第24話 必ず行くからな。待っててくれよ!
まだ完結じゃありませんよ?(=゜ω゜)ノ
「いや、綺麗な夜空だなー、って思ってさ」
「うそ」
慎也の下手な言い訳を、結衣は一言で切って捨てた。
「皆もこれを見てるのかなー、って考えてたでしょ?」
「……おまえ、エスパーか?」
「魔法使いでーす」
考えていたことをズバリ言い当てられ、ぎょっとする慎也に、結衣は無邪気に微笑んだ。
「今日、レベルアップしたお蔭で、<火魔法><雷魔法><氷魔法>スキルを獲得したから、今度こそホントに、魔法使いになったんだよ!」
「……よかったな」
そう言う慎也も、いくつか新しいスキルを得た他、既存のスキルレベルも大幅にアップした。ウォー・ウルフとそれを倒してくれたウィルには感謝しているが、友人が喰われていたという事実は如何ともしがたい。
「……ねえ、慎也君。聞いても良い?」
「なにを?」
「慎也君は、元の世界に帰りたい?」
初代国王となった一条悠真は、元の世界に帰る方法を見つけられなかった。だが、見つけられなかったというだけで、無いとは言っていない。
もしこの先、なにかの拍子に元の世界に戻る方法を見つけられたとして、帰るかどうかと聞かれれば――
「……判らない」
と、慎也は曖昧に答えた。
「元の世界に愛着が無い訳じゃない。特に、戦国時代関連のものを見れなくなるのは辛いが、それ以外に元の世界で愛着をもったものなんて無かったからな。強いて言えば友人だけど、それが全員こっちに来てるって言うなら、元の世界に戻る理由なんて無いな」
「でも、家族は?」
「……いない」
「え? でも、親に色々やらされた、って」
重苦しい声で答えた慎也に、結衣はきょとんとして聞き返した。慎也がゴブリンを返り討ちにするくらい強かったのは、「親」に武術をやらされていたからだ、と彼自身が言っていた。
「……親は、1年くらい前にいなくなった」
「……そう」
重苦しい声で答えた慎也に、結衣はそれ以上なにも聞けなくなってしまう。
「そう言う結衣はどうなんだ?」
わざとらしく咳払いなどして声色を変えてから、慎也は結衣に聞き返した。
「私は帰りたくない」
結衣の方はきっぱりとそう断言した。
意外な答えに、慎也は思わず目をぱちくりさせた。
「帰りたくない、って、お前こそ家族が心配してるんじゃないのか?」
「心配なんかしてないよ」
困惑気味に聞き返す慎也に、結衣ははっきりと答えた。
「むしろ、私がいなくなって、清々してるよ。いままで何度も言われたもん」
「……」
いまの短い説明で、結衣がどういう家庭環境で育ったのか、慎也はなんとなく理解した。
どうやら彼女もまた「普通ではない親」に育てられた身のようだ。故に、慎也もそれ以上はなにも聞けなくなってしまった。
「親って、勝手だよな」
「……そうだね」
慎也の一言に、結衣は苦笑しながら頷いた。お互い「普通ではない親」に苦労させられた者同士、なんとなしに通じ合うものがあった。
「でも、みんなが私みたいに割り切れてる訳じゃない。他の皆もこの世界に来てるなら、きっと、帰りたいって願ってる人もいる。ううん、家族の元に帰りたいって思ってる人の方が多いよ」
「そりゃそうだろうけど、だからって、オレたちにはどうすることもできねーよ」
いまの自分たちは、どうしようもないくらい無力だ。ウィルやユフィアに頼らなければ、その日を生きていくことすら出来ないほどに。自分たちと同じ境遇の異世界人がどこかで苦しんでいることが判っていても、どうすることも出来ない。
「山口君のことは、残念だったと思う」
「……」
「私だって友達がいるもの。みんながもし死んじゃったら、なんて思うと、居ても立っても居られなくなりそうだもの」
暗くてよく見えなかったが、結衣の目元で、なにかが月明かりを反射して光っていた。涙だろうか?
「けど、いまの私たちは、みんなを探すことも、居ても立っても居られなくなることも出来ない」
結衣の言う通りだ。
いまの慎也たちが、この世界のどこかに飛ばされた友人たちを探し出せるはずがない。それ以前に、いまいるマナクレイの森でさえ、探索を行うには広大過ぎるし、魔物の数も、種類も多い。しかもウォー・ウルフのようなイレギュラーなものも存在する。
仮にもし、他にもこの森に転移して来た者がいたとしても、こちらに来てから3日が経ったいまでは、もう生きてはいないだろう。
どうすることも出来ない。どうしようもないくらい、いまの慎也たちは無力で、無知だった。
「だから私、決めたよ」
いままでとは違う、力強い声で結衣は言った。彼女の目には、闇夜でもはっきりとわかるくらい確かな決意と覚悟の光が宿っていた。
「私、強くなる。この世界のこと、勉強する。そしていつか、みんなを探しに行くの」
「!」
この世界に飛ばされた友達を探しに行く――
考えてもみなかった。
これまで、慣れない異世界生活に対応するので精いっぱいで、そんなことは考えたこともなかった。
友人が酷い死に方をして、ショックで動揺しまくっていた自分に対し、結衣はそんなことまで考えていた。
強くなり、知識を得て、自分から友達を探しに行く――
当たり前だが、簡単なことではない。それどころか、相当難しい。不可能に近いとさえ言える。
なにしろここは異世界。地球のような通信や情報網、発達した交通手段など存在しない。そんな中で、どこに飛ばされたか判らない、そもそも、生きているのか死んでいるのか、なにより、この世界に来ているのかどうかすら不明な学友たちを探すなど、難しいどころの話ではない。
広い砂漠にばらまかれた小石を、なんの手掛かりも無く回収してまわるに等しい。
だが――
「そう、だな……」
友達を、助けたい。探したい――
それは慎也も同じこと。気心の知れた、互いに悩み事を語り合える友達が、この世界に飛ばされて困っているのに、なにもしないなんて出来ない。
もしかしたら、同じことを考えているのは自分たちだけではないかも知れない。
友人たちもまた、同じ境遇にある友達を探そうと、勝手の判らないこの世界で生き残ろうと、元の世界に帰ろうと努力を続けているかもしれない。少なくとも慎也が知る限りでも、友達想いで、しかも諦めの悪い学友たちは何人もいる。
彼ら、彼女らがもしこの世界に来ていたら、そして、生き延びることが出来たのなら、きっと同じことを考えるはず。
「……やるか」
「うん! やろうよ!」
呟きに近い、無意識の慎也の独り言に、結衣はすかさず答えた。子供の様に無垢で純粋な笑顔に、思わず笑みが漏れる。
「それにはまず、兎にも角にも強さを身に付けないとな」
「うん。この世界の常識とか、知識もね」
「難しいぞ? 英語のテストよりもよっぽど、な」
「うー、それは言わない約束だよー」
英語のテストで0点を取った結衣が頬をむくれさせた。
とは言え、友人たちを探すには、結衣の力も必要だ。いや、それどころではない、もっともっと大勢の協力が。
(けど、必ず探し出してやるからな!)
そう心に決めた時には、さっきまでの暗澹たる思いはすっかり消えて無くなっていた。
友人の死を忘れた訳じゃないが、受け入れ、前に進むことは出来るようになった。
「……ありがとな、結衣」
「どういたしまして」
最初から結衣はこれが目的だったのだろう。
友達の死に落ち込む慎也を元気付けることが――
知り合ってからまだ3日だが、その短い時間の中で、彼は同年代に比べて精神的にも肉体的にもずっと強いということは理解できた。例え落ち込んでも、なにかのきっかけや目標を与えてやれば、すぐに立ち直るだろうと――
結衣がしたことは、少しだけ背中を押したことだけだ。
それだけで、慎也はくよくよした後悔を吹き飛ばし、新たに一歩を踏み出すことが出来た。
友達を探し出す、という目標に向かって。
「必ず行くからな。待っててくれよ!」
空に浮かぶ4つの月に向かって、慎也は声高に叫んだ。
今回で第一章が終了です。第二章からは少し話が進む予定ですので、今後とも「異界の刀銃使い」をご愛読の程、よろしくお願いします(>人<*)




