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東京兵甲  作者: 暗山巧技
[1] 頼みの首謀者と其の傍ら、慥かに死す
1/9

【1】斯くなる上は、劔を持って罪人を斬るべし①

〔1〕

血は紅い。

例え肌の色が違くても、人間であれば、それに変わりは無い。どんな宗教を信じようと、どの民族の生まれだろうと、我々は同じ人類という動物種の一つである。

だが、その違いによって引き起こされる摩擦(ズレ)から、それぞれの違った価値観を相手に押し付けようとする。或る者は言い合いで、又、或る者は武力行使して。

これが、戦争の始まりである。政治的交渉の最終手段として用いられるこの選択(ルール)は、今やこの世界の常識になりつつある。言い合いになっては、即座に戦争を仕掛け、血みどろになってまで相手(テキ)を叩き潰そうとする。結果、多くの者が命を落とし、戦場(いくさば)は、()()()と化す。生き残りは助けを求めて泣き叫び、亡骸(なきがら)の最期に染まりながら、荒れた地を這う。

一度、俺はその光景(ナラク)を目にしたことがある。それは、(イマ)自分(オレ)とは別者の、(ムカシ)自分(ボク)が見た。唯、目の前が深紅(カーディナル)の壁で埋まっていたことと、大事な家族(ムレ)の屍が、俺に抱き付きながら泣いていたことが、鮮明に刻み込まれている。

外そうと必死に引き剝がそうと足掻いても、その記憶だけが頭から落ちない。それは、自分が救えなかったかれであり、その犯した罪が裁かれないとあって、何時までもこびり付いて、離れない。まるで、それを背負い、自分の人生の全てを犠牲にしてまで、贖えと神が告げているようだ。

鋭利な(ツルギ)を手にし、罪人を斬る。それが俺にとっての贖罪だと、何時の日か気づいた。罪深き獣の流す血を持って、大切な人の手向けとするものであると。

単なる八つ当たりだと非難する者が現れるかもしれない。けれど、俺の血族の命を奪ったのは、紛れもない、罪人達なのである。

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