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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
冒険者の章
34/135

第32話 騎士は騎士か

冒険者としての初戦闘ですo(*・ω・)○

 ゴブリン。

 この世界に来た慎也たちが、初めて遭遇した魔物であり、最も多く倒した魔物でもある。それこそ、飽きるくらいに。ウィルとのパワーレベリングで、それこそ数え切れないほど屠った。それだけでなく、他の冒険者たちの中にも、レベリング目的でゴブリン狩りをしている者は多くいるというのに、いまだにその数が減った気がしない。


 魔物とは、人間やその他の動物と違い、数を増やす方法が2種類ある。

 自然発生と、繁殖だ。

 魔物の自然発生は主に魔素の濃い場所で頻繁に起こる。元々魔物とは、魔素がなんらかの理由で一カ所に集まり、結晶化した魔晶核(コア)が肉を纏った存在なので、魔素の量=魔物の発生率、という方程式が成立するのは当然だ。


 この他にも、人間や他の動物などと同じく、繁殖や産卵で増える場合もある。


 自然発生と繁殖、両方可能なものもいれば、どちらかでしか増えない種もいるし、ごく少数だが、それ以外の方法で増える魔物もいるし、そもそも増殖しないものもいる。例えば、スライムは分裂することで増殖する。


 ゴブリンは自然発生と繁殖、両方が可能なタイプだ。

 しかも嫌らしいことに、ゴブリンは基本的に雄しかいない。繁殖する場合は、人間などの人型生物を孕ませる。妊娠期間は1カ月ほどと極めて短く、生まれるのは例外無くゴブリンだという。そして、その場合、希少種が生まれてくる可能性が極めて高い。

 一説では、母胎となった者が、レベルが高かったり、他者よりも優れた才能やスキルを有する者であればあるほど、優れた能力を持つ希少種が生まれる可能性が高まるのだという。


 しかも、最弱の魔物故に、他の魔物の餌にされる場合が多い。つまり、ゴブリンが増えるとそれを狙ってより強力な魔物が集まってくるのだ。


(ほんっっとに、とことん害悪でしかないな、こいつらは!)


 吐き気を催すような生態に辟易しながらも、慎也は茂みから踊り出し、武器を振りかざしてこちらに向かってくるゴブリンの群れに魔法銃の2つの銃口を向ける。


 2丁の拳銃ハンドガン型魔法銃は、昨日まで使っていた初心者用のヴェレタとは違う。自分で魔力を込めて、魔弾の威力を調整する必要があるのだ。


 一応、ヨルグから使い方は説明されているが、実際に撃つのは初めてだ。


(しまった。試射するのを忘れてたよ)


 実戦までに1度は試し撃ちをしておこうと思っていたのを、慎也はいまさらながら思い出した。

 すでにゴブリンは目前まで迫っている。


(ここまで来たら仕方ない。基本は魔法剣と同じだ。要は、刀を振るか、引き金を引くかの違いでしかない)


 ヨルグに言われたことを頭の中で反芻しながら、慎也は引き金を2つ同時に引き絞った。

 スコールとハティの銃口から2発同時に発射された魔弾は、先陣を切って突っ込んで来たゴブリンの顎から上を吹き飛ばし、もう1発は別のゴブリンの腹にボーリング球大の風穴を開けた。小柄なゴブリンの胴体は、それだけで上下に両断されてしまう。

 当然、2匹とも即死だ。


(力み過ぎた)


 慎也の目論みでは、普通の銃弾――ヴェレタの威力基準で言えば、上から2段目くらいの威力を出すつもりだったのだが、力が入り過ぎたせいか、ヴェレタの最大レベルの威力を出してしまった。

 血飛沫と臓物を撒き散らして地面の転がった仲間の無惨な躯に、後続のゴブリンたちが驚愕と共に足を止める。


(もう少し、魔力を絞って――)


 魔法銃に込める魔力の量を先程の半分ほどにまで減らし、再度2発発射。立ち止まっていた2匹のゴブリンの胸と頭をそれぞれ貫く。今度の魔弾はさっきに比べて目に見えて低い。ゴブリンの身体に穿たれた銃創もビー玉大の大きさしかない。だがそれでも急所である胸と頭に風穴を開けられればどうなるかは明白だ。

 ゴブリンの脆弱なHPが一瞬で0になり、悲鳴も無くその場に崩れ落ちる。


(よし、この感覚だ!)


 ほぼ期待通りの魔弾の威力に、慎也は内心でガッツポーズした。

 残ったゴブリンたち目掛け、今度は連続して魔弾を放つ。3秒とかからず、すべてのゴブリンが魔弾を浴びて倒れ伏した。


 すべてのゴブリンを仕留めたかに見えたが、慎也たちはまだ警戒を解かない。<気配察知>スキルの影響か、まだ茂みの奥に数匹のゴブリンが潜んでいるのに全員が気付いてる。


(一緒に突っ込んでこなかったところを見ると、残りは希少種だな。雑魚を捨て駒にしてこちらの戦闘力を探ったか?)


 希少種は普通のゴブリンに比べて頭が良い。加えて、ゴブリン同士は仲間意識が低い。味方を戦わせてこちらの手の内を探ることくらいは平然とやってくることは、慎也たちも知っている。


 茂みの向で、呻き声にも似た、得体の知れない呪文を唱える声と共に、魔力が膨張したのを<魔力感知>スキルを通して慎也たちは察知した。


 魔力を、魔法を使うゴブリン。つまり――


「ウォーロックだ! ユフィア!」

「はい!」


 慎也の声に、阿吽の呼吸でユフィアが答えた。ややあって「ゲギャ―」という掛け声とともに、茂みの向こうから炎弾が2つ、慎也たちに向かって飛んで来た。


(森の中で火魔法使いやがった!)


 頭は良いと言っても、所詮はゴブリンである。森の中で火魔法を使えば、森林火災になりかねないという考えがまるで無い。まさに子供の火遊びレベルだ。あるいは、火魔法しか使えないのかも知れないが。


「《神秘なる光壁(セイント・ウォール)》!」


 ユフィアが発動した神聖属性の中級防御魔法の光壁が慎也の眼前に展開し、飛来した炎弾を打ち消した。だが、あおりを受けた茂みに火が付き、煙を上げて燃え始めた。このままでは森林火災になる。


「結衣!」

「任せて!」


 慎也の言わんとしていることを、結衣はすぐに理解した。まあ、このままでは火事になるという現状を鑑みれば、誰でも理解できるだろうが。


「《凍てつく吹雪(ブリザード)》!」


 短い詠唱の後、結衣の杖の先端から氷点下の冷気を伴った風が吹き荒れ、瞬く間に炎を沈めてしまう。燃えだしたばかりでまだ炎がそれほど大きくなかったのが幸いして、火は程無く鎮火した。


 視界を遮っていた茂みが無くなったことで、その向こう側が露わになっていた。当然、ゴブリンの姿も。

 そこにいたのは、ローブを纏い、杖を持ったゴブリンが2匹と、骨を組み合わせて作った鎧と、動物の頭蓋骨を使って拵えた兜をかぶり、剣と盾を装備したやや大柄なゴブリンだった。

 魔法による奇襲攻撃をいなされたせいか、3匹とも驚いているようだ。


「ウォーロックが2匹に、ナイトが1匹か」


 ゴブリン・ウォーロック

 レベル:6

 生命力:138

 魔力値:147

  筋力:43

  敏捷:35

 スキル:<火魔法112>


【ゴブリンの希少種。ゴブリンの魔法使い。他のゴブリンに比べて身体能力は劣るが、初歩的な魔法を使いこなせる。ゴブリンは基本的に魔法が苦手な種族であるが、ゴブリンと、魔法を使える他種族との間に生まれることが多く、自然発生ホップすることは稀】


 ゴブリン・ナイト

 レベル:7

 生命力:145

 魔力値:2

  筋力:117

  敏捷:110

 スキル:<剣術130>


【ゴブリンの希少種。ゴブリンの騎士。通常のゴブリンに比べて大柄で身体能力が高く、初歩的な剣術を扱うことが出来る。群れなどのリーダーを務めている場合が多い】


ナイトこいつが群れのリーダーか?)


 注意深く3匹の希少種を観察していた慎也だったが、ふと、あることに気付いた。


「シンヤさん、あのゴブリンが持ってる武器……」

「ああ、判ってる」


 ユフィアも気付いたようだ。

 ゴブリン・ナイトが装備している剣と盾。ごく普通の鉄剣とスモールシールドなのだが、見た所、非常に真新しいのだ。

 これまでも慎也たちは何度かゴブリン・ナイトを倒したことはあったが、持っていたのは例外無く錆びた剣や、木の枝を適当に組み合わせて作ったような粗末な盾だった。

 だが、目前にいるゴブリン・ナイトが持っているのは、まるでついさっき買ってきたばかりのような、新品同然の剣と盾だ。


 さらにもう1点。ゴブリン・ナイトの剣と盾に、青い血と、赤い血が入り混じって付着している。


 青い血はゴブリンのものだろうが、赤い血は恐らく、人間のものだろう。


 さらによく見て見れば、ゴブリン・ナイトの腰に、2振りの短剣が吊り下げられている。そして、2匹のゴブリン・ウォーロックの内の1匹は木を削って作ったような粗末な杖を持っているのに対し、もう1匹は、木製の杖の先端に魔石が埋め込まれた、結衣の精霊樹の杖によく似た形の杖を持っていた。


「たぶん、他の冒険者から奪ったんだろうな」


 ゴブリンは生産技術を持たない。作ったとしても、木や石、骨を組み合わせて作ったような原始的な物ばかりだ。

 もしもゴブリンが鉄製の武器を持っていたら、それは例外無く人間から略奪したものだ。


 恐らくこのゴブリンたちは、討伐に来た冒険者たちを返り討ちにし、彼らの装備を奪い取ったのだろう。剣と盾にこびり付いたゴブリンと人間の血は、その時に付いたのだ。


「もしかして、あの足跡の――」

「それは後だ」


 なにか言いかけた結衣を慎也が制した。だが実際、慎也も同じことを考えていた。

 ゴブリンたちが持っている武器の持ち主たちは、さっきの足跡の主なのではないか、と。


 しかし、それを考えるのは、目の前のゴブリンを倒した後だ。


 ゲギャ―!


 ゴブリン・ナイトがひと際大きく吠えた。直後、2匹のゴブリン・ウォーロックが呪文を詠唱し始める。


「《氷の槍アイス・ジャベリン》!」

「《聖なる槍セイクリッド・スピア》!」


 だがその前に、結衣とユフィアが無詠唱で放った氷と光の槍が、2匹のゴブリン・ウォーロックの胸を貫いた。悲鳴を上げることすら叶わず、2匹のゴブリン・ウォーロックは即死した。


 ギャアー!!


 最後に残されたゴブリン・ナイトが咆哮を上げる。逃げるのかと思いきや、剣と盾を構えて戦意を剥き出しにしている。


「へぇ、仲間が全員やられても逃げないのか。ゴブリンでも、騎士は騎士か」


 慎也は感心した。

 ゴブリンは非常に残忍だが、同じくらい臆病だ。敵が自分たちよりも強かったり、勝ち目が無いと判れば即座に逃げ出す。だからこそ、仲間が全員やられて、どう考えても勝機が無いこの状況で、逃げ出すどころか尚も戦おうとしているゴブリン・ナイトに、慎也は感心した。


「なら、こっちも応えないとな」


 慎也は魔法銃をホルスターに納めた。

 実際、魔法銃を使えば簡単にゴブリン・ナイトを倒せただろうが、この状況で尚も逃げ出さずに戦おうとしているゴブリン・ナイトの戦意と誇りに、相応の態度で応えたくなった。


「2人とも、手を出さないでくれ」

「はーい」

「頑張ってください!」


 慎也の心中を既に理解していた結衣とユフィアが後ろへ下がり、慎也は数歩前に出た。


 剣には剣を――

 誇りには誇りを――


 グルルル、と獣のような唸り声を上げてこちらを睨みつけるゴブリン・ナイトに応じるように、低く腰を落とし、イクサの鞘と柄に手を掛ける。両者の距離は10メートルほど。


 ギギャー!!


 奇声を迸らせ、ゴブリン・ナイトが剣を振りかざして駆けだす。


 次の瞬間には、慎也の姿がゴブリン・ナイトの目前に迫っていた。


 ギッ!?


 速い――と言わんばかりの驚愕に歪んだゴブリン・ナイトの顔が、鮮血の帯を曳いて宙を舞った。頭を失った胴体が、駆けだした勢いのまま倒れ、地面に転がる。その背後で、慎也が真横に振り抜いた刀をくるりと回して鞘に納める。


 ゴブリン・ナイトには、自分の身になにが起こったのか、まったく判らなかっただろう。


 運動系スキルのひとつ、<閃駆>。

 その名の通り、閃光の如き高速移動を可能とするスキルで、予備動作無しで、一瞬にしてトップスピードを出せる移動法。極めれば、それこそ目にも留まらない、テレポートじみた瞬間移動を可能とする歩法の奥義だ。


 慎也のそれはまだまだ熟達しているとは言い難いが、それでもゴブリン・ナイトから見れば神風の如き高速移動であった。それによって瞬時にゴブリン・ナイトに肉薄した慎也が、すれ違いざまに居合斬りでゴブリン・ナイトの首を刎ねたのだ。


「見事だったぜ、ゴブリンの騎士」


 地面に転がったゴブリン・ナイトの頭に、慎也は尊敬の念を込めて言った。

武器名:スコール(白色)、ハティ(黒色)

分類:魔法銃ハンドガン・タイプ

攻撃力:魔力により変化。

特殊効果:????

解説:ヨルグの制作したオリジナルの魔法銃。色違いの一対もの。ヴェレタとは違い、自ら魔力を調節して威力を増減したり、様々な種類の魔弾を撃つことが出来る。

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