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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
始まりの章
16/135

第16話 オレも同じですよ

女ドワーフ=ロリ。異存は認めない(`・ω・´)

「あれ? お客さんですか? 珍しい……って、ウィルさんじゃないですか!? いらっしゃいませです!」


 店に入って来て早々、1人で喋りまくっているのは、身長120センチほどの12歳くらい少女だった。長い茶髪を首の後ろで結わえ、快活そうな大きい目にサイズの小さなオーバーオールを着て、食材らしきものがいっぱい入った袋を両手で抱えていた。


「ケーナ! 遅かったじゃねぇか、どこで油売ってやがった!?」

「ひでーです! どこにも寄り道せずにまっすぐ帰って来たのにその言い草! つーか、娘に買い物行かせといて自分は酒かっくらって寝てたダメ親父に、文句言われる筋合いはねーです!?」

「んだと!? 父親に向かってその口の利き方はなんだ、性悪バカ娘!」

「口の利き方を直してほしけりゃ、親らしいところを見せてみろってんですよ、脳筋ダメ親父!」

「てめぇ! そんな性格だから近所の悪ガキにも敬遠されちまうんだ、逆噴射式弾丸娘が!」

「敬遠されてんのは、酒場で大暴れした挙句に憲兵殴って連行されたバカの娘だからの決まってんじゃねーですか、無差別破壊自爆親父!」


 突然始まった罵り合いに慎也はドン引きし、結衣は目を白黒させ、ユフィアは苦笑し、ウィルは呆れると、場は一瞬でカオスと化した。

 轟々と交わされる罵詈雑言の嵐。そこに交じった言葉から、いくつかの判ったことがある。


 少女の名前はケーナで、ヨルグの娘だということ。

 親子は仲が悪いということ。

 親子そろって口が悪いということ。

 だが、もっとも慎也を驚かせたのが――


「ドワーフの女って、髭が生えてるんじゃなかったのか?」


 昔、映画で見た記憶があった。ドワーフの女には髭がある、と。だが見た感じ、ケーナには髭など無く、人間の少女と変わりないように見える。


「慎也君、古いよ?」


 慎也の呟きを聞いていたらしい結衣が横から言った。


「現代の女ドワーフはロリバージョンだよ? 「女ドワーフ」って書いて「ロリ・ドワーフ」って読むんだよ。略してロリーフだよ?」

「略すな。ブリーフみたいに聞こえるだろ」


 2人がそんな話をしている間にも、ドワーフ親子の罵り合いは続く。


「てめぇなんざ、一生結婚できねぇぞ、生涯独身親不孝娘!」

「こんな馬鹿の義理の息子になる物好きがいるはずねーですからね、甲斐性皆無酒乱親父!」


 しかも、だんだん歯止めが効かなくなってきたのか、ますます親子喧嘩はヒートアップしてきた。


「なんか、こっちまで胸が痛くなってきたんだが……」

「奇遇だね、私もだよ……」


 げんなりする慎也と結衣の前で、さすがに見かねたのかウィルがパンパンと手を叩いた。


「2人とも、そこまでにしなさい」


 ウィルの言葉に、ヨルグとケーナははっとした顔になって言い合いを止めた。


「め、面目ねぇ! ウィルの旦那」

「すいませんです!」


 ドワーフ親子は2人してウィルに深々と頭を下げた。


 ◇◇◇


「じゃあ、シンヤさんとユイさんは異世界人でやがましたか!?」


 店内では話しにくいということで、いったん全員で店の奥へ移動した後、客間でお茶をしながらウィルがケーナに事情を説明した。

 慎也と結衣が異世界人だと知ったケーナは目を輝かせて興味津々な様子だ。


 おかしなしゃべり方はするものの、話してみると話の判る素直ないい子だった。

 ただ驚いたのが、年齢が慎也たちと同じ15歳だったことだ。外見はどう見ても小学生である。結衣は「合法ロリだね」などと言っていた。


「さっきも言ったが、くれぐれも内密にな」

「判りましたです! 私の口は親父の頭並みに固いですから!」

「なっ! 誰の頭が固いって!?」

「オメ―だって言ったじゃねーですか!」

「御二人とも、お静かに」


 再度怒鳴り合いが始まりそうな気配に、ユフィアが慌てて止めに入る。


(ダイジョブか、この2人)


 このドワーフ親子がホントに秘密を守ってくれるかどうか、果てしなく不安になる慎也だった。


「今日はシンヤ君とユイ君の防具を買おうと、こうして足を運んだわけだよ」

「そう言うことでやがりましたか。だったらお任せくださいです! ウィルさんに頼られるのは名誉ですから!」


 溌剌とした様子でケーナはぺったんこの胸を叩いた。ヨルグだけでなく、娘のケーナもウィルのことを尊敬し、敬っているらしい。


「それでお聞きしたいんですが、シンヤさんとユイさんはどういった戦闘スタイルを目指すつもりでいやがりますか?」

「えっと、オレは取りあえず魔法戦士で、武器は刀と銃かな」

「私は魔法使い志望だよ」


 素直に答えると、ケーナは若干、きょとんとした顔になった。


「ユイさんの魔法使いはともかく、シンヤさん、魔法銃を使えるんですか?」

「まだ初心者だけどね。ウィルさんに初心者用の銃をもらったし、一応<射撃>スキルは持ってるよ」

「へー、<射撃>とはまた珍しいスキルですね」

「珍しいのか?」

「そうっすね。たぶん、キアナの街の冒険者で持ってる人はいないと思いますよ。あっ! けど、魔法銃が使えるなら、あのガラクタが宝の持ち腐れにならなくて済むっす!」

「なっ、ガラクタとはなんだ!?」


 何故かヨルグが怒鳴り出した。


「ウチの馬鹿親父が、売れもしない――そもそも使える人間もいないのに魔法銃なんか作りやがったんですよ。しかも無駄に金を掛けて、高性能なものを。一応店頭には並べて見たものの、2年以上も売れずじまいで、結局倉庫にお蔵入りしたまんまなんす。けど、シンヤさんなら使えるかもしれねーです!」


 ケーナに言われて慎也は思い出した。ここに来る前、ウィルが言っていた。売れもしない魔法銃を置いている偏屈な武器屋がいる、と。


「けど、オレはまだほとんど戦ったこと無いから、使えるかどうか判らないぞ?」

「使えるようになったら、でいいです! うちは武具店にして鍛冶屋でもありますからね。せっかく作った武器が、使われもしねーでほったらかしになるってのは、正直我慢ならねーんですよ!」

「そういうもんか」

「そういうもんっす!」


 その後、慎也はヨルグに、結衣はケーナにそれぞれ採寸してもらい、身体付に合った衣服と防具を用意してもらうことになった。


 慎也が貰ったのは、まず、一見すると、あちこちに留め金が付いているだけの飾り気の無い黒い服だった。

 名前は『ストライク・スーツ』。特徴性の無い外見とは裏腹に、グリフォンと言う高位の魔獣の革と、防刃、防魔繊維を編み込んで作った非常に防御力の高い戦闘服で、各所に付いている留め金は、必要に応じて装甲や部品を付けたす為のものらしい。装甲を一切付けていないときは非常に動き易く、逆に装甲を最大限につけ足すと重騎士並みの防御力を発揮するという、非常に汎用性の高い防具だった。


 それに加えて、付けた者の力をアップさせる『力の腕輪』と、素早さをアップさせる『ユニコーン・ブーツ』という魔導具をセットで付けてくれた。


「ありがとうございます。なんか、凄く良いものをいただいて」

「構わねぇよ。ウィルさんの頼みだしな」


 慎也がいまいるのは、ヨルグの店の奥にある鍛冶場だった。鍛冶に使う金床や小槌、鋏などの様々な道具の他、恐らくは素材となるインゴットであろう多種多様な金属槐が並んでいる。

 ただ、さっきヨルグ自身が言っていた通り、鍛冶場の壁には人ひとり通れるくらいの大穴が開いており、隅っこに置かれているテーブルの脇には砕けた酒瓶の破片が散乱していた。


 たぶん、酒を飲んでテーブルに突っ伏して寝ていた所、ウィルの声を聞いて飛び起き、その際に飲んでいた酒瓶を落としたのだろう。最初に聞いた、なにかが砕ける音はそれだったに違いない。


 なお、いまここには慎也とヨルグしかいない。結衣は別の部屋でケーナに採寸してもらっているし、ウィルとユフィアは他に買うものがあると言って店を出た。終わったら迎えに来るらしい。


「なにせ、あの人がその刀をくれてやるくらいだ。相当期待されてんだろ?」

イクサこれですか?」


 ストライク・スーツの腰の金具に吊り下げた刀に手を置いて慎也は尋ねた。


「……お前さん、もしかして、その刀のこと、なにも聞いとらんのか?」

「名刀だって聞きましたけど、なにかあるんですか?」

「……なるほど。なにも聞いとらんのか。なら、わしからは話せんな。旦那には、なにか考えがあるんだろうさ」

「なんですかそれ、余計気になるじゃないですか」

「そのうち判る」

「ひょっとして、ただの刀じゃないとか?」

「ただの刀だ。()()()な。わしが言えるのはここまでだ」 


 そう言って、ヨルグは鍛冶場の片隅に置いてあった棚から酒瓶を1本取り出すと、コップも使わずに豪快に呷った。


「飲むか?」

「遠慮します」


 酒瓶を差し出して来たヨルグに慎也は光の速さで断りを入れた。

 15歳の慎也は当然ながら飲酒の経験は無いし、なにより厳ついドワーフのおっさんと間接キスする趣味は断じて無い。


「つれねぇ奴だな。酒くらい飲めねぇでどうする?」

「オレの世界……国では、酒は成人、20歳からしか飲めないんですよ。オレ、15なんで」

「この国じゃ、15で成人だぞ」

「マジッすか!?」


 ということは、慎也や結衣は既に大人ということだ。


「ま、その辺は追々、ウィルの旦那に教わるんだな」


 そう言って、ヨルグはまた酒瓶を呷る。本当に水みたいに飲んでいる。


「そう言えば、ヨルグさんとウィルさんはどういった関係なんですか?」


 これまでのやり取りや、ヨルグとケーナのウィルに対する態度から、単なる常連客では無いことは確かだ。


「ウィルの旦那は命の恩人だ」


 ヨルグは持っていた酒瓶をテーブルに置き、窓の外に目を向けた。


「元々わしらはヤマト王国の隣国――ヴァードナー王国って国の山奥に住んでたんだよ。ドワーフだけの、ちっぽけな村だった」

「……」

「村の近くには鉱山があってな。わしらは代々、そこで鉱夫として働いとった。ところがある日、役人が来て、わしらの村の鉱山を、国との共同で運営しないかと話を持ちかけて来やがった。国との共同経営となりゃ、鉱山の設備や規模を拡大させられる。しかも、その工事と資金提供は国側が持つ、って話だった。わしらにとっても得な話だ。そうなりゃ、仕事は楽になるし、わしらの懐も温かくなるからな。村人の多くは国との共同経営に賛成した。もちろん反対する奴もいたが、結局、多数決で国の協力を受け入れることになった。わしも賛成派だった」


 ぎゅっ、とヨルグの拳が強く握られたのに慎也は気付いた。


「ところが、鉱山の拡大工事中に崩落事故が起こってな。視察に来ていた国の偉いさんが何人か生き埋めになっちまった。明らかに向こうさんの欠陥工事が原因だったんだが、偉いさんを死なせた責任を負いたくなかったんだろうな。工事の責任者だった役人は、坑道が崩落は、鉱山の共同経営に反対したわしらドワーフが仕組んだことだということにしやがった」

「な、なんですかそれ!? 無茶苦茶じゃないですか!」

「無茶苦茶な話でも、国王に報告しちまえばそれまでだ。証拠も無いしな。わしらが嵌められたと気付いたのは、討伐軍が村を包囲した後だった。村は焼き尽くされ、女房はまだ幼かったケーナを庇って死んだ。わしは赤ん坊だったケーナを抱えてどうにか逃げ出して、行き倒れてたところを、通りかかったウィルの旦那に助けられたんだ」


 想像以上に重たい話に、慎也は言葉を失ってしまった。そんな慎也の心中など知らず、ヨルグの話は続いた。


「旦那は怪我をしたわしらを助けてくれたばかりか、お尋ね者になたわしら親子を匿い、この街へ連れて来てくれた。それだけじゃねぇ。領主に直談判して、この店で働けるように話を通してくれたんだ。おかげで細々とだが、親子2人でこうして平和に暮らしていけるようになった。まったく、あの人にゃ、一生この低い頭を上げらんねぇよ」

「……オレも同じですよ」


 もしユフィアに会わなかったら、ウィルに拾ってもらわなかったら、自分と結衣は勝手の判らないこの異世界で、野垂れ死にか魔物の餌になるしかなかった。そう言う意味では、ヨルグの気持ちを慎也はよく理解できた。


「わしとお前さんは、お互いウィルの旦那に拾われ、恩を受けた者同士だ。だから話した。わしはお前さんが異世界人だということは決してしゃべらん。だからお前も、いまの話は誰にも話すんじゃねぇぞ?」


 初対面の自分に、ずいぶんと重たい身の上話をするなと思いきや、信頼してくれたからだったようだ。

 ウィルが見込んで弟子に迎えるほどの男なら、自分も信頼に値する、と。


「了解です」


 この信頼は裏切れない。それはヨルグだけでなく、ウィルに対する裏切りにもなるからだ。

 それだけは絶対に出来ない。


「お前はあの人の弟子になったんだ。これからのお前の行いはすべて、ウィルの旦那の評価に繋がるってことを肝に銘じとけ。ウィルの旦那の顔と、わしくれてやった装備に泥を塗るような真似しやがったら、お前の頭をかち割って溶鉱炉の燃料にしてやるからな!? 覚えとけ!」

「オス、親方!」


 ヨルグの迫力に押された慎也は、思わずそんな返事を返してしまった。

防具名:ストライク・スーツ。

分類:鎧。

物理御力:100(装甲無し状態)

魔法防御力:120(装甲無し状態)

特殊効果:装甲の後付けが可能

グリフォンの革と防刃、防魔繊維を編み込んで作られたスーツ。あちこちに装甲を付けたす為の留め金が付いており、用途に応じた装甲を取り付けることで防御力の増減が可能となる。

モデルは同名のガン〇ム。


防具名:力の腕輪。

分類:腕輪。

特殊効果:筋力+20。

装備した者の筋力をアップさせる腕輪。


防具名:ユニコーン・ブーツ。

分類:靴。

特殊効果:敏捷+22。

幻獣ユニコーンの革を用いて作られた靴。装着した者の敏捷さをアップさせる他、蹴りの威力が高まる効果がある。


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