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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
始まりの章
17/135

第17話 話の判る店主で助かるよ

準備が整ってきました(`・ω・´)

「カッコイイよ、慎也君」


 笑顔でそう褒め称えてくれた結衣自身も、ずいぶんと様変わりしていた。

 魔法使いを目指す彼女の装備は、「女魔法使い」という単語から連想する一般的なイメージとあまり似ていなかった。

 慎也がイメージしていたのは、黒いローブを身に纏い、黒い三角帽をかぶって手に箒を持っているという、想像力の欠片も無い貧相なイメージだったのだが、実際に結衣が着ているのは、黒と紫の布を掛け合わせて拵えた、身体にぴったりとフィットするタイプのドレスで、肩や腰回りなどには金属が使われている。背中には裾の長いマントを羽織っているが、何故かミニスカートで、しかも太腿まで達するロングブーツを履いており、慎也としては少々目のやり場に困る格好だった。


「大丈夫だよ、ちゃんとインナーにショートパンツ履いてるから」


 慎也の思考を見透かしたかのように言われ、本人は、うぐっ、と変なうめき声を漏らす。


「どうかな? 似合ってるかな?」


 期待に満ちた目で尋ねてくる結衣に、慎也は少しバツが悪そうに目を反らしながら――


「ああー、うん。ま――似合ってると思うぞ」

「いま、馬子にも衣裳、って言いかけなかった?」

「冤罪だ」


 実際に言いかけたことは棚に上げて、慎也はしれっと言った。


「似合うか似合わないかより、このドレスがどんなものかを気にして欲しいです!」


 一緒にいたケーナが頬を膨らませながら遺憾の意を示した。


「このドレスは『紫淵しえん魔導衣まどうい』と言って、魔術を込めて編んだ布で作った、魔導士の装備としては一級品でやがるんですよ!? 魔法ダメージ20%カット。魔力値(MP)30アップ。しかも着ているだけで魔力回復が早まるという、腕の立つ魔法使いなら喉から手が欲しくなる一品なんでやがります!」


 鼻息荒く、しかも矢のような早口で説明するケーナに少し引き気味になりながら、慎也は言った。


「そんなものを、魔法が使えない、レベル1の見習い以下の自称魔法使いにやるのはどうかと思うけど……」

「ひどいよー」


 ぷうっ、と頬を膨らませる結衣だが、それが事実であることは午前中に身を以て知ったので、それ以上はなにも言えないが。


「いいもん。いつかきっと、歴史に名を刻むような大魔法使いになって、慎也君を唸らせて見せるから」

「期待してるよ」


 子供の様にむくれる結衣の頭を宥めるようにポンポンと叩く。


「だから慎也君も、立派な魔法戦士にならなきゃダメだよ?」

「頑張るよ」


 こんな立派な装備をもらった以上、その期待に応えることは自分たちの義務だ。慎也もそのことは理解していた。


「ただいま戻りましたー」


 そこへ、買い出しに出ていたユフィアが革袋を抱えて戻って来た。後ろには同じく革袋を持ったウィルの姿もある。彼は革袋をテーブルの上に置くと、新たな装備を纏った慎也と結衣をまじまじと見て――


「うむ。2人とも良く似合っているよ」

「「ありがとうございます!」」


 2人そろって返事を返す。特に、ヨルグの過去を聞かされた慎也のそれは、さっきよりも力と尊敬の念が籠っていた。


「御二人の服や靴とか、色々そろえて来ましたよ」


 そう言ってユフィアは持っていた革袋を掲げた。中身は慎也たちの衣類のようだ。

 ヨルグの店は武具店であり、武具以外の物は置いていない。なので、ウィルとユフィアは慎也たちの防具が準備できるまでの間、その他の衣類などを別の店で調達していたのだ。

 至れり尽くせりである。


「なにからなにまで、ホントにありがとうございます」


 15年生きてきた中で、慎也は人の親切がこれほど身に染みた経験をしたことが無かった。思わず目頭が熱くなるのを堪えて2人に頭を下げる。


「ごめんなさい、ウィルさん。ユフィアちゃん。私たち、お世話になってばかりで、なにも返せなくて……」


 結衣に至ってはちょっと泣き出していた。


「構わないさ。いずれ成長して、返してくれれば良い」

「はい!」


 涙を拭って、結衣は力一杯返事をした。


「おお、旦那、嬢ちゃん。帰ってきたか」


 そこへ、店の奥からヨルグがイソイソと現れた。手に、なにやら同じ形をした指輪のようなものを3つ持っている。


「悪りぃ、シンヤ、ユイ嬢ちゃん。渡し忘れたものがあった」

「まったく、もうボケ始めたんでいやがりますか? その石頭がボケたらもうホントに、なんにも残らねーってのに」

「うるせぇ! おめぇもオレの娘なんだから、将来オレと同じ末路を辿るんだよ!」

「最悪です……生きる希望が無くなっちまったです……人生真っ暗です」

「おい! そこまで落ち込むか普通!? しまいにゃいくらオレでも泣くぞ!?」


 がっくりと床に両手と膝を付いたケーナに、ヨルグが喚いた。実際、ちょっと泣きそうだ。

 ホントによくケンカする親子だなー、と慎也はしみじみ思った。

 喧嘩するほど仲が良いとは言うが。ドワーフってこういう種族性なんだろうか? などと考えていると――


「それで、ヨルグ。なにを渡し忘れたんだい?」


 埒が明かないと思ってか、ウィルが口を挟んだ。


「おお、そうだった! こいつです」


 ヨルグがテーブルの上に並べたのは、小さな青い宝石のようなものが埋め込まれた、一見するとなんの変哲もない金色の指輪だった。

 それが3つ。慎也と結衣に渡す為のものなら、2つで良いはずだ。


「こいつは『盗視の指輪(スティール・リング)』と言って、レベルに関係無く魔物の強さやスキルを見破れる魔導具です。ついでにこいつもセットでプレゼントしようと思いましてね。必要でしょう? ()()?」

 

 にやり、とヨルグが笑う。どうでも良いことだが、強面のヨルグが笑うと、気の弱い子供なら泣き出してしまうくらい迫力がある。だがウィルはそんな獰猛なヨルグの笑みに、こちらも笑って返した。


「話の判る店主で助かるよ」

「なーに、客の求める商品を常に予測することが、商売人の鉄則ってやつですよ」

「……だから繁盛しねーんですよ、うちの店」

「うるせぇ!」


 ボソッと呟くように言ったケーナの一言を聞きつけたヨルグが怒鳴る。

 3個の内、2つは慎也と結衣の分。ということは、もうひとつは――


「いや、正直言って、とてもありがたい。セットと言ったが、代金はいいのかい?」

「先行投資ってやつですよ。こいつらが一端の戦士になって稼げるようになったら、その時返してもらうってことで」


 さっきのウィルと同じようなことをガハハと笑いながらヨルグは言った。どうやら慎也たちは、異世界に来て早々、結構な負債を抱えてしまったらしい。それを返す為には、もらった装備と投資額、そして期待に相応しい活躍をしなければならないことが義務付けられたのだった。


「感謝するよ、ヨルグ」

「なーに、旦那には散々世話になりましたからね。これでちっとは恩を返せれば、こっちとしても行幸ですよ」


 恐らくは高価なものであろう魔導具を、あっさりとタダで譲渡してしまう性格は商売人としてはどうかと思うが、その好意は素直にありがたいものだった。


「シンヤ君。ユイ君。それと、ユフィア。指輪をひとつずつ付けなさい」

「判りました」

「ユフィアちゃんもですか?」

「お爺様?」


 なんとなくそんなことだろうと予測していた慎也はすぐに指輪を付けたが、結衣とユフィアはきょとんとした顔でウィルの顔を見返した。


「ちょうど良い機会さ」


 ウィルはそれ以上はなにも言わず、結衣とユフィアは首を傾げながらも指輪を手に付けた。そんなウィルの意図を、慎也はなんとなく察していた。


(どうやら頑張らなきゃいけないのは、オレと結衣だけじゃないらしいな)


 その後、慎也たちはヨルグとケーナに改めて礼を言うと、彼らの店と、キアナの街を後にした。

防具名:紫淵の魔導衣。

分類:鎧。

物理御力:95。

魔法防御力:130。

特殊効果:魔法ダメージ20%カット。魔力値(MP)30アップ。魔力回復量増加。

魔術を込めて編んだ布で作ったドレス。魔導士の装備としては一級品。

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