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佐藤美月の骨董失敗談~失敗作達は現世を堪能ス~

作者: 歌月碧威

それはお決まりの朝だった。

いつものように欠伸をかみ殺しつつ、微睡む思考のまま足をダイニングへと向かえば、「美月みづき、おはよう」という声が耳朶に届いた。

室内の中央に設置されていた長方形の食卓テーブル席はもうすでに五つ埋まっている。

いつも通り、私が最後だ。


三対三にの対面するような座席の、唯一空いている箇所は私の定位置。

入口付近の丁度真ん中席。

祖父と妹の間に腰を落とすと、エプロン姿のお母さんが絶妙なタイミングでキッチンカウンターから茶碗に盛られたご飯と味噌汁、それから焼き海苔や大根おろしなどをリズミカルにテーブルの上へと乗せてくれている。

それを合図のように、「よし、全員そろったな。では、いただきます」と、祖父の台詞に「いただきます」という言葉が続いていく。

これが我が佐藤家の朝。私の日常風景だ。


うちは祖父母、両親、妹、私の六人家族。両親は共働きのため、なかなか揃って夕食を取る事はできない。そのため朝はこうして一緒に朝食を摂ろうという事が暗黙の了解となっている。

だからこの時間は「部活が~」「今度出張が~」等、それぞれ業務連絡的な事を話しながらの食事。

それを終え、各自通学・通勤。


――……となるはずだったのだが、祖父の言葉に無情にも狂わされてしまう。


「そう言えば、この間銀行の定期が満期になったんだ。しかも百万円!」

水のような見た目の薄そうな噌汁を飲みほした祖父は、そう口を開いた。


「へー。すごいじゃん」

「あら、良かったですね」

そんな祖父に対し、みな口を揃えた。

うちの家族は性格も趣味嗜好も全く違うため、外食に行った時も食べるものがバラバラ。

けれども今は一致しているだろう。

お爺ちゃんが使うんじゃなくて、みんなで使おうと考えているはずだ。

「旅行に!」とか、「何か美味しい物を!」なんて、自分達の欲望や期待をかなり含んだ視線を送っている。流石は佐藤家。こういう時だけは連帯感がある。


だが、祖父が発した言葉は、それとは正反対。

むしろ、最悪。そのため、いつもの朝食が戦場と化す。

「インターネットオークションで掛け軸を購入した。いや~、広雪こうせつ作なのに、百万なんて安すぎると思わないか?」

満面の笑みを浮かべ焼鮭をつついている祖父に、私は頭を抱えてしまった。


――……買っちゃったの!?


自分でも顔が引き攣っているのがわかる。

まるで洗顔フォームと液体のりを間違って使用してしまったかのようだ。

ちらりと隣の妹の様子を窺えば、箸で摘んでいた煮豆が転げ落ちたらしく、テーブル上に転がっていた。


「ひ、百……」

と、呟きながら焦点の合わぬ瞳をし、呆然としている。

それもそうだろう。私達高校生にしたら、百万円なんて大金すぎる。

スーパーのバイトの時給が七百円で、この辺りの相場より五十円高いからそこを選んで働いているというのに。

五十円のためにバイトの求人誌眺めていた身にとって、百万円なんて雲の上レベルだ。


「か、かっ、買ってしまわれたのですかっ!?」

子供の頃障子を破いても怒らなかった祖母が、珍しく大声を張り上げながら立ち上がった。

そのためそれが机に伝わった衝撃によって、ご飯の上にふりかけられた飴色のシラスが宙を泳いだ。

それを見て、私と妹の体が同時にビクつく。


残りのお父さんに至っては、我関せず。

まるで目の前で起きている出来事が、テレビ画面に映し出されている映像のように他人事だ。

それもそのはず。祖父にパソコンを買ってあげたのは、お父さんだから。

そして丁寧にネットオークションを教えたのも、お父さん。

当然、責任の矛先は回ってくるのは必然だ。

だから、もう空気に徹する事にしたんだろう。きっと。


この世に生を受け、祖父母の喧嘩なんて目にした事がない。

いや、まだ始まってないが、険悪なムード。なので、カウントダウンは始まっている。

あぁ、これはもう……修羅場だ。修羅場。


「義理母さん、落ち着きましょう。一度、座りませんか?」

唯一肝が据わっているのはお母さんだけだ。すっと立ち上がると、お母さんの左側で般若のような表情をして佇んでいるお婆ちゃんを宥めながら、再び腰を落とさせることに成功。


「何をそんなに怒っているんだ、道江みちえ

「偽物に決まっているからです。ガラクタを百万円で購入したんですよ、貴方は!」

「ガラクタだとっ!? 失礼な事を言うな。これを画面で見たときに、ぴんときたんだぞ。これは本物だと。それにあれは本来なら一千万円の価値あるものなんだ」

「あー……」

隣の妹が上げた絶望的な声に、お爺ちゃんを除く全員が彫刻に変じる。


――お爺ちゃん、それ言わなかった方がいいと思う。それは確実に言える。


まだ人生経験が十七年しか無い私でも難しくない。

通常ならば一千万という目が飛び出るぐらい価値あるものが、百万円で売っているはずがないって。

しかも本物・偽物が混じり合っているネットオークション。カオスな世界。


「いいか、一度その瞳で見ろ! お前達にも価値がわかるはずだ! 全員来い」

そう言って立ち上がりこちらに背を向けた祖父。その行動と台詞に、私達は優雅とまでいかないが、いつも通りの日常を中断。一人ずつ祖父の後を追うために席を離れて行く。

最後に取り残された私は、数分後に起こりうる修羅場に備えて、心を整えながら両膝に力を入れるとゆっくり立ち上がった。

絶対に偽物つかまされたなと心で毒づかせながら。




「どうだ」

畳の上に広げられた掛け軸。

確かに紙はそれなりに年代を感じるので、幾度の時代を乗り越えた物というのは確かだろう。

鼻を掠めた匂いに、古本屋が頭に浮かんだ。

掛け軸を中心に、家族全員が円を描くようにそれぞれ眺めている。

だが、お爺ちゃん以外の表情が優れない。無論、私もだ。

人間辛い時も笑えばいい。そうすると、心も比例するから。

そんな話をテレビか何かで見たが、表情筋が仕事をしないからその選択肢は存在しない。

きっとみんな同じ事を考えているのだろう。とても百万には見えないと――


本物を見たことはない。それに作者も知らない。

だが、完全に贋作掴まされていると思っている私達には、もうすでにそれは価値の無いゴミのように思えてしょうがないのだ。

でも、よくよく観察してみると、掛け軸自体は痛みも少ないように窺える。

ただ、絵としては少々華がないみたいだ。

それは西洋画のように色鮮やかな絵の具や、躍動感ある構図ではないからだと思う。

勿論、日本画が落ちていると言いたいわけではない。

美術館などに展示されているのは、日本の古来の美を見ている人に伝えてくれる作品もある。

だが、この掛け軸は、こうぱっとしないのだ。


虎などが描かれていたならば、もっと違ったかもしれない。迫力があるし。

でも、これは女性が、鳥と戯れているだけ。それも水墨画。モノクロ。

しかも美人というわけではなく、のっぺりとしている。

目は筆ですっと描いただけで、開いているのか閉じているのかわからないし、それにおちょぼ口。

着物も絢爛豪華な十二単ではなく、柄の入ってない麻布っぽい。

場所も小石が転がる地面の上みたいだ。


彼女を見て、真っ先に平安美人という言葉が浮かぶ。

鳥も孔雀ならまだ華はあるが、雀だし。

なんともまぁ、全体的に地味過ぎる。

よくぞまぁ、これに百万円も出したなぁというのが、子供ながらの正直な感想。

私には、札束の入った袋を人通りの激しい駅前に置いてきたのと等しい行為に思える。

みんなこれ以上話題にしたくないと判断したのか、一人二人と席を離れ、結局残ったのは私とお爺ちゃんだけに。


「そうかそうか。美月はこの絵の価値をわかってくれるか!」

「いや……その……」

絶対に良い鴨だと思われたんだよ。そう口元まで出かかっていたが、なんとか飲み込んだ。

その時だった。

すぐ傍で誰かの気配を感じ、氷の指で背中を撫でられたかのように、私の身を震えさせたのは。


ゆっくりとそちらの方を見やれば、思わず気を失いたい事態が起こってしまっていた。

『ふふっ。驚くのも無理はないわ。私って思わず見とれるぐらいに綺麗ですもの』

なんと、そこには女性が風船のように宙に浮かんでいたのだ。

見ず知らずの相手。しかも彼女の背景が透き通り、襖が見える。

ただ、この人どっかで見たことが……


そのため、悲鳴を上げる前に疑問が頭を埋め尽くしてしまう。

だから、私には身の毛もよだつ恐怖なんてものは感じない。

街中でなんとなく見知った顔と遭遇した時のように、しこりのようなものが残ってしまい、どうもすっきりしない。

誰だっけ? と思いながら、ふわふわと蝶の様に空中を自由自在に飛んでいるそれを一瞥。

その後、なんとなく掛け軸へと目を向け、私は「あぁ!」と声を漏らした。


――この女だ!


でも、朝から幽霊なんて現れるものなのだろうか。丑三つ時じゃないのに。

しかも、私は零感。それが何故か不思議な事に視える。


「どうした?」

そのため、お爺ちゃんの怪訝そうな声も耳をすり抜けていく。

幻覚だ。と一端瞳を閉じて首を左右に振った。

『良かったわ。貴方と私、相性が良いみたいね。憑きやすい』

その声音と共に左肩に妙な負荷が。見たくない。断じて。でもこのままでも気持ちが悪い。

そのため視線をそちらへと移せば、そこにはあってはならないものが。


――てっ、手っ!


青白い手が私の肩を掴んでいる。

かと思えば、すっと首元に何か触れ、そのまま私におぶさるように抱きしめ始めた。

そして、その本体ともあるべき大きな存在が、これが現実だとアピール。

さ、触っているし!!

もうこれは完全にあれだ。古い物……祟り……幽霊……


すっかり学校では教えてくれない公式が結びつき、導き出された答え。

これは完全にいわくつきの骨董。しかも、憑かれたっ!

背中全体が雪に覆われたかのように、寒い。今度の日曜にお花見に行こうという季節なのに。


『ねぇ、私の恋人を探して。この絵は元々対になっているの。でも、私達が眠っている間に引き離されてしまい、別々に売られてしまった。だから、それを見つけ出してくれるまで貴方に憑くわ。貴方の体とても素敵よ。こんなに波長が合うのは初めて。やっと私の事が視える人間に出会えて幸運だわ』

恋人も幽霊なのか。

というか、この絵と対になっているということは、もしかしてこれ本物? でも、一千万円ぐらいの価値が百万円で売られていたし……

いや、でもどうでもいい。

そんな事を忘却の彼方へ投げ捨てたくなるほどに、この幽霊の存在が強烈過ぎる。


「お爺ちゃん。この絵……」

「おお、美月だけだ。俺の味方は。そうだ、これは本物なんだ」

お爺ちゃんの顔に百万円の束が見えてしまい、私は素直に言えなかった。これ、捨てようよって。




いろいろ考えた。通学中も授業中も。そして帰宅中の今も。

本当はあんないわくつきの掛け軸なんて、とっとと捨ててしまいたい。

だが、そうすればお爺ちゃんは悲しむ。

そして何より、あれは百万円という馬鹿高い買い物。

それを文字通り、ドブに捨てるなんて台詞、お爺ちゃんに言えない。

そこで消去法で残ったのが、骨董店で売ってしまおう! という答え。我が案ながらベストな解決策。

だが、いかんせん本物である可能性が限りなく低い。だから買い取り不可されてしまうかもしれない。

でも、万が一という事もある。

それがたとえ、砂粒の中から砂金を探すのに等しいぐらいの確立でも。


憂いのままに「はぁ」と嘆息を漏らせば、

『最近の若い子は疲れているのね。大変ね。頑張りなさい』

という、微妙な労いを後方よりかけられてしまう。

だが、決して私は疲れてはいない。憑かれているが――


それを無視して自転車を漕ぎながら、ピンクに染め上げられている街路を通り過ぎていく。

桜のトンネル。いつもなら心躍る春らしい光景だが何故だろう。

なんだか明るさが半減しているように思えてならない。それはずっと傍にいる幽霊のせいだろう。


『八百年前も今も桜の美しさだけは変わらないのね』

こちらの気分とは違い、あちらは浮ついている。身だけじゃなく心も。

桜が持っている人を魅了する力というのは、幽霊や妖怪でも変わらないものなのだろうか。

あぁ、そう言えば桜の木の下には死体が埋まっている。……なんて話もあったな。

そんなどうでもいいことが頭を過ぎった。


「……まぁ、桜だし変わらないんじゃないかな」

『そうかしら? あの頃の桜とは違う様式美だわ。桜もそうだけれども、きっと全て変わっていくのよ。そして私も歳をとっていく』

「幽霊って年取るの? いや、もしかして妖怪?」

『あら、女性に年齢の事は禁句よ。それよりも、早く彼を探して』

「いや、自分で言ったんじゃ……」

『それから、私達は幽霊でも妖怪でもないわ。失敗作よ』

「え?」

失敗作。そのフレーズに、体の力が入ってしまい急ブレーキを踏んでしまった。

急すぎたため、首が赤べこのようにがくんとなってしまったが、幸いな事に痛める事は無く。


――失敗作。


そんな自虐的な単語、滅多に耳にしない。表情を窺おうにも背後霊のように憑いているため出来ず。

ただ、声のトーンはいつもと変化ない。


「どういう意味……?」

『彼女もまた恋をしたの。そして禁忌の領域へと足を踏み入れてしまった』

「彼女? それって……――」

と、ここで私はふと何気なく視線を感じ、左手に広がる桜の群れへと顔を向ければ、とあるものと瞳が絡み合おう。

それは桜の奥にある狸の置物。その上には、骨董店という看板が見える。

どうやら桜並木の先にこことは違う、もう一つ道があるらしい。

高校入学以来、一年を過ぎているが全く気付かなかった。


その骨董店の看板が掲げられた建物は、幾年の風と雨に晒され丁度良い味わいのある色。

もしかして、あそこに? いや、あるはずない。そんな都合のいい話。

……とは思ったものの、気にかかる。


「ちょっと寄り道するわよ」

気づいたら、私はそんな事を口にしていた。




五分とかからずに店へと辿り着く事が出来た。

駐車場が見当たらないため、建物側に停めさせて貰う事に。

「こういうとこって、私なんかが入っていいのかな?」

セーラー服とは無縁そうな店構え。そのため、私はちょっとだけ気後れ。

それでもここまで来たんだと、覚悟を決め、紺地に白で朝倉あさくら骨董店と書かれた暖簾をくぐり、引き戸を開く。

すると、古めかしいものが棚に陳列している光景が飛び込んできた。


時代を感じるレトロ看板から、空き瓶、空き缶。

それからいかにもな壺なんかが、所狭しと並んでいる。

でもそれでもごちゃごちゃとしてないのは、ちゃんと収納がされているからだろう。

様々な時代がミックスされた店内は、なんだか不思議な空間。

一度だけ家族で海外旅行に行った事があるけれども、その時に入った店と雰囲気が似ている。


――しかし、こんなガラクタみたいなやつも骨董?


私は何気なしに、すぐ傍の棚にディスプレイされている灰色の細長い円形状の陶器へと触れれば、「気をつけてね」と声が零れて来た。

それを辿るように店の奥へと視線を向ければ、そこはカウンター。

L字型のような机の中に、人が座っている。


「店員じゃないよね……?」

首を傾げ、ついそう言葉を漏らしてしまう。

私が疑問に思うのもそれも無理もない。だってそこに座って店番をしている彼は、真新しいブレザーに身を包んだ少年だったのだから。

あれはこの辺りでも有名私立進学校として名高い高校の制服。

ふんわりとした柔らかそうな猫毛は、色素が薄め。

髪は左右の耳がわずかに出るぐらいに切りそろえられており、清潔感を感じる。


「もしかして高いわけ? この地味な花瓶」

「それ、骨壺だよ。値段は四百万円ぐらいかな」

「はぁ!?」

それを聞いて私が慌てて手を離したのは言う間でもない。


「花瓶じゃないの!? っうか、骨壺も売り物なの!?」

「勿論。それはもう焼かれていない代物で、大変希少価値が高い。でも君の言う通り花瓶でも素敵かも。色鮮やかな花を飾れば、灰色の花瓶に生えるしね」

ゆったりとした口調でしゃべるそいつは、ふにゃっとした笑顔でそう言葉を紡いだ。

それに毒気を抜かれたまま、私はそっとそれを元に戻す。


もう触るの辞めよう……壊してしまったら、弁償できない。

私はさっさと用事を済ませるため、棚を縫う様にカウンターへと向かった。

ちょっとしたモノが高価な商品なんて、骨董ってわからない。

うちにあるお爺ちゃんのコレクションは、骨董ですというラベルが貼られたような品物ばかり。

だから、余計そう思うのかもしれない。もしかして、あれは見た目だけなのだろうか。


「ねぇ。やたら詳しいけど、もしかして貴方が店員?」

「今日はね。お爺さん……店主は今買い付けに行っている」

「そう。なら、広雪の作品ってある?」

それには、彼が小首を傾げる。


「随分珍しい作家を知っているね。勿論、うちにも数は少ないけど数点あるよ。君が買うの?」

「……ちなみにお値段は?」

「ピンキリだけれども、安くて百万円ぐらいかな」

「買わない。買えるわけがない。うちは普通のサラリーマンの家だってば。けれども、見るだけって出来る?」

ここに来て、私はすごく失礼な客となった。

もしかしてこの幽霊の片割れである掛け軸があるかもしれない。

そしてそれをさっさと探し出しておさらばしたい。幽霊に情は禁物だ。


「大丈夫だけれども……」

「あのさ、出来れば男の人が描かれているやつとかがいいな」

「わかった。でも、蔵の方にあるんだ。今はお爺さん居なくて、鍵が無いからまた今度来店してくれても構わないかな?」

「大丈夫」

私はそう約束すると、スカートのポケットからスマホを取り出した。

そしてロックを外すと、画面をタッチしアプリを起動させる。


「ごめん。これ、赤外線ついてないんだ。だから、ID教えて貰っていい?」

と、あるアプリを指名。それは大抵の高校生なら、スマホにインストールしている。

そのため、彼も勿論IDを取得済みだと勝手に思っていたが、違ったらしい。


「ごめん。スマホ持っていないんだ。日本に帰国したばかりで……」

「外国に住んでいたの?」

「そう。イギリスに。僕だけこの春から高校進学のために戻ってきたんだ」

「へー。英語の授業とか便利そうだね」

と、明らかに短絡的な台詞を唇に乗せてしまったが、彼は一瞬目を大きく見開くとくすくすと笑ってくれた。

白磁のような滑らかな肌に、大きな瞳。すっとした鼻筋。

それぞれ整ったパーツが集まり、彼はこの骨董の中でも最も美しい芸術品のようだ。


「なら、これに電話番号書いて貰ってもいい? お爺さんが帰宅したら、話を通しておくから」

そう言って彼が手渡してくれたのは、メモ用紙と万年筆。私はそれを受け取ると、万年筆のキャップを取り、紙面へと数字の羅列を走らせる。

「これ、私の電話」

「美月ちゃんでいいのかな?」

「そう」

「僕は朝倉十和あさくらとわ宜しくね」

人懐っこい笑みを浮かべながら、彼は右手を差し出してくれた。




麗らかな春の日差しが眩しい午後。私は朝倉骨董店へと向かっていた。

すぐ近くの街路には、休日ともあってお花見客が沢山群がっていた。

その喧噪が耳朶に触れ、こちらまで陽気な気分に。

桜は人を元気づけ、和ませてくれる。これが日本の風物詩だ。


あの後、店主により電話があり、有り難い事にこちらの不躾な申し出を快く引き受けてくれた。

そのため、手土産代わりに菓子折りを持参。

自転車で朝倉骨董店前へと辿りつけば、十和が出迎えてくれていた。

こちらに気づくと、軽く手を上げ心なしか顔を緩めた気がする。

その隣に佇んでいる狸の置物は、「閉」と書かれた看板を首から下げ、丸いお腹を天へと晒していた。


「こんにちは」

「こんにちは。貴方も来たの?」

「うん。なんだか気になってね」

そう言いながら二人して扉を開け、暖簾をくぐっていく。

この間と代わり映えのない店内。

なので、すぐにカウンターに真っ直ぐに向かう。


彼がこの間座っていた場所には、初老のお爺さんが座っていた。

その人はこちらに気づくと、何処となく十和を感じさせる笑みを浮かべる。

普段着なのか、深い森を思わせる着物が良く似合っている。

思わずこっちがほっとするような空気を纏ながら、「いらっしゃい」と立ち上がった。


「君が広雪の作品を見たい子だね?」

「はい。もしかして、今日はお休みでしたか?」

「気にする事はないよ。君みたいな若い子が骨董に興味があるなんて、嬉しいからね。さぁ、こちらへどうぞ」

そう言って、私達をカウンター奧にある部屋へと促された。

襖を開けると、そこには畳の部屋が広がっていた。十畳から十二畳ぐらいだろうか。結構広め。

そこには使い古され味が出ているちゃぶ台卓や、ポットなどが置かれている。

もしかしたら休憩室代わりに使用しているのかもしれない。


「まぁ、座って。今、お茶入れるからね」

と言いながら、お爺さんが準備を始めてくれているが、私の後ろは落ち着かず。

慌ただしくあちらへふらふら、こちらへふらふらとしている。文字通り浮遊霊だ。

待ちきれないのは理解できるが、落ち着け。

せわしなくて、こっちがイライラしてくるじゃないか。しかし、十和はいいなぁ。視えなくて。


私はこの騒がしさと無関係な、隣で正座している十和へと視線を向けた。

相変わらず、綺麗な顔立ちをしている。実に絵になる。


『ねぇ! 早く見せて貰って』

「わかっているってば、もてなしてくれるのに、茶よりも先に掛け軸見せろって言える? 言えないでしょ!」

こいつとの生活も一週間。恐ろしい事に私は以外と適応力が高いらしく、すでに慣れてしまった。

そのため、いつもの癖で言葉を音として放ってしまったようだ。

それをすぐ傍にいた十和が耳に入れないはずがない。

不思議そうな顔をしてこちらを見詰めている。

そんな気まずい視線から逸らすために、私は俯き強制的に遮断。


「……なんでもない。独り言」

「もしかして、美月は後ろの人が視えるの?」

「え?」

一瞬止まった。時間も言葉も。


「もしかして、十和は視えるの?」

「うん。ずっとね。昔から、人には視えない者が視えるんだ。でも、美月は初めて逢った時、すぐ傍にいたその女性に気づいてないようだったから。もしかして、視えない振りでもしていたの? ……でも、そっか。それでわかったよ。だから広雪の作品なんだね」

「どういうこと?」

「もしかして知らないのかな? 彼の絵はいわく付きとしても有名なんだよ? 魂を宿す絵師。そう言われている。だからなのか、持ち主は不可解な出来事に遭遇するって噂があるんだ」

「はぁ? 初耳なんだけどっ!」

「例えば掛け軸が風もないのに揺れるとか、誰も居ないのに話声が聞こえるとかね」

「……」

知っているなら、真っ先にお爺ちゃんに忠告しているってば!

でも、そのいわくつきって所は当たっている。だって実際後ろにご健在だし。


「じゃあ、どうして広雪の絵が見たいんだい?」

お盆の上にお茶と煎餅の盛られた籠を乗せ、店主である十和のお爺さんがやって来た。

そして屈み込むと、テーブルの上に茶托を置き、湯のみを乗せていく。


「実はお爺ちゃんがネットオークションで買っちゃったんです。それから、後ろにいる幽霊が視えるようになっちゃって……そいつから掛け軸が対になる物があるから探せって言われたんです。お爺さんも視えるんですか?」

「いいや。私はそういうのは全く。でも、まぁ広雪だけではなく、骨董にはそういった話はつきものだからね」

眉を下げた十和のお爺さんに煎餅が入った籠を差し出され、私はそれから一枚だけ摘まんだ。

香ばしい醤油の匂いが鼻腔に漂い、唾液を分泌させる。

もの凄く久しぶりの煎餅。いつもはスナック菓子だが、たまにはこういう渋い物も美味しそうだ。


「佐藤さん。君の家にあるのは、どんな絵だい?」

「女性が、雀と戯れている絵です」

「それだけでは……」

お爺さんは煎餅を口元まで持っていったまま、唸り出してしまう。


「なら、聞いてみたらいいんじゃないかな?」

「え?」

「ねぇ、君は知っている?」

と、いきなり十和は私の後方へと向かって声をかけた。

それはまるで生きている人間に対するものと同様に気さくだ。


『勿論よ。春時はるときの事はなんでも知っているわ』

あっさりと背後霊は、かけられた言葉に返答をする。

それには、つい突っ込まずにはいられなかった。


「視えるだけじゃなく、会話も出来るの?」

「うん」

まるで春の陽だまりのような穏やかな時間の流れを感じる返事。

さらりと言っているが、結構凄い事だ。幽霊が視える上に会話も出来るなんて。

私にとっては、まるで漫画や小説の世界。きっとこの件がなければ、一生縁がなかっただろう。


「十和。説明してくれ。私には視えない」

どうやら十和のお爺さんにはそういう能力がないらしい。

でも、さして驚きもせず状況を呑み込んでいる様子から、十和の霊感は以前から知っていたんだろう。


「彼女の後ろには、広雪の書いた作品から抜け出した女性がいるそうです」

「そうなのか……」

「はい。ですから、尋ねるなら本人に訊くのが一番かと」

「確かに」

「ねぇ、どんな絵か教えて?」

『春時は、文官よ。笛がとても上手なの』

「そう。なら、あれかな。確かにそれは元々対になっている絵。うちにあるよ」

「本当ですか!? 良かったじゃん」

そう叫んで後ろの人物に目をやると、あいつは涙ぐんでいた。

声を出さずにかみ殺すようにし、やがて一滴の雫が地へと落ちると、彼女は両手で顔を覆う様にして肩を震わせている。


どうやら幽霊でも泣くようだ。

ただ、畳は濡れてないことから、実態は無いに等しいものらしい。

それを目にし、なんだかこちらまで胸が痛んだ。

もしかしたら、何十年。いや、何百年と離れ離れになってしまったのだろう。

大好きな相手なら、それだけ想いも深いはずだろうし。


「笛が得意な文官だそうです。お爺さん」

「……あぁ、ならあれか。ちょっと待っていてくれ」

十和のお爺さんは、立ち上がると数種類用意されている細長い箱から一つ選ぶと、それをテーブルの上に置いた。そしてそれを封じている細長い紐を解いていく。

中には丸まった掛け軸が収められていた。

それを慣れた手つきで取り出し、広げると床の間に飾った。

段々と増えていくその面積。

やがて全てが現れると、そこには青年が描かれていた。

縫腋袍を身に纏っている様子から、平安時代の人物なのだろう。

手には笛を持ち、穏やかな表情で左側を見詰めている。

それは親が子供を見るような……いや、まるで愛しい相手がその先にいるかのような眼差しを向けていた。

けれども、その先には何もない。

もしかしたら、うちのある掛け軸を右側に飾ると一つの絵になるのかも。

顔も平安風。

ふっくらとした輪郭に、一筆書きしたかのような瞳だが、こちらは着物が鮮やかなせいか、華がある。


春時はるとき!」

傍の幽霊がそう呼びかければ、ぬっと何かが飛び出してきたため、私は危うく出かかった悲鳴を飲み込んだ。それは黒い霧だった。

少しずつ人の形を成していき、完全に私達の前に現れた頃には、青年の姿だった。

それはまさしく、あの絵に描かれた彼。


「やっと会えて良かった……」

竜胆りんどう!」

二人はお互いとの距離を一気に縮め、両手を伸ばし飛びついた。

そして、今までの寂しさをぶつけ合うように抱き締め合う。

……まぁ、良かったんじゃないかな。

偶然この骨董店に入った私のお蔭なんだから、感謝してよね? 

そんな事を思いながら、私は恋人同士の久々の逢瀬を見守っていた。

私は肩の荷が下りて、すっかり脱力したので、出されたお茶へと手を伸ばした。


「さぁ、一緒に逝きましょう。私達は失敗作。生まれ変わってまた一緒になりましょう」

と、あの幽霊――竜胆が言えば、何故か春時は浮かぬ顔。肩を落として、掛け軸へと振り返った。

「離れられないんだ。この傍から」

「え?」

「以前は絵の傍からある程度離れても問題なかった。けれども、今は以前より距離が縮んで、五メートルぐらいしか……」

「そんな……」

「もしかしたら、術が薄くなっているのかもしれない。あれから時間が経っているから。きっと君もそうだと思う。ただ、彼女と波長が合うから憑けているだけで」

彼等の話を耳に入れながら、私は少しだけ頭を整理していた。


術。そして失敗作。一体、このかけ軸はなんなんだ? もしかしたら、この作品自体が、芸術や自分のためではなく、何かの目的のために作成された物なのではないのだろうか。

どうやら事態は、様々な種類の糸が幾重も絡み合っているようだ。


「ねぇ。説明してくれる? 君達は何者なのか」

十和は静かに尋ねた。

「貴方達の想像通り、私達は掛け軸に宿った魂。でも、それは人為的に作られた物なの」

「人為的?」

「そう。広雪は元々絵描きでは無かったの。それにこれはただの掛け軸ではない。呪いが施されている。私達を創った彼女は死者を蘇らせようと、術式として絵を描いたのよ。これは絵ではなく、呪文のような物」

「待って。彼女? 広雪って、男じゃないの?」

「女性よ。とても綺麗な人間。でも、彼女は愛する夫を殺されてしまった。そこから、人ではあらざる者へと変貌してしまったの。陰陽道、神道、密教……――あらゆる宗教・学問を調べ、夫を黄泉の世界から現世へと呼び戻そうとした」

「確かに、陰陽道の泰山府君祭を始めとし、一度死んだ人間を蘇らせる術と言われているものは、世界中に沢山残されているよ。それぐらい死というのは、昔から人間にとって密接した事柄だったんだろうね。それで、君達が生まれたの?」

「えぇ。私達はその失敗作。中途半端に魂魄が絵に留まってしまったのよ。だから幽霊と同じ。一部の者にだけ視え、触れられる」

十和と竜胆の会話に全く入っていけない。難しすぎる。

つまり、その広雪という作者は、亡くなった自分の夫を蘇らせようとして失敗し、竜胆達を創ったという事なのだろうか。

……って、どうやって? 術式って、何?


「どうしましょう。困ったわ。これじゃあ、一緒にいられない。ねぇ、美月」

もう、この話を聞いて嫌な予感がしないはずがない。喉元へと流し込んでいた茶が気管に詰まり咳き込んでしまう。

このもう一つの掛け軸をどうするか? その事が頭を過ぎらずとも理解できる。

もうすでに脳裏で札束を強要する竜胆が飛びまわっていた。


「先に言っておく。私は女子高生なの。だから無理だ、無理」

考えるまでもない。それなのに、あの女は私の肩にしがみつき泣きわめいた。

実に耳障り。まるで黒板を爪で引っ掻いたかのように、甲高いせいで耳の奥がキーンとする。


『恋人と引き裂くの!?』

「そんな事言われても……」

『薄情者! 枕元に立って恨み言吐きまくるわ』

「辞めてよ。その嫌がらせ。っつうか、耳元でわめくな! わかったってば……」

その煩さに、私は降参。両手を上げ白旗を揚げた。


「ちなみにおいくらですか?」

そんな問いに、十和のお爺さんは目を大きく見開いてみせた。

「君が購入するのかい? 五百万円ぐらいかな。勿論、少しぐらいなら割引可だけれども」

「無理ですね」

それには即答。

すると竜胆が、「どうして!」と首を絞める勢いで服の襟元を掴んで前後に揺らしてしまう。

そのせいで、私の視界が前後にブレてしまっている。

マズイ。このままだと三半規管いかれてしまうじゃないか。

バス酔いしやすいこの身にとって、それは危機的状況だ。


「離せって。っつうか、私からは触れないのかよっ!」

手を伸ばしてその腕を掴もうとすれば、すっと宙を切ってしまう。

「聞いたでしょ? 五百万円だってば」

『安いの? 高いの?』

「高いに決まっているでしょうが。安いならとっくに買ってやっているっつうの。無理。おじぃちゃんの枕元に立って、定期五百万貯めてくれって言って」

『貴方の家族、全員鈍いんだもの……』

「私だって霊感ないのに視えるんだけどっ!」

『波長があったのよ……憑きやすかったし。気をつけた方がいいわよ。美月は、鍵が開いている上に、扉を開けっ放しって感じかしら』

「怖い事を言うのやめてくれない?」

バイトしても五百万円なんて大金簡単に用意出来るはずがない。

そもそも私のスーパーの時給が七百円なのに、どうやって貯めろというのだ。


「そういう事だったのかぁ。もしかしたら、一連の怪奇現象はそれが禍根なのかもしれないね。お爺さん。どうしますか?」

「そうだなぁ。これをこのまま売り物とするにも、若い二人を引き裂くようで可哀想だ」

 顎に手を添え、思案する様子を見せた十和のお爺さん。

……若くはないはずだ。桜を見て八百年前って言っていたから。そうつっこんでしまいそうだった。

「では、こういうのはどうだい――?」







今はあまり見なくなった、古い日本家屋風の建物。

そんな屋敷のとある部屋にて、私の苛立ちはピークに達していた。

折角開け放っている障子から、絵に描いたような庭園が広がっているというのに。

そんな風景そっちのけで、私の周りにいるやつが鬱陶しくて仕方が無い。


「ちょっとー。そこでいちゃつかないでくれない?」

私は後ろを振り向くと、目を細めた。

そこにはすでに背後霊と化している竜胆とその恋人である春時の姿が。

胡坐をかき竜胆を膝の上に乗せている春時は、申し訳なさそうに眉を下げている。

けれどもいちゃつくのはやめないらしい。

ちなみにここは十和の部屋だ。

そんな事は微塵も感じさせないバカップル。

少しは遠慮と恥じらいというものを知れ。日本のわびさびだろうが。


「あーっ! もう、気が散る」

テーブルの上に開かれているノート。

それに走らせていたシャープペンの芯に、私のイラつきが伝わったらしく、真っ二つに折れた。

ただでさえ意味不明の異国語。英語の課題中だというのに!

人が必死で十和に教えて貰いながらやっているのに、何甘い囁きをしあっているんだ!?

なんて不必要で非生産性なのだろうか。私には何一つプラスになる物がない。むしろ、マイナス。負だ。


「まぁまぁ。落ち着いてよ」

テーブルの反対側の席へと座っている十和は、手にしていた教科書を置くと私のノートを覗き込んだ。

「それより、進んだ?」

「解けない。あいつらのせいで」

『私達のせいにしないでくれない?』

だったら、いちゃつくな。絡み合うな。

と睨みつけるが、あいつらは私の事を全力でスルー。私もその能力が欲しい。


『ねぇ。五百万円はまだたまらないの?』

「通帳の残高見て現実知れ! 現代社会舐めるな! 物価が昔と違うっつうの!」

結局あれから私は十和のお爺さんの提案に甘えている。

それは、時々こうして家を訪れ、竜胆と春時の二人を会わせるというもの。

結局あの後自宅に戻り、竜胆に掛け軸から離れられるかやってもらったが、やはり春時の言うように無理だった。

まるで透明な足枷でも嵌められたかのように、一定距離から足を進めなくなってしまった。

けれども、波長が合う人間に憑りつけばその壁を越えられる。

従って、今日も私の背後霊と化し、朝倉家へとお邪魔。


そのため、移動手段が限られている。波長が合わないと駄目らしいし。

しかし、朝倉家には感謝だ。

定期的に訪れる私達を煙たがらずに毎回迎え入れてくれるし、その上かけ軸も売り物ではなく、こうして屋敷で飾ってくれている。

五百万もあったら、違う事に使いたい。だから、このままが良い。……って思っていても、十和の家に迷惑をかけているわけだから、都合よく考えては駄目だ。


本当は購入出来ればいいのだけれども……目が飛び出す程。

それとなく、対になっているもの見つけたんだ。

と、お爺ちゃんに伝えておいたので、定期を貯めてくれる事を期待している。


「どうして? うちは構わないけれども」

十和が小首を傾げると、胡桃色の薄い髪がさらりと流れ落ちる。

「いや、さすがにこのままご厚意に甘えるのは……課題も見て貰っているし」

「別に気にならないけれども」

『だったら、美月がこの家で暮らせばいいのよ! 十和と将来結婚すれば、私と春時はずっと一緒に暮らせるわ!』

何故、そんな方向に行く――? 


あぁ、平穏が恋しい。あんなに毎日同じ事の繰り返しと思っていた日常が愛しい。

何度目になるかわからない嘆息を漏らすと、私は庭へと視線を向けた。

木々の中には桜の木もあり、緑の中に鮮やかなピンク色を浮かべていた。

現世を堪能している幽霊は煩いが、今日も桜が美しい。来年こそは、静かに眺めたいと願った。







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