感情の色
初作品なのでところどころおかしいと思いますが優しい目で読んでくださると嬉しいです。
感情には色がある。怒り、悲しみ、喜び、さまざまな感情。
だが、人はそれを正直にあらわせないときがある。
もし、そのすべてを、伝えることができたなら
あなたの生活はよくなりますか?
それとも…
「お兄ちゃーん、今日はどうするのー?」
「ん~…」
「無理しなくていいよ?連絡しとくからさ」
「ん、ごめん…」
「いいのいいの、じゃ、私行くね!」
「うん、いってらっしゃい」
僕の名前は志羽桐 翔。今年で高校2年になる。
さっきのは、妹の春。今年で中学三年だ。
僕が学校に行かない理由。それは、この瞳のせいだ。
僕の瞳は感情によって色が変わる。
怒りの赤。悲しみの青。喜びのオレンジ。好意の黄色。
また、瞳の色と、同時に耳が出るようになった。
小学校三年の時から出始め、最初はそこまでじゃなかったものの中学二年の春ごろひとりの女の子との出会いをきっかけに簡単に出るようになってしまった。
きっと、こんな目を彼女がみたら…
そう考えるだけで、僕の瞳は青く光るのだ。
私の名前は秋葦 明。今年で高校二年生。
私には好きな人がいる。中学二年生のころからずっと同じクラスで、今隣の席の志羽桐君だ。このことは誰にも言っていない。理由はひとつ。私が心にちょっとした問題を抱えているから。そのせいで、友達と呼べる友達はいない。
小学校一年生の夏休み、その日、その時、私はすべてを失った。
このことを彼が知ったら…
そう考えるだけで、私は静かに涙を流し続けた。
目を覚ますともう夕方で、一階から物音がするので、きっと春が夕食の準備をしているのだろう。まだ少しぼぉ~っとするがなんとか起き上がり、一階へ。
「あ、お兄ちゃん!もー大丈夫なの?」
「あぁ、もう大丈夫だよ」
「ふふっ、よかった!」
「ははっ、ありがとう明日は学校、行けると思うからさ」
「うん、無理しなくていいからね?」
「あぁ、わかってるさ」
夕食を済ませ部屋に戻ると、ケータイが光っていた。なにかと思い見てみると、同じクラスで席が隣の秋葦さんだ。
:志羽桐君へ
体調はどう?
今日は体育でみんなとバスケをしました。
私はあんまり活躍できなかったけど楽しかったよ。
明日は学校こられるといいね!
明
「明日は行く…よっと」
手短に返信をし終えふと鏡をみると、僕の瞳は黄色に光り、少し長めの髪の毛をかき分けるように二つの耳がはえていた。
いつもこうだ。中学二年のときに出会ったひとりの女の子。それが秋葦さんだ。
そのころの僕は、目のことや、耳のことがばれないように極端に人とかかわりを拒んだ。必然的に周りの人たちも僕を避けるようになった。
そんな僕に積極的に話しかけてきたのが彼女だ。
最初のころは面倒だったので無視していたが、泣かれたときはさすがに焦った。どうすればいいかわからずあたふたしていると、泣いていたと思ったら今度は思いっきり笑い出してしまった。
「はははっ、ごめんね。
あわてる志羽桐君かわいくて」
「か、かわいいって、僕男なんだけど…」
「あ!やっと話ししてくれたね!」
「あ…いや…その…」
やばい。目が熱くなり始めた。これは瞳の色が変わり、耳がでる兆候だ。このままでは今までの努力が無駄になってしまう。
「ご、ごめん!僕ちょっと行かなきゃっ」
「えっ?」
たぶんその時の僕は今までで一番といってもいいぐらい全速力で走った。
トイレに駆け込んだ僕は、人がいないことを確認し一息ついた。案の定、鏡には黄色い瞳とふさふさの耳をはやした僕がうつっていた。
「はぁ、どうしよう…このままじゃ教室戻れない」
しょうがなくその時間はサボった。どうにかおさまった目と耳に心をなでおろし、教室に戻った。
その後はもういつも通りで、秋葦さんもその日はもう話しかけてはこなかった。
ふと、時計を見るともう10時だった。
昔の話はこの辺で終わりにして、また今度にしよう…
学校から帰った私は最近の日課になっているメールの内容を考えていた。もちろん相手は志羽桐君だ。
「明日は来てくれるかな...」
「ん?姉ちゃんなんか言った?」
「え?いや、な、なんでもないよ!」
「ふ~ん、ま、いいや
もうごはんだから、早く着替えてこいだって」
「あ、うん!わかったー」
まさか、恵一に聞かれるとは…
あ、さっきのは弟の恵一で、中学三年生になりました。
部屋に行き、少しゆったりめな服に着替えて、リビングへ。
「あ、姉ちゃん、遅いから先に食べてるよ」
「あんたねぇ、少しぐらいまてないの?」
「ん?待った待った、30秒くらい」
「それは待ったとは言わないよ...
ま、いいや。いただきまーす」
夕飯を終え部屋に戻った私は志羽桐君から返信がきていることに気付いた。
:秋葦さんへ
元気だよ
明日は学校行くよ
たった、二言だけど少し無理してるのが伝わってくる。
「無理しないでねっと…さ、寝よ~」
そういって布団にはいったもの、なかなか寝付けず結局寝たのは12時すぎだった。
「お兄ちゃん!おきて!
今日は学校いくんでしょ!!」
「ん…お、おはよ」
「おはようー
はやく準備してね~」
「う~ん」
僕はどうしても朝が苦手だ。
が、今日はそんなことを言ってる場合じゃなく、秋葦さんとの約束なので何としてでも学校に行かなくてはならない。
時間割とか全然わからないので適当に教科書とノートを数冊入れ春と一緒に家を出た。
途中の交差点で春と別れ、学校が見えてきた。
「はぁ~...」
何の気なしに自然とため息が漏れる。
靴を履き替え教室に向かう。もう、ほとんどの生徒が登校しており皆思い思いの時間を過ごしていた。一人を除いて...
秋葦さんだ。
彼女はなんだかんだいつも席にひとりで、本を読んだり絵をかいたりしている。
以前「みんなのとこ、いかないの?」と聞いてみたが「う~ん」と言い笑ってごまかされてしまった。言いたくないのかなと思いそれ以上はとくに聞かなかった。
「あ、秋葦さん、お、おはよ…」
「あ!志羽桐君おはよう!ちゃんとこれたんだね!」
「う、うん」
「ははっ、よかった~」
その後は言葉を交わすこともなく、気づけば昼休みになっていた。僕らの学校は弁当制なので昼休みはやたらと長い。
僕は基本教室で食べるが今日はべつの場所で食べようかなと考えていると…
「姉ちゃん、遅刻するよ?」
「ふぇ?…えー!!
なんでもっと早く起こしてくれないのよ~」
「いや、起こしたよ?ちょんちょんって」
「もっとばしばしやってよ~」
「え?いいの?」
「う…よくない」
「だよな~」
私の両親は朝早くに仕事に行ってしまうため、朝は基本恵一と二人だ。
別段朝が弱いわけでもないが、昨夜なかなか寝付けなかったのがよくなっかったんだろう。
少しぼぉーっとする頭を無理やりおこし、ぱぱっと準備を終え、戸締りを確認し家を出る。
学校についた私はまず保健室での用事をすませ教室へ。
荷物を置き、教室にいるのはあまり好きじゃないので屋上にでも行こうかと考えたけど今日はあいにくの曇りだし、志羽桐君がきっとくるので教室で待つことにした。
「あ、秋葦さん、お、おはよ…」
「あ!志羽桐君おはよう!ちゃんとこれたんだね!」
「う、うん」
「ははっ、よかった~」
なにか話そうとしたが会話のネタも思いつかず気が付けば昼休みになってしまっていた。
ここは勇気をだして志羽桐君を誘ってみよう私!
「し、志羽桐君、もしよかったら一緒にお昼食べない?」
「え?あ、うん いいよ」
「ほんと!?やったー!」
「お、屋上で食べたいんだけど、いい、かな?」
「うん、いこー」
屋上に移動した僕らは各々の弁当を食べ始めた。
「おいしそうだね、そのお弁当!!」
「は、春が作ってくれたんだ」
「へ~、今度料理教えてもらおうかな~」
そういい、無邪気に笑う君の笑顔にはやはりかてなかった。目がどんどん熱くなる。
このままじゃっ。
「ちょ、ちょっとトイレいってくるよ。
さ、先に戻ってていいからっ」
そう言い残し僕は全速力でその場を後にした。
それなのに...
「ま、待って!待ってよ!!」
「っ...」
「ねぇ、どうして行っちゃうの?
いやだ…やだよ…なん…で…」 バタッ
「え?あ、秋葦さんっ!?」
あれから五日がたった。今もまだ彼女は眠ったままだ。
僕はあの日から毎日見舞いにきている。
軽くノックをし、中へ。
「し、失礼します」
「あら?明のお友達?」
「あ、はい
翔です、志羽桐翔」
「へぇーあなたが、明からいろいろ聞いてますわ」
「は、はぁ…」
「ゆっくりしていってくださいね」
「はい」
彼女は昨日と変わらない穏やかな寝息をたてていた。
何分経っただろう。そろそろ帰らないと春に怒られそうだ。
「それじゃあそろそろ失礼します」
「あ、ちょっと時間いい?話があるの」
「え?あ、時間は全然大丈夫です」
「そう、じゃああっちで話しましょうか」
そういい病院の横にある自然公園に来ていた。
近くにあったベンチに腰掛けた。
「あの子ね、昔事故にあって友達をなくしたの」
「え…?」
「小学校一年生の夏休みにね。事故の直前に、友達と喧嘩して走って行ってしまったのを追いかけて赤信号なのに二人で…
明は一命を取り留めたんだけどお友達のほうは…
そのあとがまた大変でね、重症で6年間ずっと入院してたの。
でも、やっぱり完全には回復しなくて…あと半年もすれば、治療の副作用で目が見えなくなるって。それにね、友達が死んだのは自分のせいだって、もう友達はいらないって言って。
でも、あなたに出会って変わったわ。
ほんとにあなたには感謝してるのよ」
「で、でも僕…
す、すみません、僕もう行かなきゃ」
知らなかった。なにもわかってあげられてなかった。
それなのに僕は…
僕は無我夢中で家まで走り続けた。
「お、お兄ちゃん?どうしたの!?」
「僕、僕…ど、どうしよう…わかんないよ…」
目が焼けるように熱い。きっと僕の瞳は濃い青色になっているだろう。
だが、その時の僕はそんなこと気にせず、ただ泣いて、泣いて、泣きまくった。
「お兄ちゃん!事情はよくわかんないけど、悪いことしたらまず謝んなきゃ!
それが、大切な人ならなおさらでしょ?」
「っ…うん…ごめん春、こんなとこ見せちゃって」
「ううん、でもお兄ちゃんがこんなに泣いてるの久しぶりに見たかも
瞳の色、真っ青だよ」
「だよな、見なくてもわかる めっちゃ熱いもん
明日もう一度いってくるよ。そんでちゃんと謝ってくる」
「うん、応援してるね」
「あぁ、ありがとな」
「うん!」
翌日、明の意識が戻ったと知らされ僕は病室へ急いだ。
が、そこに明の姿はなかった。
近くにいた看護師さんに聞くと「散歩してきます」と言って出て行ってしまったらしい。外出許可はでているので特に止めなかったそうだ。
僕は病院の近くをずっと探し、走り続けた。そしてやっと、公園奥の高台のベンチに座っているのを見つけ、話しかけようとしたその時。
「こないで!」
「え、いや、あの」
「こないでよ…」
「ご、ごめん。でも、ひとつだけ聞いてほしいんだ 僕の秘密を…」
「秘密…?」
「あぁ、こっちを向いてほしい」
「え…耳?目も…」
「ごめんね、ずっと隠してて
僕はね自分の感情によって瞳の色が変わって耳がでるんだ…
僕はこれがばれたくなくて、君に嫌われたくなくて、
無意識に君から距離を置いてしまっていたのかも…ほんとごめん…」
「黄色…黄色は何の色?」
「黄色は、好意を示す色だよ…」
「え?…」
「明、僕は君が好きだ
化け物みたいなこんな僕でもよかったら、これからもずっと一緒にいてほしい」
「化け物なんかじゃないよ!
わ、私も好きだよ、ずっと一緒にいたい…でも、だめなの
私の目…もうすぐで、だめになっちゃうの
好きな人の、翔君の顔見れなくなっちゃうのっ」
「それでもいいんだ、君といられれば僕はそれでいい
絶対君をひとりにはしないよ、約束する」
「ぜ、絶対?」
「あぁ!改めて、こんな僕でよかったら付き合ってください」
僕は手を出す。君はその手を握り、
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「ありがとう、明」
僕はそういい君を抱きしめた。
「ふふっ、私もだよっ、翔君」
そう言った君の顔はいつもどおりの笑顔だった。
僕はその笑顔にこれから何度も救われるだろう。
君との永遠を誓った僕。
幾度となく、おとずれるだろう試練でさえ君がいればできる。
そう信じて、僕らは一歩一歩、歩いていくのだった。
終わり
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回作はいつかきっとあげます。