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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
始まりの章
18/135

第18話 絆の契約

パーティ結成です( ー`дー´)

「今日から君たち()()には、森で実際に魔物を狩ってレベルを上げてもらおうと思う」


 翌朝、朝食を終えたばかりの慎也たちにウィルがそう告げた。


「3人ということは、やっぱり、ユフィアさんも……」

「ああ、そのつもりだよ」

「お爺様、よろしいんですか?」


 昨日、ヨルグの店で『盗視の指輪(スティール・リング)』を渡した時からそんな気がしていた慎也は素直に納得した。


「ああ。お前ひとりだけでは、わしが一緒でもレベリングはままならなかっただろうが、いまはシンヤ君とユイ君がいるからね。ちょうど良い機会だ」

「ありがとうございます、お爺様!」


 感極まったようにウィルに礼を言うユフィアに、きょとんとした顔で結衣が訪ねた。


「ユフィアちゃんも強くなりたいの?」

「はい。私も、お爺様やお母様のような冒険者か、お父様のような立派な騎士になりたいんです!」


 確かな決意を秘めた瞳を輝かせてユフィアは声高に宣言した。その様は、勇者や魔法使いになりたいと言った時の結衣にそっくりだった。


(やっぱ、似た者同士だな)


 慎也がそんなことを考えているとは露知らず、結衣はユフィアに尋ねた。


「ユフィアちゃんのお父さんということは、ウィルさんの――」

「……ああ。わしの息子だ」


 ウィルが重々しい声で答えた。


「自慢の息子()()()()


 ウィルの自慢は過去形だった。

 

 慎也も結衣も、なんとなく気付いていた。

 始めた会った時、ウィルが「2人だけで暮らしている」と言った時から、ユフィアの両親がどうして一緒に暮らしていないのか。 


「……息子はこの国に使えていた騎士で、妻となった女性は冒険者だったのだが、2人ともユフィアが生まれてすぐ、事故でね……」


 ウィルはそれ以上は語らず、慎也と結衣も聞かなかった。というより、聞けなかった。特に慎也の方は昨日、ヨルグの身の上話を聞かされたばかりだったので尚更だった。


(きっとこの世界では、ウィルさんやヨルグさんのような人が、いっぱいいるんだろうな……)


 魔族や魔物というものが存在しているこの世界では、人の命は酷く儚いのだろう。それこそ、戦国時代のそれよりもよっぽど。ウィルやヨルグのように、家族を失った者は大勢いるに違いない。そんな世界で暮らしていくには、理不尽な暴力や悲劇から大切な者を守る為には、やはり強くならなければならない。ウィルのように。いや、ウィル以上に――


「それじゃあ、3人とも、着替えてきなさい」

「「「はい」」」


 暗くなりかけていた場の雰囲気を察してか、ウィルはそう言うと、慎也たちは素直に自分たちの部屋へと向かった。


 しばらくして、着替え終わった慎也たちが庭に集まった。

 慎也と結衣は昨日、ヨルグから購入した装備を着用しているのに対し、ユフィアは普段着ていた緑色のワンピースっぽい服とは打って変わって、薄手のプレートメイルを縫い込んだ服にショートパンツを履き、それらの上から白いローブを羽織っていた。手には自分の身長と同じくらいの長さの金色の杖を持っている。

 ひと言で言えば、神官っぽい格好だった。


「可愛いね」

「い、えい、私なんて、そんな……」


 着替えたユフィアの出で立ちを、結衣はそう褒め称え、ユフィアは顔を赤くして慌てている。その様子がますます可愛らしくて、結衣は思わず頬をほころばせてしまう。


「ユフィアさん――」

「あ、シンヤさん。私のことは呼び捨てで結構ですので」


 なにか聞こうとした慎也を遮ってユフィアは言った。慎也の方は思わず目をぱちくりさせてしまう。

 これまで、慎也は年下のユフィアのことを、ウィルと同じ様にさん付けで呼んでいた。命を救ってもらった恩人を呼び捨てにするのに抵抗があったからだ。


「いや、けど……命の恩人だし」

「シンヤさんは、ユイさんのことを呼び捨てしていらっしゃいます」


 慎也と結衣は目を合わせた。確かに結衣の方は慎也のことを君付けで呼んでいるのに対し、慎也の方は結衣を呼び捨てにしていたが、それは単に2人の性格によるものだった。

 元々、2人は同じ学校の同級生で、結衣は他人を呼び捨てにするのを嫌う性格なのに対し、慎也の方は、目上でもない、また、恩も義理も無い人間を敬称を付けて呼ぶような気質を備えていなかった。


 その結果が、いまの互いの呼び名だった。


「けど――」

「だから、私のこともユイさんと同じ様に呼んでください」


 当人にそのように強く要請されては慎也に拒否権は無い訳で。


「判ったよ、ユフィア。これでいいか?」

「はい!」


 にっこりと微笑むユフィアの笑顔が眩しくて、柄にもなく気恥ずかしくなった慎也は彼女の顔から目を反らして――


「あー……君は魔物と戦ったことはあるのか?」

「戦ったことはありませんが、お爺様が瀕死にした魔物に止めを刺したことなら何度かあります」


 さらっとエグイことを言い放ったユフィアに、慎也は若干鼻白んだ。


「……なるほど、それでレベルが5もあったのか……ちなみに、魔法はどんなのが使えるんだい」

「聖属性の魔法をいくつか嗜んでいます。ただ、攻撃魔法はひとつしか使えません。後は、回復魔法と防御、補助魔法だけです」

「やっぱり、ユフィアちゃんはイメージ通りの白だったんね」


 結衣の言う、白というのがなんなのかは判らなかったが、たぶん白魔導士のことだろうと、慎也は当たりを付けた。


「ユフィアが「白」なら、結衣は「し」だな」

「ひどいよー」


 だが現状、魔法も武術も使えない結衣が3人の中で最も無力なのは間違い無かった。


「待たせたね」


 3人がそんな話をしていたところへ、遅れてウィルがやって来た。

 慎也は少し怪訝な顔になった。というのも、戦闘服をばっちり着込んでいる慎也たちに対し、ウィルは茶色いローブの下に、白い木綿のようなもので出来た服を纏っているだけだった。


「ウィルさん、そんな恰好で大丈夫なんですか?」

「ああ。私にはこれだけで充分だよ」


 そう言って彼が掲げたのは、慎也のイクサとは別の刀だった。


「お爺様は冒険者時代から、一度も鎧の類を身に付けたことが無いんです」

「重苦しいのは苦手でね」

 

 はは、と朗らかにウィルは笑った。


「さて、いまから3人にはパーティを組んでもらおうと思う」

「パーティ? 冒険者の集団のことですか?」


 尋ねたのはラノベ通の結衣だった。


「その通り。ただし、単なる寄り集まりじゃない。「パーティ」というのは、《絆の契約パーティ・コントラスト》を使って結成した集団のことだ」

「どういうことですか?」


 今度は慎也が訪ねた。


「簡単に言えば《絆の契約パーティ・コントラスト》という魔法を使い、不可視の”経路(パス)”によって人間同士を結びつけるんだよ。複数人で行動している冒険者たちは、ほぼ必ず《絆の契約パーティ・コントラスト》を使ってチームを組んでいる。《絆の契約パーティ・コントラスト》を使っているチームといないチームとでは、雲泥と言って良いほどの差が生じる」

「具体的には?」


 再度慎也が問う。


「まず1つ目は、パーティメンバーの生命力(HP)魔力値(MP)、状態などを一目で確認出来るようになる。例え、離れた場所にいてもね。

 2つ目は、メンバーのステータスを見ることも出来る。ただしこれには、当事者の許可がいるがね。

 3つ目、メンバーのおおよその現在位置が判るようになる」

「なるほど……」


 顎に手を置いて慎也は頷いた。

盗視の指輪(スティール・リング)』を装備していても、他人のステータスなどは見ることが出来ない。しかし、チームを組んで戦いに臨む以上、メンバー同士の位置や状態は常に把握して置かねば危険だ。

 ただし、ステータスというのは一種のプライバシーなので、許可がなければ見られないというのも納得できる。


「4つ目は、パーティメンバーが魔物を殺した場合、他のメンバーでも経験値が得られるようになる。この前、経験値の話をした時、魔物を直接殺した者と一緒に戦っていなければ経験値は入らないと言ったが、《絆の契約パーティ・コントラスト》を使用した場合、パーティメンバーが魔物を殺せば、なにもしていないメンバーも経験値が得られるようになる」

「え? ということは、この前みたいに慎也君がゴブリンを殺して、私はただ見ているだけでも、私の方にも経験値が入る、ってことですか?」

「その通り。ただし、あまり遠くにいると経験値は入らないし、止めを刺したメンバーが一番多く経験値を得られることは変わりない」


 目敏く聞いて来る結衣に、ウィルは頷いた。


「がんばってね、慎也君!」

「やかましいわ」


 寄生する気満々の結衣に、慎也は顔を顰めて吐き捨てた。


「他にも、魔法やスキルの中には、《絆の契約パーティ・コントラスト》を結んでいる者同士でなければ効果を発揮しないもの存在する。まあ、その辺りは追って説明しようと思うが、《絆の契約パーティ・コントラスト》を使って結成したパーティは、使っていないパーティよりも遥かに多くのメリットがある」

「確かに、それは理解できます」


 再び慎也は頷いた。いま聞いただけでも、《絆の契約パーティ・コントラスト》を使用することで得られる利益は非常に大きい。使うか使わないかと聞かれれば、間違い無く使うを選択するだろう。


「その《絆の契約パーティ・コントラスト》には、デメリットはなにかあるんですか?」


 メリットがあるということは、必ずなにかしらのデメリットが存在するはずだ。


「デメリットとしては、一度《絆の契約パーティ・コントラスト》を使って結成されたパーティに所属している内は、他のパーティに参加することは出来ないこと。そして、攻撃系の魔法やスキルの中では、《絆の契約パーティ・コントラスト》の経路(パス)を逆手に取るものも存在する。例えば、メンバーの1人が被弾したら、自動的にメンバー全員がダメージを受ける、とか。パーティメンバーの経路(パス)を利用して、他のメンバーの居場所を探知する、といったものだ」

「そりゃ怖い!」

「まさに道連れだね……」


 青い顔で慎也と結衣が唸った。

 つまり、《絆の契約パーティ・コントラスト》を結んだ者同士は、文字通りの一蓮托生ということだ。 


「ちなみに、その魔法って一般的なんですか?」

「冒険者ギルドの支部なら、必ず《絆の契約パーティ・コントラスト》を使用できる専属の魔導士が在中している。もちろん有料だがね。幸い、わしも使えるから、いまこの場でパーティを結成することが出来るが、どうするかね?」


 確かにデメリットは怖いが、それ以上にメリットは大きい。これから魔物との戦いに臨む身であることを鑑みれば、正直、使わないという選択肢は無かった。


「私は良いよー」

「私も構いません」


 慎也が結論を出す前に、結衣とユフィアは賛成を投じた。


「……判りました。お願いします」


 慎也も意を決して願い出る。


「判った。では、まずリーダーを決めようか」

「リーダーですか?」


 首を傾げて結衣が聞く。


「《絆の契約パーティ・コントラスト》を使ってパーティを組む場合、必ずリーダーを決めなければならない。簡単に説明すると、リーダーとなった者には、<パーティ・リーダー>という称号と、その権限が与えられる。例えば、新たなメンバーをパーティに加えたり、逆に、メンバーがパーティを脱退したい場合、リーダーが許可を出す必要がある」

「……ん?」


 ウィルの説明の中に、不吉なものが含まれているのに慎也は気付いた。


「じゃあ、リーダーの許可無しには脱退できないということですよね? パーティから脱退したいけど、リーダーが許可をくれない場合はどうするんですか?」

「《絆の契約パーティ・コントラスト》を使用した魔導士なら、リーダーの許可を得ずとも《絆の契約パーティ・コントラスト》から任意のメンバーを除外させられる」

「なるほど……」


 納得して慎也は頷いた。少なくとも逃げ道はあるということだ。

 だが少なくとも、リーダーとなる者には相応の責任がのし掛かって来ることは間違い無い。


「はーい。私は慎也君がリーダーに1票!」

「おい!」


 元気良く手を上げてそう言い放った結衣に、慎也は思わず叫んだ。


「私もシンヤさんがリーダーに相応しいと思います」

「ユフィアまで……」


 ユフィアも結衣に同調して賛成票を投じた。


「わしも同じ意見だ」

「……判りました。オレがリーダーということで」


 ウィルにまで言われては、もはや慎也に拒否権は無い。がっくりと肩を落とす慎也を元気付けるように、ウィルが肩をポンポンと叩く。


「それじゃあ、まずはリーダーであるシンヤ君が、右手を上に向けて差し出すんだ」

「こうですか?」


 言われた通り、慎也は右手を上向きにして突き出した。


「その上に、メンバーのユフィアとユイ君がそれぞれ右手を重ねなさい」

「はーい」

「はい」


 結衣とユフィアがそれぞれ慎也の掌の上に自分の手を重ねる。その上から、ウィルが右手を翳した。


「《絆の契約パーティ・コントラスト》」


 ウィルの右手に光り輝く魔法陣が現れ、そこから発せられた光の雫が重ね合った3人の手の上に落ちる。にわかに慎也たちの身体全体が青い光の繭に包まれたかと思うと、慎也、結衣、ユフィアのそれぞれの足元に「契約」を示す魔法陣が現れ、眩い光を発して消滅した。


「契約完了だ」


 こうして、慎也をリーダーとするパーティは結成されたのだった。これによって、慎也には<パーティ・リーダー>という称号が、結衣には<パーティ・メンバー>という称号が、ステータスの称号欄にそれぞれ追加された。


<パーティ・リーダー>

絆の契約パーティ・コントラスト》で結成されたパーティのリーダー。同パーティへの新規参加、及び、脱退、解散の決定権を有する。


<パーティ・メンバー>

絆の契約パーティ・コントラスト》で結成されたパーティのメンバー。


次回から、パワーレベリング開始です。

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