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異界の刀銃使い  作者: 太公望姜子牙
天使の章
101/135

第96話 ベルカ復権派とも言う

結果良ければすべて良し、という訳には行かないのです(´・ω・`)

「――と、言う訳だ」


 そう言って、イアンは自分がケミナ村へやって来た経緯の説明を締めくくった。


「なるほど、そう言うことだったのか」


 イアンの話を聞いて、慎也は納得気に頷いた。


「あの時の、盗賊討伐の依頼書からオレたちのことを割り出したのか」

「だからフェルナさんとシアさんのことは知っていたのに、セリスさんのことは知らなかったんですね」

「あの時はまだ、セリスちゃんはいなかったもんね」


 ユフィアと結衣も納得した様だった。

 そう、ナヴェットは慎也たちの武器や特徴の他、彼らが《槍穹の翼(そうきゅうのつばさ)》と共に行動していたことは知っていたのに、セリシエルという新たなメンバーがいることは知らない様子だった。

 セリシエルが仲間になる直前に受けた盗賊退治の依頼書を見て判断したのなら、それも頷ける。


「つまり、こいつらがギルドを襲った犯人と見て間違い無い、ということか?」


 騎士たちに捕縛されたナヴェット、ボルド、モークの3人を見て、イアンが尋ねた。


「だと思いますよ。実際、こいつらの目当ては盗賊討伐の戦利品だったみたいだし、フェルナとシアーシャが街に戻った、と聞いて「入れ違いになった」とか言ってましたから。それに――」


 ちらり、とロープでグルグル巻きにされた3人を横目で見ながら、慎也は言った。

 最初見た時に気付いた、彼らの衣服から漂ってくる微かな匂い。それがいまもなお、慎也の鼻腔をくすぐっている。


「こいつら、血の匂いがしますから」


 嗅ぎ慣れた魔物の血とは明らかに違う、人血特有の香り。それが、ナヴェットたちの衣服や武器にこびり付いていたのを、慎也は見逃さなかった。

 ごく最近、人を殺している、と慎也は考えたのだが、当たりだったようだ。


「でも、この人たちはいったい何者でしょう? 装備だけ見ても、ただの盗賊とは思えません」


 リビング・アーマーに魔爆珠といった、ただの盗賊とは一線を画す装備。加えてあの戦闘力。ユフィアにも、彼らが単なる野党の類とは到底思えなかった。


「奴ら、他になにか言ってなかったか?」


 イアンが尋ねると、慎也たちは各々頭を捻って思い返してみる。


「そう言えば――」


 結衣が口を開いた。


「あいつら、セリスちゃんのこと、人擬き、とか言ってた!」


 思い出して改めて腹が立ったのか、結衣はプリプリと怒りだした。


「そう言えば、確かに言ってたな」


 確かにそんなことをモークが口走っていたのを、慎也も聞いていた。


「それに、私たちのことを“簒奪者の末裔”とか言ってましたけど、なんのことでしょう?」


 魔爆珠を掲げたナヴェットが、怨嗟にも似た憎悪と共にそのようなことを口走っていたのを、その場にいた全員が聞いている。


「人擬き、というのは、人族至上主義者が亜人族たちに対して用いる蔑称だ」


 イアンが説明した。


「やはり間違い無いな。こいつらは《ミズガルズ》の構成員だ」

「みずがるず?」


 聞いたことの無い単語に、慎也は首を傾げた。


「ベルカ復権派とも言う」

「ベルカって、あのベルカですか?」


 その単語なら聞いたことがあった。


 2年前――この世界にやって来た直後、ウィルから聞かされた、この国――ヤマト王国の成り立ちに出て来た国の名前だ。


 かつてこの辺りはベルカ帝国と言われる人族至上主義の国家が支配していて、人間以外のあらゆる種族を迫害していた。そんな折、異世界からやって来た元中学生――一条悠真が彼らを救う為、ベルカ帝国に独立戦争を仕掛け、激しい戦いの末に勝利し、ヤマト王国を樹立した、という話だ。


「そのベルカだ」


 イアンは頷いた。


「王祖ユウマ様に敗れたベルカ帝国はその後、衰退の一途を辿った。ヤマト王国軍に戦いを挑んでは敗れ、それを好機と見た辺境諸侯の独立運動や敵対国の侵略も合わさり、300年経った現在では、ベルカ帝国はかつての領土をほとんど失って小国に落ちぶれている。そんなベルカを、かつての大国に戻そうと暗躍する者たちがいる。それがベルカ復権派――《ミズガルズ》という組織だ」

「で、こいつらがその一員?」


 慎也の言葉に、イアンは頷いた。


「連中はこれまでもヤマト王国内でテロや破壊工作を何度も繰り返して来たが、10年ほど前、先王によって大規模な取り締まりが行われた結果、主だった構成員や幹部の多くが捕縛、処刑されて一時はほとんど姿を見かけなくなっていた。だがここ最近、再び《ミズガルズ》を名乗る組織が国内で活動を再開したらしい、という情報がある。それも、以前よりも遥かに大きな組織となり、正規軍にも匹敵する装備や魔導具を有しているらしい」

「……それが事実だとして、そんな奴らがどうしてこんな場所に?」


 イアンの話を聞いて、慎也はますます首を傾げた。


「それを調べるのが我々の仕事だ」


 そう言ってイアンは肩を竦めた。


「いずれにせよ、《ミズガルズ》の構成員を生け捕りに出来たのは大きい。よくやってくれたな、シンヤ」


 そう言って、イアンは笑顔で慎也の肩をポンポンと叩いた。


「まあ、成り行きですけど」


 本人としては、お手柄を誇るより、厄介なのと関わってしまった、という思いの方が強い。


「取りあえず、あの武具類はこの場で私たちが預からせてもらおう。もちろん買い取りと言う形で。料金に関しては後日、支払うことになるが、構わないか?」


 広場に出しっぱなしになっていた武具の山を指して、イアンが慎也に尋ねた。


「こちらとしては、そうしてもらうとありがたいです」

 

 慎也の言葉に、他のメンバーも揃って頷いた。

 今回の騒動の原因であった武具類を、イアンたちが買い取ってくれるなら、慎也たちに反対する理由など無い。


「それにしても、こんな奴らを送り込んでまで回収しようとしたところを見ると、これらは連中に取ってよほど大事な物と見えるな」


 そんなイアンの呟きを耳にした慎也は、ふと大事なことを思い出した。


「いえ、どうやら奴らの狙いは武具じゃなかったみたいです」

「なに?」


 ぴく、とイアンは表情筋を強張らせた。


「どういうことだ?」

「連中の狙いが、オレたちが盗賊のアジトから回収した戦利品だったことは確かです。村の子供を人質にして、渡せと迫ってきましたから。で、言われた通りに渡したら、目的の物が見当たらない、とか喚き出して……」

「その目的の物というのは?」

「壺らしいです。黒い壺。どうやら武具諸共盗賊に奪われて、オレらが一緒に回収したと思い込んでたみたいなんです。で、それが無かったもんだから、かなり焦ってましたね」

「壺? その壺とやらを君らは回収してないのか?」

「知りません。盗賊のアジトに壺なんか無かったです。そうだろ?」


 慎也は仲間たちを振り返ると、共に盗賊退治に参加した結衣、ユフィア、フェルナ、シアーシャの4人が「知らない」「見てません」と口々に答えて首を横に振った。


「……そうか。それなら仕方ない。どちらにしろ、連中の企みを阻止して構成員を生け捕りにしたのは確かだ。その壺とやらのことは後で奴ら自身からじっくりと聞き出せば良い」

「そうですね」


 その辺りのことはイアンや騎士団に任せれば良い。巻き込まれただけの、部外者である自分たちの出る幕ではない。

 取りあえず、事態が自分たちの手から離れたのを知って、慎也はほっと息を吐いた。


「団長」


 そこへ、イアンの部下の騎士がやって来た。先程、ナヴェットたちの捕縛と調査に当たっていた騎士だ。


「どうだ?」

「斬られたイースは幸い軽傷。すでに回復魔法による治療を終えました。ただ怪我で言えば、連中の方が酷いですね。3人の内2人が負傷。1人はかなりの重傷で、一命は取り止めましたがこれ以上の治療はここでは不可能とのことです。他の2人は命に別状はありません」


 3人の黒装束の内、慎也に倒されたナヴェットは、右腕を斬り落とされた上、雷系魔法を浴びて重傷を負っている。ボルドはセリシエルの《光閃(レイ)》で腹を貫通されているが、急所は外れているので大事は無いということだった。


「判った。連中はまだ意識を失ったままなのか?」

「はい。いまの所、3人とも目覚める気配はありません」

「目覚めて暴れられたらやっかいだ。3人とも封印錠を掛けて厳重に拘束しておけ」


 封印錠というのは魔導具の一種で、奴隷や犯罪者を捕縛する為の拘束具の一種だ。見た目は鍵穴の付いた単なる腕輪だが、嵌めると魔法やスキルを使用できなくなり、ステータスも大幅にダウンさせる効果がある。

 高レベルの犯罪者を護送する際などに騎士や憲兵がよく用いる物だ。


「それと、所持品は検めたのか?」

「勿論です。身元が特定できるような物は所持しておりませんでしたが、法珠(スフィア)をいくつか持っていました」


 そう言って、騎士は持っていた法珠(スフィア)をイアンに見せた。

 ボルドが持っていた紫色の法珠(スフィア)と、モークが使おうとしていたピンポン玉サイズの金色の法珠(スフィア)だ。


「紫のは召喚珠だな。テイムした魔物や魔法生物を休眠状態で封印し、必要な時だけ呼び出せる、という代物だ。生物を入れられないアイテムボックスでも、こいつに封印した状態の魔物なら収納できる」

「へー、ポ〇モンみたいなやつだね」


 結衣が呟くように言った。その意味を理解できたのは慎也だけだったが。

 そしてもう1つ、金色の法珠(スフィア)を手に取ったイアンは、忌々し気に表情を歪めた。


「この金色のは転移珠だ」

「転移珠?」


 慎也が聞き返す。


「その名の通り、使用者を特定の場所に転移させる効果を持つ法珠(スフィア)だ。もっとも、好きな場所に転移出来る訳ではなく、予め転移したい場所にこいつを持って行ってセーブする必要があるがな。このサイズの物だと転移出来るのは使用者1人で、しかも1回きりの使い捨てだろうが……」

「そんな便利な物があるんですか……」


 人間を離れた場所に転移させる珍しいアイテムの存在に、ユフィアが目をパチクリさせて驚いている。


「ああ、便利だ。だが、それと同じくらい厄介な代物でもある。これをいくつ持ってた?」

「10個ほど」

「やはりな。可能性は考えてはいたが……連中が市門の憲兵たちを素通りして街に入り、ギルドを襲撃した後、何事も無く市外に出られた理由がこれだ」

「なるほど。転移珠を使って出入りされたんじゃ、市壁も検問も意味無いですね」


 騎士も忌々しそうに呻いた。

 キアナの街に限らず、城壁都市では街に入る人間に犯罪者などが紛れ込んでいないか、入り口で厳しくチェックされるのが常識だ。だが転移珠を使えば、それらを素通りして直接街の中に人間を転移させることが出来る。

 街の治安を守る憲兵や騎士から見れば、厄介この上ない道具だろう。


「魔爆珠。召喚珠。転移珠。これほどの種類と数の法珠(スフィア)を持たされているとなると、《ミズガルズ》の規模は思った以上に大きいのかもしれないな」

「もしくは、それだけこいつらに与えられた任務が重要なものだったか、ですね」


 イアンの推測を騎士が補足する。


「どちらにせよ、こいつらを生け捕りにすることが出来たことは《ミズガルズ》の全容を解明する上で大きな手掛かりになるだろう。改めて礼を言おう」

「いえ、まあ、成り行きですから……」


 慎也からしてみれば、襲って来た暴漢を返り討ちにした程度の認識だったのだが、実際は思った以上に大事だったようで、正直、どう反応すれば良いか判らずに曖昧な返事を返した。


「それで、護送はどうしますか? 馬車は連れて来ていませんし、馬も人数分しかありません」


 キアナの街からここまで急いで駆けつけなければならなかったせいで、イアンたちは全員が騎馬でやって来た。速度を重視した結果、足の遅い馬車などは同行していなかった。が、拘束しているとはいえ、危険な犯罪者を街まで護送するとなると、馬以外のなんらかの乗り物が必要だ。


「村の人間に頼んで馬車を貸してもらおう。この際、荷馬車でもなんでも良い。今日はもう遅いから、今夜はここで一泊し、明日の朝、全員で街へ戻る。悪いがシンヤ、当事者として君たちも同行してくれ」

「いや、しかし、オレたちまだ依頼の途中なんですが……」


 申し訳なさそうに慎也が言うと、イアンははっとした顔になった。


「ああ、そう言えば、そうだったな……」


 冒険者ギルドの襲撃事件からここまで、犯人の捜索と逮捕に躍起になるあまり、慎也たちの事情をまったく聞いていなかったことを思い出し、イアンは内心で反省した。


「依頼というのは、オークの調査だったな。まだ終わっていないのか?」

「いえ、調査自体は済んでるんですが、ちょっと面倒なことになってまして……」

「面倒なこと?」


 慎也は、イアンにこれまでの経緯を説明した。


 調査対象であったオークの集落が全滅していたこと――

 状況から見て他の魔物に襲われたと思われること――

 オークの死体から魔晶核(コア)が抜き取られていたこと――

 それをギルドに報告する為に、フェルナとシアーシャが街に戻ったこと――

 2人の帰りを待っている間に襲撃を受けたこと――


 それらの内容を出来るだけ判り易くイアンに説明した。そのせいで説明が少し長くなってしまった。


「――と、言う訳です」

「なるほど。事情は理解した。100匹ものオークを全滅させる魔物か……単独にしろ群れにしろ、面倒だな。それに、殺した魔物の体内から魔晶核(コア)を抜き取る魔物なんて聞いたことも無いぞ」

「やっぱりイアン様もそうですよね。正体が判らない魔物とか、一番怖いんですけど」


 と、シアーシャが心底嫌そうに言った。


「取りあえず、私が依頼者である村長に話してみよう。ちょうど、村人たちも来たみたいだしな」


 イアンに言われて慎也も初めて気付いたのだが、いつの間にか広場の周囲にケミナ村の人々が集まってきていた。


 戦いの音が聞こえなくなり、安全かと思って戻って来てみれば、鎧姿の騎士がわんさかいて訳が判らない、といった感じで、状況を把握できずに皆一様に不安そうな表情で遠巻きに慎也たちの様子を見ていた。

 そんな彼らに、イアンが話しかけた。


「私はスアード伯爵直下の騎士団長を務めている。イアン・エルモント名誉士爵だ。村の代表者と話がしたい」


 イアンが名乗りを上げると、村人たちの間で「騎士団長?」「貴族様」「なんで?」と言った騒めきが広がった。


「ええっと、村長を呼んで来ればよろしいので?」


 いち早く我に返ってイアンに尋ねたのは、ヒューゴだった。


「そうしてもらえると助かる。それと、村を襲った暴漢は取り押さえたので、もう安心だと伝えてくれ」


 それを聞いて、村人たちの間に安堵のため息が漏れた。


「判りました。すぐ呼んできますので、少々お待ちください」

「たのむ」


 ヒューゴはそう言うと、村長宅へと走っていった。


「兄ちゃん!」


 去って行った父親と入れ違いに、リュンとルピィが慎也たちの元にやって来た。


「ルピィのこと助けてくれてありがとう!」

「ありがとう!」


 幼い兄弟が揃って頭を下げる。恩を受けたら礼を言うことを忘れない、よく出来た子供のようだ。


「気にするな。それより、怪我は無かったか?」

「うん、だいじょうぶ」


 元気良くうなずくルピィの身体には、確かに傷らしきものは見当たらない。とは言え、見知らぬ男に捕まってナイフを突きつけられて怖い思いをしたのは間違い無いのだが、割と平気な顔をしている。


「兄ちゃんたち、無茶苦茶強いんだね! 凄かったよ!」


 目をキラキラと輝かせたリュンが、頬を上気させて興奮気味に捲し立てた。が、慎也に取ってその言葉は聞き捨てならないものだった。


「って、お前、避難してなかったのか?」


 リュンの言葉が確かなら、彼は慎也たちがナヴェットらと戦っているところを見ていたことになる。


「ううん。父ちゃんとルピィと一緒にあそこの小屋の中に隠れて、窓から覗いてたんだ」


 リュンが指さした先に視線を向けると、広場から少し離れた場所に粗末な造りの物置小屋があるのが見えた。


「天使のおねーちゃん。助けてくれてありがとう」

「どういたしまして、なんだよ」


 直接ルピィを救ったセリシエルが、本人に礼を言われて照れている。

 余談だが、ルピィはセリシエルが天使族であることを知っていた。まあ、セリシエルはボルドとの戦いの際に、実際に翼を使って飛びながら戦っていた為、それを見ていたのなら当然なのだが。


「ホント、セリスちゃんがいてくれて助かったよねー」

「そうですね。私たちだけだったら、正直ダメでした」


 結衣とユフィアも頷いていた。

 確かに、当初はこちらの情報を把握されていた上に人質まで取られた、絶体絶命な状態だった。ナヴェットたちがセリシエルを把握していなかったことや、襲撃直後、彼女が都合良く偵察に出ていたこと。戻って来たセリシエルが機転を利かせて不意打ちでルピィを救い出してくれなかったら、慎也たちだけではどうすることも出来なかっただろう。


「確かに、今回はセリスのお手柄だな」

「えへへ~」


 慎也も素直に認めて、彼女の頭をポンポンと撫でてやる。セリスは子犬みたいに嬉しそうに目を細めてはにかんだ。


「なんの説明も無く、戻って来て即座に状況を把握できた判断力はさすがだ」

「それほどでもないんだよー」

 

 ぽんぽん――


「奇襲でルピィを救出し、結衣と協力してボルドとかいう奴を倒した手際も見事だった」

「照れるんだよー」


 なでなで――


「ただ――」

「え?」


 ぴた――


「……また盾を投げたな?」

「あ――」


 がしっ――


「オレ、言ったよな? 盾を投げるのは禁止、って」

「え、えっと、あの……」


 ぎゅっ――


「盾を放棄すれば、お前自身だけじゃなく結衣やユフィアも危険に晒されるんだぞ? それもちゃんと説明したよな? お前も了承したよな?」

「ちょ、あの、シンヤ、頭が痛いんだけど……」


 ぎりぎり――


「その舌の根も乾かない内にまた投げるとは、良い度胸だな」

「い、痛だだだだ!」


 みしみし――


「口で言って判らないほど物覚えが悪い奴は、力ずくで頭に叩き込むしかない、っていうのが、オレの親父の流儀だったが、どうやら実践しなきゃならないようだな」

「出ちゃう! むしろ頭の中身がみんな出ちゃうんだよー!」


 涼やかな顔で、しかし身体から怒りのオーラを迸らせながらアイアンクローをかます慎也と、ジタバタもがくセリシエル。


「あの、シンヤさん、もうその辺で……」

「暴力はダメなんだよ?」


 見かねたユフィアとルピィが慎也を止めた。


「暴力じゃない。愛の鞭だ」

「鞭に愛なんか宿らないんだよー!」


 慎也がセリシエルの頭を離すと、彼女は頭を抱えながらふらふらとその場に蹲った。


「うう~、ひどいんだよー……」

「よしよし」


 半泣きのセリシエルの頭を、結衣が撫でて慰める。


「次また同じことしたら、いまの3倍の力で絞めるからな?」

「はいぃ!」


 殺気の籠った慎也の声に、慌てた様子でセリシエルは答えた。

 少々やり過ぎな感もあるが、盾を投げる、という行為はそれだけ非常識かつ危険な行為であるのは確かだ。しかも、パーティの盾役がそのような行いをするということは、自身だけでなく、守るべき仲間も危険に晒すということに他ならない。しかもセリシエルの場合、1度注意したにも拘らず、また同じことをやってしまったので、慎也が怒るのは当然だった。


 ただ、セリシエルのおかげで自分たちも村人たちも助かったのは事実なので、慎也もそれ以上は言わないことにした。


「取りあえず一件落着したみたいだし、オレたちも――」


 慎也がそう言いかけた時――


 キシャアアアアアアア!!


 名状し難い、金切音にも似た雄叫びが轟いた。


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