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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
天使の章
108/135

第103話 この経験値の量はおかしい

不吉な予感が……(>_<)


 アシュケロンが「花火」になったのを見届けた後、慎也とセリシエルはすぐさまイアンたちの元へと取って返した。


「終わりました」

「ただいまー、なんだよ」

「ああ、確認した。ご苦労だったな」

「お疲れ様です、シンヤさん、セリスさん」


 アシュケロンの「花火」は当然地上からも見えていたらしく、詳しく話す前にイアンとユフィアがそう言ってきた。

 ちなみに、この2人以外の者は気絶しているか、話す気力も無いほど消耗しきっているらしい。

 実際、結衣とフェルナは気を失っているし、シアーシャは近くの岩陰でへたり込んでいた。

 かく言うイアンも骨折した右腕を当て木を添えて布で吊るしているし、ユフィアも深い疲労感が隠すまでもなく表情に現れている。

 慎也自身、血を流し過ぎて立っているのも辛かったので、近くにあった岩の上に腰を下ろしていた。


「魔爆珠を使ったのか?」


 どうやらイアンもさっきの爆発がナヴェットの魔爆珠によるものだと気付いているらしい。


「ええ。奴の口の中に放り込んでやりましたよ。爆発の規模が未知数だったので、地上で使うとヤバいかもしれないので、空中に誘き寄せてから使った方が良いと思いまして」

「その判断は正解だったな。あんなものが地上で炸裂していたら、と考えるとゾッとするよ」

「同感です」


 1歩間違えばケミナ村が吹っ飛んでいたと思うと、慎也は改めて<共有無限収納>を用いた自身の判断が2重の意味で大正解だったと痛感した。


「ところで、気付いてるか?」

「なにがです?」


 唐突にイアンに聞かれて、慎也は小首を傾げた。


「経験値だ。アシュケロンが死んで、その経験値が加算されているだろう?」

「ああ、そういえば……って、なんですか、これ!?」


 自身のステータスを確認した慎也が驚きの声を漏らした。

 何故なら、自身のレベルが30から一気に33まで上がっていたからだ。各ステータスも軒並み上昇している。


「わっ、私のレベルも上がってるんだよ!」

「私もです」


 セリシエルも驚きの声を上げた。彼女のレベルもまた、30から32まで上昇している。

 ユフィアのレベルも29から31へ上がっていた。そして結衣のレベルを確認してみると、やはり27から29へと上昇していた。

 単純に考えれば喜ぶべきことなのだが、慎也やイアンの表情には喜びでは無く驚愕と困惑が浮かんでいた。


「私のレベルも2つほど上がっている。部下たちも確認させたが、全員のレベルが2つか3つ上昇しているようだ。いくらアシュケロンが高レベルだったとはいえ、この経験値の量はおかしい」


 今回のレベルアップの原因は間違い無くアシュケロンを討伐したことによるものだろうが、いくらレベル48の怪物とはいえ、この経験値の量は異常だった。以前戦った、レベル46のゴブリン・エンペラーに比べても遥かに多い。


「やっぱり、人造魔獣だからでしょうか?」


 ユフィアが呟くように言った。

 心当たりがあるとすれば、アシュケロンが自然に生まれた魔物ではなく、人工的に生み出された魔獣であることくらいしか無かった。無論、それは守護者(ガーディアン)であるゴブリン・エンペラーも同じなのだが、後者は古代人が生み出したものなのに対し、前者は現代の技術によって造り出された、という違いがある。

 しかもアシュケロンは、殺した人間や魔物のステータスやスキルを奪う、というふざけた能力まで持っていた。


「私もそう思う」


 ユフィアの推測に、イアンも同意した。


「最初に奴が人工的に造り出された魔獣と聞いた時、私はてっきり、《ミズガルズ》がそれらを従魔として使う用途で造ったのだ、と考えていたんだが、別の可能性もあり得るかもしれない」

「と、言うと?」

「例えば、経験値が異常に多い魔物を造り出し、繁殖させ、それを殺してレベルを上げる、とか」

「養殖パワーレベリングですか? けど、この経験値ならあり得ないとは言えませんね」


 イアンの推測に、慎也は思案顔で頷いた。


「でもでも、いくら経験値が多くても、あんなに強い魔物が相手じゃ命がいくつあっても足りないと思うんだよ」


 セリシエルが異議を挟んできた。

 確かに彼女の言うことにも一理ある。確かに経験値が多いのは魅力的だが、魔物が強すぎては意味が無い。


「あるいは、従魔としての戦力目的とパワーレベリングの為の経験値目的。それぞれ異なる用途の魔獣を作り出す過程で生み出された実験体だったのかもな」


 先程モークを尋問した際、彼はアシュケロンのことを「実験用の魔獣」と称していたのをイアンは思い出した。

 他にも、成長が早い、とか、その分短命で10日も掛からず死ぬ、とも言っていたことも。

 それらの事実を慎也たちに話すと、彼も難しい顔で唸った。


「つまり、強くて倒しにくい魔獣と、弱いけど経験値の多い魔獣――2種類の人造魔獣を生み出す過程で実験的に造られたのがアシュケロンだと?」

「そういうことだ。強さと膨大な経験値を兼ね備えた魔獣。あくまで推測だがな」


 慎也の説明にイアンは肩を竦めたが、たぶん高確率で当たってるだろうな、と慎也は内心で思った。


 短時間で成長する強力な魔獣と、膨大な経験値を有する魔獣。

 もしそんなものが人の手で製造可能だとすれば、手を出す者は多いはずだ。


「だが、ここで私たちがあれこれ推測していても始まらん。この件は後で伯爵に報告するとして、いまは私たち自身のことを考えようか」

「……そうっすね」


 イアンの言う通り、こう言う問題は専門分野の人間に任せるのが1番だ。それよりも、差し当たって考えなければならないことがある。

 すなわち、これからどうするか、だ。


「取りあえずケミナ村へ戻らなきゃいけないんでしょうけど、怪我人が多すぎますね」


 ざっとその場を見た慎也は、ため息交じりに言った。


 いまこの場にいる20人余りの内、半数以上が自力で歩けないほどの大怪我を負っているか、意識を失っている。結衣とフェルナも気を失ったままだし、シアーシャも怪我と疲労で立つ気力も無い状態だ。


 自力で立てる者たちも、正直、立っているのがやっとの状態だった。イアンは腕を骨折しているし、ユフィアは魔力欠乏症を起こし、杖に寄りかかってどうにか立っている。

 一番重傷なのは右腕切断に出血多量の慎也で、逆に一番元気なのはセリシエルだ。いままともに動けるのは彼女だけだった。


「君……セリシエルという名前だったか?」

「なーに?」


 イアンがセリシエルに名前を尋ねるのを見て、そういえばまだちゃんと紹介していなかった、と慎也はいまさらながら思い出した。


「すまないが、ケミナ村へ行って、村長や村人たちに魔物は討伐したからもう大丈夫だ、と伝えて来てくれないか。それと、怪我人が大勢いるので人手を寄越してほしい、と」


 イアンの言葉を聞いて、なるほど、と慎也は内心で頷いた。

 アシュケロンは討伐し、ケミナ村の危機は去った。なのでもう避難しなくても大丈夫だ。そして自分たちは怪我人だらけで身動きが取れない。なら、村人の手を借りるしかない。


 セリシエルは慎也の方を見たが、彼が頷くと「判ったんだよ!」と言い残して村の方へと飛んでいった。


「それにしても、天使族なんてどこで見つけて来たんだ?」


 セリシエルが飛び去った方を見ながら、イアンは慎也に尋ねた。


「オレらもよく判らないんです。記憶を失った状態で森に迷い込んでたのを保護しただけですから」

「記憶が無いのか?」

「ええ。自分の名前以外の過去が白紙状態みたいです。ステータスで確認しましたから間違いありません。まあ、オレたちも似たような境遇なんでほっとけなかったんです。幸いレベルも高いし戦闘系のスキルも多かったんで、記憶が戻るか身元が判るまで一緒に冒険者をしよう、ってことになって」


 慎也は、セリシエルのことをイアンに説明するに当たって、転移魔法で自分たちの目の前に現れたことや、精神操作されていたこと、ステータスがおかしなことになっているなどの事情は伏せた。

 ちなみにイアンには、自分や結衣が異世界人だということは話してある。


「ふむ……だが、記憶を無くしているにしては、ずいぶんと前向きだったな」

「最初からあんな感じでしたけどね」


 最初にセリシエルが目覚めた時のことを思い出して、慎也は苦笑気味に言った。

 記憶喪失にも拘らず、ご飯を催促したり、喜んで飛び跳ねたりと、本当に子供のような感じだった。

 あの陽だまりの様な笑顔を守ることが出来たのだから、腕の1本くらいは安い物だ、と本気で思えてしまう。


「まあ、本人の性格もあるだろうが、それ以上に、君らのことを信頼しているからだろう。でなければ、記憶が無い状態であんなに前向きにはなれないさ」

「それは……そうかもしれませんね」


 そう言われて慎也は思い出した。自分たちがこの世界にやって来た直後のことを。

 突然、なんの前触れも無く異世界に放り込まれたと判った時は、不安でたまらなかった。それを思うと、セリシエルのあの無邪気さは生来の性格であると同時に、自分たちへの信頼の証しなのかもしれない。


「ま、大事にしてやれ」

「そのつもりです」


 慎也が答えると、イアンは彼の肩をポンポンと叩いた後、部下たちの様子を見る為に向こうへ歩いていった。


「シンヤさん、回復薬(ポーション)です。一応、飲んでおいてください」


 ユフィアが慎也に回復薬(ポーション)の小瓶を差し出して来た。片腕の無い慎也には蓋が開けられないので、親切に開けてくれている。


「ありがと。ユフィアは大丈夫なのか?」

「はい。私も魔力回復薬(マナ・ポーション)を飲みましたから」


 魔力回復薬(マナ・ポーション)のおかげか、ユフィアの顔色は先ほどよりも幾分マシになっていた。MPゲージも少しずつ回復している。


「結衣はどうだ?」

「まだ気を失ったままです。しばらくは目を覚まさないと思います」


 ユフィアと違い、結衣はアシュケロンとの戦いで限界以上に魔法を使い、重度の魔力欠乏症で気を失ってしまった。気絶したままでは魔力回復薬(マナ・ポーション)も飲めないので、自然に魔力が回復するのを待つしかない。


「ユフィアちゃ~ん、回復薬(ポーション)余ってたら私にもちょうだーい。あたしらの持ってた回復薬(ポーション)、全部割れちゃって……」


 シアーシャが疲れ果てた声で懇願してきた。彼女も疲労困憊な様子で、近くの岩に持たれて地面に座り込んだままだ。

 シアーシャは慎也たちとは違い、<共有無限収納>やアイテム・ボックスといった便利なスキルや道具は持っておらず、手持ちの鞄に回復薬(ポーション)を入れて持ち運んでいた為、アシュケロンとの戦いで全滅してしまったらしい。


「あ、はい。どうぞ」

「ありがとー……」


 ユフィアが<共有無限収納>から取り出した予備の回復薬(ポーション)を差し出すと、シアーシャは力の無い手つきで受け取り、一気に飲み干した。


「フェルナは大丈夫なのか?」

「こっちもまだ気絶中」


 シアーシャの相棒であるフェルナもまた、アシュケロンとの戦いの最中、尾で一撃されて気を失ったままだった。


「私が回復魔法を掛けてあげられれば良かったんですけど……」


 残念そうにユフィアが言う。彼女の魔力はまだ魔法を使えるほど回復していない。


「大丈夫よ、ユフィアちゃん。フェルナはこう見えて頑丈だから。無理してユフィアちゃんまで倒れたら元も子もないから」


 健気なユフィアに、シアーシャは笑って言った。さらに慎也の方をちら、っと見て<悪戯っぽい笑みを浮かべた。


「けど、王子様がキスしてくれたら目が覚めるかも」


 疲れていても減らず口なシアーシャに――


「どうでも良いけど、さっき飲んだ回復薬(ポーション)の代金は利子付けて返せよ」

「ちょ、ちょっと、そりゃ無いでしょ~」


 自分たちの分の回復薬(ポーション)が全滅して買い直さなきゃならないのを判っていながら容赦無く追い打ちを掛ける慎也に、シアーシャは情けない声で唸った。釣られてユフィアも笑い、ようやく一件落着したという実感が沸いて来た。


(それにしても、結局あのアシュケロンってのはなんだったんだろうな……)


 ユフィアからもらったポーションを呷りながら、慎也は考えた。


(人造魔獣……人間が人工的に造り出した魔物。テロリストみたいな奴らにあんなのをポンポン造られたらたまったもんじゃないぞ)


 アシュケロンが大群となって町や村を襲う光景を思い浮かべて、慎也は慌てて頭を振って縁起でもないイメージを振り払った。


(なにより妙なのは習得できた経験値だな。ゴブリン・エンペラーに比べても異常に多かったし。まあ、お蔭で一気にレベルアップできた訳だが…………ん?)


 そこまで考えて、慎也はふと、妙な胸騒ぎを感じた。


(……短時間でレベルアップ?)


 ついさっき思考でなぞった言葉に、言いし得ぬ不吉を覚えた。


(そうだ、おかしいぞ! アシュケロンはどうして、レベルが48もあったんだ!?)


 どくん、と慎也は自身の心臓がひと際大きい鼓動を発したのを感じた。


 そう、おかしいのはそこだった。

 さっきのイアンの話では、アシュケロンは元々蛹の状態で《ミズガルズ》の研究所から盗み出された。そして仮死状態で封印されたまま密輸業者によって運ばれている最中、詳細はまだ不明だが、慎也たちが討伐したあの盗賊団に襲撃され、その際に封印が解かれて活動を再開したらしい、ということだ。


(あの盗賊団をフェルナたちが最初に見つけた時は、例の襲撃された密輸業者の馬車は無かった、と言っていた。それから2人がキアナに戻り、オレたちと一緒に再度アジトを訪れた時には馬車はあった。ってことは、あの盗賊団が密輸業者を襲撃し、アシュケロンが目覚めてから今日まで、5日ほどしか経っていないことになる)


 状況と時間、そしてアシュケロンの巨体と強さを改めて比較して、慎也は戦慄した。


(たったそれだけの時間で、どうやったらあれだけ成長出来るんだ!?)


 話によれば、アシュケロンの蛹は壺に封印されていたという。つまり、最初は壺に収まるくらい小さいサイズだったのが、僅か5日で恐竜サイズまで巨大化した、ということになる。


(なによりおかしいのはレベルだ。蛹だった、ってことは、それ以前は幼虫だった、ってことだろ? どんな姿をしていたかはさておき、壺に収まる程度の小さい幼虫が高レベルな訳がない)


 昆虫系の魔物は、大抵の場合、身体が大きいほど強くなる傾向がある。身体が大きければ自分よりも小さいサイズの生物を捕食できるのに対し、小さいものは力も弱く、簡単に捕食されてしまうから。


 幼虫から蛹へ、そして成虫へと形態変化するタイプの魔物も多いが、幼虫の形態ではサイズもレベルも大したことはない。中には、幼虫形態で既に人間よりも大きいサイズの魔物もいるが、それでもレベル10を超えるものはまずいない。


 その常識に当てはめて考えると、アシュケロンのレベルは明らかに異常だった。


(幼虫の状態でレベル48だったのか? それとも、目覚めてからわずか5日ほどであそこまでレベルアップしたのか?)


 どちらにしても異常だったが、恐らく後者の方が可能性としては高いだろう、と慎也は考えた。壺に収まるサイズの小型の魔物。しかも幼虫の状態でそれ程レベルを上げるのは至難だし、意味も無いはずだ。


貪り喰らう血命(ブラッド・ドレイン)>などというチートレベルのスキルを持っている以上、確実とは言えないが。

 

(だが普通に考えて、マナクレイの森に生息している魔物から得られる経験値で、僅か数日でレベルを48まで上げるなんて不可能だ)


 なにしろ慎也自身、マナクレイの森で戦い続けた結果、レベル1から30になるまで2年以上掛かったのだ。

 蛹になる前のアシュケロンのレベルがどれほどだったかは知らないが、普通に考えればマナクレイの森の魔物を狩って、僅か数日の短い時間でレベル48まで上げるなど不可能だ。


(だがもしも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()としたら?)


 慎也は考えた。

 例え得られる経験値が同じでも、その者のレベルを上げる際に必要な経験値が少なくて済むなら、それだけ短い時間でレベルが上げられるということだ。

 経験値を100ポイント稼がなければレベルアップしない者くらべ、10ポイント稼げばレベルアップできる者の成長速度が早いのは当然だ。

 そして実際に、種族によってレベルアップに必要な経験値が違う、とウィルは言っていた。人間に比べて長命なエルフなどは、レベルアップに必要な経験値が極端に多く、成長速度が遅い、と。


(アシュケロンは、膨大な経験値を有すると同時に、少ない経験値でレベルアップ出来る特性も備えるように造られていたとすれば、短時間で急激に成長したことも頷ける)


 習得経験値の少なさと<貪り喰らう血命(ブラッド・ドレイン)>によるステータス吸収を合わせれば、短時間でとんでもなく強くなるのも道理だ。

 今回はどうにか倒せたが、もしも遭遇するのが1日遅かったら、自分たちは皆殺しにされていたかもしれない。


 驚異的な特性であり、恐ろしい能力ではあるが、慎也の不安を掻き立てたのは別の事実だった。

 通常よりも少ない経験値でレベルアップする特性というものを、慎也はごく最近、直にその眼で見たことがあった。


(セリシエルのステータス――)


 そう、セリシエルのステータス異常だ。


 各パラメーターにかかっていた補正――

 詳細不明なスキルや称号――

 そして、異常に少ない経験値――


 天使族はエルフに並ぶほど長命な種族。故にレベルアップに必要な経験値も人間とは比べ物にならないほど多い。にも拘らず、セリシエルは16歳という若さでレベルが30もあり、習得していた経験値も慎也のそれと大差無かった。

 現にさっきも、アシュケロンを倒したことでレベルが2つも上がっていた。


 他の天使族よりも遥かに少ない経験値でレベルアップが可能、という彼女の特性は、アシュケロンのそれと同じではないのか……


(まさか……セリシエルのステータスがおかしいのは――)

「シンヤさん?」

「ッ!?」


 自分を呼ぶ声に、慎也は咄嗟に思考を中断してそちらへ目を向けた。不思議そうな顔で覗き込むユフィアと目が合った。


「どうしたんですか? 難しい顔してましたけど?」

「いや、なんでもない。ちょっと疲れただけだ」


 聞かれて慎也は咄嗟に誤魔化した。


「そうですか? 気分が悪かったらすぐに言って下さいね。シンヤさんが一番重傷なんですから」

「ああ、そうさせてもらうよ。ありがとう」


 心配してくれるユフィアに礼を述べる。


(考えすぎかもしれない。少なくとも、いまの段階ではなんの証拠も根拠も無い憶測に過ぎない。悪戯に口外したら不安や混乱を招くことになりかねない)


 慎也は自分自身にそう言い聞かせ、事がはっきりするまで、いま考えていたことは自分の胸にしまうことを決意した。


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