずっと寝てたもん」

「おい」


 さり気無く情けないことを言い放った結衣に、慎也は思わずツッコミを入れた。


「ヒント――史上最も有名な戦国武将。それこそ、小学生でも知ってる野望な人だ」

「あー、もしかして、あれ? ええっと、なんだっけ……ノビナガ?」

「なんだそのの〇太君のご先祖みたいな名前は……信長だよ、信長。織田信長だ」

「うん、知ってる。家来に裏切られて死んじゃう人でしょ?」

「いや、確かにそうだけど……もっとこう、他の言い方があるだろ?」

「? 合ってるでしょ?」


 きょとんとして首を傾げる結衣に、慎也は嘆息を漏らす。


「まあ、いいけど……とにかく、オレが1番好きな戦国武将は織田信長だ。で、信長と言えば、鉄砲だ!」


 持っていた魔法銃を掲げて、慎也は声高に言い放った。


「そもそも銃――鉄砲が日本に伝わったのは戦国時代だ。鉄砲の伝来で、それまでの戦のやりようや戦術が大きく変わった。その史上最も有名な一例が『長篠の戦い』だ。織田、徳川連合軍が大量の鉄砲を使って武田軍を破った戦い! つまり、銃は戦国時代と織田信長を象徴する武器なんだよ! 抵抗なんかある訳ないだろ?」

「ふーん」


 熱く語る慎也に、いまいち乗り切らない結衣。なんとも滑稽な図だ。

 そこへ――


「ご飯ですよー」


 家の玄関からユフィアが呼ぶのが聞こえた。


「はーい!」


 慎也の話を聞いていた時とは打って変わって元気の良い返事を返す結衣を見て、慎也は「ロマンの判らんやつめ」と小声で呟いた。


「ほら、早く行こうよ、慎也君。腹が減っては戦は出来ぬ、だよ」

「判った判った」


 手を引っ張る結衣に、慎也は苦笑しつつも付き合って共に歩き始めた。

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