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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
冒険者の章
26/135

第25話 正式に冒険者になってもらおうと思う

第二章開始です( `・ω・´)ノ

「っらぁ!!」


 渾身の気合を込めた慎也の斬撃が、飛びかかって来た人間大のカマキリを両断した。

 ソルジャー・マンティスというレベル6の昆虫類の魔物だ。


「これで取り巻きは全部だ!」


 慎也の周りには、他にも息絶えたソルジャー・マンティスの死体が30匹以上転がっていた。

 身体を両断されたもの。焼け焦げたもの。凍結したもの。頭が無くなっていたり、身体に大穴を開けられたものと、その死に方は様々だ。


「シンヤさん、女王が出て来ました!」


 ユフィアの警告に振り返ると、小高い崖の中腹辺りに出来た大穴から、巨大なカマキリが姿を現した。ソルジャー・マンティスに比べて遥かに巨大で、5メートルを超えている。大小2本ずつの、計4本の鎌を有していた。


 クイーン・マンティス

 レベル:30

 生命力:1230

 魔力値:337

  筋力:259

  敏捷:200

 スキル:<飛行312><鎌術299><産卵-><統率401>


【昆虫系に属する魔物。マンティス類の女王体であり、兵隊であるソルジャー・マンティスに比べて遥かに巨大で強力。生殖能力を有しており、一度に数百個もの卵を産む。普段はソルジャー・マンティスに守られた洞窟等の巣穴の奥から動かないが、兵隊が全滅するなどして危機に瀕すると自ら戦うこともある】


 クカカカカ!!


 奇怪な咆哮を上げ、クイーン・マンティスが翅を広げて巣穴から飛び立つ。


「結衣、落とせ!」

「《降雷(ブリッツ)》」


 結衣が声と共に杖を掲げると、巣穴を飛び立ったクイーン・マンティスの頭上に魔法陣が現れ、その中心から一条の稲妻がクイーン・マンティスの背に落ちた。

 不意打ちを喰らったクイーン・マンティスは悲鳴を上げたが、HPは大して減っていない。そもそも《降雷(ブリッツ)》は、雷魔法の中でも比較的初級なので当然と言えば当然だが、それでも突然の意識外からの雷撃を浴びたクイーン・マンティスは身体を硬直させ、地響きを立てて地面に墜落した。


 そこへ、イクサを振りかざした慎也が急接近する。ウィルから授かった名刀の刃は、魔力を帯びて青白く輝いていた。


 慎也に気付いたクイーン・マンティスは、素早く体勢を立て直し、狙いすましたタイミングで慎也の頭上に大鎌を振り下ろす。大鎌が慎也の身体を両断する寸前、彼は身体を捻ってダッシュの勢いを殺し、同時に身体を横に反らしてクイーン・マンティスの大鎌を紙一重でやり過ごした。的を外したクイーン・マンティスの鎌は地面を穿ち、筋力値259の怪力と<鎌術>スキル299の一撃が、数メートルに渡って地面を割った。


 間一髪でそれを躱した慎也は、身体を捻った勢いのまま、刀を下から上へ振り上げる。魔力を込めた斬撃は、クイーン・マンティスの腕の関節を両断し、大鎌を斬り落とした。


 ギャガガガガ!!


 奇怪な悲鳴を上げ、傷口から紫色の体液を撒き散らしながらも、クイーン・マンティスはもう1本の大鎌を振りかざした。慎也は斬撃を放った勢いのまま身体を回転させつつ、ホルスターから魔法銃を抜き、クイーン・マンティスの大鎌目掛けて素早く連射。比較的脆い関節ではなく、頑強な刃の部分に命中した為、鎌自体を破壊することは出来なかったが、それでも鎌を薙ぎ払おうとしたその勢いを殺すことには成功した。

 クイーン・マンティスがたたらを踏んだその隙に、慎也は素早く後方に飛んだ。


「《封魔の結界牢(ドラウプニル)》」


 そこへ、先程からユフィアが詠唱していた魔法が完成した。

 クイーン・マンティスの足元に、大きな魔法陣が出現し、そこから生じた光の檻の中にクイーン・マンティスを閉じ込める。


 聖属性の中級魔法である《封魔の結界陣(ドラウプニル)》は、魔力で作り出した檻の中に、短時間ではあるが対象を封じ込めることが出来る。

 クイーン・マンティスが結界を破ろうと光の格子に激しく鎌を叩きつけるが、ユフィアの執念で作り出された結界は些かも緩まない。そうこうしている間に、今度は結衣の詠唱が終了した。


「《爆火の炎矢エクスプロード・アロー》」


 無数の炎の矢が、紅い光の尾を曳いて飛び、光の格子の隙間から結界牢に飛び込み、クイーン・マンティスに炸裂。盛大な爆発を起こした。


 火魔法の中級に当たるこの魔法は、爆発力を込めた炎の矢を飛ばすと言うもので、術者のレベルによっては複数の矢を同時に放つことも出来る。実際に結衣は、7本の矢を同時に放っていた。

 それらが一斉に炸裂した爆発力は、クイーン・マンティスの巨体を爆炎で完全に包み込み、さらにユフィアの結界牢を内側から破壊してしまうほどの威力を秘めていた。


 結界牢が消失したことによって、クイーン・マンティスの枷が消えたわけだが、思いのほかダメージが大きかったらしく、クイーン・マンティスは苦し気な呻き声を漏らすばかりでその場から動かない。見れば、身体を覆っていた頑強な甲殻をいくつも剥ぎ取られ、小鎌の片方も消失し、あちこちから黒い煙を立ち上らせていた。HPも7割以上減っている。


「もらった!」


 これを見逃す慎也では無かった。

 クイーン・マンティスの斜め後ろの死角から再び近づき、ジャンプ。ひとっ跳びで地上数メートルの高さまで飛びあがると、再び魔力を込めた斬撃を横に一閃し、そのままクイーン・マンティスを飛び越えて反対側に着地。魔力の残滓を払うように刀を振るった後、鞘に納める。

 鍔と鞘がかち合うチンという金属音と同時に、切断されたクイーン・マンティスの頭部が地面に落ち、頭を失った巨体が崩れ落ちた。


 パチパチ、と、少し離れた所から拍手の音が聞こえてきた。


「見事だ。3人だけでソルジャー・マンティスのコロニーを殲滅するとはね」


 そう言って慎也たちを讃えるのは、ウィルだった。慎也たちの恩人であり、師であり、家族同然の彼に褒めてもらうと、踊り出したいくらい嬉しくなる。


「ウィルさんの指導のおかげですよ」


 誇らしげに慎也は言った。 

 

 ◇◇◇

 

 剣崎慎也と風美結衣の2人がこの世界に転移してから、既に2年以上の月日が流れていた。

 その間、2人はユフィアと共にウィルの指導の元、ひたすらレベル上げと個々の鍛錬。そして、3人で力を合わせての魔物との戦闘訓練に努めて来た。その甲斐があって、異世界生活2年目の時点で慎也のレベルは28に、結衣とユフィアは25と27にまで上がっていた。

 もちろんレベルだけでは無い。個々のスキルレベルや、魔法も相当に高くなっていた。


 慎也は得意としていた<刀術>スキルのレベルが500を超え、<魔力操作>スキルを得たことによって念願であった<魔法剣>スキルを獲得し、まだ駆け出しではあるものの、目標としていた魔法剣士としてのスタイルを確立することが出来た。さらに、魔法銃を持ちいて戦い続けたことで<射撃><狙撃>のレベルが400に達し、<魔法銃>スキルも獲得。他にも、<体術>スキルや移動系のスキル、また初歩ではあるが魔法もいくつか使えるようになり、遠距離、中距離、近距離のいずれにも対応できる、万能型の戦士に成長していた。

 このスタイルは、概ねウィルのそれを踏襲した形だ。


 同じく異世界人である結衣は、精霊樹の杖の助けも得て、<火魔法><氷魔法><雷魔法>の3系統のスキルを習得。本人の努力もあって、この3種類の魔法を重点的に修練したことで、2年前、異世界に来たばかりの頃はなにも出来ないまったくの素人だったのが、現在では火、氷、雷の中級魔法まで修めていた。

 これは、一般的な魔法使いの成長速度に比べても異常だと、ウィルが驚いていた。通常は、中級魔法を覚えられるようになるまで、10年は必要なのだという。

 結衣が天才だったのかはさておき、いまでは彼女も立派な魔法使いの端くれとして通用するレベルにまで成長していた。


 ユフィアは、自身の得意としていた神聖魔法の一点のみに集中して磨き上げることに専念していた。攻撃主体の結衣とは対照的に、ユフィアは防御、回復、補助をメインに置いた形だ。もちろん攻撃魔法を一切習得していない訳では無いが、どうもユフィア自身が攻撃系魔法が苦手なようで、防御、回復に比べて明らかに数段劣っている。その代わりと言ってはなんだが、ウィル直伝の<杖術>スキルの向上に力を入れ、今ではレベルが400近くになっていた。


 そんな感じで2年間、3人は大きな怪我もなく順調に成長していた。


「仲間同士での連携も見事だった。ウォー・ウルフが相手でも、3人で力を合わせれば勝てるかもね」


 そのウォー・ウルフだが、2年前のあの時以来、一度も出ていない。元々滅多に現れることの無い珍しい魔物なのだ。


 ウォー・ウルフと聞いて、慎也の胸中に暗いものが過る。


 喰い殺された友人のこと。

 既にウィルに殺されていたとはいえ、慎也にとってウォー・ウルフは友人の仇だった。良い印象を持つはずがない。

 そしてもうひとつは、ウォー・ウルフを前にした時、圧倒的な巨体と威圧感とレベルに、恐怖のあまり身体が動かなくなったという苦い記憶。もちろんそれは仕方の無いことだった。当時、戦士としては初心者以下で、レベルも一桁台だった慎也が、レベル42のウォー・ウルフを前にして竦みあがるのは当然だった。

 だがそれでも、敵を前にして蛇に睨まれた蛙のように動けなくなるというのは、決して小さくない屈辱を慎也の心に刻んでいた。


「いつかなならず、自分1人でも倒せるようになって見せますよ」


 友人を喰われたこと。元の世界にいた頃から武術を嗜んでいたこと。勇猛果敢な戦国武将に対する興味。そして、師であり、恩人であり、ウォー・ウルフを一人で倒したウィルへの憧れから、慎也は「打倒ウォー・ウルフ」を第一目標として、ひたすら修行に励んできた。

 もちろん、最終目標はウィルを超えることだ。


 そうした彼らの修行の日々は、今日、ひとつの節目を迎えることになる。


「良い心がけだ」


 やる気と野心に満ちた声で返す慎也。ウィルは微笑ましいものを見る目で頷いた。


「この2年間で、3人とも本当に見違えるくらい成長した。レベルも充分に高くなったことだし、明日から、正式に冒険者になってもらおうと思う」

「冒険者に?」

「やたー」


 聞き返す慎也とは対照的に、結衣は文字通りもろ手を挙げて喜んでいた。

 異世界物のラノベマニアな結衣にとって、冒険者は憧れだった。なにしろ、ラノベで異世界転移した主人公の多くは、異世界で冒険者として身を立てるのがセオリーだ。

 しかし、慎也たちは、異世界転移物のもう1つのセオリーであるチートな能力は持ち合わせていなかった。この世界に来た当初、2人の力は元の世界のそれと変わらず、レベルも1だった。そんな状態で危険と隣り合わせの冒険者などできるはずがなく、今日までずっと、肩書も無いまま鍛錬の日々を送っていた。


 慎也が、ウォー・ウルフを倒すことを目標に掲げていたように、結衣は、冒険者になることを目標にしていたのだが、その雌伏の日々もようやく終わりを告げた。


 ちなみにその間、生活費などをどうしていたかというと、彼らが討伐した魔物の部位や魔晶核(コア)を街で売って金を稼いでいたのだ。 

 魔物を倒して売ること自体は冒険者でなくとも可能だ。ただ、冒険者の場合はそれに加えて依頼料が入るので、身の入りは当然良い。

 つまり、肩書が無いだけで、慎也たちのやっていたことは冒険者のそれとなんら変わりがなかったわけだが…… 


「ようやく、お爺様とお母様に一歩近付けます」


 と、ユフィアも喜んでいる。彼女の場合、ずっとウィルや亡き母のような冒険者になることを夢見ていたので、その思いは結衣よりも強い。

 

「これから君たちは、冒険者として、彼らと同じようにギルドから依頼を受け、それを熟すことになるが、当然それにわしは同行できない」

「……」


 緊張が慎也たちの間に走った。

 この世界に来てからずっと、慎也たちはこの森の魔物と戦い続けてきた。3人がこの2年で仕留めた魔物の数は優に1000を超えるだろう。だがそのいずれにも、常にウィルが同行していた。ウォー・ウルフの一件を初め、危ないところを救われたのも一度や二度では無い。

 ウィルが常に守ってくれているという安心感が、慎也たちの支えとなり、凶悪な魔物との戦いに臨める原動力の一端を担っていたことは確かだ。

 もちろん、いつかはウィルの手を離れなければならぬと全員が理解していたが、いざその時がやって来るとなると、少なからず緊張と恐怖が頭をもたげるのは当然だろう。

 

「幸い、魔物との戦闘経験や討伐数なら、並みの冒険者よりも君たちの方がよほど多い。もう、わしが手を貸さなくとも、よほどのことが無い限りは大丈夫だ。もちろん、わしも可能な限り手助けはするつもりだが、直接同行するのはこれで最後だ。明日からは、3人で力を合わせて頑張りなさい」

「「「はい!」」」


 ウィルの激励に、慎也たちは口をそろえて答えた。

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