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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
天使の章
110/135

第105話 男同士の約束だ

慎也君の腕の行方は(*「・ω・)?

「では、村の脅威は取り除かれた、ということですか?」

「そう考えて良いだろう」


 安堵の表情を漏らすホルク村長に、イアンは頷いた。


 怪我人たちが集められた広場の片隅で、ホルクを初めとした数人の村人たちと騎士団団長のイアン。そして慎也が集まって現状と今後について話し合いを行っていた。

 腕を骨折したイアンはともかく、慎也はまだ自力では歩けないので、セリシエルに肩を貸してもらっている状態だが。


 ちなみに仲間の内、結衣はまだ魔力枯渇状態で動くことが出来ず、いくらか回復したユフィアは怪我人の治療を手伝っている。とは言え、魔法を使えるほど回復した訳ではないので、布や包帯を巻くなどの手作業が中心だったが。

 フェルナはまだ意識が戻らず、シアーシャも疲労がピークに達したのか、さっきから横になって眠っている。


 そもそも今回の騒動の発端は、ケミナ村が冒険者ギルドに出したオークの調査依頼だった。オークの集落自体は見つけた時点でアシュケロンが既に全滅させていた訳だが、今回の依頼はあくまで「調査」だったので、依頼に関してどうするか、依頼主である村長を交えて話し合った結果、依頼達成ということでケリが付いた。


 考えてみれば、ケミナ村にとってはかなり幸運な出来事だったと言える。

 

 村を脅かしていたオークの群れは事前に潰されていた。結果、村はオークの襲撃を免れ、討伐依頼を出さずに済んだ。


《ミズガルズ》の工作員が襲撃してきたこと自体はケミナ村とはまったく無関係な出来事だったが、彼らの狙いである慎也たち冒険者の一党と、さらに工作員たちを追ってきたイアンたち騎士団のおかげで怪我人こそ出たものの、犠牲者は出ずに済んだし、そのおかげ――と言うのはおかしいかもしれないが、冒険者一党と騎士団がたまたま村に居合わせてくれた為に、アシュケロンの襲撃という未曾有の危機に見舞われたにも関わらず被害を出さずに済んだのだから。


 慎也の言う通り、本来なら村は3回全滅していてもおかしくない事態だった。にも拘らず、偶然と幸運が重なったおかげで被害らしい被害も出さずに済んだ。

 豪運という他無い。


「判りました。では、調査依頼に関しては達成とさせていただきます。あと、荷馬車に関しては村の若い衆に集めさせていますが、恐らく7台か8台くらいは用意できるかと」

「それで充分だ。村の者たちには迷惑を掛けると思うが、怪我人を街まで運び終えたらすぐに返却するから、少しの間だけ我慢してくれ」

「そのお言葉だけで充分でございます。私たちがこうして生きていられるのは、皆様が身を挺して村を守って頂いた御蔭なのです。そのご恩を少しでも返せるなら、村人一同、どのような苦労も厭いません」


 村長の言葉に、その場にいた村人たちが頷いた。


「そう言ってもらえると助かる」


 村人たちの心意気に、イアンも笑みを浮かべて言った。


「しかし、皆様の怪我の具合が心配です。特にシンヤさんは腕を……」

「気にしないで下さい。村長さんのせいじゃありませんから」


 と、慎也は相変わらず自身の腕のことを歯牙にもかけていない調子で言った。


「あ、そうそう、忘れていた」


 それを聞いていたイアンが、なにかを思い出したように呟いた。


「シンヤ。お前の腕、もしかしたら治せるかもしれないぞ」

「え?」


 夢想だにしていなかった言葉に、慎也は呆けたような声を漏らした。


「どういうことですか?」

「切断されたその腕を、再生させられるかもしれない、ということだ」

「本当に!?」


 慎也以上に反応したのはセリシエルだった。彼が腕を失ったのは迂闊な行動をした自分を庇ったことが原因だったので、当人以上にそのことを気にしていた。


「確実とは言えない。あくまで可能性がある、という程度だがな。治せるのなら治したいだろ?」

「それはそうですけど、どうやって治すんですか?」


 ユフィアも回復系の魔法に長けているが、失った手足を再生させることは不可能だ、と断言していた。慎也自身、腕のことはすっぱり諦めていただけに、思わぬ可能性に嬉しさよりも困惑の方が大きかった。


「私の知り合いにエンキという医師がいる。キアナの街で大怪我専門の医療院を開いているんだが、彼なら治せるかもしれない」

「医師、ですか? 手足の欠損って、街医者に治せるもんなんですか?」

「まさか。欠損した手足を再生させること自体は不可能じゃない。だが、それが可能なのは最上級回復魔法の使い手や、神聖魔法を極めたごく一部の神官だけだ。どちらも国中探しても数えるほどしかいないし、そもそも使用するには希少な触媒を必要としたり、使用できる時期などが限られている。普通の冒険者に施してもらえることはまず無い」

「だったら――」

「だが、いつの世も不可能に挑戦し続けるチャレンジャーはいるものさ。その1人が、エンキだ」


 肩を竦めてイアンは続ける。


「彼は長年の研究の末、魔法無しで欠損を修復することの出来る魔法薬の開発に成功したらしい」

「それって凄いことじゃないんですか?」

「もちろんさ。ただ、私も詳しくは知らないんだが、相応のリスクも存在しているらく、おいそれとは使用できない、と言っていた。なので、その魔法薬自体は一般には出回っていないそうだ」

「リスク、ですか……」


『薬』を反対から読むと『リスク』という言葉になる。

 病気や怪我を治すのに必要不可欠な薬にも、強い効き目を持つものほど相応のリスクが存在するのはこの世界でも同じらしい。


「けど、そんなものを見ず知らずのオレなんかに使ってもらえるんですか?」

「それは問題無いと思う。実は私は彼に1つ貸しがあってな。それと引き換えと言えば、嫌とは言わないだろう」

「貸し、ですか? ひょっとして、さっき『ご褒美』って言ってたのは……」

「そういうことだ。受けるかどうかは君次第だが、どうする?」


 改めてイアンに問われるが、そもそも選択肢など無い。


「そりゃ受けますよ」

「じゃあ、決まりだな」

「けど、そんな凄い魔法薬を開発した造った人が、こう言っちゃなんですけど、どうしてキアナの街で医療院なんかやってるんですか? それだけ優秀なら、国の研究機関とかがほっとかないと思うんですけど」

「……まあ、優秀な医者には変わり者が多い、ということさ」


 珍しく誤魔化すような曖昧な口調でイアンが言った。それから怪我をした部下たちを見回して――


「お前たちも、街へ戻ったら全員エンキに診てもらうからな!」


 大怪我専門の医師だというなら当然そうなるだろうが、何故かそれを聞いた途端、騎士たちの間に悲鳴じみた声が上がった。


「だ、団長! 自分の怪我は大したことありません! なので、わざわざ診てもらう必要はありません!」

「ダメだ。念の為に全員検査してもらう」

「こんな怪我は魔法薬を飲めばすぐに治ります! だからどうか、エンキ先生の診察だけは――」

「魔法薬1本がいくらすると思ってるんだ? 診察してもらった方がずっと安上がりだろう?」

「団長、自分、エンキ先生のお世話になるのは今年で3回目なんです! こ、今度先生のお手を煩わせたら、お、お、おおぉぉぉぉ……」

「それは災難だったな、ビリー。諦めろ」


 何故か顔面蒼白でこの世の終わりのような悲壮な叫びを上げる騎士たちの懇願を、イアンは無情に却下した。


「な、なんだ?」


 騎士たちのただならぬ雰囲気に、慎也は首を傾げるしかなかった。


 ◇◇◇


「あ、慎也君、セリスちゃん、おかえりー」

「お帰りなさいです。お話し終わったんですか?」


 村長たちとの話し合いを終えて戻って来た慎也とセリシエルを、結衣とユフィアが笑顔で迎えた。


「ああ、終わった……って、フェルナ! 目が覚めたのか?」


 そこには、話し合いに向かう前は意識の無かったフェルナがいた。どうやら慎也たちが話し合っている間に意識を取り戻したらしい。


「はい、ついさっき。事情はユイさんとユフィアさんから伺いました」


 フェルナは結衣と同じくアシュケロンとの戦いの最中に気を失った為、目覚めた時にちょっとしたパニックを起こしたそうだが、結衣とユフィアに、気を失っている間にアシュケロンが倒されて村に引き上げてきたことを聞かされ、すぐに落ち着いたらしい。


「あたしも起きてるよー」


 うーっ、と背伸びしながらシアーシャが答える。彼女も話し合いに行く前は疲れて寝ていたはずだったのだが……


「っていうか、騎士の人たちが大声で騒いだせいで起こされちゃったのよ」

「なんか叫んでましたけど、なにかあったんですか?」


 安眠妨害されて不機嫌にぼやくシアーシャの隣で、首を傾げたユフィアが尋ねた。


「ああ、そのことなんだけど」

「ビッグニュースなんだよ!」


 言いかけた慎也の言葉を掻き消すようにしてセリシエルが歓喜の声を上げた。


「シンヤの腕が治るかもしれない、って!」

「ホントですか!?」


 真っ先に声を上げたのはユフィアだった。


「無くなった腕を治せるの? どうやって? 魔法?」


 結衣も興味深気に尋ねる。慎也の腕が治るかもしれないというのは素直に嬉しいが、やはりその方法が気になるらしい。


「エンキっていうお医者さんなら治せるかも、って言ってたんだよ!」

「ひッ!」

「ぅえっ!?」


 エンキという名前を聞いた途端、何故かフェルナとシアーシャが息を飲んで後退った。


「誰ですか、そのエンキ、っていう人は?」

「私も知らないよ?」


 一方でユフィアと結衣は心当たりが無いらしく、はてな顔だ。


「キアナの街で医療院を開いてる医師らしい。オレも聞いたこと無いな。あと、オレを含めて怪我をした奴は全員、街へ戻ったらその人に診てもらうそうだ」

「……なるほど。だから騎士の連中、悲鳴を上げてたんだ」

「当然ね」


 どうやらシアーシャとフェルナはエンキ医師を知っているらしい。2人の顔には恐怖と同情が入混じったなんとも言えない表情が浮かんでいる。


「御二人は知ってるんですか? そのエンキという人を知ってらっしゃるんですか?」

「っていうか、逆にみんなが知らないことがびっくりよ!」


 不思議顔で尋ねてきたユフィアに、シアーシャは信じられないと言った様子で言った。


「え? 有名なんですか?」

「少なくともキアナの街じゃ、知る人ぞ知る、って感じよ?」

「大怪我専門の医師ですから、冒険者でお世話になった人も多いですよ? 私も一度だけお世話になった……ことが……あり、ます……」


 2人して語るが、フェルナは何故かセリフの後の方が小声になっていき、最後の方はほとんど聞き取れなかった。顔色が病気じゃないかというくらい真っ青になっている。


「全然知りませんでした」

「私たち、いままで大きな怪我とかしたことなかったもんね」


 自分たちだけが知らなかった事実に落ち込むユフィアを、結衣が慰めるように言った。

 確かに、慎也たちはこれまで怪我らしい怪我をしたことがなかった。

一度だけ、ゴブリン・エンペラーとの戦いで慎也が致命傷を負ったことがあったが、その際は愛刀であるイクサの能力が解放されたお蔭で奇跡的に全快することが出来た。

 細々とした怪我なら何度か負ったが、いずれもユフィアの回復魔法でどうにかなる範囲だった。


「まあ、シンヤたちは冒険者になったのはつい最近だし、ユフィアちゃんは元々森に住んでたし、自前で回復魔法が使えるから、知らないのも別に不思議じゃないかな?」


 魔法使いの冒険者はそれなりにいるが、中でも回復魔法の使い手は割と少数なのだ。《槍穹(そうきゅう)の翼》のように魔法使いが1人もいないパーティも珍しくない。慎也たちのように魔法剣士2人を含め、全員が魔法を使えるパーティというのは異例なのだ。


「ちなみにその人って、医師としての腕は確かなのか?」

「もちろんよ。とっても腕の立つ……もとい、腕の良い医師よ」


 慎也の質問にシアーシャは途中で言い直しながらもそう断言した。

 何故か表情は引き攣っていたが……


「エンキ先生に診てもらった人は、その後、二度と大怪我をしなくなる、って言われています」


 と、フェルナが付け加えたが、一度見てもらったら二度と大怪我をしなくなる、というのはどういう意味なのか。


「まあ、診てもらえば判るわよ」


 シアーシャがそう言って半ば強引に話を締めくくった。これから診てもらう慎也としてはもっと知っておきたかったのだが。


(まあ、腕を治してもらえるなら、たとえどんな相手でも行くしかないんだけどな)


 その後、村人たちが掻き集めてくれた8台の荷馬車に、慎也を初めとした怪我人を乗せ始めた所で、20人ほどの騎士たちが騎馬で駆けつけて来た。

 前日、イアンが冒険者ギルドでの現場検証の最中、部下や《槍穹(そうきゅう)の翼》と共に飛び出して行ったまま戻らず、連絡も無いことを心配した彼の部下たちが自らの判断で駆けつけて来たのだ。


 団長を含めた仲間たちの惨憺たる有様に驚いた彼らであったが、事情を理解すると手分けして負傷者の収容を手伝い、そのまま御者を務めることになった。村人たちに街まで送ってもらうつもりであったイアンたちとしてはありがたかった。


 そして彼らは、イアンが街を発つ前に命じていた、例の盗賊団の生き残りであるテイマーに対する尋問の結果も持ってきていた。


 テイマーの供述によれば、襲った密輸業者の馬車は全部で3台。その内、1台は盗賊たちが襲撃を仕掛けた際にトロルによって破壊され、もう1台は慌てて逃げようとして崖下の川に転落したということだった。

 その後、護衛を殲滅した盗賊たちは生き残った者たちと戦利品を残った最後の馬車に詰め込んでその場を後にした。最初に破壊した馬車に積まれていた荷はすべて回収したが、崖から転落した馬車に関してはそのまま放置したそうだ。


 盗賊団を殲滅した時に慎也たちもテイマーを尋問して襲撃の経緯などを聞いていたが、そこまで詳しくは聞いていなかった。


「まあ、盗賊たちが崖から川に転落した馬車をわざわざ捜索する訳がないからな」


 報告を受けたイアンが嘆息交じりに言った。


「その馬車にアシュケロンの蛹が積まれていた、ってことですね」


 傍で一緒に報告を聞いていた慎也がそう結論付けた。回復薬が効いてきたのか、ようやく自力で歩けるまでに体調が戻ってきた。


「そう言うことだろう。ったく、犯罪者同士のいざこざのせいでこっちは大迷惑だ」


 と、イアンは忌々し気に吐き捨てる。それに関しては慎也もまったく同感だった。


(だが気がかりなのは、今回の事件を誘発したケイドとかいう男だ)


 慎也が事前にテイマーに聞いた内容では、そもそも盗賊団に密輸業者の隊列を襲うようにけし掛けたのはそのケイドという男だった。


(盗賊の話じゃ、ケイドって奴は密輸業者たちの動向を事前に把握していたとみて間違い無い。ってことは、アシュケロンの蛹のことも知ってたのか?)


 頭を捻るも結論は出ない。というか、ケイドという男の行動心理が謎過ぎて目論見がまったく想像できない、というのが慎也の本音だった。


(いずれにせよ終わったことだし、その後の調査は騎士団や憲兵の仕事だ)


 ひとまず報告はそれまでということになり、そろそろ街へ出発することになったのでその場は解散し、慎也は仲間たちが乗っている荷馬車へと向かった。

 既に他の怪我人たちは荷馬車に乗せられており、後は慎也の搭乗を待って出発するだけとなっている。当然ながら、気絶したままの《ミズガルズ》の工作員であるボルドも騎士の見張り付きで荷馬車に乗せられていた。


「兄ちゃん!」


 馬車に乗り込もうとしたところで背後からの呼び声に振り返ると、リュンとユピィの2人が荷馬車に駆け寄って来た。その後にはヒューゴや村長たちの姿もある。


「お兄ちゃん、お姉ちゃんたち、これあげる!」


 そう言ってルピィが差し出して来たのは、宝石のような綺麗な青い石だった。全部で6つある。


「わたしの宝物なの!」

「え? いいの?」


 宝物をくれるというルピィに、結衣が遠慮がちに尋ねた。


「うん。村を守ってくれたお礼なの!」


 無邪気な笑顔でルピィは頷いた。


「これは輝青石ってもので、魔力を通すと輝く性質を持った石なんですよ。この辺じゃ、川辺なんかによく転がってます。魔灯みたいな魔導具の材料に使われることもありますが、ここらで採れるサイズじゃ、せいぜいお守りくらいにしかなりませんけどね」


 父親であるヒューゴがそう説明してくれた。

 ちなみに魔灯というのは、地球で言うところの懐中電灯のような魔導具で、主に暗がりでの光源として広く用いられている。


「ありがとう。大事にするね」


 結衣がルピィから輝青石を受け取って、それを慎也、ユフィア、セリシエル、フェルナ、シアーシャへと渡した。


「わー、ホントに光るんだよ!」

「綺麗ですね」


 さっそくセリシエルとユフィアが手の平に乗せた輝青石に魔力を流すと、ヒューゴの言う通り石が青く輝き出した。


「バ〇スって唱えたくなるね」

「いや、唱えちゃダメだろ?」


 楽し気に某有名映画の唱えちゃいけない呪文を口ずさむ結衣に、慎也がツッコミを入れた。

 そう言いながらも、慎也も手の上で輝く輝青石の光に見入っていた。


(冒険者ってのは、依頼を果たして報酬をもらってハイ終わり、って仕事だけど、報酬よりもこう言う贈り物の方がジンと来るな)


 冒険者としての優劣を決めるのは、強さでも、名声でも、熟した依頼の数でもない。感謝された数だ――というウィルの言葉を改めて実感した慎也は、村を守れて本当に良かった、と改めて感じた。


「兄ちゃん、その腕、治るんだよね?」


 今度は兄のリュンが聞いてきた。


「たぶん、な」


 イアンは「治るかもしれない」と言われただけで断言はしなかったが。


「治ったら、冒険者を続けるんでしょ?」

「そりゃもちろん」


 冒険者を続ける為に腕を治すのだから当たり前だ。


「だったらオレ、大きくなったら冒険者になるよ!」


 決意に満ちた表情でリュンはそう断言した。


「兄ちゃんたちみたいに、誰かの為に身体を張って戦える人間になる。強くなって、立派な冒険者になってみせる。だから、オレが大きくなって冒険者になったら、兄ちゃんたちの仲間にして欲しい」


 リュンの真摯なお願いに、慎也は一瞬、柄にもなくきょとんとしてしまった。

 というのも、慎也たちは冒険者としてはまだまだ駆け出しで、ランクも6級と下級に属する。なにより、ウィルのような冒険者の頂点とも言える存在を目の当たりにし、それを目指してがむしゃらに、それこそ上ばかり見てここまで来た。なので、他者から上に見られるというのは初めての経験だったのだ。

 そういう意味では、リュンは慎也がこの世界に来て初めて出来た後輩、ということになる。

ならば、先輩として出来ることは1つしかない。


「判った。オレもそれまでにもっと腕を磨いておくから、必ず追いついて来い」

「うん! 約束だよ!」

「ああ、男同士の約束だ」


 後輩に誇れる先輩であり続けること――

 

 リュンと握手を交わした後、慎也たちは村人たちに見送られてケミナ村を後にした。


 こうして盗賊退治から始まった騒動は幕を閉じた……かに見えた。

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