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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
冒険者の章
33/135

第31話 初陣だ

初仕事ですd(*´∀`*)b

 依頼の受注自体は簡単だった。

 受付のカウンターに行って、受注する依頼伝票の番号を伝えた後、カードを提出し、受付の職員が箱のような魔導具のカードを差し込んで操作した後、慎也たちに返却する。

 これで、依頼を受注したとことをライセンス・カードが認識したらしい。


「あ、ホントに受注できてる!」


 ライセンス・カードの機能である『履歴ヒストリー』を早速結衣が試していた。慎也も真似て自身のライセンス・カードを手に持って「履歴ヒストリー」と唱えてみる。

 すると、ライセンス・カードから20センチほどの空間に立体画面のような物が現れ、依頼内容が表示された。


・内容 マナクレイの森のスライムの討伐

・期限 残り14日

・討伐数 0


・内容 マナクレイの森のゴブリンの討伐

・期限 残り14日

・討伐数 0

 

 どうやら、カードを持った状態で標的である魔物を倒すと「討伐数」が勝手にカウントされていくらしい。まるでゲームのようだ。


「ちなみに、マナクレイの森以外で魔物を倒しても討伐数は増えませんから、注意してくださいね」


 と、ウィニアが説明してくれた。事実なら、誤魔化しは不可能だ。


「こんな便利な物だったんですね」


 ユフィアが感動しているが、慎也にはもうひとつ気になることがあった。


「討伐数ってのは、個人で倒した数ってことですか? 例えば、オレがゴブリンを殺した場合、オレのカードの討伐数は増えるのは判りますが、その場合、結衣とユフィアの討伐数はカウントされるんですか?」

「されますね。みなさんはパーティで同じ依頼を受けてらっしゃいますので、皆さんのカードに表記されてる「討伐数」は”パーティメンバーが討伐した魔物の数”と認識していただければ結構です」

「ということは、慎也君が魔物を退治してる間、私とユフィアちゃんは寝てたとしても、私たちのカードの討伐数も増える、ってことですか?」


 などと、結衣が見も蓋も無いことを尋ねた。


「そういうことです」


 ウィニアは笑顔――若干苦笑が混じっているが――で断言した。


「じー」

「おい!」


 なにやら訴えかけるような目でこちらを見てくる結衣に、慎也は顔を顰めて呻いた。当人は「冗談冗談」と笑っている。


「ちなみに、ギルドが皆さんに要求するのは討伐した数のみです。回収した魔晶核(コア)や部位は倒した冒険者に所有権がありますから、市場に売るなり、自分で補完するなり自由にしていただいて結構です。いちおう、ギルドの方でも買い取りは行っていますが、市場よりは若干買い取り価格が安いです。ただし、その分、ギルドへの貢献度はアップしますが」

「なるほど……」


 価格を取るか、査定を取るか――けっこう悩ましい選択ではある。


「まあ、その辺は終わってから考えよう」

「そうだね」

「魔物を倒す前から考えても、仕方ないですよね」


 結衣とユフィアも頷いた。


「それじゃあ、早速行ってきます」

「頑張ってください!」


 気合の入ったウィニアの応援を受けて、慎也たちはギルドを後にした。

 美人で健気な受付嬢に親し気に接してもらえたことに対する、他の冒険者|(主に男性)のやっかみの籠った視線と、「ウィニア! あんたいつまでサボってるの!?」「ごめんなさーい!」という怒号と情けない謝罪の声を背に受けて。


 ◇◇◇


 冒険者として初めての依頼を受けた慎也、結衣、ユフィアの3人は、いつも利用している西門から町を出て、一路、マナクレイの森へと向かった。

 普段、慎也たちが住んでいる森の一軒家とキアナの街を繋ぐ道には、途中でいくつか分かれ道があり、そのうち1つは、マナクレイの森を通り、北にある険しい山岳地帯を抜けて他国へと繋がっている。ゴブリンたちはその辺りによく出没すると、ギルドの受付が言っていた。

 が、実際説明を受けるまでもなく慎也たちはゴブリンがよく現れる場所を知っていた。なにしろ2年もの間、マナクレイの森でゴブリンやスライムなどの魔物を相手にレベリングを続けて来たのだから。森のことなら誰よりも良く知っている。


「初陣だ」


 緊張と高揚感からか、我知らずそんな呟きが慎也の口から洩れた。


 生まれて初めていくさに臨む戦国武将も、こんな気分だったのだろうか?


 ウィルの力を頼れない、自分たちだけでの初めての魔物討伐。

 とはいえ、ウィルがいない状況での魔物退治と言うなら、この世界に来た直後にゴブリンと戦っている。既に懐かしいとさえ感じる、生まれて初めての殺し合い。だが、あの時とは違い、いまの自分は冒険者であり、パーティのリーダーでもあるのだ。

 冒険者としての初任務。さらに結衣とユフィアの命を預かっている上、下手をしたら師であり、恩人でもあるウィルの名を穢してしまうとあれば、さすがに緊張の色は拭えない。


 そんな慎也に、控えめなユフィアの笑いが投げかけられた。


「やる気充分ですね、シンヤさん」

「んー、やる気充分というよりは、やる気半分、緊張半分かな?」


 何気ない結衣の予想は、意外に的を射ていた。


「そういう2人はどうなんだ? なにしろ、今日からウィルさんはいないんだぞ? 怖くないのか?」

「怖いと言えば怖いけど、慎也君とユフィアちゃんも一緒だから、大丈夫だよ」

「私も、怖くないと言えば嘘になりますけど、シンヤさんとユイさんがいれば、無事に達成できるって、信じてますから」


 と、結衣とユフィアは朗らかに笑った。とはいえ、2人の声や顔にも、やはり若干の緊張がある。

 確かに、ゴブリンやスライムが相手なら、よほどのことが無い限り3人なら大丈夫だ。だがもし、それ以外の、ウォー・ウルフのようなイレギュラーで強力な魔物が出て来たら? 


 その時は逃げるしかない。ウィルからは、そのような場合も想定して逃走の訓練も受けているが、実際に遭遇したことは無いのでうまく逃げきれるかは判らない。

 もし逃げきれなければ……

 そのことを思うと、緊張するのは無理からぬことだった。


「そうだな。最初のうちはホント、ウィルさんにおんぶに抱っこだったけど、いまじゃ、助けてもらうことの方が稀になってたし、いつも通りの調子でやれば、必ず出来る」

「そーだよ!」

「はい!」


 慎也の言葉に、結衣とユフィアが力強くうなずいた。


 その後、3人は何事も無く森に到着した。

 これまで散々繰り返したレベリングの結果、ゴブリンやスライムがどの辺りによく出るかは判っている。


 ゴブリンはその姿が示す通り、極めて人間に近い習性を持っている。基本的に洞窟や廃墟などに巣を作り、そこを拠点に活動する。集団で行動する場合が多く、群れが大規模になると集落を作ったり、動物を飼いならしたりすることもある。とはいえ、家畜のように生産目的で飼うのではなく、狼などのイヌ科の動物を、番犬や猟犬目的で飼うのだ。

 狼、あるいは狼型のモンスターの背に乗って騎乗戦闘を行う、ゴブリン・ライダーという希少種も存在する。

 群れには必ずリーダーが存在する。10匹前後の小規模な群れの場合は同じゴブリンが率いている場合がほとんどだが、それ以上の大きい群れとなると、希少種がリーダーをしている場合が多い。希少種は普通のゴブリンに比べて頭が良く、拠点などに罠を仕掛けるパターンが多いので注意が必要だ。


 この森には、ゴブリンが好んで巣穴に利用する洞窟等が多くある。慎也たちもゴブリン狩りの時は、それらの巣穴の周辺で待ち伏せし、巣穴から出てくる、あるいは戻って来るゴブリンを狩っていた。


 スライムの場合は、主に水辺に生息している場合が多い。なぜならスライムは粘液生物である為、生きていくには水が必要不可欠だからだ。一方で、人間以上に水を必要としているにも拘らず、川や池などの大量の水に浸かるとたちまち身体が解け崩れて死んでしまうのだ。

 なので、スライムは水気の多い川や池の周辺に多く住み着いていて、水を飲みにやってきた動物などを襲って取り込むのだ。


「ストップ」


 森の間道を歩き始めて間も無く、戦闘を進んでいた慎也が地面になにかを見つけた。


「どうしたの?」


 後ろを歩いていた結衣が訪ねる。周囲に魔物の気配は無い。


「誰か来た形跡がある」


 しゃがみ込んで地面を観察する。

 土がむき出しになった間道に、真新しい足跡がいくつか残されている。恐らくついさっき付いたばかり。1時間とは経っていないだろう。

 魔物の徘徊する危険な森に一般人が立ち入るとは思えない。十中八九、他の冒険者だろう。

 さらに慎也は分析を進める。


「数は3人。男2人、女1人。男は1人が戦士で、もう1人が魔法使い。女の方も戦士で、獣人っぽいな」

「……不思議に思ってたんだけど、足跡だけでどうしてそこまで判るの?」


 結衣が心底不思議そうに訪ねた。


「足跡の大きさ、形、歩幅、歩き方からのおおよその推測だ」


 これもまた、慎也がウィルから教え込まれた技術だった。

<足跡探査>スキル。

 森林などの足跡が残りやすい場所での狩りにおいて、足跡から持ち主の正体、種族、数、移動方向などを推測し、場合によっては相手を追跡したり、強力な魔物との接触を未然に避けたりすることが、危険を回避するうえで非常に役立つことがある。

 実際、ウィルとのレベリングにおいて、<足跡探査>で足跡を調べることによって、魔物の巣を発見したり、行動パターンを把握して待ち伏せをしたりしたことがよくあった。


 ただし、これを習得できたのは慎也だけで、結衣とユフィアはまったく覚えることが出来なかった。

 同じスキルでも、人にの得手不得手によって習得出来たり出来なかったりすることがあるのだ。


<足跡探査>を生かして足跡の鑑定を進めていた慎也は、もうひとつ、重大な事実に気付いた。


「……こいつら、素人だ」

「素人? 私たちと同じ、新人の冒険者ってことですか?」


 首を傾げてユフィアが聞いて来た。


「新人どころじゃない。魔物と戦うどころか、ろくに森にも入ったことが無いような人間だ」

「どうして判るの?」


 今度は結衣が訪ねてくる。


「足跡に警戒している気配が無い。それこそ、街中でも歩くみたいに無警戒に奥へ進んでる」


 今日まで慎也たちは多くの魔物と戦ってきたが、その多くは森の中での戦いだった。草木が乱立し、見通しが極めて悪い森林で、いつ、どこから魔物が現れるか判らない場所を進むのだから、当然、周囲を警戒しながら少しずつ、時には立ち止まって背後にも気を付けつつ歩みを進めるのがセオリーだった。


 だが、足跡の主たちは、そんなの知るか、とばかりにどんどん奥へと進んでいる。歩幅の間隔が広く、進行方向は一直線。明らかに無警戒だ。

 よほど腕の立つ冒険者であっても、森の中を進む際は少なからず警戒する。なにしろ、中には地中から襲ってくる魔物もいるのだから。


 それが無いということは、足跡の主たちは、森林での戦闘経験が無い、ど素人としか思えない。


「もしかして、さっきウィニアさんが言ってた、冒険者パーティの人たちじゃないですか? 確か、同じ依頼を受けたって言ってましたよね?」


 ユフィアの言葉で慎也も思い出した。

 確かにウィニアはそんなことを言っていた。8級パーティが、初めての魔物討伐にこの依頼を受注していた、と。初めての魔物討伐は、スライムかゴブリン退治がお勧めだと。

 だが、最近はゴブリンの数が増えているだけでなく、希少種などの強力な個体も見られるようになった。街道周辺ならまだしも、森の奥地へ進まない方が良いと、ウィニアは釘を刺していた。


 魔物と戦ったことも無い連中が、森の奥でゴブリンの群れや希少種に出くわしたら――


(初めての魔物退治で舞い上がって調子に乗ったのか? それとも、街道周辺に獲物がいなかったんで、ゴブリンを求めて森の奥へ向かったのか……いずれにせよ、危険だ)


 2年間、マナクレイの森で過ごしてきた慎也は、足跡の主たちが危地に足を踏み入れ、しかもそれに気付いていないと確信した。

 彼の本心は、足跡の主たちを追った方が良い、と判断した。しかしそれに、理性が待ったをかけた。


(初めての魔物退治なのはオレたちも同じことだ。このまま進めば、オレたちも危険だ。いくら森で戦い慣れているとはいえ、今回はウィルさんはいないんだ。3人だけで森の奥へ進んで、無事でいられるのか?)


 本心と理性。見知らぬ冒険者の危険と自分たちの安全を天秤にかける。


 行くべきか、それとも、引き返すべきか――


 悩む慎也だったが、結果的にその時間は無くなった。


「!」


 考えながらも警戒を怠らなかった神経が、複数の気配の接近を彼に知らせた。野蛮で、獰猛で、暴力的な気配。

 正体を確かめるまでもない。これまで何度も感じた、嫌と言うほど知っている、魔物の気配だ。


「2人とも、備えろ」

「「!」」

「数は10ほど。正面から来る。向こうもこっちに気付いてる」


 慎也に言われて、結衣とユフィアも気付いた。すぐにそれぞれの杖を構え、いつでも魔法を発動できるよう、魔力を整える。

 慎也は、刀――イクサではなく、ヨルグからもらったばかりの双子の魔法銃をホルスターから引き抜いた。


魔法銃こいつらにとっても、これが初陣って訳だな。よろしく頼む)


 両手に握ったスコールとハティに心中で語り掛けながらも、鋭い視線をすぐ目の前の茂みに投げかける。


 ゲギャー!!


 奇怪な雄叫びを上げ、醜悪な緑の小鬼どもが押し寄せてきた。

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