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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
冒険者の章
30/135

第29話 冒険者というものについてご説明申し上げます

ほぼ説明回です(=゜ω゜)ノ

「では、冒険者というものについてご説明申し上げます」


 受付嬢が話した内容は、概ねウィルに聞かされたものと同様だったが、それに加えて依頼についての細かい取り決めなども説明された。


 内容を要約すると――


・依頼を受注する際は、1階にある依頼掲示板(クエスト・ボード)に張り出された受注伝票を受付に提出することで受けられる。


・依頼は常時張り出されているものもあれば、一度きりのものもある。


・複数の依頼を受注することも可能だが、1人で同時に受注できる依頼は3つまで。


・依頼を受注する際は、基本的に自分の等級と同じかそれ以下のものしか受けられない。例えば7級冒険者が受けられる依頼は7、8、9、10級のもの。


・依頼には期限があり、期間内に達成しないと失敗になる。場合によっては違約金が発生する場合もある。5回連続で失敗してしまうと、降格の上に2カ月間の資格停止処分が下る。


・一定期間以内に依頼を受けない場合は登録抹消処分となる。新たに冒険者を始める場合は新規登録扱いとなり、それまでのランク、実績の如何に関わらず10級からのスタートとなる。ただし、ケガや病気などで長期間冒険者家業が出来なくなるなどのやむを得ない事情がある場合は除く。


・冒険者のランクアップに関しては、ギルド側が「ギルドへの貢献度」「依頼の達成度」「当人の力量、品格」などを考慮した上で面接や試験を行い、合格すると等級が上がる。


・冒険者ギルドが発行する依頼は任意で受けられるもの以外にも、指名依頼と強制依頼というものが存在する。


・指名依頼とは、依頼者が仕事を引き受ける冒険者、あるいはパーティを指名すると言うもの。この指名には強制力は無く引き受けるか否かは自由である。ただし、指名依頼を出されるということは実力を信頼されているという証しであり、断った場合、ギルドの査定が依頼失敗の場合よりも大きくマイナスされてしまうことがある。


・強制依頼は、非常事態――例えば、魔物の連鎖暴走スタンピードや、大型の魔物の出現、あるいは災害、他国の侵略など、村や街単位での全滅が予想される事態が発生し、多数の冒険者による可及的速やかな防衛、あるいは救出が必要な場合に出される、非常招集のこと。基本的に強制依頼を出せるのは領主のみであり、断った場合、非常に重い処分が下され、場合によっては退会処分もあり得る。


・8級以上の冒険者は、街に入る為の入市税は免除される。


 ――というものだった。


「ちなみに皆さんは、3人でパーティを組んで行動されるんですよね?」

「そのつもりですが」

「では、冒険者パーティについてもご説明申し上げます」


・冒険者個人にランク付けがされているように、冒険者パーティにもランクが付く。ランクをアップさせる方法及び降格条件は冒険者ランクと同様。


・パーティの人数は15人まで。


・パーティで同時に引き受けることの出来る依頼の数は5つまで。


・パーティとしてではなく、個人で引き受けたい場合は受注時に受付に申告すること。


・パーティに新規でメンバーを加える場合はギルドに要報告。一時的にメンバーに加えるだけなら報告の必要無し。


・冒険者以外の人間をパーティに加えることも出来るが、ギルドからの依頼には参加させてはならない。破った場合は罰則。


・パーティに名前を付けることも出来る。


「パーティの名前、ですか?」

「はい。大抵の冒険者パーティは、それぞれパーティ名を名乗っておられます。もしお決まりでしたら、この場で登録することも可能ですが?」


 もちろん、慎也たちはそんなものは決めていないし、急には思い付かない。


「えっと、他のパーティはどんな名前を名乗ってるんですか?」

「有名どころですと、《銀竜騎士団》《朱い月》《ディープ・アイズ》とかですね」


 チーム名に統一性が無い。本当に個人の好みで付けているようだ。


「2人とも、なにか付けたい名前とかあるか?」


 思い付かなかった慎也は、とりあえず結衣とユフィアに振ってみた。


「美少女冒険隊!」

「おい、オレ、男」

「あ、そうだった……」

「そうだった、って……」


 何気に結衣に酷い事を言われて慎也はがっくりと肩を落とした。


「鬼神の後継者、なんてどうですか?」


 嬉々とした表情でユフィアが提案してきた。おじいちゃん大好きっな彼女らしいネーミングだが……


「確かにウィルさんの弟子だけど、そのことを大ぴらに吹聴するのはどうかと思うぞ?」

「……そうですね。お爺様に迷惑がかかるかもしれませんし……」


 声を落として、少し残念そうにユフィアは言った。


「すいませんが、パーティ名は保留で」

「はい、判りました。名前自体は申告していただければいつでも登録可能なので、決まったら連絡してください。それと、皆さんのパーティ・ランクは7級となりますので、ご了承ください」

「了解です」

「では、パーティについてもう少し説明しますね」


・通常、冒険者は個人、或いは個々のパーティ単位で行動するが、稀に複数のパーティに依頼を課すことがある。例えば、個人や1パーティでは倒すことが困難な魔物の討伐など。


・複数のパーティが結束した集団のことを『連合団レイド』と呼ぶ。


連合団レイドでの依頼を受ける場合、参加者の中からリーダーを決め、全パーティがそれに従う。依頼を失敗した場合、すべての参加パーティが失敗のペナルティを負う。無論、リーダーを務めた者が最も大きいペナルティを負う。


・パーティ人数の上限である15人を超える大規模な冒険者集団のことを『冒険団スコードロン』という。


連合団レイドは個別のパーティ同士による一時的な協力体制なのに対し、冒険団スコードロンは恒久的な集団――つまり、パーティの大規模版であり、参加人数に上限は無い。無論、ランクも存在する。


冒険団スコードロンが同時に受注できる依頼の数は、規模やランクによって異なる。


「へー、そんなのもあるんだ」


 冒険団スコードロンについての説明を、結衣が興味深げに聞いていた。


「その冒険団スコードロンって、だいたいどれくらいの人数が参加してたりするんですか?」

冒険団スコードロンによって違いますね。20人ほどの冒険団スコードロンもあれば、200人、300人規模で支部が存在してるものもありますし、中には1000人以上が参加してる冒険団スコードロンもあります」

「1000人って、冒険団というよりは軍隊ですね」


 想像以上の規模にびっくりした様子の結衣の横で、ユフィアがふと首を傾げた。


「その冒険団スコードロンというのは、この街にも存在しているのでしょうか? 私は聞いたことが無いのですが……」

「いえ、この街――というより、スアード伯爵領には冒険団スコードロンは存在していません。隣のキリスタ侯爵領にはいくつか存在していますが」


 冒険団スコードロン。まあ、これから冒険者となる自分たちには関係の無い話だと、慎也はひとまず冒険団スコードロンについては置いておくことにした。


「では、続いて冒険者の身分証――アドベンチャー・ライセンスについてご説明申し上げます。まず、このアドベンチャー・ライセンス・カードの発行対象は8級以上の冒険者となります」


 そう言って受付嬢は1枚のカードを慎也たちに示して見せた。一見するとクレジットカードのようにも見える。表面には冒険者ギルドのシンボルマークが描かれていた。受付嬢がカードを裏返すと、なにかを書き込む欄があった。このカード自体は見本らしく、いずれの欄も空白になっていた。


「こちらに上から順に、名前、性別、種族、ランク、備考が書き込まれます。なお、このアドベンチャー・ライセンスは単なる身分証ではなく、一種の魔導具となっています」

「魔導具?」

「どんな魔導具なんですか?」


 慎也と結衣が興味深げに問う。


「主に記録機能がメインです。受注した依頼の内容や達成、失敗の履歴が自動的に記録されます。討伐依頼を受注した場合、受注から報告までの間に倒した魔物の数や名前も記録され、報告の際、職員がそれを確認することで依頼達成となりますので、基本的に誤魔化しは不可能だと思って下さい。あと、それらの記録を自分で確認することも可能です」

「どうやって確認するのですか?」


 今度はユフィアが訪ねた。


「ライセンスを手に持って、表側を上に向けた状態で『履歴ヒストリー』と唱えると表示されます。これは魔力を持たない人間でも使用可能ですが、ライセンスの持ち主以外は使用できません。この他、位置を特定する為の信号を発信する機能も備わっており、持ち主が行方不明になったり、あるいはライセンスを紛失した際に場所を探知して探索することが可能となっております」


 ずいぶんと便利な機能だな、と慎也は感心した。少なくとも、地球には無かった技術だ。異世界=文明度や科学技術が低い、と考えていただけに、ライセンス・カードの機能に関する慎也の驚きは大きかった。


「あと大事なことですが、アドベンチャー・ライセンスは有効期限が存在しており、発行から1年までとなっております。有効期限が切れますと記録機能や履歴確認などが一切使用できなくなりますので、必ずそれまでに最寄りの冒険者ギルドへ更新に訪れてください。ただ、位置特定機能だけは有効期限を過ぎても停止することはありませんのでご安心を」


 まるでビデオ屋のレンタルカードのようだ、と慎也は思った。しかし、有効期限が過ぎると機能停止するとか、どちらかというとバッテリーち近いか。


「え? じゃあ、依頼を引き受けて、報告するまでの間に有効期限が切れちゃったらどうなるんですか?」


 結衣がもっともな疑問を口にする。討伐依頼を達成しても、有効期限切れで討伐数がカウントされず、失敗になったんじゃたまったもんじゃない。


「ご安心ください。依頼を受注する際にも職員がライセンスを確認する決まりになっており、有効期限が切れていたり、間近に迫っていた場合はその時に職員が気付いて更新しますので」


 そう言えば、と慎也は思い出した。日本でも、有効期限間近のレンタルビデオのカードでDVDをレンタルしようとした時、店員が気付いて更新してくれたことを。


「ライセンス・カードを紛失した場合、1万テラ支払ってギルドに依頼していただければ信号を辿って位置を割り出すことが出来ます。また、破損して再発行する場合、料金が20万テラかかってしまいますので注意してください」

「ずいぶん高いですね」


 あまりの金額に、慎也は顔を引きつらせた。


「魔導具の一種であることや、偽造防止の為にかなり高度な技術が使用されているので」


 元が高いということか。

 そう言えば、9級と10級と冒険者は雑用しかさせてもらえず、一般市民が小遣い稼ぎに登録する場合もあるとウィルから説明されていた。そんなのにまで高価な魔導具であるアドベンチャー・ライセンス・カードを配っていたら、採算が取れない。だから、カードの発行対象は討伐任務が可能となる8級以上に限られているのだ。


「最後になりますが、冒険者ギルドでは基本的に犯罪履歴がある人物の入会は拒否させていただいております。登録後に犯罪を犯した場合でも同様です。先程申し上げたライセンス・カードの更新手続きの際、今回と同じ鑑定版によるステータスチェックを行うことになっており、その際に犯罪歴が発覚した場合、理由の如何に関わらず退会処分となりますので、ご注意ください」


 さっきに比べて若干強い口調で受付嬢が説明する。もちろん、3人とも犯罪など犯すつもりは毛頭無いので素直にうなずいた。


 その後、いくつか細かいルールの説明をされ、質問などを終えた後、いよいよライセンス・カードを発行することになった。

 受付嬢は、机の引き出しから、なにやら物々しい見た目の金属製の板を取り出してカウンターの上に置いた。さらにその上に、無記名のライセンス・カードを1枚、表向きに乗せる。


「それでは、いまから皆さんのライセンス・カードを作成します。御一人ずつ順番に、カードの上に手を置いてください」

「じゃあ、オレから」


 言われて、まずは慎也が手を置いた。するとカードが淡い光を発し、だがすぐに消えてしまった。


「はい、終了です」

「え? これで終わり?」


 なんともあっけない過程に、慎也は少々肩透かしをくらっった気分になった。そもそも、いまのやり取りになんの意味があったのかすら理解できなかった。


「はい。ちゃんと完了してますよ。カードを取って、裏を確認してください」


 言われるがままに慎也はカードを手に取り、裏面を見ると。


「あ、さっきまで空欄だったのに、書き込まれてる」


 そこに書き込まれていたのは――


 名前:シンヤ

 性別:男

 種族:人族

ランク:7級冒険者

 備考:7級パーティ・リーダー


 ――と、先ほどまで空欄だった箇所がすべて書き込まれていた。


「ライセンス・カードを発行しましたので、これでシンヤさんは正式に7級冒険者となられました。ご活躍を期待しています」

「……努力します」


 感動、達成感、緊張。色々な感情が入り混じって微かに震える手でカードを胸のポケットにしまいながら、万感の思いを込めて慎也は答えた。



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